Unknown Wizard Chronicle   作:シノギ

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まず、読者の方々に謝罪したいと思います。


副題からお察しの通り、アニメ版における
第7話はダイジェストにさせていただきました…


後書きにて詳しい説明をしたいと思います。


今回もオリジナル回になります。

そして漫画版にて登場した彼女と、
のちにOVAにて登場した彼女がフライング出演です。


第10話「予期せぬ再会と邂逅(副題:スースーする事件を終えて)」

「リーネさん、ここで本当によろしいんですか?」

 

「うん。本格的な市街よりは小さいけど、

大体のものが揃ってるから♪」

 

 

501基地から数十分ほど車を走らせると辿り着く

とある市街。

軍用トラックに乗ってその場所を訪れたのは、

運転を担当したペリーヌと同乗者のリーネ、

そして――――

 

 

 

『ではリーネさん、ペリーヌさん、

ここからは当初の打ち合わせ通りにお願いします。

自分もなるべく善処しますので』

 

 

 

外見は頼りないものの、

その実男手としては十分なノアールが同伴していた。

 

 

珍しい組み合わせの3人がこの日、

ブリタニア本土の市外に足を運んでいる理由を

説明するには少し時間を遡る必要がある……

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『休暇……ですか?』

 

 

 

冒頭の前日、ミーナのいる執務室にノアールが

呼び出されて告げられたのは、

ノアールに対しての休暇の宣言だった。

 

 

「ええ。こっちに来てから、働き詰めだったでしょう?

気分転換に本土の市街にでも行ってみたらどうかしら?」

 

『ん~……』

 

 

 

ミーナの提案にノアールは顎に指を添えて

考える仕草をする。

 

 

『お気持ちはありがたいですが、

自分は本国直属部隊だったとはいえ

市街にプライベートで出たことは殆ど無いんです。

ほぼ非番と同じように感じていましたし、

本部内で鍛錬の毎日でしたし、

ですからいざ休暇と言われても

どう過ごせばいいのやら……』

 

「そ、そうなの……」

 

 

ミーナは失念していた。

彼のこの501における生活態度が

人並みになったとはいえ、

それ以外の場所においては変わっていないということを……

 

このまま彼に丸投げしてしまえば、

かつての彼が過ごしたという習慣を

また繰り返させてしまうことになる。

かと言って部隊長であるミーナ自身が

ここを離れるわけにもいかない……

 

ミーナは机から部隊員全員の当番表を取り出して、

休暇を取らせて問題ない人員をピックアップする。

 

 

そして翌日の正午前――――

 

 

 

 

『リーネさん、ペリーヌさん、

今日はよろしくお願いします』

 

「うん。よろしくねノアールくん♪」

 

「休暇を休暇らしく過ごされたことが無いだなんて……

その歳でそんな体たらくでは、

いざという時に倒れてしまいますわよ!」

 

「まあまあペリーヌさん……そのために今日は私たちも

嗜好品・娯楽品の買い出しって名目で休暇を貰って

市街に行くんだから。

ノアールくんもそれに便乗って形にすれば

いい気分転換になるってミーナ中佐も…」

 

「わかってますわよ!

(まったく……今日も坂本少佐の凛々しい御姿を

眺める気でいましたのに……

ハルトマン中尉やシャーリー大尉以外で

休暇が取れて車の運転ができるからって……

これではいい馬車馬扱いではなくて?)」

 

 

運転席にペリーヌ、その隣にリーネ、

ノアールの順番で走る軍用トラック。

基地を出発して本土に上陸し、

しばらくしてからの会話である。

ちなみにトラックの荷台には緊急出動用に

リーネとペリーヌのストライカーを格納した

発進ユニットが積まれている。

 

その内の一人、ペリーヌは内心で漏らしている愚痴通り、

車の運転ができて休暇を取っても問題ない人員として

選抜されたことに、都合のいい足扱いを

受けているのではと邪推する。

 

個人的な事情ではあるが坂本の訓練や

教育に励む姿をその瞳に焼き付ける

習慣を今日も遂行しようとしていた矢先に、

今度の一件である。

 

とはいえ、自身もここ最近は基地に入り浸り

(主に坂本関係故)、

その他は軍務に勤しんでばかりだったため、

気分転換という意味ではいい機会だと

彼女自身も納得している。

 

さらに言うなら――――

 

 

 

『すいませんペリーヌさん、

お察しするに今日も何かとご用事があったようなのに、

自分の都合に巻き込んでしまって……

それにリーネさんも……』

 

 

 

ノアールの事情を知っている故に、

自分たちが何かとフォローをしなければ

ならないというのは部隊内全員に習慣として

根付いている。

それを考えれば、自分の個人的な事情を“ご用事”と称して

負い目を感じている彼の顔を見ると

罪悪感やら自身も負い目を感じるやらで……

 

 

「そんなことないよノアールくん。

私もそろそろ休暇取ろうかなって思ってたし」

 

「そ、そうですわ!私だって同じですわよ!

それに今日はちょっとした任務も兼ねているのですから、

部隊の皆さんの士気を高めるため

と考えればどうということはありませんですわよ」

 

『はい、ありがとうございます…』

 

 

ペリーヌとリーネのフォローで留飲が下がったノアール。

するとそこから会話が無くなってしまい、

トラックのエンジン音と

タイヤによって踏み鳴らされる地面の音以外

聞こえなくなってしまった。

 

それを察したのか、リーネが苦し紛れに話題を出す。

 

 

 

「そ、そういえばこの前のルッキーニちゃん?

……が起こしちゃった騒ぎ、大変でしたね!」

 

 

 

そんな彼女が話題に出したのは、先日起こったパンt……

失礼……“ズボン紛失事件”のことだった。

 

 

◇◇◇

 

 

突然インパクトのあるパワーワード、

と思われても仕方がないのだが…

 

その日の501部隊基地で起こっていた一種の“おふざけ”

ともとれる事件を簡潔且つ解りやすく言い表すには

こう言う他ないのだ……

 

 

事件が起こったのは数日前。

その日は、朝から戦争真っ只中ということを

忘れてしまうほど穏やかな空気が

501部隊基地に広がっていた。

 

 

誰よりも早く起床した坂本は早朝訓練として

愛用の扶桑刀を持って走り込み、

そして森の中の開けた場所で起床ラッパが鳴るまで

扶桑刀を振るっていた。

 

夜間哨戒から戻ってきたサーニャは寝ぼけて

エイラの部屋に入るなり、

下着姿になってエイラのベッドにダイブした。

 

起こされたエイラは呆れ顔をしつつも

嬉しそうな顔を浮かべ、

サーニャの脱ぎ散らかした衣服を丁寧にまとめて

二度寝に入った。

 

宮藤は早朝から坂本の訓練があるにもかかわらず

寝坊していた。

 

ペリーヌは前記した通り、日課?とも言うべき坂本の訓練

並びに指導する姿を眺めるために早起きするはずが

寝坊してしまい、常備しているはずのメガネを

忘れるほど焦っていた。

 

リーネも寝坊して何故か食パン――――

に酷似したハンカチーフを咥えたまま

部屋を飛び出していった。

 

シャーリーは下着姿のまま部屋の扉を

大っぴらに開けて歯を磨いていた。

 

ルッキーニは起床ラッパで一度起きるが、

訓練中の坂本の姿を見て巻き込まれるのを

危惧し木の上で身を隠していた。

 

ミーナは起床ラッパと共に起床し、

全員の起床を見届けてから

基地の執務室へと足を運んでいた。

 

バルクホルンもラッパの音と共に起床し、

準備体操とストレッチを行い、

日課であるエーリカの起床を促しに向かった。

 

エーリカはバルクホルンが起こしに来るまで

寝込みを決め込んでおり、

おまけに下着のトップは着ているものの、

ズボンを履いていないという体たらくだった。

 

ちなみに黒一点のノアールは、

以前より坂本から教わった扶桑における修行を

一通り試すとして、空が朝焼けになる少し前から起床し、

部屋の中央で日が照り付ける時間まで座禅を組んでいて、

ミーナが部屋を訪れた時もその状態を崩さないほどの

集中力を保っていた。

 

 

 

これらの面々の中で、

その日最もしっかりしなければならないのは

バルクホルンの必死の起床の催促を受けて尚、

惰眠を貪ろうとするエーリカだった。

 

 

というのも、その日はエーリカの表彰があり、

ネウロイ撃墜250機を賞してカールスラントより

柏葉剣付騎士鉄十字章が届くことになっていたのだ。

 

ちなみにミーナが今日、

本土へと車を走らせてこれを受け取りに行く

手筈になっており、届けられている施設への道案内として

リーネが同乗することになっていた。

 

 

という、ネウロイとの戦いの合間に流れている穏やか……

と称するには些か不相応だが、

戦時下における彼女たちにとっては

充分穏やかな時間が流れていた。

 

 

そんなある時……

 

 

坂本と坂本の訓練を受けていた宮藤、

宮藤への嫉妬から

自己的に訓練を受けることになったペリーヌ、

ペリーヌを揶揄うために寝床から降りて、

結局巻き込まれる形で訓練を受けることになった

ルッキーニ達4人が汗を流すために風呂に入り……

 

 

 

そして事件は起こった……

 

 

 

ペリーヌのストッキングの下に履いていた

白のズボンが無くなっていたのだ……

 

 

 

状況整理のために食堂に集まったのは、

脱衣所にいた一同と、丁度食堂にて朝食をとっていた

シャーリー、バルクホルン、エーリカと

“一足先に食堂にて朝食をとっていたルッキーニ”だった。

 

ちなみに事件の証拠物件として宮藤が着ている

水練着が提出されており、

学校指定の制服のみを着ている宮藤と

ガリア空軍制服とストッキングのみを着用している

ペリーヌが同席しているという

なかなかカオスな状況になっている。

 

おまけに制服のみの宮藤に気を使って

坂本が自身の海軍の制服を羽織らせ、

自身は水練着のみで堂々と胸を張っている

という状況を作り出し、さらにカオス度が増した……

 

 

閑話休題

 

 

事件の詳細と状況証拠を整理している中で、

ペリーヌの前に更衣室を利用した人物が犯人

ということになり、彼女がその人物へと視線を向け、

一同もその視線の先の人物へと眼を向ける――――

 

 

 

 

ジャガイモを刺したフォークを持って

固まっているルッキーニへと……

 

 

 

実を言うと状況整理をしている最中、

彼女はずっと怯えた表情を浮かべており、

とうとうバレてしまったと悟った次の瞬間、

逃走を図ったのだ。

その最中に宮藤の水練着までも持ち逃げし、

ルッキーニの追跡が始まった。

 

 

それから紆余曲折あり、

逃走に利用される形で白のストッキングを

盗まれたエイラまでも巻き込んで追跡している

彼女たちのもとへ――――

 

 

 

 

 

 

ネウロイ出現を報せる警報が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

臨戦態勢になった一同はハンガーへと走り

ストライカーと銃器を装備するが、

いつも通りの服装である

シャーリーやバルクホルン以外の面々――――

 

宮藤は坂本の制服を羽織っているとはいえ

下に何も履いていない…

 

ペリーヌはストッキングを着用しているとはいえ

ズボン自体が無いため“何処が”とは言わないが

注視して見ると透けている……

 

エイラはサーニャのストッキングを代用して

履いていたため、

それを間違って履いていると取り返そうとする

サーニャのせいで飛び立てない……

 

といった三者三様のトラブルで出撃できずにいた。

 

ちなみに坂本は水練着のみの格好でも、

空では誰も見ていないと称して

平気で出撃しようとしていた。

 

 

その矢先、出撃しようとしていた一同を

ミーナの一声が制止させる。

 

 

先の警報は、ルッキーニが偶然隠れた部屋――――

警報装置が置かれていた部屋のスイッチを

誤って作動させたことによる誤報だったのだ。

その現場をエーリカが目撃し、

全員の前に連れてこられる形でお縄になった。

 

 

ちなみにノアールはハンガーに赴かなくても

ビームカプセルによってSUAを装着し、

どこからでも出撃できるため、

一足先に基地を飛び出し、

基地からの連絡が来るまでの間周囲を

意味なく哨戒するという可哀そうな役目を

負わせることになってしまった。

 

とはいえ、ウィッチ達からしてみれば

唯一の男であるノアールに

ここまでの自分たちのあられもない姿を見られなくて

幸運だったと言えなくもない……

 

 

その後、エーリカの表彰が行われ、

今度の事件を解決へと導いた彼女の表彰ならばと

全員が祝福の拍手を送った。

 

その際、罰としてルッキーニは表彰式の最中と

しばらくの間、ズボンを履いてない状態で

水の入ったバケツを二つ持って

立たされることになった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

「まったく……とんだ茶番でしたわよ!////」

 

「まさかあんな場面で、あの事件のそもそもの原因が

ハルトマン中尉だって発覚するなんて

思いませんでしたしね……」

 

 

その時の羞恥心を思い出したのか、

ペリーヌが顔を赤くして憤る。

 

 

そう。リーネの言う通りあの事件は、

自分のズボンが見当たらなかったため、

更衣室にあったルッキーニのズボンを無断で借りた

エーリカが起こしたものだったのだ。

 

表彰式にて用意された壇上に立った彼女の

“しましまズボン”を全員が見、

真犯人が解った全員は呆然としていたが、

その後芋づる式で今度の珍事件の原因が発覚、

エーリカは勲章を与えられると共に、

厳罰を与えられることとなった。

 

 

 

『間接的とはいえ、

フラン姉さんが起こした事件だったのに、

弟として、自分がその場にいて貢献できなかったことは

悔やまれますね……』

 

「そ、そこはまあ、居なかった方が幸いだったかなって

感じなんだけど……」

 

「ですわね……

殿方の前であんなはしたない姿を晒すなんて、

まっぴらごめんですわ!////」

 

『ああ……それもそうですね……』

 

 

そうこうしている内に、

ペリーヌの運転する軍用トラックは

市街に近くなってきたところを走っていた。

 

そして軍用車両を止められる駐車場に向かう最中、

ノアールがミーナから言い渡され、

自分なりに考えた今度の買い出しの最中に課す

決まり事を二人に告げた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

3人が辿り着いた市街の比較的中心に位置する場所に、

この街の中では一番大きなマーケットが

そびえ立っている。

 

とは言ってもブリタニアの首都ロンドンに

あるものと比べればそれほどではないが、

街の面積と住んでいる人口と比較すれば

十分な大きさのものである。

 

さらに言えば、今回の3人がここへ来たのは

本格的な物資の買い出しではなく、

娯楽品等に限ったもののため、

これほどの規模のマーケットで

事足りるということもある。

 

 

 

『わーー、すごいおおきなマーケットだねー

リーネおねえちゃん…』

 

「そ、そうだねノアールくん…」

 

「ノアールさ…っ……ノアール君は、

こういう所は初めてかしら?」

 

『うんペリーヌおねえちゃん、自ぶ…っ……

ぼくおそとにでることがすくなかったから、

こういうところくるのはじめてー…』

 

「そ、そうなんだ~……」

 

「じ、じゃあ今日は存分に楽しむといいですわ。

買い物はありますけど、

見ているだけでも楽しいですわよ……」

 

『うん、たのしみー…』

 

「「………」」

 

 

マーケットの出入り口付近で交わされている

3人のやり取りである。

ちなみにペリーヌとリーネの間に

手を繋ぐ形でノアールが立っている。

 

 

ノアールが事前に二人と打ち合わせていた作戦とは――――

 

 

 

“病気がちで家や病院に籠りがちな弟分を

姉代わりの二人が街に連れ出している”

 

 

 

――――というコンセプトで

今日一日を過ごそうというものだった。

 

 

別段、彼自身ふざけているわけではない。

彼が休暇のために街に赴いているのは当然だが、

そこにペリーヌとリーネが同伴しているのであれば

話は変わってくる。

 

当人たちは自覚しているか定かではないが…

各国で設立された統合戦闘航空団やその他のウィッチ隊に

在籍しているウィッチたちは皆、

広告塔としては充分すぎるほど眉目秀麗な

容姿をしているのだ。

 

そんな彼女たちが街に出れば、

知っている人間からしてみれば

有名人が来たと騒ぎ立てるのは当然の帰結だ。

 

そしてそんな集団の中には、

少なからず下劣な目線で見る輩もいるものである…

 

そんな輩に対しての対抗措置として護身用の

ワルサーPPK等を彼女たちは携帯している上に、

魔法力という奥の手もある。

 

だが、いざという時に引き金を、

もしくは魔法力を発動させて

そんな輩に対抗できるかと問われると微妙な所だ…

 

なにせ彼女たちは軍人と言えども

年増もいかない少女たちだ。

しかも引き金を引く相手は殆どがネウロイであるため、

そんな奴らから守っている民間人に向かって

手を上げられるかと問われると、

少なからず躊躇してしまうきらいがある…

 

 

ましてや今回街に出ている二人――――

 

リーネは異性との交流と言えば身内である

父親と弟くらいな上、その後は女子高である

ウィッチの養成学校で過ごしてきたため、

異性に対しての応対は得意というわけではない…

ノアールという例外によって慣れつつあるが、

彼のみに限った話である…

 

ペリーヌも貴族としての教育の中で、

異性に対しての応対の作法は

心得ているものの、実際にそれが役に立つかと

問われれば微妙な所だ。

なにせ相手は“一人”とは限らない上に、

根本的な部分で彼女はお人好しな面もある。

 

 

そんな危険性を孕んでいる二人を街に連れ出すのなら

ということで、ミーナは事前にノアールに

二人の護衛を務めるよう頼んでいたのだ。

 

容姿や背丈はともかく、

無手での戦闘能力は言わずもがな。

むしろ彼の見た目に相手が油断して、

あれよあれよという内に向かって来た輩すべてを

制圧してしまうかもしれない…

 

 

とはいえ、これは最悪の場合のシナリオだ……

 

 

そんな輩が近寄ってこないようにするために取った作戦が

冒頭のやり取りをマーケットの出入り口付近で見せつける

というものだったのだが……

 

 

 

「(ノアールくん……子供の演技してるみたいだけど……

棒読みだからやりづらい……それにノアールくん――――)」

 

「(おまけに私たち二人を一時とはいえ姉呼びなどと……

余計目立っているような……それにノアールさん――――)」

 

『さーおねえちゃんたち、はやくいこーよー…』

 

 

ノアールが子供ならではの演技として、

“初めてのマーケットに早く行きたいから

二人の手を引っ張る”

という所作をいつもより甲高い声で行っている。

さながら見た目は子供、

頭脳は大人な名探偵の子供演技の如く……

それによって引っ張られる二人は

内心同じことを思っていた……

 

 

 

 

「「(自分の容姿が目立つこと、自覚してない!?)」」

 

 

 

ブーメラン発言とはこのことか……

とはいえ、彼女たちの言い分もわからなくはない……

 

 

ノアール自身もウィッチ達からしてみれば

整った顔立ちをしている。

アルビノと言っていいほど白い髪をボブカットにし、

その間から見える片方の青い瞳も髪の色と相まって

神秘的に見えるだろう。

 

とはいえ、前髪で隠れているもう片方の眼につけている

眼帯を見ればギョッとすること請け合いだが……

 

 

 

そんな、自分たちが

“下賤な輩が近寄らないように建てた作戦”によって、

余計に目立つという本末転倒な状況になってしまった

3人は、不安を抱えつつも当初の予定通り、

買い物のためマーケットへと足を踏み入れた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

マーケット内に入った3人は、

事前に部隊の全員から聞いていたリクエストの中から、

比較的多かった菓子類やコーヒー、

紅茶といった物が置かれている棚の通りに入った。

とはいえ、買うものはそこそこあるため3人が

固まって行動すると時間がかかる。

 

そこで、買うものが同じ通りにある場合は

2人と1人に分かれ、1人が商品を選んでいる様子を

後ろから2人で見れる位置で商品を選ぶ、

もしくは選ぶ演技を見せるという態勢を取った。

 

幸い、菓子類やコーヒー、

紅茶の棚は離れているとはいえ同じ通りの棚に

並べられていたため事前の作戦を

活かせる構図になっていた。

 

 

 

「(アマゾナスが無い場合は、私のセンスに任せる……

と中佐は仰ってましたけど…)」

 

 

ミーナのリクエストに目を走らせていたペリーヌは

コーヒー豆のパックが並べられている棚の中から

よさげなものを選択し、片腕にかけた籠へと入れた。

言うまでもないが、この時代で言うところの

代用コーヒーよりかはマシな部類であることは否めない。

 

続いて紅茶の茶葉のエリアに入った時、

あるものを見つけた……

 

 

 

「あら、カモミール……」

 

 

 

見覚えのあるスペルが書かれたパックを見つけ、

ペリーヌは物思いに耽る。

 

 

 

「(懐かしいですわね……

あの娘ほど美味くできるかわかりませんが、

久しぶりに飲んでみようかしら…)」

 

 

 

501部隊にスカウトされる以前、

“とあるウィッチ”に淹れてもらった

カモミールティーの味を思い出し、

ペリーヌは徐にパックへ手を伸ばす。

 

 

 

すると――――

 

 

 

 

「「あっ!」」

 

 

 

 

伸ばされた手のすぐ横から別の人の手が伸び、触れ合う。

 

 

 

「ご、ごめんなさい…!」

 

「いえ…私こそ……!」

 

 

ペリーヌともう一人がすぐさま手を放し、

互いに謝罪する。そして――――

 

 

 

「あら?……アメリー…さん?」

 

「ふぇっ!?」

 

 

 

そのもう一人――――

同じガリア空軍の制服を身に纏い、

肩上で切り揃えた明るいブラウンの髪、

庇護欲をくすぐるような幼い顔立ちをした彼女――――

“アメリー・プランシャール”は

自分の名を呼ばれたことに驚く。

 

 

「ペリーヌ……さん?」

 

「ご無沙汰してますわね……ご機嫌は――――」

 

「ペリーヌさんッ!!」

 

 

旧知の友、さらに言えば先の思い出の中でも

思い浮かべていた彼女と再会したことに笑みを浮かべた

ペリーヌにアメリーは勢いよく抱き着いた。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

ペリーヌとアメリーが再会の抱擁をする数分前……

 

 

 

ペリーヌの少し後ろにあるお菓子類が並べられた棚の所で

ノアールとリーネは商品を吟味していた。

 

 

『リーネおねえちゃん、

エーリカおねえちゃんへのおかしはこれでいいかな~?』

 

「う、うん、いいんじゃないかな?

(私たち以外の皆もお姉ちゃん呼びなんだ…)」

 

 

エーリカ含め、部隊のウィッチ達へのお土産の菓子を、

リーネが押しているカートに乗った籠の中へと入れる

ノアールを見て、彼の演技の徹底ぶりに内心苦笑する。

 

 

 

 

 

 

「ペリーヌさんッ!」

 

 

 

 

 

その時、通路の先にいたペリーヌの方から

彼女の名を呼ぶ声が聞こえ、

二人はその方向へと目を向ける。

 

見るとペリーヌが同じガリア空軍の制服を着た少女に

抱き着かれていた。

その風貌からウィッチと思われると二人は考える。

 

 

すると――――

 

 

 

 

 

「だ~れだっ!!」

 

 

 

 

 

ムギュッ!

 

 

 

 

 

「きゃぁっ!!////」

 

 

 

リーネの背後から声がした次の瞬間、

彼女の豊満な胸を背後から伸びた手が掴んだ。

 

 

 

『(ッ!しまった!!)』

 

 

 

ペリーヌに眼が行っていたせいで背後から迫る気配に

気づけなかったとノアールは焦り、

すぐさまリーネの背後にいる人物に目を向ける。

 

 

 

「ほうほう……私が最後に触った時よりも

すこ~し大きくなったかなぁ~?」

 

 

 

茶色の帽子を被ったリーネとよく似た

プラチナブロンドの長髪、

これまた茶色のジャケットを羽織り、

白のシャツを着ている女性。

そして何よりズボンの形状……

これまたリーネとよく似たデザインのズボンだった。

さらに言えば、その容姿も今尚胸を

揉まれ続けているリーネと酷似していた。

 

 

 

『(あれ?もしかしてこの人って……)』

 

 

 

件の人物の風貌を観察するうちに、

ノアールは一つの結論に辿り着きつつあった。

そしてその答えは顔を赤くしながら抵抗している

リーネの口から齎された。

 

 

 

 

「お、お姉ちゃん!やめっ……

ノアールくんが……見てるっ////」

 

 

 

 

そう、リーネの胸を揉んでいる彼女こそ

リーネの姉であり、ビショップ家長女でもある

“ウィルマ・ビショップ”その人である。

 

 

 

「ん?ノアール君?」

 

 

 

リーネの言い分を聞いて、彼女――――

ウィルマはようやっと自分たちの近くに立っている

ノアールの存在に気づいた。

 

無理もないが、

ノアールの身長はリーネやペリーヌよりも小さいため、

身を屈めてリーネの背後に迫っていたウィルマからは

リーネが影になって見えなかったのだ。

 

そしてウィルマは臨戦態勢になったまま呆然としている

ノアールを上から下へと見やり、

リーネの胸から手を離した。

 

解放されたリーネが胸を撫で下ろしていると、

今度はウィルマに肩を掴まれた。

 

 

「リーネ……」

 

「なにお姉ちゃん?

…というかお姉ちゃんはどうしてここに――――」

 

 

 

 

 

 

 

「引退後が心配だからって……

こんな年の子を誑し込むなんて……」

 

 

 

 

 

 

残念な人を見るような眼で見るウィルマに対し、

リーネは一瞬呆け、

言葉の意味を理解した途端顔を赤くして反論する。

 

 

「た、誑し込むなんて!!

私そんなことしないよ!!?////」

 

「アンタが引っ込み思案なのは知ってたけど……

同年代や年上じゃ自信ないからって、

こんな年から自分色に染め上げるつもり?」

 

「だ、だからそういうのじゃなくて!!

ノアールくんはそういう関係じゃなくて……////」

 

「じゃ、どういう関係?」

 

「そ、それは……この場じゃ……言えないっていうか……」

 

「やっぱりそういう関係なんじゃん♪

なに?私が年上のおじさま趣味だからって

対抗してるつもり?」

 

「だ、だからぁ~!!////」

 

 

 

 

妹の色恋沙汰に興味津々な姉と、

誤解だと赤面で反論する妹。

そんな二人の泥沼化している会話を見ていたノアールは、

徐にペリーヌの方へと目を向ける。

 

 

 

「ペリーヌさん!お久しぶりです……ヒック……会いたかったですよぉ~…」

 

「あ、貴女、何かにつけては泣いてしまう

その癖は治ってませんのね……

というかお離しなさい!ここは公共の場ですわよ!!」

 

「ペリーヌさぁぁん!!」

 

 

ペリーヌの注意よりも感激の方が勝っているのか、

アメリーは一向に抱き着く手を緩めなかった。

 

あっちもこっちも泥沼化している状況で、

一人取り残されたノアールは一言――――

 

 

 

 

 

『ダメだこりゃ……と言うのでしょうか、この場合……』

 

 

 

 

と、呟いた。

 

 

 




まず前書きの謝罪の説明をしますと…

自分の技量では、
どうにもあのおふざけ一辺倒な回の中に
ノアールを組み込むことがどうしてもできなくて…

本来なら部隊内にて唯一の男性ということで、
容疑者候補として一番にノアールが選ばれるわけですが…
彼のウィッチ達への紳士的な態度の印象が強すぎて、
いきなりそんな下劣な行為に及ぶことがあるのかっていう
発想がはたしてウィッチ達の中に生まれるのかと考えたら
違和感がありすぎて…

かといって弟が疑われてるから、自分がやりましたって
ルッキーニが姉らしく正直に申し出たりしたら
話自体が無くなってしまいますし……

だったらその線で全く新しい話にすればいいじゃないか
となるのは当然なのですが…
自分の想像力ではどうにも力量不足でして…

だったら後々関わることになるウィッチの一人である
アメリーと邂逅させようということで、
漫画版限定で登場したリーネの姉である
ウィルマとコンビで出しました。

ワイト島分遣隊とこういった形で、
一部のメンバーが交流するというのも
ありそうだなと考えてこういう形に仕上げました。
ウィルマに至っては漫画版で後々ガリア復興の時に
リーネとペリーヌと会うわけですし違和感は無いはず…

なお、次回はこの続きになります。
ストウィにおけるシリアス回である8・9話への
足がかりになる(かも)な話でもあるので……


それでは
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