No.1オペレーター城戸奏真の華麗なる緊急脱出<ベイルアウト>   作:羊毛ローブ

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初手ベイルアウトでランク戦の成績上げてくれる人がいるってよ!

 

 

 

「え?実況と解説付きで前シーズンのログ見たいの修君?」

 

「はい、やはり解説と実況が入っているといないとでは理解力も違ってくるように感じてしまうので」

 

修が言うのも分からないでもない。何故ならログと言われる戦闘記録については、音声の記録は取れておらず、映像のみの記録となっているので、まだランク戦事態に慣れてない修にとっては音声があればもっと良いという事は間違いないのだ。

 

 

「どのログ見たの?」

 

「ええと、確か去年のB級ランク戦第7ラウンド昼の部ですね、一人の人がベイルアウトしたと思ったら、なんか一気に戦況変わってコンプリートしたやつです」

 

 

宇佐美が、武富と交渉して貰った実況解説付きの音声ファイルを探しているとピクッと反応した後に、頭を抑えてアーーと首を横に振っている。

 

「あー修君?あの記録は多分誰が見ても参考にはならないと思うけど見たい?」

 

しまった!隠してなかったか!とでも言いそうな宇佐美はまるで部活の一年生の初心者の人間にプロでも変態扱いされる超人プレー集を見せるかどうか迷うマネージャーの気分だった。

 

「やるべきことは全部やっておきたいので」

 

そういう修に宇佐美は覚悟を決めてその音声ログを映像記録と同時に再生を始めた。

 

 

「最初に言っとくね、修君は修君なりのやり方で強くなれると思うけど、これは経験値の暴力ってやつなんだ」

 

「え?どういう事ですか?」

 

「例えば……そうだね、攻撃手No.1といえば?」

 

「太刀川さんですよね?」

 

「そうだね、ボーダーにいるなら誰もが知ってる常識的みたいなもんだよね?」

 

「ならオペレーターNo.1は?ってなった時に誰か思いつく?」

 

修は宇佐美がそんな事を聞くのが意外であった。

彼女はオペレーターとして優秀であるのは間違いないし頼りに先輩であるが、こんな事を聞く様な人ではないと理解していたからだ。

 

「……うーん、宇佐美先輩ですか?」

 

「いやー修君もお世辞が上手いねー」

 

そう笑っている宇佐美はいつもの様子に見えるが、雰囲気がいつもより暗くも見えた。

 

「オペレーターのNo.1は今から見るログの人だよ、多分月見先輩以外のオペレーターは皆そう言うんじゃない?」

 

そう言いながら取り出した音声ログを起動させつつ宇佐美は修をしっかり見つめた。

 

 

「だからね修君、圧倒的に理不尽だと思ってもそれは受け止めてね」

 

 

 

 

『おおーと城戸隊長!なんと開始15秒で自発的にベイルアウトだぁ!しかもカメラ目線で謝っている!これは試合を諦めたという事なのか?』

 

「あれ?城戸隊なんて隊このログでは出てないですよね?」

 

「それはね今ベイルアウトした人が城戸隊の隊長、城戸奏真さんって人なんだけど、オペレーターがいないから本部にチーム扱いされてなくて、本人が言ってるだけの非公式チーム扱いされてるんだよね。今回は松代隊の助っ人として参加した見たい」

 

「なるほど、でもなんでここでベイルアウトしたのが理解出来なくて、だって確認したのは味方の位置と周囲を確認した位ですよね?」

 

そう修はこれが不思議で仕方がなかった。アタッカーが近くにいた訳でもなく、スナイパーに狙撃されるポイントにいた訳でもない。何せ開始15秒程度で接敵も何もしていない状態での自発的なベイルアウト。コレになんの意味があるのかは考えても答えが見えなかったのである。

 

「そうだね、私もそれぐらいしか分かんないよ。だからあんまり参考にならないんだよねこのログ」

 

宇佐美は溜息混じりに、そして少し寂しそうに映像の続きを見ていた。

修はその宇佐美の態度を不思議そうに思いながらも、同じように映像の続きを見た。

 

『いや、コレは他のチームにとっては非常に不味い展開になってきましたね…』

 

『東隊員、それはいったいどういう事なのでしょうか?』

 

 

『城戸隊の隊長の城戸奏真隊員は実はオペレーター畑出身から攻撃手になったという珍しい経緯の持ち主でして、今まではオペレーターがいない隊の隊長という事でランク戦に出れなかったのは皆さんご存知だと思います』

 

『そうですね、ランク戦の解説には良く出てくれて好評ですが、私、武富が実況の時にしか解説に出てくれないという事でも有名ですね』

 

『あーー、それは武富さんの時しか出ないんじゃなくて出れないと言った方が正解なんですが、今回はそこは置いておきましょう』

 

『ここで箱田隊員がスイッチボックスを起動させたが、こんなに狭い路地で起動して何か意味があるんでしょうか?』

 

『恐らくですがここに誘導するんだと思いますが、どのように誘導するのかはまだ読み切れないですね…』

 

『しかしこのような序盤でスイッチボックスを使用するのは今までの松代隊では見られなかった戦術ですね、そしてここで土崎隊員がダミービーコンを起動!なるほど、ここへ誘導する為の布石というやつですね!他の隊員達がダミービーコンの位置を嫌って、移動しています!』

 

『なるほど……後でしっかり解説するので今はこの状況を皆さんしっかり見ておいて下さい』

 

 

「東さんがこういうのも珍しいですね」

 

「まぁ見ておいて下さい位としか言い様がないからねこの試合」

 

 

『分かりました!それはそうと東隊員と城戸隊長は同期というお話を聞いたんですがあまり接点がないように感じますね』

 

 

『あーでも偶に一緒に飲みに行ったりはする位はしますけどね、昔話になって申し訳ないのですが実は彼、短い期間ですがランク戦初期の時の自分の隊のオペレーターをしていた事がありましたし』

 

『そうなんですか!?それは初耳の情報です!てっきり月見オペレーターが最初から旧東隊のオペレーターだと思ってました』

 

『月見隊員は今でも凄いオペレーターなのは間違いないですよ的確かつ情報の取捨選択が抜群ですからね』

 

『という事は月見オペレーターが入ったから城戸隊長はオペレーターをクビになったかそういう……』

 

『いえ、その逆ですね』

 

『……?逆、ですか?』

 

『彼がオペレーターするのが卑怯と言われたせいでオペレーターとしてのランク戦を出禁になったのと、月見がオペレーターとして腕を磨きたいと言ってきたのが重なったっていうのが理由ですね』

 

『おおと、ここで松代隊長がメテオラを発動し、建物が崩れ落ちる!そこを迂回する他チームだがなんとそこにはスイッチボックスの地雷の山だぁ!!ここで5人がベイルアウト!そこに隠れていた土崎隊員が旋空弧月で残った2人を纏めて撃破!鮮やかな戦法で、この試合9点をもぎ取り松代隊の勝利です!』

 

『いやお見事の一言ですね』

 

『見事な連携で今シーズン初白星を付けた松代隊です!新生松代隊の戦法がここまで鮮やかに刺さったのが勝利の要因なんでしょうか?』

 

『いえ、ダミービーコンを起動させたタイミングとスイッチボックスを使用した場所、加えてあの角度からのメテオラの攻撃、アレは恐らくですが完全にデザインされていましたねコンマ数秒単位で戦況をコントロールしていたと思いますが、あんな事ができるのは多分城戸隊長しかいないでしょうね』

 

『ええ?あの人勝手にリタイアしただけでは?』

 

『彼はあの謝るポーズしたら圧勝するからスマナイって意味らしいですね』

 

 

 

 

「な、なんですか、コレ?」

 

修は驚きを隠せない。あのベイルアウトには意味がないようにしか見えなかったが、勝つ為の条件が重なったからしたという事なのだろうか?

 

「これだけじゃ良く分かんないから特別にって事であの人、自分の音声ログも乗せて良いよって言ったんだよね、はい落とされた後の音声ログね」

 

 

 

『松代については、今から羽鳥がマーク付けてくれる所に向かって57秒後に射角71度でメテオラ、箱田は現地点から東北東の位置68m地点でスイッチボックス起動、土崎はダミービーコンを起動させてから、目の前の赤いマンションの中で待機、メテオラ爆発したのが見えたら、弧月使って、爆発地点に前進、今からマークする場所で2回旋空使用した後に接敵し各個撃破』

 

 

『これで勝敗決したりってな、あートーリック、一緒にお茶飲もうぜい…って音声ログ取りぱなしだったわ』

 

『いえ自分は結構です、後、自分の名前は羽鳥なんでそんなハットトリックみたいな感じで言うの辞めて下さい』

 

 

 

 

「ここで音声ログはおしまい」

 

つまりあの状況でベイルアウトしたのは戦況が確実に分かり、オペレーター室で指揮を取った方が勝てると判断したからだということである。

 

「す、凄いですね!真似は絶対できないですけど」

 

「そうだね、だからあんまり最初の内に見せたくない試合でもあるんだよねあの人って経験値の塊なのよ、勝っても経験値くれないメタルキングみたいな?」

 

「分かりやすい例えですね」

 

宇佐美が経験値の暴力と言った事が良く分かった。

アレは経験値の暴力だ。転送配置運もあったのだろうが、それでもこんなに上手く指揮出来るのは経験が物を言う。決め打ちで仕掛けた訳でもないし、圧倒的に個が強い訳でもない。

しかし経験で全てを凌駕した。そんな理不尽である。

 

「シュミレーション能力が非常に優れているらしくてね、一回の試合で何百、何千回と同じ試合をシュミレーションして、圧倒的に勝利できる条件が重なったらああするんだって」

 

「なるほど……ん?そういえばランク戦にあの人のチーム入ってないですよね?あんなに凄いのに何でチーム作らないんでしょうか?」

 

修は至極マトモな疑問が浮かんだが、宇佐美は言葉を濁しながらも答えてくれた。

 

「あーー、あの人ねオペレーターに嫌われてる隊員No.1でもあるんだよ」

 

「え?」

 

「だから誰も隊組んでくれないんだ」

 

「そ、それは……」

 

修は凄い人を見る目から可哀想な人を見る目で城戸の事を見て、すこし涙が溢れそうになった。

 

 

 

 

 

コレは最高のオペレーターと言われた男が最高のオペレーターを見つけるそんな話……になると良いのにね!

 

 

 

 

 

 

 




人物像

城戸 奏真 25歳
城戸司令の甥っ子であるという事実は彼の態度が軽いのであまり知られていない。

実は一度記録封印処置をされた事も、離隊した事もある。
オペレーターの殆どに嫌われている為、武富さんが実況する時にしか解説できないので、そういう意味でもメタルキング扱いされている。

嫌われている理由はサイドエフェクト
対人威圧のせいであり、女性が苦手だと潜在的に思っているせいで威圧してしまい嫌われている。あと普通に城戸司令より顔が怖い。


何故か武富オペレーターは大丈夫らしい。
武富本人はそれを聞いて激おこぷんぷん丸らしい。

宇佐美さんが暗い顔をしている理由はこんなに凄い人なのに嫌われてるからチーム組めないって修君に言うのもチームに誘われても宇佐美も嫌であるし、まぁ本人は城戸派扱いなので玉狛支部には来れないし…と思っている。

月見はワシが育てた!と言っているのだが、月見本人は「いえ東さんが育ててくれたので、そんな人知りません」と言っている。サイドエフェクトは月見には効いていないのも涙を誘う理由の一つ。
この会話の後に風間と諏訪、木崎、東、沢村と一緒にお酒を飲んでカラオケに行ったとかいないとか。

因みにオペレーターとして腕は誰もが認める位に凄いのは事実であるが器材操作だけはめちゃくちゃ苦手で1しかないので本職の松代隊のオペレーターである羽鳥にマークをしてもらったりするという理由があったり、因みに松代隊は実際に原作にもいるB級下位のチームであり、トリガー構成もこんな感じである。

参考として宇佐美が器材操作10であり、オッサムのトリオンが2である。


オペレーターで無双も面白そうだと思い書いた短編。
しかし続かないので城戸隊員もこれ以上酷い扱いされないのでニッコリである
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