No.1オペレーター城戸奏真の華麗なる緊急脱出<ベイルアウト>   作:羊毛ローブ

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初手ベイルアウトした人間のワクワクB級ランク戦解説ーー

 

 

「宇佐美先輩、因みになんですが、城戸隊長って解説も凄いとかって言ってたんですが、その時の音声のログって残ってたりしますか?」

 

「修君……いやね残ってはいるんだけどね。あまりオススメはしたくないのは分かってくれる?」

 

「それは……そうなんですが……」

 

「おおとそのセリフを言ってしまうのなら仕方ない、言っても私の心が痛くなるだけだから用意してあげよう」

 

割りと疲れた様子であったが、宇佐美は後輩の為なら城戸の可哀想な事にも目を向ける。そんな覚悟を決めたのであった。

 

 

『B級ランク戦第8ラウンド夜の部

の実況はこの私、海老名隊オペレーター武富桜子と…』

 

『呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃん!皆大好き解答キッドこと、城戸隊隊長、城戸奏真がお送りします』

 

『こんな事言うのもアレなんですが24歳にもなってそんな事言うの恥ずかしくないんですか?』

 

『いや解答キッドの異名で慣れ親しんでくれたら何時かは我が城戸隊にオペレーターが来てくれるのではないかという淡い期待も含んでいるんですよタケミッフィー』

 

『誰が、タケミッフィーですか誰が、変なニックネームを付けるのは辞めて下さい!それはそうとして変なニックネームを付けるからオペレーター希望がいないんじゃないですか?新人で本部でオペ練してる子ですら希望しないとか普通あり得ないですよ?』

 

修のそのことは気になってはいたが、宇佐美にその事を聞こうとすると悲しそうな顔をするので聞けなかったのだ。

 

『……それは残念ながら私のサイドエフェクトのせいでもあるんですよね』

 

『え!城戸隊長ってサイドエフェクト持ってるんですか!?』

 

「え!そうなんですか!?」

 

思わず宇佐美の顔を見てしまった。凄い寂しそうな顔をしているので修はやってしまったと内心焦っている。

 

「……修君、続きを聞いてとしか言えないというか察してあげて欲しい」

 

「は、はい」

 

まず大前提として宇佐美は城戸の事は苦手ではあるが嫌いではない。

宇佐美はとても人ができた素晴らしいオペレーターなのである。

そんな彼女がここまで聞きたくないというのには理由があるのだ。

 

『実は、対人威圧っていう効果的には、意志を疎通できる相手に対して威圧感を与えるっていう、敵対する相手に攻撃する時はそのせいで一瞬判断が遅れたりとかしちゃうって感じの能力だったりしちゃうんだけどね』

 

『おおー村上隊員の強化睡眠と並んで中々良い感じのサイドエフェクトじゃないですか?……え?でもそれが理由ってどういう……』

 

『このサイドエフェクトは自分の意志でオン・オフが利かないんだよね。だから自分が少しでも苦手かも!とか、やったんぞコラ!とかっていう対抗意志?っていうのかな?それを乗せると相手を威圧しちゃうんだよね』

 

『なるほど……これだけ聞いてれば扱い辛いのは正直分かるんですが、オペレーターが全く来ない理由になる様には思えないですけど、現に私とこうして普通に話していますし』

 

『いやはやお恥ずかしながらこの私、城戸奏真は女性って言うのが生まれてこの方潜在的に苦手でして……ある程度慣れたら大丈夫なんですけどね?バシバシに飛ばしちゃうんですよ対抗意識を第一印象というもっともコミニケーションで大切な場面で』

 

『あああ……』

 

『第一印象で飛びっきりの苦手を全面的に押し出すおかげでまず嫌われますし、慣れてきたらこの軽い性格で嫌われますし、第一印象で嫌った物が中々好きになることが少ないんですよね恋愛じゃないんだから!』

 

『聞いてしまって非常に申し訳ないです……』

 

宇佐美に限らず誰が好んで人の辛いエピソードを聞きたいと思うだろうか?

しかもオペレーターがいない理由を聞くと必ずと言って言いほどこのエピソードが出る。

 

つまりは、そういうことである。

 

(どんまいです!奏真さん、オペレーターに嫌われてもなんとかなります!)

 

(いやどうにもなんないかもですけどファイトっす!)

 

(ランク戦やってたらその内ファン増えるかもしれないですよー)

 

(逆にどうやったら、そんな女性不信が治るんですか!心の師匠と呼ばせて下さい!)

 

(ああ辻ちゃんが変になってるよーひゃみちゃーん)

 

(はーい辻君、あの人は参考にしちゃいけないって二宮さんも言ってたでしょー、忘れようねー)

 

(ふん……!)

 

「ん?また懐かしい物を見てるな」

 

「あ、レイジ君おかえりー肉肉野菜炒めのササミ肉買えたの?」

 

「レイジさんお疲れ様です」

 

「奏真さんの解説を見るとかまた変化球なログを見せてるな宇佐美、ササミ肉は高いからな胸肉しておいた」

 

「いや個人的には他の弓場さんと生駒さんの試合とかの方が参考になるから見せたいんだけどね、この声援を聞くのもなんか切ないし……」

 

「奏真さんの前説は野郎共の声援を浴びせるのが一種の恒例行事になりつつあるからな」

 

よっこらせとレイジがテーブルに買い物カゴを置く。

玉狛支部ではビニール袋代は節約するスタイルなのである。

 

『あれ?ちょっと待って下さいよ?私、その威圧のサイドエフェクトに引っ掛かった記憶ないんですけどこれはどういう…』

 

『さてこのB級ランク戦第8ラウンド夜の部では、諏訪隊、荒船隊、漆間隊の対決になるという事で良かったんですよね、タケミッフィー?』

 

『話を逸らされた様な気もしますが、その通りですね、現在は漆間隊が8位、荒船隊が13位諏訪隊が11位となってます。漆間隊はこの試合で6点を取ればB級上位になれるという可能性もありますね』

 

『正直荒船隊にマップの権利がある時点でまぁ厳しいだろうね実際に市街地Cだし、コレはスワルツネガーは大激怒必至ですわ』

 

『まずはこのマップの説明をお願いしてもよろしいでしょうか?』

 

『任せてつかーさい。まずこのマップでは山の斜面に作られた住宅地を想定して作られたマップなんですが、坂道と高低差があり、道路を間にはさんで階段状の宅地が斜面に沿って続いるんで、登るにはどこかで道路を横切る必要があり上から丸見えになるため、狙撃手が高い位置を取るとかなり有利になるステージなんですよ。逆に下からは建物が邪魔で身を隠しながら相手を狙うのが難しくなるんで狙撃手のいない諏訪隊は激おこぷんぷん丸って感じですね、はい』

 

『なるほど、最初に上を取れればかなり有利なマップという事ですね?』

 

『普通はそうですね、それに加えて初期転送位置の運ゲーにもなるので、まぁ糞マップ扱いもよくされる多々ありますが、今のところ個人的に脳内シュミレーションしたところ荒船隊が3諏訪隊が2漆間隊が2ってとこですかね』

 

『各部隊の勝利の割合って事ですか?それにしては偉く中途半端な数字ですね?』

 

ここでレイジが一時停止を押して、修をまっすぐ見る。

 

「修、この後の会話良く聞いとけよ。奏真さんの解説が凄いって言われてる理由がここに集約されてるからな」

 

「わ、分かりました」

 

「じゃあ再生するぞ」

 

 

『いやいや得点の話ですよ、天候は夕方の嵐ですし、荒船隊が諏訪隊の1人を落として諏訪隊が荒船隊の2人を落とす、その間に漆間隊がスワルツネガーを落として動揺したササモリパンダを落として、得点になることを良しとせず得点圏外の位置まで逃げてベイルアウトして荒船隊が生存点の2点を取って3対2対2って事ですよ』

 

寒気がした。

 

そもそも修は前年度のB級ランク戦の試合は全部見ている。

 

それでも実況と解説付きの音声があれば、自分の理解が届かなかった戦況や場面によっては悪手だったのが、こうすれば好手になったのにという事が分かるので非常に勉強になるからだ。

しかし、コレは理解が遠く及ばない。

どの要素を加えて思考すればこの結果を予測できるのか分からない。

確かにある程度の戦闘予想はできるが、マップの天候と時間帯までドンピシャで当てられる人間がいるのが信じられない。

荒船隊が城戸隊長に事前に説明していたという事なのだろうか?

 

「因みにだが、荒船隊は加賀美が凄い奏真さん苦手なんで事前に知らせはいないはずだ」

 

「うっ……また切なくなるエピソードを…」

 

修はここまで女の人に嫌われる人を聞いた事がないので涙が出そうになる。

 

『おおとここで出ました城戸隊長のほぼ9割9分で当たる個人予想!』

 

『予想は予想ですからねー外れる事もありまからそんなに期待しないで下さいねー』

 

『ではそろそろランク戦が始まるので皆さん画面に注目して下さい!』

 

 

 

 

「ふぅ、終わってみたら何で予想した時にこうなったのかとか教えてくれますし、こちらが分かり難いところや、何でそう動いたかの理由もしっかり解説してくれますし、分かりやすくて戦術面でも凄い勉強になる事を教えてくれますね城戸隊長って」

 

修の中の城戸隊長の評価は小南でいう全力でまあまあ位の評価になっている。自分で真似出来るかとかは置いておいて普通に凄い人だということがよく分かったからだ。

 

「まああの個人予想は正直、迅のサイドエフェクトに匹敵するレベルだと思うし、実際にそっちがサイドエフェクトなんじゃないか?って事で再検査になったこともあるんだが…」

 

「結果は同じだったってことですよね?」

 

「いや、対人威圧のサイドエフェクトが女性を相手にする場合効果が5倍になったらしい……」

 

「うぅ……なんで!なんで城戸隊長は悪くないのにこんな力を……」

 

「それが凄い力を手にする事の代償って事なのかもしれないな…」

 

ピコン!とレイジのスマホから着信音が鳴った。

どうやらメッセージが入った様である。

 

「……宇佐美スマナイ、これから料理を作った後に用事ができてしまった」

 

「……ああ、仕方ないよ行ってきて慰めてあげて」

 

「どうしたんですか?」

 

「奏真さんが月見に「弟子?誰が誰のですか?城戸さんに教えてもらった事なんてうっとうしい人間のあしらい方位ですよ?」って言われて今一人で自棄酒してるらしい」

 

「うう……行ってあげて下さい!」

 

 

 

コレは最高の解説を出来る人間が、最高の実況の相棒を得ることができる。そんな物語なのかもしれない。

 

 

 




Tips
王子隊の王子一彰は城戸命名のニックネームに共感をする事が多いが、それはそれとして自分の付けたニックネームを使う事が多い。


注意
月見さんは普段は厳しいですが酷い方ではございませんし、城戸隊長のサイドエフェクトは最初から効いてないタイプの女性でもあります。
そう効いてないです。
つまりは……

因みに外野は上から

太刀川
当真


犬飼
氷見
二宮
です。

こんな感じの会話の中でしか出ないオリ主ではございますが手空きの時に気が向いたら感想や評価をくれると大変嬉しく思いますのでよろしくお願いいたします。


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