イッセーSide
……チクショー。
俺は深夜の公園で、黄昏ていた。
黄昏なんてとっくに過ぎているのに、俺だけ黄昏だよ。途方にも暮れているよ。
いや、本当に勘弁してくれ。
依頼を二回続けて成功させれなかったとか、流石に不安になるんだけど。いや、アンケートはどっちもいい感じだったけどさぁ。実益がさぁ。
悪魔の契約は仕事なんだから、結果はちゃんと出さないとまずいはずだ。二人とも俺との時間をよかったと思ってくれたのはいいけど、そこに甘えちゃ駄目だ。
でも、今回は依頼も少なかったしチラシ配り復活。ただ慣れてきたのでノルマが終わったから、ちょっと一息ついている。
……ここ数日で、一年分自転車を乗り回したかも。
子供の悪魔でも転位できるのに、俺は魔力が無さすぎてチャリで依頼人のところまで行ってるし。いろんな意味で凹む。
俺の神器は他とは違うって話だけど、こんな調子だと信じられない。純粋に才能がないから制御できなかっただけなんじゃないだろうか。
いや、下手すると大爆発レベルの被害が出るっていうし、ポテンシャルはあるはずだ。そうでなけりゃ、案だけいる中で俺だけがリアス部長の眷属って流れにはならないだろ。
大丈夫なんだろうか、大丈夫だよね?
割と本気で不安になってくる。缶コーヒーでも飲まないとやってられないから。
そんな感じでため息をついているけど、それにしたって限度はあるよなぁ。
そろそろ気合を入れて戻らないと思った、その時だった。
「……どうしたの?」
と、目の前に女の子がいた。
黒髪の小さな女の子。ゴスロリなのが気を引くけど、今深夜なんだけど。
「どうしたんだ? 女の子がこんな時間にいちゃダメだろ?」
まぁ、俺も学生服を着てるからこれはこれで問題なんだけど。
ただ女の子は首を傾げながら、俺の方を覗き込んでいる。
「大丈夫? 辛い?」
えっと、これは気遣われてるのかな?
……ちょっと気合を入れないとな。
こんな小さな子に心配されるってのもあれだし、この子にも悪そうだ。
だから俺は小さく微笑むと、ぽんぽんとその子の頭をなでる。
「大丈夫! 俺はこれでも、スケベ根性だけが取り柄なんでな!」
俺が元気よく笑ってそう言うと、その子はホッとしたような感じだった。
「そう、よかった……あ」
と、その子はあらぬ方向を向いていた。
「呼んでる。……戻る」
「あ、そうなの? じゃ、早く戻っとけよ」
そういうと、その子は小さく手を振ってからテトテトと走っていった。
異形の子なんだろうか?
この駒王町、割と異形がいるッポイからそういう事だと思う。
ま、あとでリアス部長や才司さんに教えてもらえばいいか。
そう思った時、急に携帯が鳴り響く。
確認すると、リアス部長だった。
「はい、どうしまし―」
『―イッセー! すぐに戻って頂戴!!』
なんか急に大慌ての大声がぁっ!?
才司Side
大慌てで緊急招集が欠けられ、俺もリアスちゃんもかなり忙しかった。
とりあえず、きちんと登録されている駒王町の裏に関わる者の安否確認など、やることがとても多かった。
「「……疲れた」」
俺とリアスちゃんは、オカルトと研究部室のソファーにへたり込んだ。
いや、本当に忙しいうえに大変だった。
「結局、あの反応は何が原因だったのでしょうか?」
「そうですわね。反応が誤作動とは思えませんし、何かの行動によるものだとは思いますが……」
祐斗君と朱乃ちゃんが首を傾げるけど、本当にこれは意味不明だ。
……駒王町各所に仕掛けていた、登録されていない異形の反応を察知する装置が一斉に反応。事実上、駒王町全体が真っ赤に染まるような反応を示したんだ。
この事態に当然だけど、リアスちゃんは驚いて大急ぎで奔走。当然だけど俺やランダリンも駆り出され、俺はリアスちゃんの補佐をし、ランダリンやフレアは周囲の警戒として足で捜索を行っているといる。
全てが一斉に反応した以上、誤作動ということはないだろう。
ただ、それだけの反応を示す異形がいたのなら、それは下手をしなくても最上級の上位。それが意図的に反応をばら撒いたとしか考えられない。挑発行為そのものだ。
三大勢力の和平。どう考えても反発や余計な反応も起きることで、トップにその覚悟がないわけがない。こういった大きな歴史の転換期なら、それに反応して色々起こると歴史の授業で学んでいるしね。
とはいえ、初手からこんなことをしでかすとはやってくれるよ。
「……どう思う、リアスちゃん」
頭痛を感じながらリアスちゃんに話を振ると、彼女も額に手を当ててため息をついている。
「そうね……。何も起きてないことから考えて、ちょっかいをかけた程度だとは思うけれど、それでこれというのはね」
「だよね……」
少なく見積もっても三大勢力なら最上級クラス。それも間違いなく上位側だ。
下手をすれば神話伝承に名を残している可能性が見えるレベル。そんな存在がいきなりちょっかいをかけるとか、タイミング的に宣戦布告と言っても過言ではない。
どの勢力がやったのか、それが問題だ。
三大勢力のどれかなら、まだマシ。どこかの神話体系の場合、その体系とは戦争状態に突入しかねない。
そうため息をつきたくなった時、通信の魔法陣が展開する。
『―リアスか。無事なようで何よりだ』
『―才司もな。ビビったぜ、ホント』
魔王サーゼクス・ルシファーに、堕天使総督アザゼル閣下。
俺達の二大上司がいきなり出てきて、正直面食らいながらも素早く立ち上がる。
「総督閣下に魔王様! ま、まさか通信越しとはいえいきなりあなた方が来られるとは……っ!?」
「魔王様、もしやそれだけの相手が関わってきたと……?」
俺もリアスちゃんも慌てるけど、映像越しの二人はかなり深刻な表情だった。
『……反応の解析をアジュカが行ってね。その結果を先に伝えておくべきと思ったのだよ』
サーゼクス様はそう言うけど、その表情は疑念のようなものが浮かび上がっている。
というか、この二人がわざわざ通信を行うということは、それだけの大物だったのか。
思わずつばを飲み込む中、アザゼル総督も眉をしかめながら髪をガシガシとかき乱している。
え、そんな手合いが―
『単刀直入に言うに言うと、オーフィスの反応に酷似している』
―その瞬間、俺の思考は一瞬真っ白になった。
オーフィス。その言葉に、俺はすぐに思い至る者があった。
無限を司るとされるそのドラゴンは、世界最強の存在と言われている。
その力は、現四大魔王が全員総出で挑んでも負けるとされるほど。むしろそこに眷属全員がいても、それこそダメ押しレベルでセラフ総員は神の子を見張る者の最高幹部全員を上乗せしても、打倒は難しい。
控えめに言って、そんな存在がちょっかいをかけてくれば、それは戦略核のつるべ打ちに等しい。
寒気を感じているんだけど……え、マジですか?
「……と、とりあえず辺り一帯の避難誘導必須ですよね?」
「落ち着きなさい、才司。オーフィスが仕掛けるのなら、こんな程度で済むわけがないわ」
リアスちゃんが指摘してくれるけど、それにしたって寒気を感じるレベルだ。
これ、今すぐにでも遺書を書いておいた方がいいような気がするレベルだ。
ただ、映像越しのお二人は表情が微妙だった。
『そこが疑念でね。反応はオーフィスのものとしか思えない波長だったのだが、出力があまりに少なすぎるのだよ』
サーゼクス様のその言葉に、俺もはっとなる。
オーフィスの力は魔王クラス十数人分は確実にあるレベルのはず。そんな存在がオーラを広域に放つのなら、最低でも最上級クラスと見なされる程度で済むわけがない。
……確かに妙だ。
「……オーフィスが子供を産んだとか?」
「もしくは化身を作れるようになった? とにかく、力そのものであるわけがないわよね?」
俺もリアスちゃんも首を傾げるけど、それに対しては映像越しのお二人も同じ感じだった。
『アジュカもその辺りをいぶかしんでいてね。懸念事項もあるので、とりあえず周囲に手練れを派遣して捜査に当てる予定だ』
サーゼクス様はそういうと、小さく苦笑する。
『君達は和平の象徴となる立場で力もある。……だが、オーフィスが関わっているとなれば君達が対応する領域ではない。とりあえずは、その町の安全確保とそこにいる者達への配慮をお願いしたい』
まぁ、そうだな。
魔王クラスが何人も出張る必要がある相手が動いたかもしれない。そんな事態に、本家を継ぐとはいえまだプロデビュー前のリアスちゃんレベルが動くのは役者不足にもほどがある。
ただ、そんな事態が起きた後にカバーってのも十分大仕事だよ。
「……俺、胃が痛くなってきたよ」
「頑張りなさい、堕天使代表さん」
うん、リアスちゃんはスパルタなことで。
……ちなみにこの作品、タグにもありますがオリジナル展開を予定しております。
これはいろいろ考えたのですが、自分のスタンスで書きたい作品を書く場合、徹底的にオリジナル展開にした方が過度が立たず無理もないと判断しまして。
これはそのあたりも考慮した実験作といったところですね。