ヒーロー【セイバーオルタ】   作:なゆさん

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2話

 私の名は八木俊典。世間では平和の象徴オールマイトと呼ばれている。そんな私だが、今絶賛逃走中だ。理由は簡単、活動限界が近いのに新聞記者達の話が長かった。それだけだ。もう日は完全に沈んでいる。

 

「ゴホッゴホッ…。まったく、もう少し手短に話して欲し―――」

 

その時、遠くから爆発音がした。距離にして約5キロ位か。かなりデカい音だ。何かの事件かもしれない。活動限界を考えると行くべきではないが、私の身体は考えるより先に動いていた。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 爆発音の発生源らしき所へ着いた。山奥にあったそこには、屋根やら壁やらが吹き飛ばされたデカい建物と、なぎ倒された周りの木々。そして、その中心で静かに立つ、一人の少女だった。

 

「君!大丈夫かい?」

 

私は声をかける。私の方へ振り返る少女は、人形のように美しかった。ただ、こちらを覗く目は、無機質で底冷えするほど冷たかった。

 

「問おう。お前が私の、マスターか?」

 

それが、少女の最初に放った一言。意味が分からなかった。ただ、何故だか分からないが、この時私は反射的に、

 

「ああ。」

 

そう、返事をしてしまっていた。何となく、ここで返事をしなければならない気がしたのだ。

 

「そう…か。よかった。」

 

それだけ言って、倒れる少女。頭を打たぬよう手で受け止める。意識を失ったようだ。

 

「ッ!?」

 

突如、右手に焼けるような痛みが走る。見ると、不思議な模様が浮かび上がっている。

 

「何だこれ!?――クッ!」

 

次は頭痛。突き刺すような痛みに、思わず膝をつく。

 

「何だ?まさか、この少女の?」

 

頭の中に直接情報が流れ込んでくる。この少女のものらしき情報。

 

 

 

 彼女はここの施設の実験体であり、施設の主の最高傑作だった。複数の個性を植え付けられ、この施設で戦わされていたようだ。だが、実験中に個性が変質、暴走し、施設ごと敵を吹き飛ばしたらしい。恐らく、私が聞いた爆発音はこれだ。

 そして、私の右手の不思議な模様。【令呪】と呼ぶらしい。彼女の個性は強力故に、何の処置も行わなければ1日で身体が耐えられず崩壊して死んでしまう。だから彼女の問いに答えた者に【マスター】として、令呪を備えてもらう必要がある。令呪が誰かに刻まれている間は、どういうわけか彼女の肉体強度が上がり、個性に耐えられるようだ。だが、この令呪、彼女に対して3回強制的に命令を実行させられる。つまり彼女は、誰かに服従しなければ生きていけないという事だ。

 

 

 

 私は車を運転しながら思う。

 

(複数個性、しかも恐らく彼女は変質前は服従という個性を植え付けられていた。令呪というものは、個性が変質した際、服従という個性も一緒に一つの個性となった結果だろう。こんな悪趣味な実験をする者など他には居ない。)

 

オール・フォー・ワン。一年前に倒した――殺してしまった筈の最悪の怨敵。

 

(生きていたか!!)

 

歯噛みする。己があの時、完全仕留めきるか、生きたまま捕縛するかできていれば、この少女のような犠牲者が出ることもなかった。

 隣の少女を見やる。助手席で寝ている少女には先程の威圧感は無く、可憐な少女のように見える。あの男はこのような少女を弄び、過酷な運命を背負わせた。この少女だけではない。先代様も、お師匠も…。絶対に許さない!オール・フォー・ワン!私は、次こそお前を牢屋にぶち込んでやるぞ!!

 私は再び暗躍していた怨敵を思い、決意を新たにした。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 脳無ごと天井を吹き飛ばした私は、初めての夜空、初めての外の景色に目を奪われていた。

 一応、知識としてある程度の言語能力と常識は記憶しているが、実際に見た事があるのは闇と白い部屋、後は培養液の中と脳無くらいである。

 

「美しい。」

 

本当に美しかった。永遠に見たいと思った。生まれてよかったとさえ思った。

しばらく夜空を眺めていたが、突如身体中に鋭い痛みを感じた。

 

「……コレが、身体の崩壊か。」

 

個性が変質した瞬間、私は己の個性の事を殆ど全て把握した。その結果、私はマスターとなる存在が居なければ、崩壊してしまう事は分かっていた。

 

「……ここまでか。私は。」

 

どうやらここは、人も寄りつかない森の中。更には壊れた建物になぎ倒された木々。こんな場所に来て、私のマスターだと言ってくれる人なんて、居る訳がない。

――やっと、外に出られたのに。やっと、美しいと思えるものに出会ったのに。

 

「……もっと、生きたかった。」

 

静かに空を見る。満天の星空を。死んでも、この美しさを忘れぬように―――

 

「君!大丈夫かい?」

 

不意に、声が聞こえた。

振り返ると、大きな脳無程の背丈の大男が、心底心配だという目つきでこちらを見ていた。優しい瞳だった。不思議な温かみを持った目だった。

 

「問おう。お前が私の、マスターか?」

 

気づけば尋ねていた。この男なら、温かい瞳を持つこの人なら、私を助けてくれるのではないかと。まだ、夜空を見せてくれるのではないかと。

 

「ああ。」

 

やはり、温かい声だった。

 

「そう…か。よかった。」

 

まだ、夜空を、見られ―――

 私の意識はそこで途切れた。




――オルタちゃんの性能紹介【令呪】――
オルタちゃんは誰かが令呪を持ってないと死んでしまいます。オールマイトの予想通り、オール・フォー・ワンの細工が一緒に変質した結果ですね。令呪の性能は原作通り。後、令呪の所有者とオルタちゃんは、互いに互いの情報をある程度手に入れます。オルタちゃんも先程、オールマイトの今までの人生について知りました。また、令呪所有者とオルタちゃんは念話でき、令呪所有者の現在地を、オルタちゃんは把握することができます。色々便利だね。
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