Unknown Wizard Chronicle   作:シノギ

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「片翼の魔女たち」でのウィルマは
ワイト島分遣隊の結び役として
凄く良いポジションだったので、
ノアールの背中を押す役割を
任せるために本編で出してみました。

今後出るかは未定ですが…
ノアールがガリアに来る機会があれば
ワンチャン?

とはいえ、OVAや劇場版では姿形もなかったので
史実的にはガリアを出てしまっているかもなので
再会は難しいかもです…

リーネからの手紙に同封した写真で報告
が安牌でしょうか?


第11話「戦う信念(りゆう)

「じゃあ改めて自己紹介を♪

王立ファラウェイランド空軍416飛行中隊所属、

現在はここブリタニアの

ワイト島分遣隊に配属されてる

ウィルマ・ビショップよ。階級は軍曹ね」

 

「自由ガリア空軍アルザス飛行隊所属、

現在同じくワイト島分遣隊に配属してます

アメリー・プランシャールです。

階級は軍曹です」

 

「自由ガリア空軍602飛行隊所属、

現第501統合戦闘航空団所属、

ペリーヌ・クロステルマン。

階級は中尉ですわ」

 

「ブリタニア空軍610戦闘機中隊所属、

同じく第501統合戦闘航空団に所属してます、

リネット・ビショップです。階級は軍曹です」

 

 

先のマーケットでのそれぞれの再会からしばらくし、

それぞれの目的のモノを買い揃えた一同

(ウィルマたちも同じく娯楽品の買い出しだった)は

そこで買った荷物を一旦駐車場に停めてある

軍用トラックへと戻しに行き――――

ペリーヌたちが乗ってきたトラックの

少し横にウィルマたちが乗ってきたトラックがあった

――――昼前ということで近場のカフェで

休憩がてらそれぞれの自己紹介をする運びになった。

 

 

ワイト島分遣隊とは、このブリタニアにおける

主力部隊である第501統合戦闘航空団が

出来上がってからしばらくした後に設立された

比較的小規模な部隊で、ガリアから侵攻してくる

ネウロイからの防衛が任務なのは当然なのだが……

部隊のある基地が、名前の通りブリタニア本島の

南岸に隣接している島にあり、ガリアに最も近い

501部隊が侵攻してきたネウロイと

真っ先にぶつかるため、

殆ど出撃の機会が無い部隊である。

 

 

 

複数人座れる席にて、

一方にワイト島分遣隊メンバー、

もう一方に501部隊メンバーが座り、

そこからウィルマとペリーヌ、

アメリーとリーネと、

それぞれ初めましての相手に自己紹介を終えると、

率先してウィルマが最後に

一番注目している人物へと水を向ける。

 

 

「で?キミは?」

 

『?』

 

 

声のかかった人物――――

この店に入って女性陣が注文した

紅茶や洋菓子類と共に運ばれてきた、

ホットケーキとオレンジジュースを

ペリーヌとリーネの間に座って

夢中になって堪能している

“演技”をしているノアールは、

オレンジジュースの入ったコップを

傾けた状態で手を止める。

 

ちなみにこれらの注文は

気を利かせたウィルマによるものである…

 

 

 

「お姉さんたちに

お名前教えてほしいんだけど?」

 

『……ノアール・ルー、10さいです。

よろしく……』

 

「ん~♪お辞儀もできてエライね~♪」

 

 

そう言ってウィルマはノアールの下げた頭を撫でる。

そして――――

 

 

 

 

 

 

「で?本当のところを教えてほしいな、

ノアール君?」

 

 

 

 

 

少し声量を抑えた声でウィルマは

再度ノアールに問い掛ける。

 

 

「ウィルマさん、どういうことですか?」

 

「10歳ってわりには落ち着きすぎてる……

ホットケーキを夢中になって食べてる仕草も

ちょっとあからさますぎだし……

ナイフやフォークの使い方も無駄がない……

あとはリーネやペリーヌちゃん、

アメリーや私みたいな美女美少女に

囲まれてるのに照れる等といった仕草も見せない……

さすがにただの10歳の子供って片づけるには

無理があるかな?」

 

『………』

 

「それになにより、

501の二人がわざわざ軍用トラックで

一緒に乗せて来てる時点で普通の子供って

判断するには怪しすぎるし…

さっきキミが見せた臨戦態勢、

とても普通の子供ができるものじゃなかったし…」

 

 

アメリーの問いにウィルマは

ノアールの見せたこれまでの態度や

状況証拠から、彼が普通の子供ではないと

思い立った理由を述べ立てる。

それらをノアールは無言で返す。

 

 

「まあ、マーケットで言ってた通り?

リーネが厳選したとーっても将来有望な男の子

ってことなら話は別だけど?」

 

「お、お姉ちゃん!だから違うって……////」

 

「またまた~……その私以上に成長してる

母性の象徴で抱きしめて、

“お姉ちゃんが教えて、あ・げ・る♪”

とか言ったんじゃないの?」

 

「あ、ああ貴女はなにを仰ってますの!?

破廉恥なっ////」

 

「あ、それともペリーヌちゃんの厳選?

リーネほどの体型してないけど、

母性感は負けてないと思うわ。

将来保母さんとか向いてるんじゃない?」

 

「な、なにを……!?」

 

「ペリーヌさんが保母さん

……いいと思います!!」

 

「貴女までなにを便乗してますのアメリーさん!!」

 

 

女三人……ではないが姦しいやり取りが行われる中、

ある一言によってソレは中断された。

 

 

 

 

 

『さすがはリーネさんのお姉さん、

といったところでしょうか……』

 

 

 

 

声音も雰囲気も全く変わった

ノアールの口から発せられたその一言で、

アメリーは眼を見開き、

ウィルマは一瞬驚いたが確信を得たといった

笑みを浮かべた。

 

 

『ですが、それ以上お二人の世間体を

貶める発言はやめていただきたい。

リーネさんもペリーヌさんも共に欧州防衛、

並びにガリア奪還を志す大切な同士です。

親しき中にも礼儀ありという言葉があります……』

 

「おーっと~……

想像以上に辛辣なカウンター………

トラ猫だと思ったら

ホントのトラだったんだねぇキミ……」

 

 

本音を引き出すための冗談だったのだが、

ここまで真面目に返されると逆に罪悪感を覚えるなと

ウィルマは内心後ずさる。

 

 

『ではこちらも自己紹介を……

ブリタニア空軍対ネウロイ殲滅特殊部隊

インビジブル所属、現第501統合戦闘航空団所属

ウィザード、ノアール・ルー。階級は少尉です』

 

 

抑揚のない声で自己紹介を終えたノアールに、

ワイト島分遣隊の二人は驚きを隠せない。

 

 

「ブリタニア空軍!?

しかも少尉って……上官ですか!?」

 

「その歳で少尉……しかもウィザードとは……

人は見かけによらないわねぇ……」

 

『少尉とは言っても、

自分は年功序列を重んじています。

ですので年相応の話し方で接していただいて

構いません…』

 

「そう?じゃあ私もウィルマでいいわ。

私もノアール君って呼ばせてもらうから」

 

「じ、じゃあ私もアメリーでいいです。

ノアールさんって呼ばせてもらいますね…」

 

『よろしくお願いします、

ウィルマさん、アメリーさん…』

 

 

改めて自己紹介を終えた

ノアールとウィルマ、アメリー。

 

それからは久方ぶりに再会した者同士で会話が弾み、

その合間にノアールが質問に答えるという形で

カフェでの時間が流れていった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「ねぇ、ノアール君って

501に好きな女の子とかいないの?」

 

 

 

思い出話をそこそこ語り合ったウィッチ達4人が、

話す内容が無くなり落ち着いたタイミングで

ウィルマが不意にノアールへと尋ねる。

 

 

 

「お、お姉ちゃん急に何言いだすの!!?////」

 

「そ、そうですわよ!だいたい、

501においてその手の類は禁じられて……////」

 

「規則としては禁じられてるかもだけど、

好きって想ってるだけなら問題ないでしょ?

それともノアール君って、

こんな落ち着いた風貌のわりに

そういうのお構いなしに女の子に

手が出ちゃう節操無しなの?」

 

「そ、そんなことはありませんわ!

ノアールさんは501における同年代の

ルッキーニさんと違って、軍務に従事しつつ、

非常に誠実で紳士的ですわよ!」

 

 

ノアールを置いてきぼりにして話している

3人を他所に、ただ一人黙り込んでいる

アメリーはというと……

 

 

 

「(こんな落ち着いた見た目に対して強引に………っ!

誠実で紳士的っ……!!////)」

 

 

 

彼女の脳内では、

現実のノアール以上に背が高く制服を着崩して

胸板を見せている妄想ノアールが

自身を壁際に追い詰め、

そこから壁ドンをしつつ迫ってくる

といったシチュエーションや……

 

逆に礼服をきっちりと着こなした

妄想ノアールが、手袋をはめた手を差し出し、

爽やかイケメンスマイルを浮かべているという

シチュエーションがかわるがわる浮かんでいた。

 

 

 

「でもさ?曲がりなりにもウィッチ部隊の中で

唯一所属を許されてるウィザードだからって、

女の子と男の子でしょ?

リーネやペリーヌちゃんに

そういう感情は無いからと言って、

ノアール君にそういう感情が無いとは

限らないでしょ~?」

 

「それは――――」

 

 

 

 

 

 

『ご期待に沿えず申し訳ありませんが、

自分はそういった類の感情には、

とんと縁がありませんので……』

 

 

 

 

会話に割り込むような形で告げられた

ノアールの一言に、

ウィルマたちの会話も打ち消され、

アメリーのトリップしていた意識も

現実に戻された。

 

 

 

「……縁が無いって

……好きな娘はいないってこと?」

 

『いえ……ウィルマさんの仰る好きという単語が

“恋愛”というニュアンスで尋ねられているのなら、

自分にはそういう類の感情が

よくわからないというのが正直なところです……』

 

 

ノアールの答えを聞いたウィルマは

彼と付き合いの長いリーネやペリーヌを見ると、

二人も意外な顔をしていることに気づく。

するとそこに、妄想から帰ってきたアメリーが

問い掛ける。

 

 

「で、でも!ペリーヌさんやリーネさん、

501の皆さんが嫌いってことじゃないですよね!?」

 

『それはもちろんです。

ペリーヌさんやリーネさんを含めて、

501の皆さんは自分にとって尊敬できる

素晴らしい方々ですから……』

 

 

自分が尊敬しているペリーヌも含めて、

悪感情を抱いているわけではないと聞き、

アメリーは胸を撫で下ろす。

 

 

 

「あ~……それはやっぱり10歳だから

そういうのが解らない…とかそういうことかな?

でも、キミくらいの年だったら

気になる女の子の一人や二人くらい……」

 

『自分が記憶している中で、

そういった物を気にするきっかけなど

皆無でしたし、ましてや自分たちは軍人です。

戦いにおいてそのような感情は、

時にその人の判断を鈍らせる

毒にもなりうるものです。

規則に則ってという名目だけでなく、

ウィッチ部隊に所属している

唯一のウィザードとして、自分はそういったものが

起こらないよう心掛けていますので……』

 

「そっか、真面目だねぇ…(自分が記憶している?)」

 

 

早口で捲し立てたノアールはそこで一旦一息吐き、

追加注文した紅茶のカップを口に運ぶ。

 

そんな中、両隣にいるリーネとペリーヌは

ノアールの発言に対し、口には出さないものの、

その表情は抗議したいという色に染まっていた……

 

 

「(恋愛とはいかなくても、

国を越えて3人も姉を作っておいて

今更何を仰いますの……!)」

 

「(水上訓練の時のこと、

ノアールくんは全然そんな風な認識無いんだ…

あの時私、初めて弟以外の男の人に

水着姿見せてるんだって

意識してたのに……////)」

 

 

二人の困り顔を見てその心情を察したウィルマは、

改めてノアールを諭すよう話しかける。

 

 

「まあ私たちウィッチはその特性上、

異性同士のそういった交流は

厳しく制限されてる所もあるけど……

でも、ノアール君だって恋愛感情とまでは

いかなくても、501のウィッチたちと

親しくしているでしょう?」

 

『それはもちろん……』

 

「そういうものも十分、いざという時に

判断を鈍らせる毒になるんじゃない?」

 

『ッ!!』

 

「でもまあ?ノアール君がそういう感情が無くて、

戦いにおいて有利になるから

みんなと親しくしてるってことなら――――」

 

 

 

 

バンッ!

 

 

 

『そんな事はッ!!』

 

 

 

 

両手を机に叩き付け、立ち上がるノアール。

それからハッとし、

ここが公共の場であると気づいた彼は

静かに席に戻る。

 

 

 

『そんな事は……ありません……////』

 

「でしょ?軍人だから、軍規だからって

人の感情を抑えることはできない。

ましてや感情が無かったら、

ペリーヌちゃんみたいに自分の故郷を

取り戻したい、なんて強い思いで戦う

なんてことできないもの…」

 

『……仰る通りです。すいませんペリーヌさん。

自分は、一時でもペリーヌさんの

ガリアを取り戻したいという想いが、

使命感だけで成り立っているものと

考えてしまいました……』

 

「別に謝らなくて結構ですわよっ……

貴方ってそういう、気を使い過ぎて

余計な感情まで背負うところは

相変わらずですのね……」

 

「そういう風に言えるってことは、

キミがどれくらい他人のことを

想ってるかってことの証拠だと思うなぁ?

それでさっきの言い分は

ちょ~っと説得力に欠けると思うけどぉ~?」

 

「お、お姉ちゃん……

あまりノアールくん、イジメないで……?」

 

「そうですよ。ノアールさん、

赤くなって俯いちゃってます…」

 

「ごめんなさい♪こんな歳の子の

いじらしい姿が可愛くってツイね♪」

 

 

リーネとアメリーに諫められ、

ウィルマは追及の手を止める。

 

 

「まあノアール君の信念もわかるけど、

そういう友情・愛情って感情は

在って良いって言いきることはできなくても、

無くて良いとは言いきれないものだと思うわ。

そういう感情って、時に常識を覆す

奇跡を起こすことだってできるんだから…」

 

『常識を……覆す……』

 

 

ウィルマの言葉をノアールは噛み締めるように呟く。

 

 

『でも……その思いが行き過ぎれば、

ただの重しにしか成り得ないんじゃ……』

 

「ソコはまあ、各々の塩梅次第ね。

こればっかりはマニュアルが存在しないし、

人に教えても理解させるのは難しい。

自分が見つけて自分がこうだと

信じられるものにしていくしかないの……」

 

 

ノアールの疑問が晴れない顔を見たウィルマは、

この空間に漂う微妙な空気を感じて

乾いた笑いを浮かべる。

 

 

「あれ?なんでこんな話になっちゃったんだっけ?

あんまり長居してもお店に悪いし、

そろそろ出よっか!」

 

 

ウィルマが率先して退店を勧め、

5人はカフェを後にした。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

その後、一同は街中を歩きつつ商店を見て回り、

先の嗜好品以外の娯楽用品などを購入。

その中で見つけたそれぞれの趣味に合う

小物類を買うなどして時間を過ごした。

 

そして、それぞれの部隊に帰投する

最低限の時間に差し掛かり、

軍用トラックが停めてある駐車場に辿り着いた。

 

 

 

「では私たちはこれで。

アメリーさん、久しぶりに会えて嬉しかったですわ。

今回は無理でしたけど、次の機会に

貴女のカモミールティーを淹れてくださいまし」

 

「はい!私も嬉しかったです。

今度は隊の庭で育ててるカモミールで

美味しい紅茶を淹れますから!」

 

 

 

「リーネ、それぞれ戦況に差があるとはいえ

お互い頑張りましょう。

それから久しぶりに会えて嬉しかった♪」

 

「うん!でも無理しちゃだめだよ?

お姉ちゃんは、もう……」

 

 

それぞれ親しい仲同士で

別れの挨拶を交わしている4人は、

水入らずで話せるようにと、

それぞれ離れたところで話している。

その中で唯一、リーネがウィルマに対し

言い淀んでいるような態度を見せる。

 

 

「わかってる。自分の引き際くらい心得てるから。

……でも、戦えるのなら私は最後まで戦うから!」

 

「うん、わかった……」

 

 

そして姉妹同士抱擁を交わし、

しばらくして離れた。

 

 

「あ、そうだ。

リーネ、最後にノアール君と話したいんだけど」

 

「え?ノアールくんと?」

 

「うん。カフェで話してたこと、

彼がまだ納得してるかどうか微妙だから…」

 

 

ウィルマの頼みにリーネは頷き、

自分たちが乗ってきたトラックの中で待つ

ノアールを呼びに行く。

 

 

 

 

 

『ウィルマさん!』

 

「いや~ごめんね。わざわざ来てもらっちゃって」

 

 

 

リーネと、別れを済ませたペリーヌと

アメリーを残し、トラックの後ろに

来てもらうよう頼んでいたウィルマは

ノアールに苦笑を向ける。

 

 

『それでお話とは?』

 

「うん。カフェで話してたことの

続きなんだけど……」

 

『……はい』

 

 

留飲が下がらず放置していた話を

持ち掛けられたことで、ノアールの表情が

再び険しいものになる。

 

 

「キミの事情を詳しく聞く気はないわ。

その歳で、何故そこまで軍人の模範になるような

態度が染みついているのかの理由も…」

 

『……』

 

「でもね、人はそれだけで戦えるほど

強い存在じゃない。どんなに強力な武器も、

どれ程優れた技術を持っていても、

それを扱うのが人間である以上、

その人自身の強さが関わってくる。

それは私達、ウィッチも同じこと……」

 

 

ウィルマはそこで言葉を切り、

中空を見つめる。

 

 

「ネウロイなんて存在が居なければ、

私たちはただ魔法力という不思議な力を持った、

ただの女の子として一生を送っていたはずだった…。

でも現実はこの有様……。

ウィッチたちの中には戦いに向いていない

性格の娘も少なからずいるわ。

いろんな部隊を見てきた私だから解るの…。

そんな娘たちすらも、戦いに行かなきゃならない時、

奮い立たせられるものがある。それが――――」

 

『想い……ですか?』

 

「そう。誰かを、国を、

ネウロイから取り戻したい、守りたいって想いが

人を奮い立たせる力になるの。

友情や愛情もその一つ。

不純だって言われたらそれまでだけど、

だからこそ立ち上がれるのが人間なの」

 

 

ノアールに目線を合わせるように

ウィルマはしゃがみ込み、彼の肩に手を置く。

 

 

 

「ノアール君の周りにもそんな人はいたはずよ。

軍人としてだけじゃなく、

自分だけが持つ信念を胸に戦ってる人たちが…」

 

『っ!!』

 

 

ノアールは、これまでの戦いの中で見てきた

501に属するウィッチたちの戦う理由……

その一面を垣間見てきたことを思い出す。

 

彼女たちの戦う理由の中に、

誰一人として“軍人だからこそ”

という理由以外を持たない人間などいなかった。

 

それどころか、元より軍人ですらなかった

宮藤でさえこれまで戦ってこれた。

“守りたいから”――――その一心を胸に抱いて。

 

 

「そして、キミがこうであるべきと

思っている人たちも、もしかしたら、

信念を持って戦わなければならないほど

弱い存在かもしれない…」

 

『はっ……!』

 

 

その言葉を聞いてノアールが思い浮かんだのは、

 

普段の部隊の皆を見守る

慈愛に満ちた顔とは打って変わって、

悲し気な笑顔を浮かべた、とあるウィッチと……

 

いつも最前線に立ち、常に先陣を切って

ネウロイに向かっていく、その手に持った

扶桑刀のような信念を持つウィッチを……

 

 

 

「ノアール君、勝手なお願いなのは

私もわかってるけど、聞いてくれる?」

 

『…なんですか?』

 

 

 

 

 

 

「リーネを…ペリーヌちゃんを……

501のウィッチたちを守ってほしいの」

 

 

 

 

予想だにしていなかったウィルマの願いに、

ノアールも眼を見開く。

 

 

 

「私の願望も交じってる勝手な想像だけど、

貴方が私達ウィッチと同じように

魔法力を持っているのはきっと、

私達ウィッチを守るためにあるんだと思う」

 

『ウィッチを……守るために……』

 

「だってそうじゃない?

ネウロイとの戦いの矢面に立つのは、

いつだって私達ウィッチだった……

そんな状態が続いてもう何年も経ってる。

それだけの長い年月が経てば、

神様みたいな存在が、私達ウィッチの

助けになってくれる存在を

与えてくれると思わない?」

 

『それが……自分だと?』

 

「私はそう思う……そう思いたいの!」

 

 

ウィルマの希望に満ちた眼差しに、

ノアールは思わず眼を逸らす。

 

 

『自分は……自分がそんな大それた存在とは

思えないです……』

 

「今すぐにでもネウロイ総てを倒してほしい

ってわけじゃない……キミはただ、

ネウロイとの戦いに心の奥深くで怯えている

ウィッチたちの側に

居てあげる存在であってほしい」

 

『それなら、ウィルマさんだって……!』

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は……もうすぐ戦えなくなっちゃうから……」

 

 

 

 

 

 

 

ウィルマの言葉にノアールの言葉が途切れる。

 

 

 

『ウィルマさん……まさか……!?』

 

「うん。私、もう20歳なんだよね……。

情けないし……

キミみたいな子に押し付けるしかできない、

不甲斐ない年長者だけど……

見守っていきたいって気持ちは本当だから

………だから、ね?」

 

『………約束はできません。

でも、かつての自分よりも、

今の自分は501の皆さんが傷つくことを

嫌悪しているのは、本心です……。

今はそれだけしか言うことができません……

とても、皆さんの心に寄り添うことができる

存在になるなんて……』

 

「今はそれでいいわ。

コレは私の勝手な我儘だから……」

 

 

 

そう言うと、ウィルマはノアールを抱きしめる。

 

 

 

「ごめんね。後が無いからって……

キミみたいな小さな男の子に

大役を押し付けるお姉さんで……」

 

『こちらこそです。今尚自分という存在が、

そこまで強いものだと思えないゆえに、

約束できない自分で……』

 

 

 

 

 

「ウィルマさ~ん!」

 

「お姉ちゃん!そろそろ出ないと!」

 

 

 

 

アメリーとリーネの声に二人は抱擁を解いた。

 

 

 

「長話しちゃったね。そろそろ帰らないと」

 

『はい。……ウィルマさん、

どうかお気を付けて…』

 

「うん、キミもね…」

 

 

 

その会話を最後に二人は

それぞれのトラックへと乗り込み、

それぞれの部隊のある方角へと帰っていった。

 

 




オリジナルな上に
次回のシリアス回に繋げる回
だったので執筆当初はかなりの難産でした。

ノアールの目指すべき場所の導き手になれるよう
ウィルマには立ち振る舞ってもらったわけですが、
違和感は無かったでしょうか?

年長者らしくもっと上手い感じの諭し方で
言い聞かせられれば良かったのですが、
どうにも回りくどいやり方しかできず…
この結果です…

今後のシリアス回もそういった
部分が目立つかもしれませんが、
どうかご容赦ください

それでは
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