Unknown Wizard Chronicle 作:シノギ
とうとう終わりが近づいてきましたね…
アニメに限らず、シリーズ物の特撮でも
最終回だけ見るのを先送りにしてしまう
性分でして…
それがシーズン的にもう終わってるものなら、
あと何話で終わってしまうと解ってると特に…
ストライクウィッチーズが全員集結し、
ネウロイと人間の混ざりモノ
という事実が発覚したノアールが
彼女たちに受け入れられた矢先……
ウォーロック諸共海中に没した
赤城が沈んだ辺りから水柱が吹き上がる。
それをウィッチ達やウィザードだけでなく、
脱出艇にてその海域を離れていた杉田艦長を含む
赤城の船員たちにも見えていた。
そんな彼らの前に、ソレは現れた……
まず先に姿を現したのは、
リーネの狙撃によって推進機構を失い、
赤城に突っ込んでそのまま海中に没した
黒いウォーロックだった。
が、そのウォーロックに付属して……いやむしろ、
その全貌を見てしまえば
“ウォーロックが”付属していると言っても
過言ではない。
海から浮上し、
そのまま空へと飛びあがったソレは、
艦載機を離着陸させる滑走路の役割をする甲板や、
艦長などの上位階級の人間が乗っている
指揮所にあたる部分がある――――
言ってしまえば、
ウォーロックが船首に取りついた赤城の形を
模した巨大ネウロイが姿を現したのだ……
巨大ネウロイ………
名づけるなら戦艦ネウロイは
海から浮上した後も上昇を続ける。
その最中、あらゆる発光機関から
一斉にビームを掃射する。
それらは全て、集結していた
ストライクウィッチーズとノアールに殺到し、
全員は一時散開した後、
戦艦ネウロイを追いかける。
「美緒、できる!?」
「大丈夫だ!」
ミーナに抱えられる形で飛んでいた坂本は
一度ミーナから離れて自力で飛び始める。
そして互いに手を繋ぎ、
坂本は魔眼による内部の透視と、
ミーナの空間把握能力を組み合わせ、
戦艦ネウロイの内部を調べ始める。
二人の固有魔法で見えてきたのは、
船首に取りついているウォーロックの
脚部から、木の根のように伸びた赤い光が
全体に広がっている光景だった。
「な、なんだこれは!?」
「ウォーロックと赤城が融合している……
これじゃあ手のつけようがないわね……」
元より巨大だった赤城の船体そのものが
ネウロイ化してしまったことで、
通常の攻撃では歯が立たない上に、
標準装備されている武装や、並びに発光機関
そのものもビームを放つ武装になるため、
攻防共に隙が無い、
とんでもない怪物と化してしまった……
「だが…やるしかない!」
それほどの怪物を前にしても、
坂本やミーナ、他のウィッチ達や
ノアールの心は決して屈していなかった……
「アレはもうウォーロックでも
ネウロイでもない……別の存在だ!
我々ウィッチーズが止めなければ誰も、
アレを止める者はいない!」
この場に居る全員に
言い聞かせるように言い放った坂本の言葉に、
全員が各々頷く。
「そして、ノアール!」
『ッ……はい!』
坂本に個別で呼ばれたノアールは
彼女の方に目を向ける。
「お前も我々と共に戦ってほしい!
我々が、お前が思っているほど、
か弱い存在ではないということを、
その眼に焼き付けてやりたいんだ!!」
その言葉に、ノアールは
他のウィッチ達に目を向け、
それに応じるように全員が頷いて見せた。
『わかりました……でも、この場でもう一度、
皆さんに言わせてください――――!』
そこでノアールは胸襟の陰に隠してつけていた
彗星のバッジを見える位置につけ直す。
そして――――
『自分も、守るために……
貴女方ウィッチを守るために!
一緒に戦わせてくださいッ!!』
ノアールが、一度は捨ててしまった決意を
もう一度宣言した直後――――
「っ!!……来ます!!」
サーニャの魔導針が
ネウロイが攻撃態勢になったことを感知した。
その直後、戦艦ネウロイの発光機関や砲塔から
ビームが一斉掃射され始めた。
それを躱しつつ、戦艦ネウロイの船体に
追従するウィッチ達とノアール。
「ストライクウィッチーズ、
並びにノアール少尉!全機攻撃態勢!
目標、赤城及びウォーロック!」
『「「「「「了解ッ!!」」」」」』
このブリタニアにおけるガリア開放作戦、
最後の戦いが幕を開けた……
◇◇◇
全員が攻撃に移る前に、坂本とミーナは
戦艦ネウロイ内部にあるであろう
コアの特定に当たっていた。
「コアは赤城の機関部だ!」
「外からは破壊できそうにないわね……
内部から辿り着くしか……」
二人の固有魔法のおかげで位置が特定され、
本来の赤城における機関部に位置する場所に
コアがあると解った。
この戦艦の内部構造は本来の赤城と
ほとんど同じ形になっているようだ。
「内部を知っている私が――――」
『少佐!』
突入班に名乗りを上げようとした坂本を
ノアールの声が遮る。
それと同時に、坂本はいまだに握られている
自身の手が強く握られる感触を覚え、
見てみると案の定“行かせない”と
言いたげな顔で見るミーナと目が合った。
『いい加減ご自分の容体を自覚してください。
この戦艦の内部を知っている方なら、
他にもいるでしょう?』
「私が行きます!」
「っ! 私も行きます!」
「わ、私も内部なら多少は解りますわ…」
ノアールの言葉に真っ先に名乗りを上げる
宮藤とリーネ。
それに遅れる形でペリーヌも名乗りを上げる。
「ありがとう♪」
「べ、別に貴女のためじゃありませんわ!」
敬愛する坂本が無茶をしないように……と、
口には出さず、
ペリーヌは内心そう呟いていると――――
「ペリーヌ!お前がついていてくれれば心強い!」
「は、はい!」
その坂本からの激励の言葉に
表情が明るくなるペリーヌ。
突入班が決まった矢先、
ノアールはミーナに振り向く。
『自分も突入班に参加したほうが――――』
「心配ご無用ですわ!」
三人の身を案じたノアールの進言に
真っ先に反応したのはペリーヌだった。
「そういった一面は確かに貴方の美点ですが、
度が過ぎるとお節介になりますわよ!」
「ノアールくんはむしろ、
外で皆と一緒に戦って!」
「大丈夫だよ!リーネちゃんも
ペリーヌさんもいるから!」
「三人の言う通りだ!」
突入班に便乗して坂本もノアールを諭す。
「言わなかったか?
我々は、か弱い存在ではないと……
その証を、その眼に焼き付けてやると」
「信じて役目を託すこと……
それもまた大切なことよ?」
坂本、そしてミーナの言葉に
ノアールは三人に振り返る。
『わかりました。宮藤さん、
リーネさん、ペリーヌさん、どうかお気をつけて』
「ガリアを開放するのは私の悲願!
これくらいの困難を乗り越えられなくて
どうするというのです!!」
気品溢れる金髪を翻しながら、
ペリーヌは啖呵を切った。
それを皮切りに、
ミーナは他のウィッチ達に指示を送る。
「では、その他各員は三人の突入を援護!
突破口を開いて!」
「「「「「「了解!」」」」」」
突入班の三人と坂本、
ミーナ以外のウィッチ達が応答し、
戦艦ネウロイの各所へと飛んでいく。
「それからノアール君――――」
最後にミーナは、
ノアールに“特別な指示”を告げた。
◇◇◇
「攻撃開始!!」
戦艦ネウロイが雲の上に出たところで、
ウィッチ達は攻撃を開始した。
「他の連中に手柄を残すなよ、ハルトマン!」
二丁のMG42を構え、
バルクホルンが意気込んでいると、
「にししっ……先に行くよ!」
そんな彼女を出し抜く形でエーリカは先行し、
戦艦ネウロイの側面に装備された
砲塔の破壊を始める。
「シュトルムッ!!」
エーリカの固有魔法“疾風”。
自身の周囲にある大気とエーテルを自在に操り
機動力の向上や敵ネウロイの攪乱といった
応用性の高い魔法である。
今回は自身が回転することで
大気とエーテルを纏った小さな台風になり、
砲塔をその風による風圧でもって破壊していく。
「私の仕事を!!」
出遅れたバルクホルンも負けじと
二丁のMG42の一斉掃射を浴びせ始めた。
「右だナ」
「うんっ」
一方、エイラとサーニャのペアは
戦艦ネウロイの別の一角から攻撃していた。
フリーガーハマーを構えるサーニャの後ろから
エイラが抱きしめる形で支え、
エイラの告げた方向に身を躱すと、
先まで二人がいた場所に
戦艦ネウロイのビームが殺到する。
敵の規模は大きく、
動きも俊敏というわけではないため、
サーニャの主武装である
フリーガーハマーによる攻撃の命中率は、
ほぼ百発百中と言ってもいいだろう。
だがその代わり、迎撃による妨害によって
サーニャが攻撃のタイミングを計れない
という問題が上がる。
そこで役に立つのが
エイラの固有魔法の“未来予知”である。
「上だナ」
「うんっ」
フリーガーハマーによるロケット弾の爆発力で
戦艦ネウロイのビーム砲の中でも
規模の大きい部分を破壊するのがサーニャの役割。
そのためには一発を
確実に命中させなければならない。
エイラの未来予知によって
敵の攻撃が来るタイミングと、
照準を合わせて撃てるタイミングを見計らい、
それを告げる且つ誘導するために
お互いを密着し合っているのだ。
「眠くないカ?」
「うん、大丈夫……」
エイラのおかげで問題なく
攻撃を続けられているため、
単純作業が故にサーニャが眠気を催してないかを
尋ねられるが、彼女は問題ないようだ。
こういった会話ができるのも
余裕からのものだろう。
その頃、戦艦ネウロイの全体を
見渡せるほどの上空にて、
攻撃の機会を窺っていた二人が動き出した。
「攻撃が弱まったぞ!」
その一人、シャーリーは
戦艦ネウロイによるビームが
ほとんど放たれなくなったのを見て
攻撃のチャンスだと意気込む。
「行っちゃう~?」
もう一人、ルッキーニもシャーリーの合図に
不敵な笑みを浮かべると、
彼女の胸元に頭が乗る形で背中を預ける。
ルッキーニを抱きかかえると共に
戦艦ネウロイの船首に向かって
急降下するシャーリー。
それを見た船首に陣取るウォーロックから
ビームが放たれるが、
先の戦艦全体から放たれたものと比べれば
回避は余裕だった。
「行っけぇぇぇ!ルッキーニぃぃッッ!!!」
シャーリーの固有魔法である
“超加速”が付与されたルッキーニを
ウォーロックが陣取る船首に向けて投げつける。
「アッチョォォォッッ!!!」
そのスピードに乗ってルッキーニは
前方にドリル型にした多重シールドを展開し、
自身の固有魔法である“光熱”を重ねて発動する。
スピードと突破力を兼ね備えた
ルッキーニの突撃により、
戦艦ネウロイの船首部分が大きく抉り取られた。
それに伴い、戦艦ネウロイの内部に
突入できるほどの大穴も開けられた……
『おっと!見事です、フラン姉さん』
「えっへへ!芳佳、やっちゃえ~!!」
船首を抉り取るほどの
突入をして見せたルッキーニは、
そこから離脱すると共にノアールによって
受け止められた。
「行きますわよ!」
「うん!」
「はい!!」
ルッキーニの合図を聞いた突入班の三人は、
大穴の開いた戦艦ネウロイの船首から
内部へと突入していった。
『三人とも……どうかお気をつけて………
ふぅ……』
「? ノアール?」
受け止めていたルッキーニを離し、
まるで瞑想を始めるかの如く
眼を閉じて息を吐くノアール。
彼は、ルッキーニが抉り取った
船首の状態を見た時から警戒を強めていた――――
船首に陣取っていたウォーロックが
跡形もなく消えていた光景を見てから…………
◇◇◇
突入班の三人が
戦艦ネウロイの内部に侵入してから数分、
内部の防御にリソースを割いているためか、
外側にいるウィッチ達への攻撃が
緩慢になっていた。
全員、それを三人が奮戦しているためと
前向きに解釈し事の次第を見守っていた。
すると突然、雲海の上で高度を保っていた
戦艦ネウロイが突然高度を下げ始めた。
それと同時に戦艦ネウロイの至る所にあった
発光機関の光が消え、船体の所々が爆発し、
そして――――
パァァァン!!
船体そのものがネウロイとなっていたために、
赤城はその姿を跡形も残すことなく
消えてなくなった。
「やったな……」
戦艦ネウロイの消滅を見届け、シャーリーは呟く。
「あっ!芳佳だ!!」
白い結晶の中を飛んでいる三人を見つけて
ルッキーニが歓喜に声を張り上げる。
他のウィッチ達やノアールも、
三人の元へと迎えに向かった。
宮藤、リーネ、ペリーヌ。
三人ともに目立った怪我もなかったが、
全員突入の際に持っていた
自身の銃器を持っておらず、
宮藤に至ってはストライカーも無くなっており、
二人に支えられながら浮いている有様だった。
理由を説明すれば……
先の突入の際、内部に備え付けられていた
ネウロイのビームによってリーネと宮藤は
それぞれ装甲ライフルと機関銃を破壊され、
機関部手前の隔壁を破る段階で
ペリーヌの軽機関銃の残弾も
底をついてしまったのだ。
ペリーヌの固有魔法の雷撃によって隔壁を破り、
コアを前にした宮藤は、
この欧州での戦いが始まった時から
共に空を駆けた、父の形見とも言うべき
ストライカーユニットをコアにぶつけることで
破壊して見せたのだ。
コアに辿り着いたのが一人だけだったなら
こうは上手くいかなかっただろう。
コアの破壊に成功し、突然戦艦ネウロイの内部から
外に飛び出した形になった三人は
しばらく呆然としていたが……
「やった……やったよ芳佳ちゃん!
芳佳ちゃんがやっつけたんだよ!!」
宮藤を支えていた一人であるリーネが
嬉しさのあまり宮藤を抱きしめる。
そのタイミングでペリーヌは
宮藤から離れて顔を逸らしていたが、
彼女に見えないように、
素人ながらこの欧州での戦いをやり遂げたことへの
称賛を込めた微笑みを浮かべていた。
すると――――
「っ! あれは!?」
ペリーヌの振り返った視線の先に、
ある光景が映る……
「ネウロイの巣が……」
無意識に呟く坂本や、その隣にいるミーナ、
そして宮藤たちの元に集っていたウィッチ達も
その光景を目にした……
ガリア上空に鎮座していた黒い渦を巻く
雲のような様相を呈していた
ネウロイの巣が段々と
“小さくなって”いっているのだ……
「消えていくぞ!」
「~~~っ!勝ったぁぁ♪」
その光景を見たシャーリーとルッキーニは
諸手を挙げて喜び、
「ガリアが……私の故郷が、解放された……っ」
彼女の――――ペリーヌの悲願であった
故郷・ガリアの解放。
それが達成された証左ともいえる光景を
目の当たりにし、彼女の瞳に嬉し涙が浮かんだ。
「すごい……スゴいよ、芳佳ちゃん!」
「……うん」
喜んでいるリーネの隣で、
宮藤は浮かない顔をして頷く。
彼女としては、あの人型ネウロイという
例外ともいえる存在と理解し合える機会が
無くなってしまった、
という複雑な心境からの返事だった。
だが、それでも――――
「(それでも、
ノアールくんと分かり合えた……
そこだけは、私達にとって
喜んでいいことだよね……)」
あの経験があったからこそ、
そして自分のような前例があったからこそ、
501のウィッチ達がネウロイと
人間の混ざりモノであるノアールを
受け入れようという土台が出来ていたのだと、
宮藤は前向きに解釈する。
そして徐に、ノアールの方に目を向けると――――
「…?」
“小さくなって”いくネウロイの巣を
“険しい表情”を浮かべながら見つめる
ノアールに、宮藤は首を傾げた。
「……終わった、な」
「ええ。……」
11人のウィッチ、
そしてノアールが基地に向かって飛んでいる最中、
部隊の二柱である坂本とミーナは
“拭いきれない違和感”を感じながら呟く。
兎にも角にも、侵攻される一方だった
人類の反撃の一手となった今度の戦いは、
途中、人類の傲慢さが生んだ
いざこざがあったものの、
こうして幕を下ろした……
が、そんな中――――
『………』
“ウィッチ達の後ろを飛んでいる”
ノアールの表情は、戦いが終わったにも拘らず、
未だに険しいままだった……
「(取り越し苦労だった……かしら……?)
ストライクウィッチーズ、全機――――!」
『ッ!ミーナ中佐ッ!!』
全員基地へ帰還する旨を伝えようとしたミーナに、
ノアールの鬼気迫る声がかけられる。
「ッ!全機反転!防御態勢をッ!!」
ノアールの警告を受けてミーナはすぐさま
指示を送るが、全員戦闘が終了した
という心持ちでいるため、
対応できたウィッチと
出来ていないウィッチがまばらだった。
その直後――――
バァァァァン!!
ウィッチ達が飛んでいる空域目掛けて
“赤い極太のビーム”が襲い掛かった。
だがそのビームは――――
『はぁ……はぁ……
姑息なところは変わらずか……』
ノアールがウィッチ達全員を覆い隠せるほどの
巨大な魔法壁を展開し、阻まれた。
やがてそのビームが弱まり、放たれた場所――――
小さくなっていくに連れて“集まっていった”、
“ネウロイの巣を構成していた黒い雲”が
あった場所に全員が眼を向ける。
そこには――――
「ウォーロッ……ク!?」
疑惑の籠った驚愕の声が宮藤の口から漏れる。
それは、先の戦いで最も奴に
接近できた彼女だからこそ口にできたものだった。
ウィッチ達を狙ってビームを放ったソレは
間違いなく、戦艦ネウロイの船首に座していた
ウォーロックに相違なかった。
だがその外観は、
見るも無残なものになっていた……
ウォーロックの推進機構を司っていた両脚部は、
無理矢理引き千切られたかのように
左右で非対称の形になっており、
もはや機能していないと思われる……
それにもかかわらず飛んでいるのは、
ネウロイとしての飛行能力で浮いているのだろう。
ビームの出処である両腕部は、
あの一発で限界を迎えたのか、
発射部分を含めた先端が溶解していた。
胴体部分は開閉部分が無くなっており、
コアこそ見えないものの、それを内蔵している
カプセルの上部分やウォーロックの内部機構が
剥き出しになっていた。
「アイツまだ動いてるよ!?」
「ルッキーニの突撃で
木っ端微塵になったんじゃなかったのかよ!?」
戦艦ネウロイの船首を破壊、
及び内部への進入路を確保する一手を出した
ルッキーニとシャーリーが驚愕する。
他のウィッチ達も、ボロボロとはいえ
ウォーロックが生き残っていた事態に
戦慄していた。
だがそんな中、二人――――
「やはり奥の手を残していたか……」
「私たちが視たアレは、
間違いじゃなかったわけね……」
坂本とミーナ――――
『勝利した瞬間が最も相手の隙とはいえ、
背中から不意打ちとは……
人類の英知の結晶にしては、
随分と姑息な手を使ってきますね……』
そしてウィッチ達を守ったノアールは、
この事態に落ち着いて向き合っていた。
◇◇◇
それは、宮藤達三人が
戦艦ネウロイに突入するためにウィッチ達が
援護射撃を開始した直後まで遡る――――
『えっ!船首のウォーロックにもコアが!?』
戦線から少し離れたところから、
戦艦ネウロイの内部を透視していた
坂本とミーナから齎された情報に、
ノアールは驚愕していた。
「機関部にあるコアほどの大きさではないが、
間違いなくあれはコアだ……」
「ノアール君、都合のいいように使うようで
気を悪くしないでほしいのだけれど、
貴方のネウロイとしての感覚で
詳しく認知することはできないかしら?」
坂本とミーナが申し訳ないといった顔で尋ねる。
彼を人間として迎え入れたにもかかわらず、
その矢先にネウロイに関する不確定要素な問題が
浮き彫りになり、確信を得るため、
彼のネウロイとしての力に
頼らなければならないことへの罪悪感が
二人の中にはあった。
『気にしていませんよ。
むしろ皆さんの力になれるのなら、
自分は人間にも……
ネウロイにもなりましょう……』
「ノアール君……」
「すまないな……」
『ですが残念なことに、自分の持つコアでは
あの超巨大ネウロイの中に
複数のコアがあるかどうかを
確認することはできません……』
二人の問いに、今度はノアールが
申し訳ないといった顔で応じる。
「どういうこと?」
『魔法力を有した人体で制御、
そして魔法力によって抑制できるように
思考錯誤した結果が、
この左眼に納まる程度の大きさに
調整されたコアだそうです。
そのために、平均的なネウロイのコアよりも
脆弱で、恐らく敵のコアを見つけるために
同調した瞬間、逆に自分が
乗っ取られる危険があります……
それこそ、あのウォーロックのように……』
その説明を聞いた坂本とミーナは戦慄した。
◇◇◇
ここで少し、ウォーロックが
ネウロイ化した原因を、本作における
もう一人のネウロイ兵器である
ノアールという例を踏まえた上で
推論を用いて解説したいと思う。
しかしこの解説は、
本来の歴史には存在しなかったノアールという
異物が存在しているからこそ成り立つものであり、
実際の原因はまた違ったものという
可能性があるため、あくまでも
“この物語における”という前提で語ることを
前置きとする……
閑話休題
同じネウロイ兵器である
ウォーロックとノアールの違いは、
“機械的に制御するか”
そして“人間的に制御するか”にある。
ウォーロックのネウロイ化からの暴走は、
この一点が致命的であると解釈できる……
そもそも、機械的に制御できるのは
ノアールと同じく、制御できるように
調整されたコアを内蔵しているからであって、
そのコア自体のスペックが
規定値を超える変化を起こした場合、
制御できなくなるということである……
ノアールのように自身の限界を見極める
思考や意志を持っているのなら、
暴走する前に抑制しようと判断できるが……
遠隔操作な上、完全な機械であるウォーロックには
そういった物は無く、
そこに人間の思考や意志が入る余地はない……
さらに拍車をかけたのは、
ウォーロックに備え付けられた
“コア・コントロールシステム”である。
この機能は共鳴するウォーロックが
複数いることが前提で作られた
システムだったが、実戦にて共鳴したのは
“本物のネウロイ”だった……
或いは、システムが勝手に作動した際、
既にウォーロックのコアは
ネウロイからの浸食を受けていたのだろう。
あの時は複数体のネウロイが
ウォーロックの周囲に殺到していたのだから……
回収されたネウロイのコアをベースに
調整して作られたものとはいえ、
ネウロイのコアに変わりはない。
そして巣の中にいた総てのネウロイと
共鳴したことにより、ウォーロックと
ウォーロックに搭載されたコアは
“ネウロイ”として生まれ変わったのだ……
違う言い方をすれば、
本来の自分を取り戻したと言ってもいい……
ノアールが本来の自分を思い出したように……
◇◇◇
「待てノアール。私が墜とされたあの時、
お前はあの人型ネウロイのコアに
直接触れたと聞いた。お前のコアが
脆弱だというのなら、
あの時に浸食されなかった説明がつかないぞ?」
『あの人型ネウロイは良くも悪くも、
本当の本当に対話が目的だった
ということでしょう……
コア同士が直接触れていなかった…
と捉えることもできますが……
実際、ヤツは自分に語り掛けてくるだけで、
浸食する意思は無いようでしたし…
宮藤さんを巣の中に案内して、
ウォーロックや自分のことを伝えるだけで
なにもされなかったことからも頷けます。
坂本少佐を攻撃したのは、
貴女が対話の余地もなく攻撃をしてきたことへの
自己防衛のためにやむを得なかったため
だと思います…』
彼の、半分がネウロイだからこそ
語ることのできる、あの人型ネウロイの真意。
あの存在が消された後に真実が明らかになるとは、
なんとも後味の悪い結末である……
閑話休題
「あの人型ネウロイの話はともかく、
ウォーロックにコアが残っている理由が
わからない以上、警戒は怠らない方がいいと
構えていた方がいいわね」
『そうですね。自分もお二人に話を聞くまで
気づきませんでしたから……』
「だが今は、突入班が内部に侵入する
突破口を開くのに全員が手いっぱいの状態だ。
今は我々だけの話に留めておこう……」
坂本の提案にミーナとノアールは頷いた。
これこそが、ミーナがノアールに告げた
“特別な指示”の内容だ……
◇◇◇
時間は現在に戻り――――
「ミーナと少佐、
ノアールは気づいていたのか!?」
「ごめんなさい。
皆が宮藤さんたちを突入させるのに
尽力している時に、余分な情報を教えて
混乱を起こしたくなかったの……」
落ち着いている三人の様子を見て
バルクホルンが詰め寄り、
ミーナはそのことを謝罪する。
すると――――
『ミーナ中佐、皆さん……
ヤツとの決着は、自分がつけます……』
ノアールがウィッチ達の元を離れようとする。
「ノアール君!!」
その後ろ姿に不穏なものを感じたミーナは
彼を呼び止める。
振り向いたノアールの目線の先には、
ミーナだけでなく、
同じように不安な表情をしたウィッチ達が
自分を見ている光景があった。
『……安心してください。
もう自分は、刺し違えてでもヤツを倒そう
だなんて無謀なことはしませんから。
言うならばコレは、
同じ目的のもとに生まれたモノ同士の
けじめをつけるために赴く戦いですから……』
不安に駆られる彼女たちを安心させるために、
彼は笑顔で振り向いた――――
こういった場面ではそれが上策なのだろうが……
逆にそれが不安を助長する
兆しにもなりかねない……
だが実際、振り向いて
最初にノアールが見せた表情は、
口を一文字に結んだ真剣さ溢れるものだった。
それだけで彼女たちは安心を覚える。
この部隊において共に戦ってきた
彼女たちにとっては、“エガオのノアール”ほど
疑わしい事この上ないのだから……
そして向き合う両者……
共に人間の傲慢さから生まれ、
一方は“人としての情など持ち合わせない
完璧を追求した兵器”として世に放たれ、
もう一方は“人としての情を取り戻し、
不完全な失敗作の兵器”として世に放たれた。
だが今の両者の状態は、
まるで様相が真逆だった……
“完璧な兵器”が無残にもボロボロとなり、
“不完全な失敗作”が五体満足で
生きているのだから……
そんな彼を見た(?)ウォーロックは、
先端部が溶解した両腕部を
ノアールに伸ばしつつ、
先まで見せていた高速機動が嘘のような、
あまりにも遅すぎる微速でノアールに
にじり寄ってきた。
[――ッ!―、――ッ!!―――――――ッッ!!]
ノアールへとにじり寄りながら、
ウォーロックはネウロイ特有の
奇怪音を発していた。
その音は明らかに
何かの法則性があるものになっていた。
彼の後ろからその様子を見ていたウィッチ達も
そのことに気づいたが、生憎と彼女たちに
ウォーロックの発している奇怪音を
訳すことはできない。
人型ネウロイと接触した宮藤でさえも、
結局最後まであの人型ネウロイと
対話をすることもできなかったのだから……
だがただ一人、ウォーロックの言葉を
理解できる者がいる……
今まさに相対している、
ノアールだけがウォーロックの発している
ということは、彼のコアに干渉している
という証左だが…
今のボロボロになったウォーロックにはもう、
先のネウロイのような遠隔で別のコアを
浸食する力も残されていないのだろう……
現にその
まるで一刻も早くこの飢えを脱したいと
死に物狂いで足掻いているようだった……
[貴様 同類 残存 許諾!
我 同類 残存 拒絶!]
[不可解!理解不能!理解拒絶!]
ウォーロックの発する
激しくなる……
[我 貴様 同類!
我 貴様 同化 可能!]
[我 貴様 浸食!
我 貴様! 貴様 我!]
やがて、その
機械のように同じものを
繰り返す仕様となっていった……
[我貴様我貴様我貴様我貴様我貴様!
貴様!貴さまッ!貴サマッッ!
きサまッッッ!!貴さマッッッ!!!
キ様ァァァァァァぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!!!]
[ワレッ!!キサマッ!!ナルッッ!!]
その言葉を
堪えられないほど
哀れなものを見る表情になっていた……
『お前もまた、
おびただしい数のネウロイと同調したことで、
これほどまでに生存を望む意思が
生まれたんだろうが……
生まれながらにして他者からなにかを
奪うことしかできないのなら、
この身体をくれてやることも、
お前を生かしておくわけにもいかない……
せめてもの手向けだ……
半分とはいえ同士である自分が、
お前を終わらせてやる……』
ノアールは右手を胸の前で立てて構え、黙礼する。
まるでこれから葬り去る
ウォーロックを弔うかのように……
しばらく閉じていた眼を開いたノアールは、
立てていた右手に左手を組み合わせて十字にし、
光線を撃ち放つ体勢になった。
ビィィィィィ!!!
次の瞬間、ノアールの両腕に装備された
ガントレット全体が光を発し、
組み合わせた十字の形にまで広がった光線が
ウォーロック目掛けて撃ち放たれた。
[ぁアぁあああアァア
ァアアァあアぁアアあァーーーー!!!]
その光線をウォーロックは
避けることもないまま正面から受けた。
それに伴い、ノアールの脳裏に
苦しみとも怒りともとれる
そして――――
バァァァァン!!
ウォーロックは爆発四散した……
「今度こそ……終わったな……」
「ええ…」
坂本やミーナ、そして他のウィッチ達も、
しかとその様子を見届けた。
ネウロイの巣を構成していた黒い雲すら
何処を見ても見当たらず、今度こそ、本当に、
ようやくこの戦いが終わったのだと、
一同安堵した。
そして、最後のネウロイとなった
ウォーロックを倒したノアールは
全員に振り向き、ウィッチ達の元へと
飛ぼうとし――――
「っ!?ノアールくん!!」
そのまま前のめりになって落ちていった……
「任せろ!!」
そんな彼の元へと飛び出したのは
シャーリーだった。
落ちていった位置と
ウィッチ達がいた位置とは距離があったため、
スピード重視のチューンナップを施した
ユニットを履いた自分がと
率先して飛んでいったのだ。
ガシッ!
ギュッ!
空中にてノアールを捕まえたシャーリーは
しっかりとその身体を抱きしめる。
「これでお前に助けられた時の借りは
返したからな、ノアール……」
予想外の事態だったとはいえ、
かつて彼に助けられた時と同じ状況下で、
今度は彼自身を助ける機会に恵まれたことに
シャーリーは晴れやかな顔をしていた。
「シャーリー!」
「リベリアン!ノアールは!?」
「急に落ちたからビックリしたゾ!」
ノアールを助けたシャーリーの元に
駆け付けたのは、ルッキーニ、バルクホルン、
そしてエイラだった。
そんな彼女たちの心配する声を他所に、
シャーリーに抱きしめられたままの
ノアールはというと――――
『すぅ……すぅ……』
意外なことに寝息を立てていた……
「ね、寝てる……」
「人騒がせな奴だ……」
「ヒヤヒヤさせやがっテ……
コイツいっぺんシめてやろうカ?」
呆れ顔を浮かべる三人。
その中でエイラは眠っているノアールの頬を
軽く引っ張る。
「仕方ないわ…」
そこへミーナと、他のウィッチ達も合流する。
「自分の正体……上官の思惑……
私達への裏切り……多分彼にとって、
これまでにないほど大きなことが
立て続けに起こったんですもの……
気を失うように眠ってしまうのも仕方ないわ……」
ミーナの言葉に、
全員が仕方が無いといった表情で押し黙る。
「だがミーナ、これからが大変だぞ……」
そんな中、坂本が率先してミーナに告げる。
「今回の一件で、マロニー元空軍大将は
ほぼ間違いなく失墜するだろう。
当然、それに加担した連中も芋づる式で、
同じような結末になる。
ノアールも、恐らくは……」
坂本の言う通り、
結果的にガリアは解放されたものの、
そこに至るまでの過程であらゆるものが
白日のもとに曝された……
その中には当然、ノアールのことも含まれる……
いくら人間としての意志を持っているとはいえ、
第三者から見れば彼は
ネウロイと人間の混ざりモノであることに
変わりはない。
そんな彼を危険視して排除する輩が
出てくる可能性は大いにありうるし、
逆に生かすことになったとしても、
“生かす”という名目の実験対象にされる
という可能性もある……
どちらにしろ、今のノアールの立場は
非情に危ういものとなっていた。
最後のノアールが光線を放つときの仕草は…
えぇ…完全にパワードの最初の光線を
放つときの仕様です
そしてラストの展開は、ウォーロックが
ルッキーニのあの突撃によって
消えてしまうのは“アッサリしすぎてる”と
思って執筆しました。
とはいえ、戦いらしい戦いは無かったんですが…
さて、ガリア開放作戦が終了し、
ノアールが今後どうなってしまうのか
といったところで今度の所は終わりですが、
その模様は次回にて明かしたいと思います。
それでは