Unknown Wizard Chronicle 作:シノギ
誇り高い軍人だったのだと思います…
しかし、人間誰しも追い詰められれば
非合法な行いをしてでも
どうにかしようと躍起になるもの…
でもそれは巡り巡って自分に返ってくる…
その代償が、自分たちが作り出した
“人知を超えた存在”によって
“二度”も返されれば、
最早憤ることも抗う気力も
失ってしまうと思います…
そんなことを思いながら
此度の一部の描写を執筆しました。
お楽しみください
――――ウォーロックの罠から宮藤を救うため、
ノアールが不意打ちという形で乱入する少し前……
「なんか……拍子抜けっていうか……」
「ああ。てっきり抵抗の一つでも
見せてくるのかと覚悟していたのだが……」
意外なものを眼にした表情を浮かべる
エーリカとバルクホルン。
先のウォーロックから放たれたビームで、
元501基地の西側が崩壊、炎上したのを
基地の近くにあった廃屋から見ていた
バルクホルン、エーリカ、そしてミーナは、
その事態で混乱しているであろう司令部を
制圧しようと乗り込んだのだ。
案の定、先の攻撃で混乱している
基地周囲の警備をしていた一般兵たちは彼女たちが
現れると同時に機関銃で制圧しようと動くも……
知っての通り、ウィッチのシールドを普通の銃弾が
突破できるはずもなく、逆に気絶という形で
無力化されていった。
そうして司令部にあたる管制塔に突入した三人は、
そこで信じられないような状況に直面した。
ウォーロックの突然の暴走から始まり、
やむを得ず強制停止を敢行するも、
それでも尚味方への攻撃を止めない事態に
司令部は大混乱に陥っていた。
自分たちの力ではどうにもできず、
尻拭いをさせる形で最終的に処分予定だった
ノアールに特攻覚悟の出撃を命じた。
その際に、ノアールから語られた……
恨み節の一つもない、純粋な人類への
献身を示す言葉にトレヴァーを始めとした
副官や部下の兵士、研究者たちは、
そのあまりにも大きすぎる自責の念に
駆られたがゆえに、誰一人として
その場から動くことが出来なかったのだ……
そして、ミーナたちが突入してきてからも
その状態は変わらず、
一切の抵抗の姿勢を見せることなく
その場にいた全員、司令部の床に
何本も通っているケーブルによって
縛られることとなった。
「たとえ貴様らウィッチではない、
一般兵が相手だったとしても、
我々の行った取り返しのつかないことを考えれば、
抵抗する権利など無いに等しい……」
「その潔さは実にご立派ですが……
これほどの事態を引き起こした後のその態度では
説得力が皆無だとお気づきですか、閣下?」
つい先ほどまでトレヴァーが立っていた壇上の上に
ミーナが陣取り、その卓上に広げたファイルに
目を通しながらミーナは呆れ交じりの溜息を吐く。
彼女が眼を通していた資料はすべて、
軍におけるウィッチの立場を失墜させ、
トレヴァー達が軍の中心的存在になるために
費やしてきた、非合法な所業が
記載されているものばかりだった。
友人から事前に情報を貰っていたとはいえ、
中には軍関係者が行うとは思えない
卑しい所業も書かれており、
ミーナはその有様に怒りを通り越して
呆れ顔を浮かべていた。
だからこそミーナやバルクホルン、
エーリカは疑問を持った。
これほどの卑しい画策を
積み重ねてきたにもかかわらず、
この期に及んで自分たちの罪を認め、
悔い改めているような彼らの態度に……
単に今度の事態を目の当たりにしたから……
という理由だけではないだろう……
「我々は、貴様らウィッチに嫉妬するあまり……
ウィッチを超える力を手に入れようと画策し、
そして手に入れた。
今となっては何もかも白状するが……ネウロイの力を
制御できる人類の英知の結晶とも言うべき
ウォーロックを完成させ、
もはや我々に恐れるものなど何もないと
有頂天になっていたのだ……」
自白を始めたトレヴァーの言葉に、
ミーナとバルクホルンが耳を傾ける。
エーリカは難しい話は興味ないのか、
窓の外に見える赤城の様子を見ていた。
「ウィッチを超える……そのためならば
たとえ敵であるネウロイであろうとも
利用することに躊躇いなどなかった……
人間としての誇りを捨てるに等しいその意味を、
我々は理解していなかったのだと、
今ならば実感できる……」
「誇りか……今の自分達にそんな言葉を使う
権利など無いと知って口にしているのか?」
「ああ。ヤツの……
我々人類への献身を見て思い知らされた……」
「ヤツ?」
明確化していない誰かを指すその言葉に
ミーナとバルクホルン、
エーリカは少しばかり首を傾げる。
「人類の英知の結晶で制御できたネウロイの技術を
力としか認識していなかったがために……
その制御を失ったモノがどうなるかを
想像すらしていなかった……その結果我々は、
ヤツ以上の化け物を作り出してしまった……」
「閣下……貴方の言っている
ヤツとは……まさか!?」
「………ノアールだよ……
ヤツもまたウォーロックと同じ、ネウロイの力を
制御するという目的のために作られた、
ネウロイと人間の混ざりモノの存在だ……」
ついにトレヴァーの口から、
ミーナやバルクホルン、エーリカに
ノアールの正体が明かされてしまった。
◇◇◇
所変わって、沈みつつある赤城付近の上空。
突然のノアールの乱入によって
ウォーロックから引き離された宮藤は、
彼の姿を見てしばらく呆然としていた。
すると――――
ビュンッ!!ビュンッ!!
「うわぁっ!!」
『くっ!!』
海面近くまで叩き落され、ホバリングしていた
ウォーロックからビームが放たれ、
二人はシールドと魔法壁を展開してそれを防ぐ。
宮藤はシールドで防ぎながらウォーロックを見た。
今や露出していたコアの入ったカプセルは収納され、
絶え間なく自分とノアールに向かって
ビームを撃ち続けている。
その様子と、以前の人型ネウロイの様子とを見比べ、
ようやく宮藤は確信した――――
「違う……あのネウロイとは違う!!敵なんだ!!」
『そう言えるのなら、
もう心配はいらないようですね……』
同じくウォーロックからの攻撃を防いでいた
ノアールの言葉に宮藤は彼に目を向ける。
『コイツは自分が引き受けます。
宮藤さんは下がってくれて構いません…』
「なんで!?私も一緒に戦うよ!」
『コレは自分の……
いえ自分の上官の不手際で起こったこと。
自分はその責任を取らなければならない……
貴女方ウィッチが出しゃばるところじゃない……』
「でも!……あっ!!」
二人が口論をしている内に、
ウォーロックは標的を赤城に切り替えたのか、
その場から飛び去って行く。
『逃がすか!!』
「ノアールくん!!」
それを見た二人はウォーロックを追いかける。
急降下したウォーロックの背面に
宮藤が13mm機関銃の銃弾を浴びせる。
それを躱したウォーロックの前に
ノアールが立ち塞がり、光線を浴びせると、
ウォーロックの両腕部から放った
ビームによって相殺され、今度は急上昇する。
自身より下に位置している宮藤やノアールに向かって
続けざまにビームを放つウォーロック。
それを二人はシールドで防ぐ、光線で相殺するなどで
応戦し、お互いウォーロックに肉薄する。
光線と銃弾、ビームを交わしながら
ドッグファイトを繰り広げるノアールと宮藤、
そしてウォーロック。
その間、宮藤とノアールだけは
言葉も交わし合っていた……
『いつまで飛んでるつもりですか!?
この場は自分一人で充分です!!』
「そんなの関係ないよ!
私は守りたいから戦ってるんだよ!!」
『だったら赤城の船員の方々や、
坂本少佐やペリーヌさんを
守ってればいいでしょう!!
その方が自分も気が楽です!!』
「それだけじゃない――――」
「今の私は、ノアールくんも守りたいのッ!!」
『ッ!!?』
ビュンッ!!
宮藤の言葉に動きが止まったノアール。
その隙を突いてウォーロックがビームを赤城の船体を
横切るように放ち、爆発を引き起こした。
今や赤城の船体は船尾部分の大半が沈んでしまい、
船首部分が上に傾いている状態にまでなっていた。
甲板の上で戦いを見守っていたペリーヌと坂本は
それ相応に不安定な体勢になっていたことから、
先の爆発でその身が大きく揺れてバランスを崩し、
落ちていってしまった。
「あっ!!……くっ!!」
それを見た宮藤は助けに行こうと前に出るが、
そうはさせないと言わんばかりに
ウォーロックのビームが宮藤の道を阻む。
幸い、ペリーヌは片手で坂本の手を掴み、
もう片方の手で甲板の縁を掴んで耐え忍んでいた。
とはいえ、状況は芳しくない。
いくらウィッチとは言っても、
ペリーヌの筋力は年相応の域を出ておらず、
人一人分を長時間掴んでいることなど
そう長くはできなかった。
「ノアールくん!………っ!?」
自分が動けない以上、
ノアールに助けに行ってもらおうと彼を振り返る。
が、彼は顔を俯かせて空中で佇んでおり、
宮藤は首を傾げる。そして――――
『守る……?自分を……守るですって……?』
『そんな……そんなことをされる筋合いも
権利もッ……自分にあるはずないッッ!!!』
ビィィィ!!
ノアールは怒号と共に光線を
ウォーロックに撃ち放つ。
宮藤を妨害するためにビームを放っていた
ウォーロックは、防壁を張ることで光線を防ぎ、
再び距離を取る。
それが二人が言葉を交わす時間を作ることとなった。
『気を失っていて知りませんでしたか!?
自分は皆さんを裏切った!何もかも嘘だった
最低な存在なんですよ!!?』
「知ってるよ!!
目を覚ましてから皆に聞いたからッ!!」
『だったらそんなヤツを守りたいだなんて
思わないでしょうッ!!?なのになんで!!?』
「ノアールくんが“嘘つき”だからだよッッ!!」
その言葉にノアールの思考に空白が生じた。
『はぁ?嘘つき…だから?
だから守るって……意味が――――くっ!!』
視界の端に見えたウォーロックのビームの光に
気づいたノアールは、魔法壁を展開して受け止めた。
そのビームは、放っておけば
“赤城の船体に直撃”するものだった……
ビームを防がれたウォーロックは別方向から
赤城にビームを放とうと、飛び回り始める。
ノアールはソレを阻むような位置に陣取るよう
飛び始め、宮藤はウォーロックの隙を伺いつつ
機関銃を撃ち放つ。
その間、宮藤はノアールに追及する。
「本当に私達を裏切ったなら、
そんな風に坂本さんやペリーヌさんを
守ったりしないでしょうッ!?」
『ッ……光が見えたから
反射的に防御しているだけです!!』
「じゃあなんで!さっき私を助けてくれたの!?」
『助けたわけじゃありません!!
ウォーロックを攻撃した時、
偶然貴女がそこにいただけですっ!!』
「私に坂本さんやペリーヌさん!
赤城の皆を守るようにって言ってくれた!!」
『まだ未熟な貴女が邪魔だったからですよッ!!』
「でもそれは!
私を心配して言ってくれたんでしょうッ!!?」
『だから!!自分は貴女が
思ってるようなことは微塵も――――!!』
「微塵も思ってないならッ!!
そんな辛そうな顔するはずないよッ!!」
宮藤の言葉に、ノアールはようやっと自覚した。
自分の表情が苦痛に歪んでいることを……
ブゥゥゥン!!
その時、二人と一機が戦っている空域に
別のエンジン音が轟く。
見るとそれは、オレンジ色のカラーリングをした
複葉機のソードフィッシュだった。
「ルッキーニッ!!」
「イェイ!ジャンジャジャーンッ♪」
その機体に乗っていたのは
シャーリーとルッキーニだった。
赤城から立ち上る黒煙を見て飛んできた後、
宮藤がウォーロックと戦っているのを見て、
さらにはノアールまでも戦っているのを
見届けていた二人は武装もしていないこの機体で
参上したのだ。
シャーリーの意図を汲んだルッキーニが
後部座席から立ち上がり、
使い魔の尻尾と耳を出現させる。
「ルッキーニちゃん!……あっ!!」
『シャーリーさん!フラ……ッ!
くっ……どうして二人までここにッッ!!!』
宮藤とノアールの背後をウォーロックが通り過ぎ、
乱入してきたソードフィッシュに狙いを定めて
ビームを放つ。
そのビームの雨をシャーリーは
巧みな操縦テクニックで躱していく。
シャーリー達を攻撃するウォーロックの背中に
宮藤の放った機関銃の銃弾が直撃し、
ソードフィッシュへの攻撃を断念したウォーロックは
赤城に急接近する。
そしてその船体をビームで攻撃し、
振動を引き起こす。
「キャァァァァ!!」
坂本の手を決して離さないと
耐えていたペリーヌだったが、
それでも限界が来ていた。
そこに追い打ちとばかりにウォーロックによって
引き起こされた振動によって、ペリーヌの手は
とうとう甲板の縁から離れてしまった。
坂本はせめてペリーヌだけでも守ろうと
彼女を抱きしめる。
二人が落ちた瞬間に宮藤も急いで降下したが、
それでも間に合わない……
万事休すかと思われたその時――――
ブゥゥゥン!!
「よっしゃぁぁ!!」
落ちていく坂本とペリーヌの真下を
オレンジのソードフィッシュが滑り込んだ。
「ナイスキャッチ!!」
ルッキーニの座っていた後部座席に
二人を収めるのに成功したシャーリーは
思わずガッツポーズを決める。
そしてそのために座席の縁に座る体勢になっていた
ルッキーニも――――
「おっかえ――――」
笑顔で二人にお帰りと言おうとしたその時……
不意な風の流れか……はたまた油断していたのか……
ルッキーニの身体が機体から浮いてしまった……
「へっ!?」
「ルッキーニ!」
「ルッキーニさん!」
それを近くで見ていた坂本とペリーヌは思わず叫ぶ。
だが無情にも、ルッキーニの身体は
二人の目の前から消えて――――
トサッ!!
何かが抱える音と共に再び宙に浮かび上がった。
ルッキーニは自分が横抱き――――
お姫様抱っこをされていることに一瞬呆然としたが、
それをしている“彼”を眼にした時、
喜色満面の顔でその名を呼んだ――――
「ノアールッ!!」
『……なんでこういう時に限って
落ちたりするんですか貴女は……』
堪えるような顔をしながら
ルッキーニを見やるノアールだったが、
その腕で抱えた彼女を離すようなことは
しなかった……
「ノアール!お前もナイスセーブだ!」
ルッキーニが落ちたことに
肝を冷やしたシャーリーだったが、
ノアールがそれを助けた姿を見た瞬間、
彼に向かってサムズアップした。
『この複葉機、武装してないですよね!?
どうしてお二人はこんなところに!?』
武装していないだけじゃなく、
もとより廃棄寸前だったものを飛べるように
修理しただけの機体のため、
戦闘向きのスペックでないことは確か……
そんな体たらくで、どうして飛んで来たのかと
ノアールは問い掛ける。
「理由なんか簡単だよ!」
「芳佳が戦ってる!ノアールも戦ってる
ってなったら、助けるしかないじゃん♪」
シャーリーとルッキーニの
あっけらかんとした答えに、
ノアールは堪えるような顔をする……
『宮藤さんはともかく……自分なんて……』
「いい加減素直になったらどうだ、ノアール?」
その時、後部座席で姿勢を整えた坂本が
ノアールに話しかける。
その隣にいるペリーヌも呆れた顔で彼を見ていた。
「お前が我々を守ろうとしていた姿、
魔眼を使わなくともしっかり見ていたとも!」
「第一、あんな形だけの嗤い方……
役者としては赤点もいい所ですわ!」
『坂本少佐……ペリーヌさん……』
ビュンッ!ビュンッ!
その時、ウォーロックのビームの発射音が響く。
見るとそれは、赤城の甲板の上に沿って飛んでいる
宮藤を狙ったものだった。
「行って、ノアール!!」
それを見たルッキーニは、ノアールに声をかける。
「あたしらが戻ってくるまでの間、
宮藤の援護を頼む!」
「すぐ戻ってくるからね!!」
ノアールはルッキーニを後部座席の縁に
しっかりと座らせ、それを見届けたノアールは
複葉機の側から離れ、シャーリーもそのタイミングで
機体を元501基地に向け、
全速力で引き返していった。
その別れ際――――
「それから!」
『?』
「遅れちゃったけど、
プレゼント……すっごく似合ってるよ♪」
『っ!!』
何も答えずにルッキーニの側を離れたノアール。
その彼の着ているブリタニア空軍服の
胸襟の陰に当たるところに、
あの彗星のバッジが煌めいていた……
◇◇◇
ダダダダダッ!!
ビュンッ!
「くっ!!」
ウォーロックに向けて機関銃を放ちつつ、
ビームをシールドで防ぐ宮藤。
ビィィィ!!
光線を放ち、ウォーロックの攻撃を中断させて
“宮藤を援護”しているノアール。
そこでウォーロックの攻撃が止み、
ノアールは宮藤の側で制止する。
「ねぇノアールくん、もう嘘吐くの止めよう?」
『………』
宮藤が眉をハの字にした笑顔でノアールを諭す。
彼の居る位置は、宮藤の前に
立ち塞がる形になっており、どこからどう見ても
宮藤を守ろうとしている体勢だった……
「どうして私達から離れようとするの?
離れるために嘘を吐くの?」
『………嘘だらけの自分が……
何を言った所で……それも全部嘘になる……
嘘で皆さんを傷つけるくらいなら……
離れた方がいいんです!!』
「でも!私達は本当のノアールくんを知らない!
全部が嘘だって言う前に、
本当の貴方を教えてほしい!!」
『………知らない方がいい……
本当の自分を知ったら……
皆さんきっと――――はっ!』
二人の目の前でウォーロックが
両腕部を左右に広げる。
その状態のまま制止したため、
二人は警戒したまま身構える。
次の瞬間、両腕部にあるビーム発射口から
何本ものビームが解き放たれ、
宮藤とノアールに殺到する。
「あぁっ!!」
『くそっ!!』
シールドと魔法壁を展開しビームを防ぐが、
間髪入れずに何度も撃ち放ってくるビームの勢いに、
二人は押され始める。
その時――――!
ダンッ!!
ウォーロックの後方から銃声が響き、
ウォーロックの左脚部分が爆発した。
推進機構を内蔵していた片方を失って
バランスを崩したウォーロックは墜落し、
沈みかけていた赤城の船体に激突し、
赤城諸共海中に没した。
「はぁ……はぁ……やった……」
『(今の正確な射撃………まさかっ!?)』
肩で息をする宮藤は
ようやっと戦闘が終了したと安堵する。
対してノアールは、先の援護射撃の命中精度から、
誰が撃ったのかを予測して
弾丸が飛んできた方向へと目を向ける。
そこには――――
「お待たせ!」
「芳佳!ノアール!」
「芳佳ちゃん!」
シャーリー、ルッキーニ、リーネ、
エイラ、サーニャ……
「よく耐えたな宮藤!」
「坂本さん!」
ペリーヌ、ミーナと、
その二人に支えられた坂本……
「これは必要なくなったようだな…」
「ていうか、本気のノアールだったら
あんな奴ボコボコだったかもねぇ~」
宮藤のストライカーユニットを抱えた
バルクホルン、そしてエーリカ……
第501統合戦闘航空団、
ストライクウィッチーズ全員が集結した。
◇◇◇
シャーリーとルッキーニが
坂本とペリーヌを助ける少し前、
ミーナ、バルクホルン、エーリカは
司令部の制圧と拘束――――
とはいうものの、
殆ど自主的に拘束を受け入れた形だが
――――を終えて格納庫に向かっていたのだ。
そこでH型鋼で閉じられた格納庫前で
立ち尽くしていたエイラ、サーニャと合流。
バルクホルンの怪力魔法でH型鋼の一本を引き抜き、
その隙間から全員分のストライカーユニットを
引き出していた。
そこにシャーリーの操縦する複葉機が到着。
少し遅れてリーネが滑走路に到着し、
晴れて全員で宮藤とノアールの元に
駆け付けることが出来たのだ。
『皆さん……どうして……?』
ペリーヌが宮藤の履いていた
ストライカーユニットを坂本に履かせ、
バルクホルンが宮藤に本来のユニットを
履かせたのを見届けた後、
ノアールは全員を見渡して尋ねる。
「ノアール君……貴方のことは、マロニー大将……
いえ、元大将からすべて聞いたわ」
『ッ!!?』
いの一番で話し出したミーナの一言に、
ノアールは顔を強張らせる。
「私やトゥルーデ、エーリカは
直に聞いたから知っているけど……
この場にいる皆にも話しておくわ。
ノアール君、いいわね?」
『………ミーナさんやお二人に
知られてしまった以上、隠していたところで
意味はありません。ご随意に……』
「………皆、落ち着いて聞いて――――」
真実を話す許可を貰おうとミーナは
ノアールへと尋ねるが、
当人は諦めたような顔で許可した。
「ノアール君の正体は、
マロニー元空軍大将がウォーロック計画と
同時期に進めていた計画で生まれた、
人間の身でネウロイの力を行使するために
作られた人造生命だったの……」
ミーナはついに、
501部隊の全員にノアールの正体を明かした……
先に真実を聞いていた三人以外の全員、
しばらく一言も言葉が出なかった。
「え……?ノアールが、ネウロイ?」
「ネウロイの力を行使する……
人造生命って……冗談だロ?」
ルッキーニとエイラ――――ノアールの姉の二人は、
同じく姉であるバルクホルンを見るが、
悔しげな彼女の顔を見て、
それが真実だと否が応にも納得させられる。
他のウィッチ達も、
驚愕や戸惑った顔でノアールを見やる。
そんな彼女たちの様子を見たノアールは、
唯一露になっている右眼辺りに手を当てて
空を仰ぐように顔を上げる。
『フッ……あ~あ、バレちゃったか……
だから言ったじゃないですか、
こんな嘘だらけの最低最悪な男……
二度と会いたく――――』
バシッ!!
「この期に及んで
いつまで意地を張っているんだお前は!!」
その時、バルクホルンがノアールの手を掴んで
顔から引き剥がし、言葉を遮る。
「それに、そのワザとらしい嗤い方も止めろ!!
見ているこっちまで辛くなってくる!!」
ウィッチ達の眼前に曝されたノアールの顔は、
苦痛に歪み、涙を浮かべていた。
『だって……そうじゃないですか……』
顔を見られたことで、
ノアールは堰が切れたように言葉を溢れさせた。
『これまで皆さんと接してきた自分が!
さも人間のように生きていた自分が!!
泣いたり怒ったり!
仲間に!家族に!!姉弟になったり!!!
皆さんを守りたいだなんて思ったり!!
そんな自分が化け物だったなんて……
皆さんの敵であるネウロイだったなんて知って!
皆さんに言えると思いますか!!?
それを知って皆さんを傷つけるくらいなら!!
いっそ嫌われて離れてくれた方がよかったんです!!
そのために自分は、
皆さんをバラバラにしたのにッ……
どうして……戻ってくるんですか……!』
一人で砂浜に飛び出し、
誰もいないところでぶちまけた本音を
今度は彼女たちの前で曝け出したノアールは
肩を震わせて俯く。
そんな彼に、バルクホルンの隣に来る形で
ミーナが寄り添う。
「ノアール君……貴方の記憶が無かったのは、
そもそも“貴方という人格”が実験の際に起こった
事故で初めて生まれたからだと聞いたわ。
たしかに、貴方はウィッチを超える兵器として
作られた存在かもしれなくて、結果的には未完成で
生きている存在かもしれない……でもね――――」
「私達を傷つけないように、嘘で自分から……
そして危険から遠ざけようとしたその心は、
紛れもなく……ノアール君という人間の
想いなんじゃないかしら?」
『っ!!……ミーナさん……』
ミーナの言葉に顔を上げるノアール。
「そもそも、お前が望んで
嘘の存在になったわけでもないだろうに……
身勝手な軍の上官たちの思惑まで、
お前が背負う筋合いなんてない!」
『トゥルーデ……姉さん……』
「完璧を求めたら、あんな欠陥品になっちゃって……
どうせ作るんなら、ノアールみたいな
素直で解りやすいヤツの方が
よっぽどマシってもんだよ!」
『エーリカさん……』
「何もかも全部嘘だっテ、お前は言ってたけド……
私らの思い出にあんなに印象を残しておいテ、
簡単に忘れられると思うなよナ、バカノアール……」
『エイラ姉さん……』
「私とお父様の思い出の曲を褒めてくれて
とっても嬉しかった。あんなに優しい貴方を、
嘘だなんて思いたくない!」
『サーニャさん……』
「人の人格は自分の中で生まれるのが
当然のことですが……少なからず、
触れ合った人々の影響もあるものですわよ!
そういう意味で見れば貴方は、
私が出会ってきた中では紳士的で、
将来有望ですわよ!自信を持ちなさい!」
『ペリーヌさん……』
「そうだよ!
誰かのために怒ったり!嬉しくて泣いたり!
そんなの私達人間と変わらないよ!!
ネウロイと混ざってたって関係ない!」
『リーネさん……』
「あたし的には全然OKだけどな?
難しく考えるのが面倒ってのもあるけど…
リベリオン的には、
未知との交流ウェルカム!だぜ!」
『シャーリーさん……』
「お姉ちゃんはどんな弟でも関係ないの!
ノアールがネウロイでも、
姉さんって呼んでくれるならあたしは弟として
ノアールを絶対に離さないから!!」
『フラン…姉さん……』
「ネウロイは確かに敵だ。
だがなノアール、人間はお前の思うように…
物事の清濁をきっぱりと分けられるほど
器用じゃないんだ……今まさに、
お前がネウロイだと知って、すぐに結論が出せない
私がいることに気づいて感じた……
そういう意味では、未完成だと呼ばれたお前と、
未熟な私達は変わらない。
だからな、なんだかんだと理由をつけて、
私達から離れることは無いんだ」
『坂本……少佐……』
分かり合えないからと決めつけて
引き離した彼女たちの、
自分を肯定してくれる言葉に、
感動で言葉が出ないノアール。
「ノアールくん……」
そんな彼に、最後の一人
――――宮藤が声をかける……
「私ね、ネウロイの巣の中で、あの人型のネウロイと
手を繋ぐことが出来たかもしれないの……。
結局その前にあのネウロイは消えちゃったから、
それは叶わなかったんだけど…。
それから、あのウォーロックを見て思ったの……
“あのネウロイ”だけが、特別だったんだって……。
だから私、もうネウロイとは
分かり合えないんだって諦めてた……」
『………』
「でもね――――」
「ネウロイとは分かり合えなかったけど、
ノアールくんとなら分かり合える
って信じられるから!」
『宮藤さん……!』
「皆がノアールくんに思ってる全部が
ノアールくんなんだよ!
それは嘘でもなんでもない!
そしてそんなノアールくんを、
私達は理解したいと思ってる!
だから大丈夫だよ!!」
そう言って宮藤はノアールに手を伸ばす。
人型ネウロイに向かって手を伸ばした時のように……
そんな宮藤の手にノアールもまた手を伸ばす。
そして――――
パン……
それぞれの掌が重なった。
宮藤にはノアールの温かさが、
ノアールには宮藤の温かさが伝わる……
「一緒だよ……私達も、ノアールくんも!」
『っ!!』
それを聞いたノアールは、目尻から涙を流す。
『ああ……触れているのはこの掌だけなのに……
どうしてこんなにも温かく感じるのでしょう……
掌だけじゃなくて……
この胸の中も、温かく感じるのは何故でしょう……。
混じりけの無い存在として生まれていたら……
こんなにも回り道することは
無かったんでしょうか……』
そしてノアールは
“悲し気な笑み”を浮かべながら空を見上げ――――
『本当の人間に……なりたいなぁ……』
と、呟いた。
悲しい顔をしながらノアールを見ていたウィッチ達。
そんな中、エイラは徐にポケットから
タロットカードを一枚取り出す。
さながらノアールの運勢を占うために
という意図もあっての行動だった。
が……
「なあ皆、ちょっとヤバいかモ……」
エイラのその言葉に、全員彼女に目を向ける。
取り出したカード――――
“塔のカード”
を全員に見せた矢先、
ザバァァン!!
赤城とウォーロックが沈んだ辺りの海面から
水柱が吹き上がった。
ストライクウィッチーズ再集結!
そして、ネウロイと人間の混ざりモノである
ノアールとの和解……
正史においては仄めかす程度にしか無かった
人間とネウロイの共存を
こういった形で描写することが出来ました。
とはいえ今度の展開は、
ウィッチ達がノアールの正体を、
そして彼自身も自分の正体を知らなかったからこそ
起こった奇跡だったことを忘れてはいけません。
そういった邂逅から始まって…
短いようで長く深い交流を重ねて…
最後の最後でこうして解りあうことが出来た…
このご時世への
こじ付けに聞こえるかもしれませんが…
今の自分達人間同士も、こういった形で
解り合える機会が訪れればいいですね…
最後、しんみりしてしまいましたが…
次回ガリア開放作戦、最終決戦です!
最後までお楽しみください!
それでは