機動戦士ガンダム0088 ideal of Titans   作:わいるどうぃーぜる

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字数はやや少ないですが切りがいいので投稿です。
今回は説明回。


雲中

「コンラッド大尉、トシコ中尉、入ります」

 

戦闘から2時間後。

「ドーバー」の艦橋にその巨体が現れると、一段高く設置された艦長席に座るやせぎすな人物は振り向いた。

 

 

「ご苦労だった。何か収穫はあったかね」

 

 

穏やかに「ドーバー」艦長サウス・レストン中佐は尋ねた。年の頃は50に近いだろうか。年相応に落ち着いた雰囲気を持つその姿は、戦闘艦の艦長というより船乗り、という印象を周囲に与えている。

 

 

「少なくともペズンの方に遅れを納得させる程度には。アナハイム・エレクトロニクス社の社員証をつけた遺体から、携帯用メモリを回収しました。ただ、シャトルの機体ログは、テロリストが設置した爆発物により、シャトルが自爆するまでにすべては吸い出しきれませんでした」

 

 

説明とともにトシコが差し出したタブレット端末からのデータを、サウス艦長は自身のコンソールに転送し、ざっと目を通していく。

 

 

「ミノフスキー粒子まで散布されていたとは。救難信号が不自然に途切れたのもそのせいか。回収したメモリの方はどうなっている?」

 

「ただいま解析を進めておりますが、強度の高い暗号でプロテクトされているので少々時間はかかります」

 

「解析を急いでくれたまえ。本艦の機関故障にこの案件で、ペズンへの到着が予定よりいささかに遅れてしまったのは事実だからな。正直、このフネもドックに入れて重整備をしたいところだが、エゥーゴに加え、戻ってきたアクシズ連中の跳梁が激しい。なかなかそうもいかん」

 

 

トシコの説明を聞き終え、憂いを浮かべたサウス艦長の姿は、いまのティターンズの状況を端的に表していると言ってよかった。

昨年11月半ばに、議会を占拠するかたちで行われたジオン・ダイクンの遺児、シャア・アズナブルによるダカールでの演説以来、ティターンズの立場は悪くなるばかりだ。

 

しかも、演説に呼応するようにジオン残党やそれを名乗る宙賊がはびこりだした。

そのため、末端のティターンズ部隊はまずは目の前の脅威に対処するしかなかった。

 

この「第31任務部隊」も例外ではなく、駐屯先のサイド3周辺の宙域を昨年末から不休で哨戒、臨検を行っていた。

 

今回のペズンへの「アグレッサー用機材」の輸送はそんな中、貴重な休息といっていい任務だったのだが。

 

 

「まあ、少々の遅れならペズンのブレイブ・コッドもうるさくは言わんでしょう。そこらへんはあいつは融通が効く。むしろ融通がきかんのは……」

 

「申し訳ありません艦長、大尉。その、『融通が効かない方』からの通信です」

 

 

オペレーターからのすまなそうな声にコンラッドは露骨に顔をしかめる。回れ右して逃げ出そうとするが、トシコに文字通り首根っこを捕まえられた。

 

 

「隊長は隊長らしく振る舞ってください。それも給料のうちです」

 

 

観念したかのように直立不動の姿勢をコンラッドはとる。やがてモニターにノイズ混じりながら、一人の人物が浮かび上がる。不機嫌さを丸出しにしたその顔は三十歳前半だろうか、表情からは奇妙なほど余裕のない印象を与える。

 

 

「君たちは何をやっているのだね」

 

 

初っ端からこれだ。コンラッドは早くもうんざりした気分になった。

 

 

「はっ、カッシング大佐。すでに一報はしましたが、本日13:28に救難信号を受信したため、その地点にモビルスーツ隊を急行させ、シャトルを破壊しようとしていたジオン残党らしきザクⅡ2機を発見したのでこれを……」

 

「そんなことはどうでもいい! 貴様らは重要機材を運搬しているという自覚があるのか! 反政府軍が大手を振るい、地球連邦軍の存亡がかかっているこの時勢において、ここまで遅れるとは何事か! そもそも……」

 

 

父親並みに歳が離れている部下を叱責する、妙にノイズが入るモニターの顔を見上げながら、コンラッドは心のなかでつぶやいた。

 

 

本当に、変わっちまったな。英雄よ。

 

 

「コンラッド大尉」

 

「イエッサー」

 

 

コンラッドの思いを嗅ぎ取ったのか、この部隊、第31任務部隊の指揮官であるジョン・カッシング大佐は今度は彼に矛先を向ける。

 

「貴様も貴様だ! わたしが骨を折って調達してきた新型機を受領しておいていい気なものだな!」

 

 

新型機ねえ。マラサイをアップデートした程度のもので恩を売られては正直かなわんな。あれはあれでいい機体だが。

 

 

「とにかく、だ! これ以上予定から遅れることは許さん。機材を届けたらすぐにサイド3駐屯地に戻れ! それと、一時間以内にこれからのペズンへの航路と航路ポイントへの到着時間を提出するように! いいか、繰り返すがここからは遅れることは許さんからな!」

 

 

まさしく、言いたいことだけをぶちまけてから通信は切れ、ブリッジは沈黙に包まれる。それを打ち破るように、艦長が厳とした声で命令した。

 

 

「聞いてのとおりだ、スミス君。航路予定図を至急作成したまえ」

 

 

慌てて航海士が航路をチェックし、到着予定時刻を算出していく。それを横目に、コンラッドは重い口を開いた。

 

 

「申し訳ありません、艦長。わたしがあくまでも救助を主張したから」

 

「イステル君、気にする必要はない。救助に向かうと最終的に決断をしたのは私だ」

 

 

制帽をかぶり直し、サウス艦長は言葉をつなげる。

 

 

「それに、海で救助要請を無視するものは船乗りではない。そうは思わないかね?」

 

 

コンラッドは無言で敬礼を返した。

 

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