才司Side
昨日は本当に疲れた。
心臓が止まるぐらいの大騒ぎだったからね。おかげであまり寝られていない。
不幸中の幸いと言えば、オーラがオーラだったことから、今後の捜査とかは最上級の方々が担当してくれることだ。
現実問題、俺達では役者が足りない。
リアスちゃんは自分の担当地区で起きたことだから、出来れば自分達で解決したかったみたいだけどね。ま、対応する側からすれば「お願いだから任せられて!」とか言いたくなるか。
とはいっても、だ。
駒王町は基本的に、リアスちゃんや俺達が担当だからね。備えぐらいはしておきたいところだ。
流石にオーフィスの相手は任せるけど、目的によっては他の戦力も来るだろう。その辺りの対策は必須だしね。
「……おや、生崎さん」
と、そこにいたのは金髪の美少年。
「やぁ、祐斗君」
木場祐斗。リアスちゃんの眷属であり、機動力が高くなる
教会と因縁があって、ランダリンとは距離を置いているからね。俺がランダリンと親しいから、比較的接することがない眷属の子だ。
……というより、リアスちゃんの眷属で接触が多いのってイッセーと小猫ちゃんだけだな。
イッセーはそもそも眷属になる前から、同じクラスで二年目だし。小猫ちゃんはその辺りがフラットというか、因縁的なものがないから素直に話ができる。
全能力を高める
「どうですか? 堕天使側の対応は」
と、本題にしっかり入ってきた。
ま、その辺りの話が基本になるだろう。リアスちゃんと話す前に、その辺りをしておくのもいいだろう。
「忙しいみたいだね。ま、オーフィスだけじゃないなら警戒する相手の心当たりがあるみたいで、そういったこともあって警戒しているみたいだよ」
「そうですか。まぁ、教会でも人員を多数派遣しているようですからね。堕天使なら尚更でしょう」
……教会にトゲがある発言だなぁ。
三大勢力は規模も歴史もあるからこそ、それなりの汚点もある。堕天使側は神器摘出技術により死に至った者もいるし、外敵対策で後ろ暗い連中を入れざるを得なかったところも多い。悪魔側も血統主義や純血主義で、差別問題が根深いしね。
当然教会にも色々あり、祐斗君はその一つに深く関係しているらしい。それもあって教会の悪魔祓いであるランダリンに対しては敵意や殺気が漏れている節がある。
「和平を結んでいるとかいう、以前のレベルで気を付けてよ? 一般生徒にも噂になってるんだから」
元々敵対していたわけだから仕方ないけど、その辺りは一応指摘し直しておく。
なにせ、裏を知らない普通の生徒達でも噂になっているからね。「木場きゅんが凄い険しい顔で女子を見ている時がある」って感じで。
あと朱乃ちゃんも、俺をストレートに敵視している節があるし。こちらも気づかれているから気を付けてほしい。俺がそもそもアレなことをしているから、その手の潔癖な人なんだと思われてまだましだけど。
「それは失礼。まぁ、問題の類は魔王様達の今後の交渉に期待しておきますよ」
ほら、教会に対する毒が見えるんだから。
ま、あまり刺激するのもあれだしね。
とはいえ、だ。重要なのはそこじゃない。
「……で、悪魔側はどうなんだい? リアスちゃんはピリピリしてるだろうけど」
ちょうどいいし聞いておくべきだ。
どうせこの後話をするだろうけど、事前に情報を知っておくに越したことはないしね。
祐斗君もそこは分かっているのか、小さく苦笑している。
「ご機嫌斜めなので、その辺りは気を付けてください。自分の縄張りで悪質な挑発をされたうえ、関わらないように釘を刺されているもので」
「ですよねー」
あの子、自分のことは自分でする主義だからなぁ。自分の管轄で起きたことは自分の手で解決したいだろう。蚊帳の外に置かれるのはやっぱりご立腹と。
とはいえ、これは上の方が妥当な判断なんだけどね。
相手がオーフィスと思われるのなら、それこそ最精鋭の大部隊を編成するレベルだし。俺達若手のルーキーが出張ることじゃないし。
「ま、その辺りの愚痴聞きや説得は俺の仕事かな?」
苦笑いで言うしかないけど、ま、それも仕事のうちってね。
イッセーSide
部活に行く前に、ちょっと一息感覚でコーヒーを飲んでいると、視界の隅に金髪が見えた。
一瞬木場かと思ったけど、もっと下の方に見えているし、長い髪だ。
「……あ、兵藤さんなのですか」
お、ランダリン・リライトか。
微笑んでくれるリライトさんに、俺も片手を上げて応じる。
可愛い子に微笑まれると、幸せな気分になるなぁ。それが俺の為だけに向けられるのならもっとよかったけど。
頑張ってそんな女の子を集めよう。ハーレム王を目指す決意は、俺の中で更に高まったよ。
「リライトさんか。どうしたんだ?」
「昨夜が昨夜だったので、才司さんやリアスさんと話し合いなのです。よければ一緒に行きますか?」
なるほど。
なんか、俺がチラシ配りをしている間に大騒ぎだったらしいからなぁ。
なんでも、世界最強の存在がちょっかいをかけてきたとか。その所為でレーダー的なあれが大騒ぎだったらしい。
怖い怖い。俺も転生悪魔だから戦うこともあるだろうけど、そういうのは少なめで頼むぜ。レーティングゲームとか契約活動のほうが、死ぬことが滅多にないだろうから安心だし頑張りたいし。
いや、なんか怖い想像しそうだし、なんか別の話をして気分を変えよう。
そしてそれを考えた時、ちょっと気になることがあった。
「そういや、才司さんもだけどさ? なんでリライトさんはリアス部長のところに派遣される人に選ばれたんだ?」
冷静に考えると気になるな。
リアス部長って、なんでもとっても偉い一族の本家を継ぐ人らしいし。そんな人が主ってのはすっごい事だと思うけど、それを考えるとちょっと気になる。
だってそんな人の縄張りに、和平の備えとはいえ和平が結ばれてない時に行くんだ。人選はしっかりすると思うんだよ。
同年代ってだけなら、才司さんをわざわざねじ込むことはないだろう。いや、あの人高校一年生の時に放浪してたから学年は問題ないけど、絶対悪目立ちだし。夜間学校とか大検ってにした方がいい気もする。
リライトさんも間違いなく外国人だし。いくら何でも日本人で信徒がいないってわけでもないだろうし。そういうところからねじ込んだ方が自然な気がする。
「まぁ、気になって当然なのですよね」
リライトさんはそこに納得してくれたのか、小さく苦笑しながら頷いていて。
「どうせなら三人揃っているところがいいと思うのですが、先に一つだけ言っておくのですよ」
ふむふむ。一つだけって、どんなこと?
俺がまじまじと見つめていると、リライトさんは一つ頷いて―
「そもそも私と才司さんが、リアスさんと出会ったのがきっかけになったのです」
???Side
地球の衛星軌道上、その更に外側。
そこで地球の索敵から逃れる大勢をとったうえで、私達が住んでいる母艦がある。
そこで私はトレーニングルームで体を鍛えた帰り、ついでに早めに食事をとっておこうかと思っていた。
「……お、ちょうどいいところに」
そこで声をかけられて、私は内心の苛立ちを抑えながら振り返る。
そこにいるのは軽薄そうな男。まぁ、これはどうでもいい。
この船の連中は大抵そうだ。基本的に民度が低く、日本水準だとDQNが多い。
そういうお国柄の連中だから仕方ない。これでもこの連中はましな方だし。下を直接見たくないわね
で、それはこの際置いといて。
私は右手の指でなんとなくこめかみ近くをとんとんと叩きながら、笑顔を作って話を促す。
「どうしました?」
「たいしたことじゃねえが、次の仕事はお前らの番なんでな。前もって伝えとこうってわけだ」
ああ、なるほど。
納得しながら、私は小さく肩をすくめる。
「それで今度はどこを潰すんですか? 麻薬? 人身売買?」
私の仕事と言えば、その半分はそういった連中を始末することだ。
慈善事業でも事象正義の味方でもない。そういった連中を殺し、その後釜に自分達を据える為の活動だ。
悪党同士の利益を巡っての共食い。それが、私の仕事の一つ。
……本当に、どす黒い血で染まったものね。
自業自得なのは分かっている。少なくとも私においては、まごうことなく自分の責任だ。
深淵を覗く者は深淵に覗かれる覚悟とかいうらしいけど、まさにそれ。備えもなく深淵を覗くどころか、不用意に深淵に足を踏み入れた結果がこの始末。とんとんとこめかみを指で叩きながら、それをきちんと認識する。
しかも始末に負えないことに、これは私の今現在においてまだましだ。
どんな事情があれど、そういうリスクを踏まえるべき悪党同士の潰し合い。心がまだ痛まない。
だから私は比較的演技をすることなく、その辺りの説明を求めることができた。
「……いや、半グレの護衛をやってくれや」
……だからこそ、その言葉に嫌な予感を覚え始めた。
「どういうことですか?」
「単純単純。昨日、8の0番を使って三大勢力にちょっかい掛けたんだよ。で、実験も兼ねて適当に半グレにくれてやることにしたんだ」
……この辺り、民度が低いというか、お里が知れるというか。
8の0番。あれはそんな簡単に放り投げていいようなものではない。それだけのヤバい代物だと、分かってないとは呆れたい。
ましてや適当に、現地の使いっぱしりとして甘い蜜を与えている半グレごとに挙げていいわけないでしょうに。使い方を誤ったら都心が半壊するのはどうでもいいと思っているでしょうけど、このタイミングで過剰に警戒される意味はない。愚行だ。
ま、他の派閥がとやかく言ってないなら問題ない扱いなんでしょうね。むしろ面白がっているかもしれないわね。
ま、それで滅びるならある意味で好都合。そう気を取り直して、私は表面を取り繕う。
「それで、護衛が必要ってなんでなんですか?」
「それが、他の半グレと抗争が起きそうなんだが異形を抱えてる連中みたいでな? 面のカバーってのがいるだろって感じだよ? あとはくじ引きだ」
なるほど。
8の0番がいるならそこらのはぐれ悪魔なんてどうにでもなる。ただし、8の0番だけではカバーできる範囲に限界がある。
8の0番は搾りかすともいえるでしょうけど、それにしたって半グレには過ぎた力。裏を返せばそんなものをくれてやる程度には価値があるってことなんでしょう。
確か東京都の半グレ集団の中に、規模が特にデカい連中がいたわね。あいつらを残しておくに越したことはないってわけか。数が多いからカバーしきれないってのも確かにあるでしょうから。
そして、そいつは下品としか言いようがないにやにや笑いまで浮かべている。
「ま、終わった後はご褒美もくれてやらねえとなぁ? カタログ見せたらお前さんをご消耗なんで、ちょっと言ってくんね?」
ああ、なるほど。
どうやら嫌悪感が多い方もやらないといけないわねね。
断る理由はまずない。断れないという方が近いし、大した言い訳もなく断られた瞬間に、警戒される可能性も大きいしね。
憂鬱ではあるけど自業自得。身から出た錆である以上、私に何か言う資格はない。
ないけど―
「ということは、私だけじゃなくて彩里もってことね?」
―あの子も、そういう事になるのよね。
「そりゃお前らタッグだろ? ま、他にも何人か後で送るんでヨロ~♪」
その返しに、私の中のストレスは燃え上がる。
私は自業自得だ。だけど、彩里は……
純然たる被害者でありながら、加害者になってしまった少女。
……気づかれないように拳を握り締めながら、私はそいつが渡す映像端末を確認する。
その一番上に書かれた、第一陣のリーダー役である私の名前を睨み付ける。
……今更だけど、本当にかみしめなさいよ、
お前は最低最悪と呼ばれて構わない下種だ。だからこそ、彩里より頑張って受け止めるのよ。
……その苛立ちと苦痛を表に出さず、私は作り笑顔を浮かべながら、こめかみの近くを指で叩く。
「オッケー♪ ま、さっさと片付けて骨抜き奉仕をご馳走してあげますよっと」
これが、私の日常。十六夜彩里ともに地獄を味わう、鈴乃屋彩木という罪人の毎日。
そして、そんな私達の運命が動き出す直前の出来事だった。