機動戦士ガンダム0088 ideal of Titans   作:わいるどうぃーぜる

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今回は前編です。
いよいよクライマックスに。


激闘(前)

「よくもまあここまでの戦力をそろえたもんだ!」

 

 

滑るような動きで自らの機体を岩塊の影に隠し、上半身を露出させないようにしつつ腕だけ突き出しビームライフルのセンサーを使用し、狙撃しながらコンラッドはぼやく。

その機体はザクの爆発に巻き込まれかけたときのまま、あちこち塗装が剥げている。

 

 

サイド3より、距離にして一日ほどかかる資源集積所、オイルアレイ7での第31任務部隊・ジオン共和国防衛隊とジオン残党の戦いは、さらに加熱していた。

 

予定通り、第31任務部隊のモビルスーツ隊単独で進出し、偵察・進路確保を行いながら進んでいると、相手の待ち伏せに出くわしたのだ。

 

 

「相手もコトが成るか成らないか瀬戸際ですからね。在庫の総ざらいをしているものかと。一機撃破」

 

 

後方に陣取ったトシコの放つフェダーインライフルの一撃が、突撃してきたドラッツェの半身を吹き飛ばす。

 

 

「でも時間稼ぎされたらやばいっすよ。相手はそれが目的でしょうし」

 

 

突撃を囮にした側面迂回をミサイルの斉射で潰しながら、カイルも応答する。

 

 

「露払いは俺たちがやっているから、あとはジオン共和国軍が仕事をするかしないか、だな!」

 

 

不用意に顔を出したザクの頭を吹き飛ばしつつ、コンラッドは答える。

 

その言葉が届いたわけでもないだろうが、後方からスラスターをふかし、ハイザックの一団がコンラッドたちを追い抜いていく。

 

ジオン共和国にとっては虎の子の、最新鋭の機体を投入するというところに、今回の事件が危機感を持って受け止められているということを示していた。

 

サイド3の期待に答えるかのように、ハイザック隊はあっという間に敵の前衛を一蹴していく。

その無駄のない動きにコンラッドは、乗り手がベテランである匂いを感じた。

 

 

「いいぞ。俺たちも続く……」

 

 

そこまで言った時、先頭の一機がいきなり爆発した。

 

続いて二機、三機とたちまち背面やランドセルを撃ち抜かれて爆散していく。

 

 

「インコム攻撃だ! おいでなすったぞ!」

 

 

すでにシャルロッテが戦ったときに、「ガンダム」が使ってきた兵器のデータは入手していた。

 

インコム。

 

小型のビーム兵器で、有線で繋がれたそれは擬似的なオールレンジ攻撃、つまり死角からの攻撃ができる。

 

有線誘導ゆえに、近距離しか使えないという欠点はもつ。

 

しかし、誘導による視界外からの攻撃は、ミノフスキー粒子によりニュータイプが操るサイコミュ兵器を除いて不可能な宇宙世紀において、極めて強力な兵器といえる。

 

 

「さすがにあの機体相手ではハイザックでは不利だ、行くぞ!」

 

 

そう列機に声をかけ、加勢をすべく遮蔽物から移動しようとした時。

 

トリコロールに彩られた、「ガンダム」、正式名称「ガンダムマークⅣ」が漂う隕石から姿を表す。

 

 

「が、ガンダム……!?」

 

「ひいっ、ガンダムだ!」

 

 

その姿を見た瞬間、ハイザック隊に明らかに動揺が走る。

 

いきなり前衛がまとめて撃墜されたのもあって、明らかに逃げ腰になっていた。

 

 

「何、どうしたの!? 資料はきちんと渡しておいたはず……」

 

 

トシコの動揺した言葉に、コンラッドは冷たい汗が背中を伝うのを感じた。

 

完全に命令系統が異なり、しかも反目している組織同士の共同作戦でしばしば露出する問題、情報共有の軽視が一気に出た。

 

しかも、ジオン共和国のベテランなら、一年戦争に参加している割合いが高い。

「ガンダム」への恐怖を現実も虚構も、骨身に染みて知っている。

 

それはビームライフルが一機のハイザックを貫いたことで確定した。パニックが広がり、ハイザック隊は露骨に後退を始めた。

 

 

「いかん、あいつを仕留めないと総崩れになるぞ!」

 

 

コンラッドはなんとか肉薄しようとするがしかし、勢いを取り戻したジオン開放戦線側の射撃が移動を許さない。

 

 

「機動兵器が機動できんとは!」

 

 

完全に釘付けにされたコンラッドは歯噛みする。そのとき、モニターの片隅に専用回線の接続を要求する表示が出た。

 

その発信主は。

 

コンラッドは無言で専用回線をオンにした。

 

 

「久しぶりだなコンラッド」

 

「つい先日会ったばかりですな。いささかノイズは多かったですが。で、逃亡した司令官殿が何の御用で?」

 

 

予想通り、それは彼らの元上官、ジョン・カッシングその人であった。

 

 

「減らず口を叩く癖は相変わらずだな。しかし、もう大勢は決した。降伏しろ。俺はこの『ガンダム』を使ってネオ・ジオンで成り上がる」

 

 

カッシングのその言葉と同時に、彼の後方にある無数の隕石群が動きだした。その中心にはそれらをコントロールしているであろう、目標たる「ギガース」も含まれている。

 

 

「あんたの野心の代償がサイド3とは、随分と割に合わん話ですな。民間人を大量虐殺するということですぜ」

 

「しょせん宇宙人にすぎん愚民どもをいくら巻き込もうが、単なる数字に過ぎんさ。我々はそんな大衆よりも価値がある存在だ」

 

 

コンラッドはため息をついた。

元同僚、現上官の歪みはわかっていたつもりだが、かつての後輩がここまで思想に汚染されるのを見るのはあらゆる意味でつらい。

 

 

「まことにもって残念ですが、わたしは三年前にそういうことはやらんと決めたのです。ほかを当たってください」

 

「そうか、ならば死ね」

 

 

回線が一方的に切られた。

 

 

「トシコ、聞いていただろう。俺が殿をつとめる。お前はカイルと一緒に引け」

 

「隊長! いけません!」

 

 

トシコの悲鳴のような声が耳朶を打つが、それを聞かなかったことにして、コンラッドは向かってくる「ガンダム」と、その取り巻きを見据える。

多勢に無勢を絵に書いたような状況だが、臆することなく立ち向かおうとしたその時だった。

 

 

「そうだよたいちょー! たいちょーはひとりじゃないし『ガンダム』は相手だけのものじゃないんだから!」

 

 

戦乙女の叫びのような声とともに、放たれたビームは槍のように先頭のドムを貫通し、それを爆散させる。

 

そして、怯んだ敵モビルスーツの集団に嵐のようにマイクロミサイルの群れが襲いかかり、あっという間に半数が巻き込まれて撃破されていく。

 

その爆風に突っ込み、Gフライヤー形態の「ガンダム・レーヴァン」が文字通りの敵中突破を行い、相手をかき回しさらに混乱を撒き散らしていく。

 

 

「先輩! シャロ先輩来てくれたんっすね!」

 

 

カイルの歓喜の声が通信に響く。

 

「シャロ、シャロか! なぜここにいる!」

 

 

対象的なコンラッドの困惑したような問いに、いつも通りの勝ち気な声が返ってくる。

 

 

「あっひどーい! だいたいあたしが黙ってテロ攻撃から逃げると思ってたのたいちょー! それにね」

 

 

相手の隊列を突き抜け、巧みに隕石混じりのデブリ群を利用しつつ反転し、再度「ガンダム・レーヴァン」は、猛禽のように相手に襲いかかっていく。

 

 

「サイド3にはあたしのおばあちゃんのお墓があるんだ! それをテロリストなんかに壊させてたまるものか!」

 

 

まったく。

あいつらしい、とコンラッドは苦笑する。

 

そして、トシコは通信ログからシャルロッテの叫びを切り取り、全回線で流し、状況の激変に戸惑っているであろうジオン共和国軍に呼びかけた。

 

 

「諸君、案ずるな。我々の『ガンダム』が来た」

 

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