HUNTER×HUNTER 血濡れた少女〜ブラッディガール〜 作:NKY
ドゴォン!!
静まり返っていた闘技場にその音はよく響いた。自然と観客達の視線も音の方にむく。
砂埃がおさまり、そこで見たのはーーー
ーー壁に叩きつけられたヒソカだった。
「…は?」
それを見たキルアは思わず間抜けな声を出した。いや、キルアだけでなく他の皆もだ。無理もない、先ほどまで思わず声を出してしまうような状態だったのだ。まったく予測してなかった状態に驚きながらも頭の中では何が起こったのかを考えていた。
「…ゲホッ。…ッこれは何本か肋骨もってかれたねぇ♠︎」
そんな状態にもかかわらず、ヒソカは相変わらず楽しそうに笑っていた。折れた部分をオーラで補強して楽しそうにリングに戻ってくる。そしてリオンの前に立つとニヤリと笑った。
「面白いものを手に入れたんだね♦︎いやぁ、まいったよ♣︎」
そう言ってはいるがまったくまいってない様子にリオンは内心舌打ちをした。
手刀の一撃をくらいそうになったあの瞬間、リオンは例の手袋の力を使ったのだ。あの手袋はやはりリオンの能力で作り出したものだった。付与されたのは変化と放出。あの時、掴んでいたヒソカの頭に直接電気に変化させたオーラを放出したのだ。
近くにある電気といえば照明や機械の電力しかない。そのため、普通に受けただけではピリッとする程度なのだが、それをあえて頭に直接放つことでほんの一瞬動きを止めることに成功したのだ。後は膝蹴りで脳を揺らし、壁に向かって蹴り飛ばしたのだった。
「…やっぱり君の足は危険だね♦︎」
そう言うと二ヤーっと今まで以上に不気味な笑みを浮かべながら襲い掛かってきた。肋骨が何本か折れているはずなのに先ほど以上に早い攻撃。徐々にリオンをおしていった。
このままではらちがあかない、とリオンは強気に出ることにした。相手は左腕と肋骨が折れており自分は大きなダメージはない。しかもポイント的にも相手はクリティカルヒット2回にクリーンヒット2回の6点、自分はクリーンヒット3回の3点しか取られていなかった。このまま攻めきればリオンの勝ちはかたかった。
ヒソカがしてくる攻撃を避け、左側に向かって蹴りをかます。左腕を負傷しているヒソカは避けるしかなかった。
…そのはずだった。
「え?」
リオンの足は見事に受け止められていた。ヒソカの折れた左腕に。そして、そのままリオンは足を掴まれて宙吊りにされていた。
そう、ヒソカはあえて折れた左腕でもう一度受けることでリオンを捉えることに成功したのだった。最初のものと比べて弱いとはいってもそれなりの威力のある蹴り。それを折れた状態で受けたヒソカの左腕はさらに変な方向へと曲がっていた。その腕を見て観客から悲鳴があがる。
「…捕まえた♥︎」
まるで痛みを感じていないかのようにニヤリと笑うヒソカを見てゾッとするのと同時にブチッと嫌な音がリオンの右足からした。
…そう、足の腱を切られたのだ。すぐに左足を使い脱出しようとするが、少し遅かった。そのまま床に叩きつけられてしまい、クリティカルヒットを取られてしまう。
切られたところはオーラを纏っているので出血こそしておらず、痛みもそこまで気になるものではないがとても今までのような動きができるような状態ではなかった。
リオンは左足のみで地面を蹴り攻撃するが、やはり攻撃力もスピードも格段に落ちていた。蹴りがないとどうしても体格や経験で勝ったヒソカに対して不利になる。接近してナイフを突き出してもそれが届く前にヒソカの攻撃が当たってしまう。リオンはあえて距離をとることにした。
「…仕方ないか。」
この試合、リオンはなるべく自分の能力を使わないようにしていた。使うにしても観客からはわからないように、接近して使ったり、最初から具現化しておいていた。
手を抜いていたわけではない。ブラッディガールとバレることを恐れたのだ。しかし、片足が使えなくなったいまそうも言っていられなくなった。
リオンは地面を蹴ってヒソカから離れながら右手に持っていたナイフを投げた。それはあっさりと避けられてしまう。しかし、ナイフはUターンして再びヒソカに襲い掛かって来た。
「ふぅん、操作系だね♠︎」
そう、両手に持っていたナイフには操作系が付与されていたのだ。そして違う角度から左手のナイフも投げる。ヒソカの周りには二本のナイフが飛び交うようになった。
(糸で操っているようにでも見えてたらいいわね…)
実際、普通の観客はそうだと思っていた。キルア達は事前に能力を知っていたため特に不思議にも思わなかった。
リオンは飛び回る二本のナイフの隙間から攻撃を仕掛ける。ヒソカは三箇所からの攻撃を避けなくてはいけなくなった。リオンが操っているため決して規則的には動かないナイフ。リズムを変えながら襲い掛かってくるナイフとリオンを避けるのは中々に大変なことだった。
しかし、ヒソカはそれを全て避けていた。攻撃こそしてはこないものの、死角からの攻撃もすべて避けていた。どうして避けられたのか。それは、ヒソカが自分の周りに円をしてナイフを感知していたからだった。
それはリオンもわかっていた。ヒソカに何かしら攻撃を当てるにはほんの一瞬でも動きを止める必要があった。
そしてそのチャンスはやってきた。ヒソカがナイフを避けたところで先ほどと同じように素早く頭を掴み電気に変えたオーラを直接流す。念には念を込めて先ほどよりも多めに、だ。
そして動きが止まったヒソカに膝蹴りとナイフが襲い掛かった。
「知ってるかい?ゴムは電気を通しにくいんだよ★」
そんな囁きが聞こえると同時にリオンはお腹に強い衝撃と宙に浮く感覚を感じた。そして振り向いた瞬間再びお腹に衝撃を感じ、床に叩きつけられた。
「…ッカハッ…」
勢いよく床に叩きつけられたためリオンの肺の中が空っぽになる。その状態のまま上から降りてきたヒソカに首を絞められた。
「グフッ…」
持ち上げられ、絞められる首からミシミシと嫌な音がするのを聞きながらも先ほどのナイフを操ろうとするがナイフはどこにも見当たらなかった。そんな中、せめても、とリオンはヒソカを睨みつけた。
「へぇ…もう酸素もなく、息もできないのにそんな元気があるんだね♦︎流石だけど、もう意識が朦朧としてきたんじゃないかな?」
その通りだった。いくらリオンでもこの状況では限界が近づいていた。普通の人なら叩きつけられただけで意識を失っていただろう。さらに首を絞められて息ができない状況でまだ意識がある方がおかしいのだ。観客の悲鳴を聞きながら少しずつ、リオンの意識は遠くなっていった。
「おやすみ♥︎」
その言葉を最後に聞き、リオンは意識を失った…。
25話