スキル【夢オチ】でお金を稼いで美味しい物を食べたかっただけなのに…   作:粗だらけ

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仮眠
1話


「取り敢えず署までご同行願おうか」

 

目の前の警察官は真面目な顔をして僕を見ている。と言うか睨みつけている。そして僕の手には手錠が掛かっていて動けない。

 

手を引っ張られて近くのパトカーに乗せられそうになる。僕は諦めて()()()を使った。

 

"夢オチ"と言う言葉をご存知だろうか。それは漫画やアニメなどで使われる表現で今まであった事は全て夢で片付けられる便利な物だ。

 

でもそれがもし現実で使えたらどうだろうか。やった事を最後に全て夢オチで済ませられたら…。

 

そんな夢を叶えられるのが〈スキル〉夢オチだった。

 

白夢真昼《シラユメマヒル》は現代では珍しいスキル持ちだ。と言うか白夢家の男子は代々夢系のスキルが生まれつき使える。

 

祖父は夢魔斬りと言う夢魔特化の攻撃スキルを持っていてそれで夢魔をほぼ絶滅まで追い込んだらしいし。父は予知夢のスキルで白夢家を発展させ夢魔と結婚し対夢魔の学校を作り後進の育成にも励む敏腕っぷりを見せている。

 

そんな人生の先輩の下に出来た待望の男の子が白夢真昼である。責任重大な彼が使えるスキルが夢オチである。

 

文献によると『"どんな栄華を誇った未来も、孵ることも無くイキグサレた人生も全て夢だと認識した瞬間に帳消しにするスキル"』と書かれており第三者の期待はとてつもなく上がった。

 

が…期待は悪い意味で裏切れる事になる。まずスキルは現代で所持している人は珍しくどちらにしても目立つ事になる。

 

そしてこのスキルはどちらかというと夢魔側のスキルだ。夢を好き勝手に操る事が出来ると言うスキルなのだから。

 

人ですらないスキルを持った夢魔とのハーフの人間など異例中の異例。父はそれを隠す為に自分が設立した学校でひっそりと生活させようとした。

 

だが全く上手くいかず悪い意味でしか目立つことが出来ず最終的に本人は学校から脱獄する事にした。

 

その理由としては一番大きな物は食事だ。

 

学校は一応対夢魔の戦闘を学ぶ学校だ。だから規則も厳しく寮生活だ。もちろん食生活も厳しい。朝昼夜カロリーバー一本で終わりだ。

ちなみに真昼は一日で我慢できず寮母のおばさんの夢を操ってマヨネーズをゲットし校庭に生えてる雑草を食べて腹を膨らましたと言う逸話もあるぐらいだ。

 

軍隊では金曜に日時感覚が狂わない様にカレーが出るように学校にもちゃんと出る。カレー味のカロリーバーが三食。

 

そのことを知った真昼は頭にきてそのカロリーバーを粉砕して水でカレー風味にしてレンジであっため寮母の夢を叶えて小麦粉を得て米状にして自家製カレーライスを作った事もある。

 

どうして彼がそこまで料理に対して熱くなれるのか。理由は簡単だ。スキルを使うと凄くお腹が空く。だから少しでも腹を膨らませる為に改良をするのだ。でももう我慢の限界だった。

 

昨日の晩警備員から逃げ切り何とか地獄から脱出する。でも…

 

「お金が無い。」無一文で飛び出したので物々交換ぐらいしか出来ない。でも人間何でも持ってれば何かしら役に立つ。

 

ここらで有名なケチな金持ちの腹黒政治家の家に行って夢を売って一儲けして懐ホクホクで帰ったところまでは良かった。

 

まさかケチすぎてお金を出したくないから警察に嘘をつき捕まえて金を取り戻そうとするなんて想像もしなかった。

 

「はぁ…お腹空いた…。」政治家と警察で2回も使った事によってお腹と背中が本当にひっつきそうだった。

 

まあ政治家の言ってる事もあながち間違いでは無い。夢を叶えてやると言われて金を渡したら夢が叶ったと思った瞬間目が覚めた。俺は騙されたと。詐欺にあったと騒いだ。

 

それが彼のスキルだと言うことも知らずに。

 

眠った警察官から手錠の鍵を奪って外し、人が少ない路地を歩いていると美味しそうな匂いがしてきた。

 

「こ、これは…。たい焼き?」学校に入ってから甘いモノには随分ご無沙汰だった。精々砂糖の直舐めか砂糖水ぐらいだ。

 

「何処だ何処だ?」匂いがする方向を辿るとたい焼き屋の屋台があった。

 

「たいやきくださーい!」「あいよ!何個だ?」「えーっと2個で」「あいよ!」

 

お会計をして待っている間に周囲を確認する。大丈夫そうだ。

 

「おまちどうさん!熱いから気をつけてな」「ありがとうございましたー!」我慢が出来なかったので店の横で一個食べる事にした。

 

「あちっ…あちっ」出来たてのたい焼きは中から溢れそうなほどのカスタードが僕の胃袋をとても満足させた。

 

あっという間に1個食べ終わって空袋をポケットにしまう。1個目の半分ぐらいでお腹がいっぱいになったのか眠くなってきた。

 

「やばい…眠っ。」船を漕ぐ様にうつらうつらとしていたらたい焼き屋の店主がこっちに来た。

 

「おいアンタ大丈夫か?」「はい…大丈夫です。」「ちょっと休んでった方が良いんじゃねえか…」

 

 

「…ありが…とうございます…」「…この近くの学校でな」「え」

 

その言葉を最後に僕の意識は落ちた。

 

起きたら僕は学校の保健室のベッドで寝ていた。

「全部夢だったのか」

 

どうやら僕は夢を見ていたみたいだ。はあ()()()()は上手くいくと思ったのに。また夢オチだ。

 

「白夢君大丈夫そうなら授業戻って良いわよ〜!」

 

先生からそう言われ渋々僕はベッドから出ようとする。《"クシャ"》と何かが潰れたような音がポケットからした。

 

探ってみると中にはたい焼きの絵が書いてある空袋が入っていた。

 

「…。夢じゃ無い?」

 

 

理事長室で秘書から話を聞いた男は険しい顔をしてため息をついた。

 

「…何回目だ。脱走は」「10回目です」「はぁ…何回やるんだアイツは」

 

「こっちが聞きたいですよ。ですがまた夢だと勘違いしてるみたいなのでしばらくは平気かと。」

「まだコントロールを出来ていないのか」

 

「その様ですね。まあ万が一また抜け出したらまた暇な教員にたい焼き屋のフリをして貰って捕まえて貰いますよ」

 

白夢真昼のスキルは情報があの一文しか無く詳しいことが分かっていなかった。

 

「所で理事長。最近教団が夢魔の王復活に向けて動いてる様です。」

 

それを聞いて理事長と言われた男は項垂れる。

 

「アイツは夢魔と人間のハーフだ。この世界でもっとも夢魔に近い存在はアイツしかいない以上捕まえられたら終わりだ。アイツに憑依されて夢魔の王が蘇ったなんて事が起きたら白夢家は終わりだ。アイツをこの学校に閉じ込めておけ」

 

「分かりましたそのように。」

 

その頃そんな事は一切知らない彼は

 

「さて…お金も無いし夢を売ってお金稼ごうかな…。お客さんは政治家以外にしよう。」

 

とっくに学校外だった。

 

明かりがうっすらとついた視界が悪く、だだっ広い部屋で蝋燭が円状に置かれている。

部屋の中では白装束を着た沢山の男女が祈りを捧げている。

 

信者の話によると円状の蝋燭の真ん中には紫色の輝く石が置いてあり時々その石は喋る様だ。

 

 

 

「我が王よ。僭越ながら意見を…。本当に宜しかったのでしょうか」

 

『何が?』

 

「せっかく学園に潜入していた信者が貴方様(夢魔の王)の復活に必要な肉体を手に入れたのにわざわざ学園に戻すとは。正直言って私には我が王の考えが分かりませぬ」

 

『ふーん要するに私の考え方が間違ってる!担がれ神輿の王が口を出さずにただ俺の言う事に従っておけ。余計な口を聞くな!と言いたいのね』

 

「とんでもありませぬそんなことは一切…」

 

『まあ冗談よ一回返した理由が知りたいんでしょ?教えてあげるわ…それはね』

 

耳が痛くなるほど静かになる。ただその空間では人々が祈りを捧げているだけだ。

 

『まだ熟しきってないからせっかく復活するなら長い間暴れ(楽しみ)たいでしょうそれに…』

 

「?」

 

『あの時あの子の体を奪って私が好き勝手やってもあの子はよく思わないでしょ。どうせならあの子が絶望した方が良いのよ。

人間に裏切られて人間が嫌になって。

 

人間に対しての負の感情を抑えられなくなって彼が自ら身体を渡したくなった時にする。

 

でなければ不完全な復活になるのよ。そして完全な復活が果たせれば人類は滅亡を待つのみよ。私達夢魔が絶滅したのと同じ様にね…』

 

広い空間に石の笑い声が響いた。

 

 

 

警備員の人が毎回同じだから最初の時は裏門登ってたんだけどそこを見られてから仲良くなって良く警備員室でお茶とお煎餅出してくれるんだよね。顔パスで正門通してくれるし…。

 

今日はお煎餅食べずに持ってきたからお腹空いたら食べよっと。

 

それにしてもあの警備員の人。お爺ちゃんに似てる気がするんだけど気のせいだよね。白夢家歴代最強の剣豪で夢魔負け知らずの祖父が警備員する学校とか異常戦力だもん。

 

「さてっとどうしようかな。お金はまた0からスタートだから遠い場所へは行けないし…。」

 

日払い履歴書要らずのバイト先探さないと…。

 

 

 

「…辛っ。はぁ…野宿しかないかな。うーんここら辺は都会だし雑草があんまり無いんだよね」

 

駅前まで来たのは良いけどお金も無く電車に乗れない僕はウロウロしていた。

 

「痛っごめんなさい!」誰かとぶつかってしまった。暗くて良く見えなかったけどフードを被っている黒パーカーの人とぶつかったらしい。その人はそこから動かない。

 

「あ、あの大丈夫ですか?」

 

「アンタ…私の事が見えるの?分かるの?」

 

そりゃあ確かに暗くて見えにくかったけど全く見えない程じゃない。だから僕は頷いた。

 

「本当に?」何でそんなに疑われるのか分からない。取り敢えず起こさないといけないと思って手を差し出した。

 

彼女はその手に少し戸惑いながら手を掴む。

 

「掴める。触れる!喋れる‼︎何で?」

 

何で?と言われても何が?って感じだ。訳が分からない。その僕の顔を見てハッとした。

 

「ごめんなさい…。何の事か分からないわね。実は私はスキル持ちなのよ。」

 

スキル持ち!?実はスキル持ちは現代では僕の家系以外は十数人しかいない。

 

だからかなり珍しい。どうやら僕はツイてるみたいだ。

 

「何笑ってんのよ。そんなにスキル持ちが珍しいのかしら」

 

「うーんスキル持ちはそんなに…かな。僕もスキル持ちだし」

 

「え?アンタも!?ちなみにどんなスキル?私のスキルは半幽体。半分私は死んでるのよ」

 

「え」

 

「いつもは幽体で黒いマントにフードでいるんだけどびっくりしたわ。実体がないはずなのにぶつかったんだもの。それに触れるし話せるし」

 

半幽体なんてスキル聞いた事も無い。世界は広いね…。そう思うと僕のお腹も返事をする。

 

「あらお腹空いたの?まあご飯時だものね。あれどうしたの?」

 

無い…。警備員のお爺ちゃんから貰ったお煎餅。落としちゃったみたい。まあしょうがないか…

 

「もしかしてご飯無いの?」ご飯も無いしお金も無いです。

 

「しょうがないわね。こうして会えたのも何かの縁だしもうちょっと話していたいから…」

 

そう言ってポケットを漁ると樋口さんを確認してしまった。それを見ながらボーッと立っていたら「ほら行くわよ。コンビニへ!」

そう言って僕の手を掴んで走り出した。

 

恥ずかしかったけど彼女の嬉しそうな顔を見てると振り解くことなんか出来ず僕はついていった。




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