Unknown Wizard Chronicle   作:シノギ

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本小説における第1期最終回となりました。





第20話「X―アンノウン―」

1944年 9月

 

この日、人類にとって

快挙とも言うべき偉業が成し遂げられた。

 

ガリア地方を占拠していたネウロイの巣が

消滅し、その巣が根城であったことから

その地方全域からネウロイの完全消滅も

確認された。

 

侵攻されるだけだった人類の逆転の一手とも

言うべき偉業を成し遂げたのは、

ブリタニアにて設立された

第501統合戦闘航空団、

通称「ストライクウィッチーズ」である。

 

この部隊における最重要課題が

達成されたことにより現部隊は解散され、

招集されていたウィッチ達は各々の原隊へ、

あるいはある程度の自由が許されている

原隊に進言して希望した方面への部隊へ、

もしくは厄介払いの為という意味が籠った

適当な地方部隊への出向、

またある者は制圧されていたガリアの

復興活動の支援などで

散り散りになっていった。

 

それと同時にその部隊直属の上官である

トレヴァー・マロニー元空軍大将以下

その関係者たちの不祥事が発覚した。

 

敵であるネウロイの技術を応用した

ウィッチに頼ることのない人類の希望と

称されて製作されたソレは、結果的に

ネウロイに対して有効な実力を見せたが、

それもつかの間の出来事にしか過ぎなかった…

 

最終的にはソレそのものがネウロイと化し、

人類に牙をむく結果となってしまい、

これほどの失態の責任を取らされる形で

彼らは処分を受けたのだ。

 

だが意外にも、処分を言い渡される

その場において、誰一人として

異を唱える者はいなかった。

 

あれだけの強力な兵器を作り上げ、

最終的には世界全体の軍事バランスを

自分たちに傾けるようにするといった、

見様によっては私利私欲ともとれる

野望を持っていたにもかかわらず、

あっさりと罪を認めたその態度に

軍関係者は首を傾げた。

 

 

 

 

その態度の理由を述べるなら、

501部隊員やその部隊に最も関りのある

一部の人間にしか知り得ない存在――――

“とある少年”がその理由だった…………

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「なるほど、

キミはそういう道を選んだんだね?」

 

 

 

問い掛けるように述べられた言葉が

その場に響く。

だがその問いに答えは返ってこなかった。

何故ならその問いかけは、

その者の独り言にしか過ぎなかったのだ。

 

 

 

「できる範囲でキミ自身に

揺さぶりをかけてみたけど……

微々たる影響しか与えなかったか……」

 

 

 

非常に残念だ、

と言いたげなニュアンスで呟くその者。

 

 

「ぼくからしてみれば、偶然見て回った中に

面白そうな“コ”が居るなぁと

観察していたんだけど――――」

 

 

 

 

 

 

「その選択は、人間で言うところの……

なんだったかな?ああそう……

イバラのミチ……なんて言葉じゃ

収まらないくらいの過酷で

残酷な道程だと思わないのかい?」

 

 

 

 

 

“彼”には聞こえていないにもかかわらず、

その者は試すような視線と

ニュアンスで問い掛ける。

 

 

 

 

「まあ……その過程の中で、

キミが選んだ道がどれほどのモノなのかに

気づくか否か…………

その一部始終を覗き見ながら、

今はソレを暇つぶしにしよう」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『まさか貴女が、

あのガランド少将だったとは

夢にも思いませんでした…

相応の高位の立場に身を置いていることは

薄々感じてはいましたが…』

 

「すまないね。キミの機密保持能力を

疑っていたわけではなかったんだが、

あの男からの派遣という危険性を考慮して、

ああ名乗るしかなかったんだ…」

 

 

 

夕焼けが窓から差し込む、

扶桑で言うところの畳

四畳半の広さを誇る部屋…

 

その床は広さの規模を示した

先の言葉にもあった畳で出来ており、

その部屋の真ん中にはこれまた

扶桑で言うところのちゃぶ台が置かれていた。

 

そのちゃぶ台を挟むように置かれた

二枚の座布団に腰を下ろしているのは……

 

つい先日、ガリア開放作戦の際に

“最後の仕上げ”を完遂してみせた

ネウロイと人間の混ざりモノの少年

――――ノアール。

 

そして彼が501部隊に来てしばらくした後に

お忍びという形でノアールとコンタクトを

取った自称“あしながおばさん”こと

――――アドルフィーネ・ガランド。

 

 

……の二人だった。

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

なんの前説も脈略もない唐突な展開だと

読者の方々は混乱していると

思われるが、今尚ガランドと相対している

ノアール自身もこの数分前は

同じ心境になっていたのだ。

 

 

なにしろ彼が最後に記憶しているのは、

ウォーロックを自らの手で消滅させ、

思いのほか消耗していた魔法力の枯渇

によって気を失った所までだったのだから…

 

それが目を覚ませば、

外の景観が一切見えない部屋の中で自身は

ベッドに横たわっており、

501基地の医務室にもあった機器が

自身に繋がれている状況で、

“気絶した自分を何処かの医療機関に

運び込んだのだろう”とノアールは

推測を立てていたが、

自分の寝かせられていた部屋の雰囲気から

少なくともここは501部隊の基地ではない

と思案していると……

その部屋にあった唯一の出入り口が開き、

現れたのは――――

 

 

 

 

 

「やあ、ご無沙汰だねノアール君」

 

 

 

 

“カールスラント”の男性軍人を後ろに

二人引きつれた

アドルフィーネ・ガランド(あしながおばさん)だったのだ。

 

 

そこから場所の特定に繋がる情報を

見せないためにノアールは目隠しをされ、

導かれるがままについていった結果、

二人が今相対している扶桑の

とある街の一角の一部屋といった

雰囲気漂う所に辿り着いていたのだ。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『貴女の立場と自分の立場を考えれば、

その危惧は理解できます…

自分は気にしていませんよ…』

 

「フッ……キミのような歳の子に

気を使われると、

余計に自分が情けなく見えてくるな……」

 

『……皮肉に聞こえましたか?』

 

「いや……キミの性格からして、

100%の善意で私にそう言ってくれているのは

あの部隊でキミと共に戦ってきた

彼女たちほどの付き合いではない

私でもわかるさ。ありがとう…」

 

 

そこで少しの沈黙が下りる。そして――――

 

 

 

『ガランド少将……

貴女が自分と二人きりになって話したい理由…

そろそろお聞かせ願いますか?』

 

「そうだね。正直言って、

こればかりは早急に済ませなければならない

案件だからね。尤も、キミの意思次第…

だけどね?」

 

 

ガランドはそこで一度言葉を切ると、

再び話し始めた。

 

 

「ノアール君、

キミは今の自分がどういう立場なのか、

理解しているかい?」

 

『……少なくとも、

以前までの立場で生きることは、

難しい事だけは理解しています……』

 

 

 

トレヴァーの失脚と共に発覚した不祥事――――

ノアールも利用されていた立場だった

とはいえ、彼のもとでその研究に

携わっていた者たちと立場的には変わらない。

 

おまけにノアール自身は、

実力こそ一般的なウィッチと変わらない

とはいえ、ネウロイの力を持っていることに

変わりはない。

 

かの501部隊のウィッチ達にそれらも含めて

受け入れられたとはいえ、

すぐさま他の人間たちが受け入れる

とは限らない。

 

人間以上の力、或いは存在に対して

普通の人間が取る行動は

 

“恐怖するか”……

 

“利用するか”……である……

 

 

前者はほぼ大多数の人間がそうなるだろう。

外見は自分達と変わらないのに、

その実ネウロイと同じ力を持っている

というだけで忌避の対象になる……

そしてその恐怖に駆られるがまま、

ソレを排除しようとする様も

想像に難くない……

 

 

 

後者に関しては言わずもがな……

少し前にその選択の代償が

お披露目されたところだ……

 

 

結論を言ってしまえば、

“ノアール・ルー”の立場は

どちらに傾こうと碌な結末にならない

ということがほぼ確定していた……

 

 

 

「その懸念は幸いにも……

と言うとキミにとっては酷な話だが、

徒労に終わるかもしれないよ?」

 

『えっ?』

 

 

 

ガランドのその一言にノアールは

怪訝な表情を浮かべる。

 

 

 

 

「“ノアール・ルー少尉は

ネウロイとの接触によって精神に異常あり。

医療施設内にて反軍行為に及んだために

やむなく処分”

 

ということになっていたらしい。

つまり“ノアール・ルー”という人間は、

もうこの世に存在していない

ということになっているんだ……」

 

 

 

 

続けざまに告げられた言葉に、

ノアールは眼を見開いた。

 

 

 

「あの元空軍大将が基地を占拠した時、

ヴィルケ中佐が保管していたキミの資料も

処分していたようでね……

 

あの男が持っていた、キミがブリタニア空軍に

在籍していたという証拠も

全て抹消されていた。

大方、あの戦いが終わった後のキミの扱いは、

あの“人類の希望”とは名ばかりの

操り人形と同類にするつもりだったんだろう」

 

 

そう言ってガランドは小休憩のために、

ちゃぶ台の上に人数分置かれた湯呑に

淹れられた“紅茶”を飲み始める。

 

 

彼女なりの落ち着いて話ができる

シチュエーションのために態々

この部屋を用意したのだが、

嗜好品までは手が回らなかったらしい。

なんとも締まらないな、

と苦笑しつつガランドはノアールを見据える。

 

 

ガランドの言葉に、ノアールは

最初こそ目を見開いたままだったが、

言葉が終わる頃には瞑目し、沈黙していた。

 

 

 

「(さて……“彼らの要求”通り、

(ノアール)に対して彼らが行った

非人道的な仕打ち“だけ”を

伝えたわけだが……どう返すかな?)」

 

 

 

ガランドがノアールに告げた事実……

実を言えば、彼女はその“総て”を

話していたわけではなかったのだ……

 

 

 

 

 

 

 

“「都合よく利用していた自分たちに、

恨み言一つ零さず、唯々一心に、

人類のために戦うと宣言したヤツに、

かつての自分たちを思い出させられた。

自分たちはどんな処分に科されても構わない。

だが、どうかヤツだけは

生かしてやってほしい」”

 

 

 

 

 

 

ある時、ガランドはウォーロック計画の

最高責任者であったトレヴァーと

面会する機会があった。

 

その際に彼女に向けて告げられたのは、

ノアールを擁護してほしい

という旨の言葉だった。

 

 

 

「(でも、“自分だけが生き残った”

という罪悪感に彼が苛まれないように、

彼を擁護するよう言っていたという

事実は伏せて、あくまで自分たちは悪だった

という事だけを伝えるようにとは

言われたものの…

 

その結果、彼が私達人類に失望して、

私達の敵になるようなことになったら……

その時は……)」

 

 

湯呑を傾けながらガランドは、

上着の裏に入れてあるデリンジャーを

服越しに見据え、シールドを張れなくなった

ほど衰えたとはいえ、

魔法力を発動できるよう身構えていた。

 

 

 

そして――――――――

 

 

 

 

『なるほど。つまり今の自分は、戸籍上では

誰でもなくなってしまった

というわけですか……』

 

 

 

 

絶望するなり、

怒りを露にしてもおかしくない事実を

突きつけられたにもかかわらず、

ノアールはその表情こそ

渋面にしていたものの、

その言葉は非常に落ち着いていた。

 

 

 

「随分と冷静だね?余りのショックに

泣き出すのかと思っていたんだが?」

 

『ッ!?……ミーナさ……

中佐からお聞きになったのですか?////』

 

「ああ。キミは笑顔を見せない反動なのか、

悲しくても嬉しくても

泣いてしまう感動屋だと聞いていたからね、

身構えてはいたんだよ」

 

 

揶揄うような表情をしている

ガランドの顔を見たノアールは、

赤くなった顔を落ち着かせるために押し黙り、

少ししてから彼女の顔を見返す。

 

 

『自分の正体を知ったあの時……

もう人間として生きることはできないと

覚悟はしていました。あの元空軍大将からも

それとなく告げられていましたし…

そういう意味では、先の事実を聞いても

今更だといった感覚ですね。

 

それに今の自分には、

本当の人間になりたいという

目標がありますから、

これくらいの事柄で、

挫けてる場合ではありませんし…』

 

「なるほどね。その切り替えの早さ、

そして潔さは、軍人としては

実に素晴らしいとは思う……

しかし、まともな人間の感覚からすれば、

異常だと思われている自覚はあるかい?」

 

『自分ほどの年齢の子供が受けるはずだった

教育の前に、軍人としての教育を

刷り込まれている身の自分から

言わせてもらえれば、コレばかりは

如何ともし難いですね……』

 

「難儀な性格をしてるね、キミは……」

 

 

 

 

 

『それが自分(ノアール)なんだ……と、

あの人たち(501)に教えられましたから……』

 

 

 

 

 

あっけらかんと言ってのけたノアールに、

ガランドは呆れ交じりの苦笑を浮かべる。

 

 

 

『それでガランド少将、

もう誰でもないという事実を

態々自分に自覚させて、

どうするというんですか?』

 

「そうだね……

回りくどく言うのは性に合わないから、

単刀直入に言おう――――――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ノアール君、私のもとに来ないかい?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に再び驚愕の顔になったノアール。

 

 

『ガランド少将の部下に……ですか?』

 

「正確に言うなら、

カールスラント空軍に改めて入隊し、

私が設立する予定の直営部隊に配属させる、

という意味でだけどね……」

 

『待ってください!

自分は戸籍上存在していないんですよね?

身元が曖昧で、ましてや

“自分のような存在”を貴女のような方の

部下になんてしたら……自分の正体が

暴かれた時、貴女の立場を

危うくしてしまうことになる……』

 

 

 

その言葉を聞き、ガランドは内心で

最悪の展開にならなかったことに安堵した。

会ったのはあの時の一度だけで、

それほど多くの言葉を

交わしたわけではなかったし、

トレヴァーからの差し金という不安要素も

あったことから彼に対しての

信用の度合いは“彼個人の人柄の部分”を

差し引けば、半信半疑に留まっていた。

 

 

だが、ミーナからの報告書や、

気を失った彼のもとに詰め寄っていた

ウィッチ達の様子、そして

 

 

“彼を利用しようとしている立場”

 

 

かもしれない自分に対しても

気遣う素振りを見せる彼の態度から、

ガランドは改めて、彼を自分の手元に

収めることが出来てよかったと思った。

 

そしてそんな彼の不安を払拭するために、

ガランドはその解決策を述べていく。

 

 

 

「案ずることはない。

キミの戸籍については後ろ盾がある」

 

『え?』

 

「確かに今のキミは戸籍上は存在していない。

だが現実問題、キミはこうして生きている……

寝耳に水だったとはいえ、

ブリタニアの上層部からすれば、

ネウロイと人間の混ざりモノを作り、

そしてソレはいまだに生きている…

そんな厄ネタ、

どんな手を使ってでも隠したいだろうさ。

“どんな手”を使ってでもね……」

 

『…………』

 

「そうして彼らの手がキミに届く前に

私達が保護し、彼らに取り引きを

持ち掛けたんだよ。尤も、保護された段階で

彼らに拒否という選択肢は

無いに等しかったから、

取り引きとは言えないけどね?」

 

『取り引きとは?』

 

「人類に対して友好的なキミを処分して、

キミが生きていることを

知っている人間…………

この場合はキミと絆を結んだウィッチ達まで

敵に回したくはないだろう?と…

今は遠き地にて爪を研いでいる

私の国も含めて…………とね。

 

キミの出自に彼らが関与している事実を、

一部を除いて隠ぺいする、その代わり、

キミが混じり気の無い人間だったと

証明する保証人になれ、とね」

 

 

自らを証明するモノが抹消されてしまった

ノアールの保証人を、

ブリタニア空軍の上層部が担うと聞かされ、

ノアールは驚きを隠せない。

 

 

『つまりブリタニアの上層部の方々にとって

自分は、生きている爆弾と同じ

というわけですか……』

 

「…………後ろめたいかい?」

 

 

 

試す意味も込めて、ガランドは尋ねる。

 

 

 

 

『…………自分の使命は、

ネウロイと戦うウィッチの方々を

守ることです。

 

たとえ自分たちの汚点を隠すための

処置であろうと、そのための足掛かりとして

尽力してくれるというのなら、

甘んじて受け入れましょう……』

 

 

 

 

苦渋の決断を下した…………

と言った表情を浮かべるノアールを見て、

ガランドは眉をひそめる。

 

 

いくら出自が特殊とはいえ、

ネウロイの力を持っているとはいえ、

一目見ただけでは幼い少年が、

今目の前で、人間になるために

過酷な道を歩むことを決断した姿を

見たとあっては、

 

これまで後進のウィッチ達を

その都度見てきたガランドでさえも

そんな表情になるのは致し方なかった。

 

だが、こういう形でしか

彼を生かすことが出来ない代わりに、

出来る限りのことはしてやろうと

決意したガランドは

改めてノアールと向き合う。

 

 

「うん。では改めてノアール君、

キミの持つネウ……いや……キミの持つ力。

人類がネウロイに打ち勝つその日まで、

役立ててくれるかい?」

 

『こちらこそ。厄介な身の上ではありますが、

この力が皆さんのお力になるのなら……!』

 

 

 

ノアールとガランドは握手を交わした。

 

 

 

 

 

こうして、ノアールは

アドルフィーネ・ガランドの導きにより一路、

彼女が現在身を置いている地――――

ノイエ・カールスラントへと

向かうこととなった。

 

 

 

その後無事に……というより、

元より軍人としての基本的なノウハウは

備わっているノアールは、

難なくカールスラント空軍へ入隊し、

ウィッチが軍に入隊した際の待遇と同じ、

軍曹として改めて

ガランドの下に就くこととなった。

 

その後、ノイエ・カールスラントにおける

技術省にて、ノアールの専用装備である

SUAを、扶桑より招き寄せた科学者が

開発した

 

 

“ストライカーユニットに準ずる

武装の運用データ収集のための試作機”

 

 

とする根回しをし、

その過程でノアールは、

 

 

 

自称“鮮烈”の名を冠した

5人のウィッチ達と出会い。

 

 

 

 

そして――――

 

 

 

 

 

『欧州のウィッチ隊に派遣…………ですか?』

 

「そう。ようやく、キミを欧州に

派遣しても構わない、

という許可が下りたんだ。

キミの部隊……いや部隊員としての本領が

ようやく活かされる……

そして、キミという存在が、

人類に対して有用な戦力だと証明できる

好機が訪れた、というわけだよ」

 

『確かに……今の自分は、

ガランド少将のお墨付きあっての

立場ですからね…

言ってみれば、自分を売り込んで

信用の根回しをする、という事ですか…』

 

「その通り…」

 

 

 

ガランドの執務室にて、

彼女の前に立つノアールは表情を引き締める。

 

 

 

『で、その派遣される部隊とは?』

 

「オラーシャ帝国、

ペテルブルグにて設立された、

第502統合戦闘航空団――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「通称“ブレイブウィッチーズ”だ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「ふむ……」

 

 

 

その頃、オラーシャ帝国における

ペテルブルグ防衛を務める、

第502統合戦闘航空団基地指令室では、

隊長職にあたる人間が座る席にて、

一人のウィッチが一枚の辞令書を眺めていた。

 

 

彼女の名は“グンドュラ・ラル”。

階級は少佐。

 

この第502統合戦闘航空団の

部隊長を務めている。

 

 

 

「失礼します…」

 

「隊長、お呼びですか?」

 

 

 

そこに、二人のウィッチが入室してきた。

 

 

 

一人目は“エディータ・ロスマン”。

階級は曹長。

この部隊において教育係を担当しており、

それに倣った振る舞いをしていることから

敬意をこめて“先生”と呼ばれている。

 

 

 

二人目は

“アレクサンドラ・I・ポクルイーシキン”。

階級は大尉。

部隊のメンバーからは愛称で

“サーシャ”と呼ばれている。

戦闘隊長兼、とある理由から

時折ストライカーユニット等の整備も

担当している。

 

 

 

「来たかサーシャ、エディータ……」

 

 

 

辞令書に向けていた視線を

やってきた二人に向けるラル。

 

そして徐に、自身が読んでいた辞令書を

二人に見えるように差し出す。

 

 

「これを見てほしい…」

 

「隊長が私達を呼んでまで見せたがる

辞令書なんて、見てもいいんですか?」

 

「案ずるなサーシャ。

なにも我々に不利になるような内容じゃない。

むしろ、捉えようによっては

良い報せとも言えるものだ」

 

「? それはどういう――――」

 

 

 

 

 

 

 

「なんですって!?」

 

 

 

 

 

ロスマンから驚愕の声が上がる。

ラルから渡された辞令書は、

彼女とは旧知の仲であるロスマンが

阿吽の呼吸で手に取り、

真っ先にその内容に目を通していたのだ。

その内容を呼んでの先の声だったのである…

 

 

 

 

「ロスマンさん?」

 

 

サーシャが内容を読む手間を省くため、

ロスマンが辞令書の内容を

音読して聞かせた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

“ノイエ・カールスラント技術省における、

扶桑から提供されたネウロイ対抗装備の

運用データ収集のため、その試作機と

軍曹待遇のテスト要員(以下、甲)を

第502統合戦闘航空団へ送達及び派遣する。

 

着任が完了次第、

以降は502部隊の指揮下とする。

尚、試作機についての詳細は機密事項とし、

甲の詳細のみ公表する。

 

必要量の運用データの収集が完了次第、

甲は当部隊指揮下を離れ、原隊へ送還される。

 

(注:例外として、甲自身の希望により

送還日時を延期する場合、

甲自身による原隊指揮官との応相談が可能)

 

 

 

 

甲、原隊指揮官 

カールスラント空軍ウィッチ隊総監

第44戦闘団司令

 

アドルフィーネ・ガランド”

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

その中で聞こえたビッグネームに、

さすがのサーシャも驚きを隠せない。

 

 

「随分とまた……唐突な辞令ですね……」

 

「確かにな……」

 

「ですが、いくら運用データの収集のため

とはいえ、補給もままならないこの基地に、

試作機なんて……」

 

「それについては心配は

いらないかもしれんぞ、サーシャ…」

 

「はい?」

 

 

サーシャの危惧している案件を、

ラルの自信に満ちた一言が打ち消す。

 

 

「辞令書にもあっただろう?試作機の詳細は

機密事項だ、と。そんなモノの管理を

我々に任せるはずがない……

 

つまりはその試作機とやらに関しては

そのテスト要員か……あるいはその試作機の

担当者などが管理するという事だ。

 

お前や、この基地の整備兵たちが

負担を被る心配は無いだろうさ」

 

「たしかに、

そういう事なら一安心ですが……」

 

「それに、タダでその試作機とやらを

この部隊で運用させてくれ…

という事はないだろう。

そのテスト要員に付随して、追加の補給物資を

送ってくれているかもしれん…」

 

「そういうことなら大歓迎ね。

下原さんが用意してくれる

料理のレベルだけじゃなく、

嗜好品が充実してくれるのなら、

これほど嬉しいことはないわ♪」

 

 

軍務においては真面目だが、

私生活においては享楽家である

ロスマンの喜びの声が上がる。

そしてロスマンは、その辞令書に書かれていた

 

 

“唯一音読していなかった一番最後の一文”

 

 

に関しての問いをラルへと投げ掛ける。

 

 

「隊長、辞令書には

“テスト要員に関しての詳細は別紙参照”

……とありますが、その別紙というのは?」

 

「ああ。実を言うとな、

二人に相談したかったのは

その辞令書の件だけじゃなく、

その試作機のテスト要員とされる

“軍曹”についてのこともあるんだ…」

 

 

瞑目し、眉をひそめた表情をしたラルに

顔を見合わせるロスマンとサーシャ。

 

 

「知っての通り、

私はこの部隊が今の形になるまで……

自分で見極め、欲しいと思った人員を

選りすぐって呼び寄せた……

だが今回派遣されてくるテスト要員……

あのガランド少将からの直々な派遣

と聞いて資料を見たのだが……」

 

「何か問題でも?」

 

「説明するよりは、

見てもらった方が早い……」

 

 

そう言ってラルは、

机の上に裏返して置いていた

“もう一枚の書類”を二人に手渡した。

 

その書類を、今度はサーシャとロスマンが

揃って目を通す。その直後――――

 

 

 

「ッ!!これって……!?」

 

「隊長!これは何かの間違いでは!?」

 

 

 

先の試作機の件以上の驚愕した顔をする

二人に、ラルは予想通りだった

といったニュアンスの溜息を吐いた。

 

 

「あの少将のことだ、

間違っているとは思いたくない……

書類上の記入ミス……と思いたいが……」

 

「……もし、この資料の内容が真実なら」

 

「今の内からでも、

相応の対応を心掛けるようにと菅野さん達に

告知しなければなりませんね…」

 

「孝美をこちらに引き入れることが決まって、

万事順調……と思った矢先のコレだ……

使えるか使えないかは件の軍曹が来てから

見極めるとして……

戦力が増えると共に、生活環境下での

“異性”の眼を気にしなければ

ならなくなるとは……」

 

「(隊長でもそういった部分は

気にするんですね……)」

 

「(……と言いたいところだけど、

藪蛇は勘弁。沈黙は金ね…)」

 

 

ラルに対して偶然にも失礼なことを

同時に思案しているサーシャとロスマン。

 

そして腕を組み、いかにも悩んでいる

といったポーズになったラルも含めた

三人の目の前にある資料には

こう書かれていた――――

 

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

カールスラント空軍

アドルフィーネ・ガランド少将直轄

 

【ウィッチ隊専門派遣部隊(員)

“アンノウン”】所属“ウィザード”

 

 

「ノア・X・ルー」

 

 

階級:軍曹

 

注意:甲の性別は男性とする

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

といった所属と氏名、

年齢などの簡単なプロフィール。

そして付属している証明写真には――――

 

 

 

 

左眼を隠した白髪のボブカットをし、

ロスマンがベストの下に着ているのと

同タイプの“カールスラント空軍服”を

身に纏った、幼い少年が写っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 




第1期としては最終回ですが、第2期
――――本家ストライクウィッチーズの外伝
である「ブレイブウィッチーズ」の前日譚
といった内容でした。

“彼女”と邂逅させていた伏線をココで
回収させてもらいました。
というのも、ノアールがガリアでの戦いを
終えた後の後ろ盾のため……というのが
大半の理由です。
無い知恵絞って考えた落とし所だったのですが
違和感は無かったでしょうか?
結果的にノアールは名を変えてカールスラント
に亡命という形になってしまいましたが…


そして、お気づきでしょうか?
“鮮烈”という名を冠した“5人のウィッチ”
という一文に……

“彼女たち”に関しては幕間の物語のような
モノで登場させようと思います。

タグには“クロスオーバー”を
追加するかもしれません


最後になりますが…
タグにもありますように、こんな
自己満足でしかない小説を読んでいただけて
評価や感想をつけていただいて
感謝しかありません。

自分としては一昔前に構想自体はあった物語を
形にして投稿できたというだけで
満足といった感じです。

実を言うとリアルでの忙しさもあって、
第2期の執筆が滞ってしまっている有様です。
ですので、本小説はこの投稿以降
しばらく更新が止まることになります。

ノアールのプロフィールの更新や
短編・幕間の物語といった形で
投稿があるかもしれませんが…

ともかく本小説を最後まで読んでくださった
読者の方々に改めてお礼を申し上げます。

本当にありがとうございました

それでは
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