ヒーロー【セイバーオルタ】   作:なゆさん

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3話

 

 あれから5年の年月が経った。その間、私を親戚として引き取ったマスターこと八木俊典が、知り合いの警察官に事情を説明し、私をアルトリアと名付け、戸籍を捏造し、私にヒーロー免許を取らせ、ヒーローとしてデビューさせた。(普通に犯罪だが、政府に事情を一部伝える事で黙認してもらったらしい。)

私はヒーロー【セイバーオルタ】として活動し、マスターと共に行動する事が多かったことから知名度も上げ、中々の人気ヒーローとなった。こうする事で、マスターとできるだけ一緒に行動でき、私を追ってきた脳無や雇われヴィラン等を返り討ちにしても無罪になる。何より危険人物として公安に狙われにくくなる。戸籍の無い強個性を持つ怪しい組織から逃げ出してきた人物なんて、いくらオールマイトの信用があっても警戒される。時間をかけて信用を得る必要があったのだ。

 5年間の努力の甲斐あり、今では普通の生活を送れている。のだが……

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

「おい、マスター。」

 

私は眼の前で正座をしているガリガリの男に問う。

 

「何故買い物に2時間もかけ、マッスルフォームで帰って来た?私は、一般人でも徒歩5分で着くハンバーガーショップのハンバーガーを頼んだだけだぞ?私が買い物するのは色々心配だからと、自分で引き受けただろう?」

 

「そ、それは…その……。」

 

「私がマスターの位置を探知できる事を忘れたのか?あっちこっち飛び回っていたなぁ?」

 

「え、えっと…」

 

「どうせ人助けがヒートアップしてしまったのだろう?途中から腹を空かせて待っている私の事など忘れてしまっていたのだろう?」

 

「……ハイ。」

 

「マスター、コレで何度目だ?人助けは立派だが、自分の身と、約束は大切にしろと何度言った?」

 

「……スミマセン。」

 

マスターのコレには困ったものである。助けを求める者が居ればすぐに身体が動いてしまう。自らの身体の事などお構い無しに。

 

「マスター。私が食事を我慢する事が大嫌いなのは覚えているな?」

 

「も、もちろん、覚えているよ。」

 

「コレは大きな貸しだぞ?」

 

「ああ。それは必ず返すとも。」

 

「今のところ貸しばかり増えているのに、説得力がある筈がないだろう。」

 

「うっ……それは…。」

 

「……まあ反省はしているようだし、とりあえず許してやる。二人でバーガーを食べに行くぞ。我慢の限界だ。」

 

「ああ。」

 

 その後例のハンバーガーショップには、5人前のハンバーガーセットを美味しそうに頬張る、人気ヒーローセイバーオルタの姿があった。

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

「私が雄英高校の教員?」

 

ある日、唐突にマスターから切り出された話に、私は思わず聞き返してしまった。

 

「ああ。アルトリアはヒーロー免許と一緒に色々な免許取った時、教員免許も取ってたよね?」

 

「ああ。合格した。」

 

「実は私に雄英高校から教師になるよう要望が来ていてね。後継者の事もあるし、受けようと思ったんだ。それで、アルトリアも一緒にどうかなーって。」

 

「私に異論は無いが……いいのか?」

 

「上に許可は取ってあるよ。」

 

「子供の相手など出来る自信は無いが……」

 

「アルトリアならできるさ。君は子供人気も高いしね。」

「……分かった。いいだろう。」

 

「よかった―――と言っても、もう手続き終わっちゃってるんだけどね。」

 

「は?」

 

「アルトリアなら受けてくれると信じていたからさ。思いの外渋ってたけど、同意してくれてよかった。」

 

「――マスター?」

 

「何だい?アルトリ……ア――ち、ちょっと笑顔が怖いんだけど?」

 

「正座。」

 

「あ、アル」

 

「正座。」

 

「は、はい……。」

 

それから私は、マスターと小一時間程じっくりと話し合い(?)をした。

 

 

◆◇◆◇◆

 

 

 数日後、私は雄英高校の教師になるための引っ越しを終え、新しい我が家にいた。

 

「ここら辺、久々だなあ。」

 

マスターは感慨深そうにそう言う。何か思い出す事があるのだろうか。それはそうと、

 

「マスター。」

 

「ん?何だい?」

 

「私にとっては初めての土地だ。土地勘のあるマスターが案内してほしい。」

 

「ああ。その程度ならお安い御用さ。」

 

この後、この男に案内を頼んだのを後悔する事になることを、この時の私は知らなかった。

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

「すまないアルトリア!少し待っててくれ!」

 

そう言い残し、マスターがマッスルフォームでどこかに飛んでいってどれくらいの時間が経過しただろうか。

もう空は夕焼け色に変わっていた。私は土地勘もなく、携帯も持ってきていなかったので、その場から動けずにいた。

マスターの居場所は把握しているのだが、そこまでの道が分からない。個性を使えば最短距離で飛んで行けるが、ヒーロー活動もしないのに個性を使うのは、あまり褒められる事ではない。私は出来る限り規則は守りたいタイプだった。

 

「携帯電話を持ってきていれば……イヤ、そもそもやはり、マスターに案内を頼むべきじゃなかった。」

 

いい加減、こうなること前提で私も行動しなければならない。何度言っても治らないのだから、こちらが変わるしかないだろう。とりあえず、人に道を尋ねながら、帰ろう。恐らく、マスターは私のことを完全に忘れている。

 

 

 ◆◇◆◇◆

 

 

「申し訳御座いません。」

 

眼の前で土下座しているマスターを私は冷めた目で見る。毎回反省しているのに何故同じ事を繰り返すのか。

 

「……マスター。」

 

「は、ハイ。」

 

「何故、ヴィランを退治した後、すぐに帰って来なかった?ニュース速報から約1時間何をしていた?」

 

「……後継を、見つけたんだ。」

 

マスターの声に喜びの色が灯る。

 

「……それは、ヴィランに囚われていた足手まといか?それともヴィランに突っ込んでいった命知らずか?」

 

「アルトリア、口がわる―――」

 

「黙れ。今のマスターにそんなことを言う権利は無い。質問に答えろ。」

 

「うっ……ヴィランに突っ込んでいった方さ。」

 

「やはりな。マスター好みの目だ。大方、無個性だった事に同族意識でも芽生えたのか?」

 

「……それは否めない。だが、私は彼にヒーローとしての素質を見た!私は、私の目を信じる。」

 

「…はぁ、分かった。後継の育成、私も手伝ってやろう。」

 

「いいのかい!?」

 

「今日と合わせて大きな貸し2つだぞ?」

 

「ああ!必ず返すとも!」

 

まったく信用ならない大きな返事が引っ越したばかりの部屋に響いた。

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