Unknown Wizard Chronicle 作:シノギ
とある事情によりオリジナル回かつ、
前話の後日談を投稿します。
なお、前話の本編をノベライズしたものと
シナリオが異なる部分もありますが、
そこはバタフライエフェクトということで
ご了承ください
サーニャの歌を模倣した
謎のネウロイとの戦いから一夜明けた今日、
つまりは8月19日の昼間。
ミーナの執務室に珍しい人物が訪れていた……
「え?ノアール君の誕生日?」
「中佐なら、ノアールの
プロフィールくらい知ってると思っテ……」
執務用の机に両手を置いて身を乗り出し、
ミーナに顔を近づけていたのは
昨夜の戦闘の立役者の一人である
エイラだった。
「でも、どうして急に?それに今日は
宮藤さんとサーニャさんの
誕生日パーティーもあるし……」
「それはもちろん!……でもサ……」
エイラは申し訳なさそうな顔をして話し出す。
「昨夜、宮藤の誕生日を聞いた時……
私、ノアールに誕生日はいつなんだ?
って聞いたんダ。……でもアイツ、
結局教えてくれなくてサ…」
「そうだったの……」
「アイツ、家族とかそういう類の話って、
記憶が無いから結構デリケートだロ?
なのに私ら、専従班で組んでから
家族に関する話ばっかりしてタ……。
私もサーニャも宮藤も、
別に悪気があってそんな話をしてたわけじゃ
無かったんダ……。
けど……アイツにとったら、
拷問みたいな時間だったんだろうナァって……
心なしか、任務中のアイツ、
元気がなかった気がするシ……」
「……それで、ノアール君の誕生日を
祝ってあげたいってこと?」
「そうなんダ!記憶が無いってことは、
誕生日を祝ってくれた記憶もないってことだロ!?
そんなの悲しいじゃないカ!!」
いつになく感情的に捲し立てるエイラに、
彼女でさえもこんな風になれるほど
ノアールはこの部隊に
家族として認められていると実感したミーナ。
「そうね……エイラさんが見た
ノアール君の態度から察するなら、
きっとその予想は当たっているかもしれないわね…」
「中佐!」
「ちょっと待って、たしかここに……」
ミーナは机の引き出しを探る。
しばらくすると、とある封筒を取り出した。
中に入っていた書類を取り出し、目を通す。
「ええと……彼の誕生日は……7月の21日ね……」
「え゛っ!!……
ってことはもう過ぎてるのカ……」
既にノアールの誕生日が過ぎていた事実に
崩れ落ちるエイラ。
「ま、まあ中途半端なズレじゃないだけ
マシだと思うわ!今日は19日で、彼は21日じゃない!
1か月遅れの誕生日パーティーってことにすれば!」
「そ、そうだよナ!っていうか
そうでも思わないとやってられないよナ!」
ミーナのフォローにエイラが勢いよく顔を上げる。
彼の誕生日を祝うのに必死なためか、
マイペースな彼女とは思えない妙なテンションである。
「よーっし!早速準備ダッ!!」
「待ってエイラさん!もちろん私も協力するけど、
具体的な案はあるのかしら?
みんな、宮藤さんとサーニャさんの
誕生日パーティーの準備で持ちきりでしょうし……
主役の二人に手伝わせるのは忍びないし……
プレゼントを用意するにしても、もうお昼過ぎだし……」
「うっ……ソッカ……
さすがに私らだけじゃ、人数が――――」
「話は聞かせてもらったぁー!!」
その時、執務室のドアが勢いよく開く。
「誕生日パーティーの拡大化ぁ?
なら喜んで協力するZE!」
「それがあのノアールも
巻き込んでなら、尚のこと!!」
「このグラマラス・シャーリーとぉ!」
「セクシーギャル・ハルトマンにぃ!」
「「お任せあれぇ!!」」
「「……」」
突然現れて目の前で決めポーズをする二人、
シャーリーとエーリカに呆然とするエイラとミーナ。
「お前ら、いつから聞いてたんダ?」
「いやいや、いつになく切羽詰まった表情で
ミーナのところに駆け込んでたもんだからさ?」
「何かあったんじゃって
気になるもんじゃねぇか♪」
「はぁ……普段なら盗み聞きに関して
説教したいところだけど……
協力者が多いに越したことはないわ……
エーリカ、シャーリーさん、
貴女たちもノアール君の誕生日、
手伝ってもらうわよ…」
「「りょうか~い♪」」
二人の内、
普段から自堕落な面しか見せないエーリカの
やる気満々な態度を見てミーナは呆れかえる。
そこから四人による、
宮藤とサーニャ…そしてサプライズとして
一か月遅れのノアールの
誕生日パーティー計画が始動した。
明確に姉認定されているルッキーニや
バルクホルンも加えた方がいい
という案も上がったが、
ルッキーニに機密保持能力は
言わずもがなということと、
身内に対してはめっぽう弱いバルクホルンでは
ボロが出る可能性が
捨てきれないということで却下となった。
だがある意味、
この四人がノアールのために
ここまで力を入れるのは当然の結果かもしれない。
立案者であるエイラはついこの前から
ノアールと交流する機会が増えたとはいえ、
サーニャと同じく、家族と離れ離れになっているという
立場が同じ彼の細かな態度から
今度の計画を立ち上げるに至った。
ミーナは部隊長という立場も考慮してとはいえ、
この部隊に来てからの彼を逐一見守ってきた。
ウィッチたちとより一層
交流するきっかけになったあの事件からは特に。
そんな彼女がこの計画に参加しない理由はない。
エーリカとシャーリーはそれぞれの相方が
彼の姉になったということもあり、
任務以外の交流も必然的に増え、
他のウィッチたちと比べれば幾分か友好度は高い。
さらに付け加えるなら、
誕生日パーティーという楽しい行事に
そういった物に疎い彼を巻き込んだら
どんな反応を見せてくれるのか、
という好奇心があるのは否めない。
◇◇◇
そして時は経ち、夕食時――――
「芳佳ちゃん!」
「サーニャ!」
「「「「「「誕生日おめでとー!!」」」」」」
リーネとエイラが先導し、
そこから全員によるおめでとうの声。
祝辞と拍手を受けている主役の二人は
照れくさそうに笑っていた。
「皆さん、ありがとうございます♪」
「…あ、ありがとうございます////」
二人の内、サーニャはこういった雰囲気に
慣れていないため縮こまる。
「よもや夜間専従班に選ばれた二人が
同じ誕生日だったとはな…」
「ええ。同じ出身同士ならまだしも、
違う出身同士が同じなんて…
こんな偶然、ほとんど無いんじゃないかしら?」
拍手が収まったタイミングで、坂本とミーナが
今度の主役二人の意外な共通点に驚きを見せる。
「えへへ……でも、偶然でも嬉しいです♪
こうしてサーニャちゃんと仲良くなる
きっかけになったんですから。
ねっ?サーニャちゃん!」
「っ……うん」
宮藤に尋ねられ、
サーニャは控えめに…だが嬉しそうに頷く。
和やかな雰囲気を醸し出す主役二人。
その内の一人である宮藤の肩に手が置かれる。
「宮藤、今回はお前とサーニャと
ノ……ッ…が主役だから仕方ないけどナ……
サーニャの一番近くに居るのは私だからナ!?」
「え、えぇぇ~~……
エイラさん、なんで怒ってるんですか?」
「怒ってなイ……!我慢してるだけダ……!」
「それ、意味一緒ですよ……」
エイラからの理不尽な嫉妬の小言を言われ、
タジタジになる宮藤。
サーニャやその手の話に疎い人からは
彼女の小言の真意を見極めることはできないが、
察しのいい人からはやれやれ
といった目線が送られていた。
「ねぇねぇ早く食べようよ!
あたしケーキ食べたぁい!」
祝辞が終わるまでお預けされていたルッキーニは
すぐにでもその場に用意されていた料理を
食べ尽くさんという勢いで手を伸ばす。
すると――――
「ルッキーニストォーップ!!」
突然の制止の声にルッキーニは一瞬固まり、
その隙を見てシャーリーが彼女の肩を持って
料理が置かれている机から離す。
「ハルトマン?突然どうしたんだ?」
制止の声を上げたのはエーリカだった。
その突然の行動にバルクホルンは首を傾げる。
基本的にこういう催しものには先んじる彼女が
同じ部類であるルッキーニを
呼び止めているのに疑問を持ったからだ。
「んんぅシャーリー!
もうおめでとう言ってあげたんだから、
食べて良いでしょ~?」
「まあ待てよルッキーニ。それからバルクホルンも」
「なっ!何故そこで私が呼ばれるんだ!?」
拘束から逃れようとするルッキーニを
落ち着かせるシャーリーが
まるでルッキーニと同じ扱いをすることに
バルクホルンは若干憤る。
「落ち着けよ。言ってなかったとはいえ、
二人が忘れちゃならないイベントが
まだ残ってるからな」
「私たち二人が?」
「忘れちゃいけないこと?」
バルクホルンとルッキーニが互いを見合うが、
見当がつかず互いに首を傾げる。
「ほらほら!こっちこっち!」
『え、エーリカさん何を?』
その時、エーリカが
ウィッチ達の後ろの方に立っていた
ノアールの手を引いてやってくる。
「ノアール?」
「ハルトマン、
何故ノアールの手を引いて?」
戸惑っている二人の前を通り過ぎたエーリカは
ノアールの手を引いたまま全員の正面――――
宮藤とサーニャの立っている場所の
真ん中まで彼を連れてきた。
「はい!じゃあミーナ、発表して!」
お役目終了といった様子で
ノアールの元から離れたエーリカは
ミーナにバトンタッチの旨を伝え、
全員の視線を彼女へと向ける。
「え~……今度の主役の宮藤さんや
サーニャさんにも黙っていたんだけど、
まあ…私たちと彼の交流が
あの頃はまだそこまでじゃなかった
っていうこともあったから
仕方がなかったんだけど――――」
「ノアール君、一か月遅れだけど……
誕生日おめでとう♪」
ミーナの、全員予想外の発表に
一斉に視線がノアールへと向かう。
注目されているノアールはというと――――
『誕…生日……ああ……え?……どうして?』
混乱した表情で全員を見渡していた。
彼自身、今日は宮藤とサーニャの
誕生日パーティーだという認識しか無かったため、
まさか自分までその対象になっているとは
思ってもみなかったのである。
一般的なサプライズとしては成功と言えるが、
彼の場合は意味合いが少し異なってくる――――
なにしろ、自分の誕生日を忘れているどころか…
自分の誕生日が祝われると
思っていなかったからである……
いつまで経っても混乱した表情のままなのは
その表れだろう……
「ノアール誕生日だったの!?」
「ミーナ!一か月遅れって……
どうして私達にも言ってくれなかったんだ!?」
サプライズなのは彼女たち――――
ノアールの姉になった二人も同じだった。
彼がすでに誕生日を迎えたにもかかわらず
一か月も過ぎていたことにショックを受け、
なぜ自分たちにも言ってくれなかったのかと尋ねる。
「仕方がなかったのよ。
後で詳しく調べたら、彼の誕生日の7月21日は…
彼がこの部隊に来た次の日だったんだから…」
「「あ……」」
501部隊に来て次の日、
と聞いて二人は納得してしまう。
その頃はまだ、彼は部隊の誰とも
親しくなっているわけではなかった上に、
自分たちの弟ですらなかった。
そんな時に彼の誕生日を知る機会など
訪れるはずもなかった。
「だが……
今日こうして一緒に祝うなら言ってくれれば……」
「お前宮藤とサーニャの誕生日パーティーの
準備でさえ焦ってたって聞いたぞ?
そんな調子でノアールの誕生日まで祝う
なんて聞いてたら、何かしらミスる上に、
ノアールにカミングアウトするかも
ってことで言わなかったんだ」
「り、リベリアン貴様!!」
「そーだよねー……
慣れない料理ってのもそうだけど、
卵割ろうとする瞬間に粉砕しちゃったり……
それ以外じゃジャガイモ剥きすぎて
ジャガイモメインのサラダにしちゃうし……」
「ハルトマン……ソレは言うなと……////」
シャーリーの指摘に反論しようとする
バルクホルンにエーリカの援護が加わり
撃沈する。
「ごめんねノアール。
あたしノアールのお姉ちゃんなのに、
誕生日のこと忘れちゃって……」
「………私からもすまないノアール。
事情が事情とはいえ、
お前に関してのことを聞く機会は
いくらでもあったのに……
今日まで疎かにしてしまっていた……」
ルッキーニとバルクホルンは
姉として弟の誕生日を
把握していなかったことを謝罪する。
だが、ノアールは――――
『あの……今日って宮藤さんとサーニャさんの
誕生日パーティーですよ?』
未だに戸惑った顔をして、
今日が二人の誕生日だと指摘していた。
「あ……そうなんだけど、ノアール君も一緒に…」
『別段、誕生日が祝われないと
歳を取れないというわけでもありませんし…』
「そ、そりゃそうだけどさ…?」
『今日はお二人が主役なんです。
自分まで無理に祝っていただかなくても…』
「でもさ、もう言っちゃったしこのまま……」
『皆さんが戸惑ってますよ……
ご迷惑をかけてまで
自分は祝ってもらわなくても――――』
「いい加減にしろよお前ッ!!」
突然の怒号。
静寂を作り出したその声の主に全員が目を向ける。
「え、エイラ……?」
サーニャが恐る恐る呼んだ彼女は、
俯きながら肩を震わせていた。
「無理にってなんだヨ……迷惑ってなんだヨ……
私が良かれと思って企画した
お前の誕生日パーティーが、
そんなにイヤだっていうのカ…?」
『そ、そういうわけでは……』
「だったらどうして
素直に受け取らないんだヨ……」
『それは……そもそも今日は
お二人の誕生日パーティーですから……』
「一人増えたくらいどうとでもなるんだヨ!
シャーリー大尉だって、
ハルトマン中尉だって頑張ってたシ……」
エイラの言葉に、
ルッキーニはシャーリーがパーティーの準備の傍らで
別の作業をしていた姿を……
バルクホルンは
エーリカがいつになく真剣な表情で
準備を手伝っていたことを思い出す。
「二人のパーティーの準備があったかラ、
今更お前の分も加えてくれって言う暇もなかっタ!
だけど皆、もし知ってたとしても
お前を祝うために頑張ってたハズダ!
なのにどうしてお前は
そんなにも遠慮してるんだヨ!!」
『そ、それは………』
視線を逸らすノアール。
ミーナはあの病室での一件の時の
彼の態度に似ていると感じ、
エイラが憤りの余り、
以前のようなことを起こすのではと危機感を感じていた。
あの時と比べれば、
彼と全員との絆は深まっているはず…
だからもうあの時のようなことは
起こらないと信じてはいるが、
それでもミーナは心配だった。
全員が見ている前で、
エイラはノアールに詰め寄り両肩に手を置く。
「祝ってもらった記憶が無いから、
本当の家族に顔向けできないとか、
考えてるんだロ!?」
『ッ!』
「そんな自分に祝ってもらう資格なんか無いとか、
考えてるんだロ!?」
『ッ!!』
「本当の家族とか、
新しくできた家族とか関係ないだロ!?
私らはお前を祝いたイ!
忘れてる記憶なんかに負けないくらい
おめでとうって言いたイ!!
お前の本当の家族だってお前が忘れてても
そう思うはずダ!!だからお前は!!
ただ一言だけ……“ありがとう”って
言ってくれるだけで……
いいんだヨ………バカァ……」
顔を上げたエイラの目尻には涙が浮かんでいた。
そしてそのままノアールの胸に
縋るように顔を埋める。
「そうだね……」
その時、
ノアールの横に立っていた宮藤が頷いた。
「私とサーニャちゃんは
今度のパーティーの主役だからって、
何もできなくてちょっと寂しかったけど……」
「うん。私達にも
出来ることがあったって安心したね♪」
『宮藤さん?サーニャさん?』
サーニャも宮藤に賛同するように頷き、
ノアールに笑顔を向ける。
そして――――
「「お誕生日おめでとう、ノアール(くん)!」」
宮藤とサーニャは、
おめでとうの言葉を送った。
すると彼女たちを見ていた方からも――――
「おめでとう、ノアール!」
「おめでとう!」
「おめでとう、ノアールくん♪」
「おめでとー♪」
「おめでとうございますわ、ノアールさん」
「おめでとな!」
「おめでとうノアール…!」
「ノアール!おめでとうっ!!」
坂本が、ミーナが、リーネが、エーリカが、
ペリーヌが、シャーリーが、
バルクホルンが、ルッキーニも
おめでとうの言葉を送る。
そして、ノアールの胸に顔を埋めていた彼女も――――
「お、おめでとナ……ノアール……////」
涙は拭えたものの、
今度は気恥ずかしさから顔を赤くしたエイラからも
おめでとうの言葉を送られた。
以前よりも親愛の籠った眼差しと
お祝いの言葉を送られて、
戸惑うばかりだった彼の心と表情は――――
『………どうして………嬉しい……はずなのに……』
喜びの気持ちとは裏腹に――――
『涙しか……出てこない……
笑えない……っどうして……
どうして、自分はこんなッ……!!』
その気持ちを表す術が涙しかない、
不甲斐ない自分への悔しさに顔を歪ませていた。
宮藤とサーニャ、そしてサプライズとして
ノアールの誕生日パーティーは
改めて盛大に行われた。
ケーキを切り分ける前に
記念撮影をしようということで、
撮影者がミーナ、主役の年齢層的に
自分は遠慮すると言った坂本を除いた
メンバーで撮ることとなった。
ケーキを持つノアールが真ん中、
その右に宮藤、左にサーニャ、
三人を中心に各々が自由に立つ形になった。
その際、ノアールのすぐ後ろに
バルクホルンが立てるようにエーリカが、
背丈的に写れないルッキーニを抱えて
ノアールの後ろに来るよう
シャーリーが気を使ったのは言うまでもない。
いつもより豪勢な料理の数々が並んでいるため、
こういった催し物が大好きな
シャーリーやルッキーニ、エーリカが
調子に乗り、バルクホルンやミーナの
お叱りを受けたりなどもあった。
「そうそう、ノアール君」
『はい?』
パーティーも終盤といったところで、
ミーナがノアールを呼び止める。
「私とエイラさん、
エーリカとシャーリーさんとで
貴方のパーソナルマークを考えたんだけど…」
『パーソナル…マーク…?』
ソレは各統合戦闘航空団で活躍する
ウィッチたちのトレードマークのようなもので、
彼女たちが契約している使い魔の意匠が
そのマークの中に組み込まれていることが特徴である。
「ノアールはさ、使い魔と契約してないんだろ?
魔法力を使う時のあたしらみたいに
耳も尻尾も出ないし…」
『はい。ウィッチとウィザードの違い……
だと自分は考えていますが、
取り立てて魔法力の行使に支障はありませんでしたし、
気にしたことは……』
「ん~~…でもさ、ノアールは空を飛べる上に
魔法力そのものを武器にして
攻撃したり防御したりするでしょ?
だったら結構魔力のコントロールが複雑に
なると思うし、使い魔無しで
そんなことできるのかなぁ…?」
先のミーナの一声で、
全員がノアールに集中していたため、
シャーリーやエーリカの言う
彼の特異性の話も必然的に聞こえる。
改めて指摘された彼の特異性を
心の中で反復している彼女たちの眼は
自然と懐疑的なものになっていく。
「もう!そんなのどうだっていいじゃん!!」
そんな空気を打破したのは、
ノアールの一番の姉になったルッキーニだった。
『フラン姉さん…』
「あたし達と違っても関係ないよ!
ね?バルクホルン!」
「そうだな…」
居心地が悪そうな顔をしていたノアールの
手を取ったルッキーニと、
それに便乗する形でノアールの
頭を撫でるバルクホルン。
『トゥルーデ姉さん…』
「私たちウィッチとの細かな違いなど、
お前が共に戦ってくれる仲間であり、
家族であることと比べれば些末なことだ」
二人の言葉に張りつめていた空気が緩和していった。
「あ~…ワリィな。マークを考えるにあたって
ノアールの使い魔がいないって話になった時のこと
蒸し返しちまって……」
「おかげで盛り上がりムードが台無しだよ~…」
「他人事みたいに言うなハルトマン!」
バツが悪そうな顔で謝罪するシャーリーに
文句を言うエーリカと、
それに突っ込むバルクホルンのやり取りに
少しばかりの笑いが起きる。
空気の一新のためにミーナが咳払いをする。
「でね?そのデザインを私たちが持っている
パーソナルマークを宣伝のために
グッズ化している業者に同じように頼んでるのよ」
「これがそのデザインさ!」
シャーリーが持ってきたスケッチブックを
ノアールや全員に見えるように開く。
『これは……星と五本の箒?』
描かれていたのは、基本的な星を表す五芒星と、
その真ん中から持ち手の先を重ねるよう
五本並べられた箒が伸びている、といったデザイン。
星を横にすれば空を流れるように、
頂点にすれば天へと上るような様相になる。
さしずめそれは、
箒が描かれていることも総じて“ほうき星”を
表すようなパーソナルマークだった。
『どうして、星と箒なんでしょうか?』
使い魔がいない以上、
マークの中に動物の意匠が無いことは理解できるが、
何故このチョイスなのかという疑問から
ノアールは尋ねる。
「この501部隊のパーソナルマークは知ってるわよね?」
『はい。501部隊の名と空と雲をバックにして、
五本の箒で星を作っているマークですよね?』
「そうそう。んで、お前が飛ぶ時の体勢と、
魔法力の光を伴って飛んでいく
様子を見て、流星みたいって発想になって…」
「流星と見た目が一緒で、
箒って名前も入ってるから
星と箒を組み合わせたマークにしよう
って言ったんだよねぇ~」
「「「エイラ(さん)が!」」」
ミーナとシャーリー、エーリカが
このマークに決定した経緯を説明し、
最後にその発案者がエイラであることを暴露した。
「ちょ!!中佐!大尉!
中尉も、それは言うナってあれほどォ!!////」
念を押していたにもかかわらず
結局暴露されてしまったことに
エイラは顔を赤くする。
『エイラさんが…考えてくれたんですか?』
「っ……そ、そうだヨ……////」
観念したようにエイラは眼を逸らして渋々と話し出す。
「皆で考えてる時ニ、
“流星でいいんじゃないか”って言われたけド…
私らウィッチと繋がりのある
箒を取り入れたいからっテ……
ほうき星にしたんダ……////」
『あっ……』
「星がお前で…箒は私らをイメージしたんダ……
だかラ……私らとお前が繋がってルって
意味も込め――――
てぅぇぇぇぇぇえええ!!!?」
突然素っ頓狂な声を上げるエイラ。
というのも――――
『っ……すいません……
嬉しくって……っ……また……』
見ると、ノアールが再び嬉しさのあまり
泣き出していたからである。
「イチイチ泣くなヨ~……
これじゃ私が泣かしたみたいじゃないカぁ…」
『すいません……っ……
ありがとう、ございます……』
「っ……もう泣き止めヨ、も~……」
慰めにエイラはノアールの頭を撫でる。
そんな様子を見ていたサーニャが一言――――
「エイラ、まるでノアールのお姉さんみたいね♪」
と、呟いた。
一同一斉に思った“あれ?これデジャヴ?”と……
「な、なに言ってんだよサーニャ!!
私は別にそんなつもりデ……!」
「いいんじゃないか♪
頭撫でてるその姿、様になってるぜ♪」
「大尉まで何言ってんだヨ!」
ニヤニヤした顔で囃し立てるシャーリーに
抗議するエイラ。
「そうね。ノアール君と私たちの繋がりの証として
このマークがいいって、
なにがなんでも押し通してたあの気迫は、
ノアール君のことを
大事に想ってるからこそできることだと思うわ♪」
「中佐まデ!!?」
「もういいじゃん、
今更二人三人増えようがさぁ?」
「わ、私姉ちゃんはいるけど…
弟どころか妹もいたことないんだゾ!!?」
尚も抵抗するエイラの両肩に
それぞれ別の手が乗せられる。
「なっちゃいなよエイラ!
お姉ちゃんになるのって、すっごく嬉しいんだよ♪」
「お前もこれを機に、
お前の姉の気持ちを感じてみるといい。
それに、家族としてのつながりを重要視してコレを、
そして今回のパーティーを提案したのはお前だ。
その資格は十分にある!」
「うっ……」
ルッキーニとバルクホルンという
ノアールの姉二人からも勧められ、
とうとう言葉が出なくなるエイラ。
ほんの少しの罪悪感から始まった今度の計画は、
彼女の思いもよらない一人歩きをし、
予想だにしない形で自分に返ってきた。
そして、無意識に撫で続けていた
ノアールの方を見る。
なんの含みもない、純粋な涙目の上目遣いで
エイラを見る彼は一言――――
『エイラ……姉さん?』
と呟いた。
「ッ…~~~~~ッッ……わ……」
『わ?』
「私をそんな目で呼ぶナぁぁぁぁ~~~~~!!!」
エイラのやけくそ交じりの怒号が基地中に広がった。
こうしてノアールの姉がもう一人増えることとなり、
エイラには弟が出来ることとなった……
◇◇◇
後日、宮藤の父――――
宮藤一郎の墓石のある岬に、
坂本とミーナの姿があった。
坂本の恩人であった宮藤博士の墓参りとして報告を、
そして供え物として花束と
先日の誕生日パーティーで撮った写真を
持ってやってきたのだ。
「今回のネウロイは、
明らかにサーニャに拘っていた……
行動を真似してまで……」
「ネウロイに対しての認識を
改める必要があるのは確かなようね……」
花束と写真を供えて一度離れた二人は、
この場だからこそ話せる密談を交わす。
内容はもちろん、先日の夜間専従班が戦った
サーニャの歌を模倣したネウロイに関してのことだった。
これまで戦ってきたネウロイは、
出現し、侵攻し、攻撃を受ければ反撃する、
といった単調なものだったはずが、
此度のネウロイはサーニャの歌を模倣するだけでなく、
それを利用して通信妨害や
レーダー攪乱といった戦略的な行動をとっていた。
無機物的な存在と認識していたネウロイが、
明らかに何らかの意思を持って
行動しているような動きを見せたことで、
これまでの認識が覆される証左となっていた。
「なんでも、オラーシャ方面の503部隊の方でも
ネウロイが何らかの通信障害と
レーダーを攪乱させる行動をしていたらしいわ」
「なに!?そんな離れた場所で!?」
「ええ。しかもそのネウロイも、
何らかの音楽のような音声を流していたそうよ…」
「こちらで殲滅した個体と
同じような行動をしていた……ということか……」
今度の一件とオラーシャの
第503統合戦闘航空団“タイフーンウィッチーズ”から
齎された情報を鑑みて、
互いにこれは偶然とは考え難いと判断する。
「上の連中、
このことをどこまで知ってると思う?」
「さあ……もしかしたら、
私達より多くのことを掴んでいるのかも……」
「うかうかしてはいられない…か……」
墓石の前にしゃがみ込んだ二人は、
風で揺れた写真に写る楽しげな
隊員たちの様子を見て少しばかり笑い、
張りつめていた空気を少し緩和した。
「ミーナ、ヤツはどこまで関わっていると思う?」
「……ノアール君のこと?」
“他に誰がいる?”と言った様子でミーナを見返す坂本。
「あの子があの男から差し向けられた、
という先入観はまだ消えてないのが正直な所よ…」
「そうだな……私も同じ意見だ……。
ウィザードであるというだけじゃなく、
ウィッチとは明らかに異なる形態でありながら、
私たちのように前線で
活躍できるほどの実力を有している……」
「にも拘らず、集められるだけの資料の中に
ウィザードが戦果を出したという報告が無い……」
「ネウロイ殲滅特殊部隊……だったか?
それ故の機密保持が徹底されている……
と言えばそれまでだが、
余りにも情報が無さすぎる……」
「あの子の言葉を信じるなら、単機でネウロイを殲滅した
ということを鑑みても、話題にならないはずがない……」
「まるで“突然現れた”ような……な……」
「ええ……」
そこでしばらく二人は沈黙する。そして――――
「…フッ、顔に出ているぞミーナ…」
「…そっくりそのまま返すわよ美緒」
互いの顔を見て微笑む。
「信じたい……な……」
「ええ。あの子があの男の思惑に
関わっていると思いたくない……
と、願わずにはいられないわ……」
「これまでのヤツの態度から、
ヤツは嘘はつけない人間だと私は思う……」
「私もよ。これまでのことが
総て演技だったとしたら、正直ショックだわ。
でも……私はあの子の……
あの子の涙を信じたい……」
「だが……ヤツ曰く、
自分の過去の記憶を一切なくしているのが現実だ……
今はそうだったとしても、
ヤツの無くした記憶の中に、
あの男と関りがあったとしたら……」
「わかってるわ。その時は、覚悟しないとね……」
二人が見つめる写真の中のノアールは、
笑顔を作ろうとしていたのか歯を見せていた。
だがただ見せているだけで
口の端は殆ど上がっておらず、
ただ歯を見せているだけの表情になっていた……
いかがでしたでしょうか?
ノアールのためにデザインされた
パーソナルマークは……ええ…
完全に本家・科特隊のマークをイメージしています……
本来なら流星なのですが、
ウィッチにちなんで“ほうき星(彗星)”という扱いにしました。
名付けて“彗星マーク”ですね。
そしてノアールの誕生日と、
プロフィールの中で塗りつぶされていた三人目の姉が
明かされました。
実を言うとエイラを姉にする案は
執筆中に浮かんだものでして…
まさに本編の表現通り一人歩きした末の
結果だったんです
記憶喪失とはいえ両親と離れ離れになっている立場は
サーニャと似てるなぁという解釈をして、
いつになくエイラがノアールに肩入れするのは
そういった所が琴線に触れたのではと想像し、
サーニャに感じている想いとは違うものを
持たせたらどうかという結論に至り、
最終的にそのサーニャにエイラの立場を
決定していただきました(他人事感)
そしてエイラお得意の
“~~をそんな~~で~んなあぁぁ!”を
独自アレンジで叫ばせることが出来て大満足です
それでは