機動戦士ガンダム0088 ideal of Titans   作:わいるどうぃーぜる

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ようやくすべての決着がつきます。
なんとかまとめれた。


激闘(後)

その通信が流れた瞬間、ジオン共和国軍の動きが変わった。

 

 

「ガンダム……?」

「援軍がガンダム!?」

 

 

壊乱しかけていたハイザック隊の動きが明らかに変わってきた。後退をやめ、徐々に前進を始める。

 

その様子を見て、コンラッドはスロットルレバーを叩き込み、叫んだ。

 

 

「トシコ! カイル! ハイザック隊の援護に向かえ! シャロ! ここはもういい、お前は動き出した『ギガース』を狙え!」

 

「了解しました。ご武運を」

 

「わかりました!」

 

「司令塔だね、りょーかい!」

 

 

隊員たちの動きは早かった。

トシコとカイルはハイザック隊の尖峰となり、シャルロッテは実質的に宇宙戦闘機であるGフライヤーを、それと感じさせない軽やかな動きで反転させ、宙域から離れだした岩石群を追う。しかし、それを止めようとする者もいた。

 

 

「行かせるか!」

 

 

カッシングは猛攻から辛うじて無事だったガンダムマークⅣを操り、Gフライヤーの進路上にビームライフルを構える。

だが、そこに蒼い影が飛び込んできた。

 

 

「コンラッド!」

 

「ジョン!」

 

 

コンラッドのマラサイ高機動型のビームライフルが、的確にガンダムマークⅣを襲う。

しかし、その攻撃のことごとくを、マークⅣは驚異的な高機動でかわしていく。その動きに、コンラッドは驚愕した。

 

 

「シャロの動きと似ている……? いや、同じか!」

 

「ふははははは、見たかガンダムマークⅣの性能を! 貴様の部下の動きを『学習』させてもらった! そんなボロボロの機体など通用するか!」

 

 

これが機密指定になっていて読めなかったところか、とコンラッドは歯噛みする。

おそらくは次世代の学習型コンピュータなのだろう。しかし一戦闘という短期間で学習できるとは。

 

 

「この『ガンダム』さえあればどこに行こうが成り上がれる! 俺たちを利用するだけして切り捨てるような組織など頼らずともな! 俺と一緒に来い!」

 

「御免被りますな」

 

 

相手からの一撃を最小限の動きでかわしながら、コンラッドはかつての上官の誘いを再度、すげなく断った。

 

 

「何故だ! もうティターンズはおしまいだ! そうなれば、俺もお前も30バンチ虐殺の罪で軍法会議だ! 死刑だってありえる!」

 

「そのために治安維持、という筋を違えるのはわたしの流儀じゃないってだけですよ、司令殿」

 

「理解できん! 貴様も同類か! 俺を英雄とおだてあげたあげくにゴミのように捨てた奴らと! 許せん、許すものか!」

 

 

血走った目でカッシングはビームライフルのトリガーを引くが、すでにエネルギーを使い切ったそれはカチカチと虚しい音を立てるだけだった。

 

役立たずになったライフルを捨て、ビームサーベルを抜刀する。

モニターの中の傷だらけの蒼いマラサイも、それに応えるようにビームライフルを捨て、腰の後ろにマウントされていたフェダーインライフルを改装した大型ビームサーベルを抜いた。

さらにマラサイは、腰からも抜刀し、二刀の構えを取る。

 

 

「ならば、俺の野望の礎となれ、コンラッド・イステル!」

 

「お前を止めてみせる、ジョン・カッシング!」

 

 

双方の機体が交差し、ビームサーベル同士が打ち合う磁場は機体を歪ませて見せた。

 

加速して突っ込んできたマラサイの大型ビームサーベルが振り下ろされるが、リミッターを外されたガンダムマークⅣのビームサーベルはそれを受け止める。そこに左のビームサーベルが打ちかかるが、間一髪マークⅣは避け、両者は間合いを取った。

 

 

「ククク、さあ来いコンラッド。貴様のデータもほぼ集積されている……」

 

 

モニターの片隅に映し出される分析率を見ながら、カッシングはつぶやいた。

完全に学習してしまえば、機体の性能差で押し切れる。

 

相対するマラサイは半身の構えを取り、右手に持つ大型ビームサーベルを突き出した。出力が上げられさらに刀身が伸びる。

そのまま、スラスターを噴射し、マークⅣ目がけて突進してくる。

 

 

「バカめ、破れかぶれか!」

 

 

単純な突進ならかわしてしまえば、なんの脅威でもない。彼は勝利を確信した。

 

そして、一直線に突っ込んでくるマラサイをやすやすとかわしたその時、マラサイの左手がしなるように突き出された。

 

そこから伸びる何かは、蛇のようにマークⅣに食いつく。そして。

 

 

「ぐあああああああああああ!」

 

 

機体に高圧電流が流しこまれ、すべての機能が停止する。操縦の自由を失った機体は引き寄せられ。

 

 

何故だ。

 

 

それが、ジョン・カッシングの最後の思考だった。

 

 

大型ビームサーベルが、ガンダムマークⅣの胴を文字通り真っ二つにする。

 

ちら、ちら、と火花が散ったかと思うと、推進剤に着火、大爆発した。

 

それを背に、コンラッドはゆっくりとビームサーベルを腰にしまった。

 

 

「『モビルスーツの性能の差が、戦力の決定的な差ではないことを教えてやる』か……」

 

 

コンラッドは、一年戦争でもっとも有名であろう、エースパイロットの言葉をつぶやいた。

 

あえて右手の大型ビームサーベルに注目させ、その間に左手のビームサーベルを左腰につけていた「海ヘビ」とあだ名される行動阻害武器に持ち替える。

 

単純なトリックだが、初見殺しと言っていいやり方ゆえにAIでの判定も難しい。そこにコンラッドは賭けたのだ。

 

 

「これくらい、いまのモビルスーツはやれるようになってるのさ、ジョン。さらばだ」

 

 

かつての戦友に、黙礼をする。

そこに仲間たちが集まってくる。

 

 

「すごいっすよ隊長! ガンダムを倒しちゃうなんて!」

 

「残党はほぼ掃討できました。裏切り者の粛清、お見事です」

 

「まあ、なんとかなったな。あとはシャロがうまくやってくれたら上首尾なんだが」

 

 

その頃。

 

 

「んもー、しつこい!」

 

 

機体を縦横に振りながら、シャルロッテは後ろを振り返る。

背後からはどこか蟹にも似た可変型モビルスーツが三機、編隊を組んで追いかけてくる。

 

 

「アクシズの新型かぁ。この子に追いつけるとは速いなぁ!」

 

 

側面モニターに投影された機体解析では「ガザC UNKNOWN」と出ている。

叩きつけられる殺気と、それに連なるビームを巧みに避けながらシャルロッテはぼやいた。

 

 

「遊んでる暇はないから、ちょっと無茶をするよ、ガンダム!」

 

 

その言葉とともに、操縦の一部をマニュアルに切り替えた。そしてあえて直線に「ギガース」への進路を取る。

それを察知したガザCの編隊は、ガンダム・レーヴァンの真後ろにつく機動を取った。そして、彼らが射点につこうとしたそのとき。

 

 

「びっくりしちゃえ!」

 

 

Gフライヤーの中に抱え込まれたガンダムが、足を突き出すようにして逆噴射をかけると、機体がコブラが鎌首をもたげるような機動とともに急減速した。

 

旧世紀のジェット戦闘機の機動、「プガチョフ・コブラ」を思わせる機動に、シャルロッテの体には数倍のGがかかる。

対Gスーツも兼ねたノーマルスーツによって締めあげられるが、シャルロッテは歯を食いしばって耐える。

 

 

「こ、の、こうだ!」

 

 

かすむ視界の中、追跡対象が急減速することによりオーバーシュートして、逆に背面を晒すことになったガザCを素早くロックオンする。

抱えられていたガンダムはそのままビームライフルをかまえ、あっという間にガザCを撃墜していく。

 

 

「よし! それじゃいくよ!」

 

 

その勢いのまま、シャルロッテは衛星ミサイルが密集している宙域に侵入した。すると、残党軍によって衛星上に設けられたのであろう、対空レーザーが一斉に火を吹いた。

 

 

「見た目は派手だけど!」

 

 

しかし、ろくに統一指揮ができないのか、その火箭はまったく漆黒の機体を捉えきれない。

 

 

「ちょい、ちょいと……、軸線乗った! いっけー!」

 

 

「ギガース」の正面に設けられた指揮所を照準に捕らえ、シャルロッテはトリガーを引き絞った。機体側面に取り付けられたロングビームライフルが閃光を吐き出し、ビームが指揮所に放たれ、

 

届く前に霧散した。

 

 

「ビーム撹乱膜!? そんなものまで!」

 

 

シャルロッテはモニターに出た分析結果を確認し、思わずうめく。しかし、まだ彼女は諦めない。

 

 

「ごめんなさい、約束破ります伯父様!」

 

 

即座にコンソールを操作し、コマンドを打ち込んでから非常用レバーを出し、それを思いっきり引く。

 

 

「この機体、無傷で持って帰れない!」

 

 

勢いを落とさぬままガンダムから切り離されたフライヤーは、即座に戦闘機のかたちに変形し、指揮所に突っ込んでいく。

 

漆黒の色のそれは、獲物を襲う烏のごとく指揮所に突入し、大爆発を起こした。

 

それでも、隕石衝突を想定して作られた指令所は耐えていた。

しかし、大気のない宇宙空間であろうとも、ビームライフルで狙撃できるほどの穴をビーム撹乱膜に開けるには十分だった。

 

 

「今度こそ、いっけええええええ!」

 

 

そして、「ガンダム」から放たれたビームの一撃は、巨大な敵を正確に撃った。

 

 

残敵掃討をしながら、第31任務部隊とジオン共和国軍はいまだ進む隕石群にようやく追いついた。

 

その時、一定の速度で進んでいた隕石群の隊列が乱れ、あちこちで衝突が起こりだす。

 

 

「これは……!?」

 

「中心部からの誘導電波の途絶を確認。うちの放蕩娘が成功したようです」

 

「さっすがシャロ先輩だ!」

 

ほどなくして、一機のモビルスーツが向かってきた。そして元気な声もまた聞こえてくる。

 

 

「みんな、おまたせだよ!」

 

 

その、「ガンダム」を見たハイザック隊から歓声があがる。

 

 

「ガンダム!」

 

「ガンダムだ!」

 

 

無線に響く声に、コンラッドは苦笑しながら言った。

 

 

「さあ、みんな帰るぞ。このままだとシャロが踊りだしかねん。いくぞ、『ドーバー』へ!」

 

 

そして、彼らは母艦への会合予定ポイントへと向かっていった。

 

 

 

時に、0088.2月5日。

第31任務部隊は作戦完了せり。




ようやくエピソード終了。
あとはエピローグに続きます。
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