アル中とさしす組   作:大塚ガキ男

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お久しぶりです。私生活大忙しニキでしたので、投稿が遅れました。ブーストは勿論無しです。


アル中、再会する。

 

 

 

 

「どんな女が好み(タイプ)かな?」

 

 突然の、出来事だった。

 遡ること、数分前。

 馬鹿みたいに(あち)ぃ気温の中、夏油と灰原と3人で屋内の自販機スペースにて、ベンチに座って仲良く雑談をしていた。久し振りに任務無い日だなぁとか笑いながら、部屋着でそんな会話をしていたような気がする。

 そこに、突然ノースリーブの金髪お姉さんが現れたのだ。

 思わず、全員固まった。

 高専内ではまず見ない──というか一度見たら忘れないタイプの美人は、片手で持ったジャケットを肩にかけ、もう片方の手を腰に当てた決めポーズと共に、夏油に向かって上記の台詞を突然寄越してきた。

 夏油は見知らぬ美人に警戒して睨み付け、灰原は美人をじっと見つめている。オレは何もせず、我関せずといった面持ちで外の景色を眺めることにした。

 

「どちら様ですか?」

 

 目の前の美人にそう問う夏油の声色は冷たい。全身から、まかり間違えばこのまま戦闘に発展してしまいそうな、危うげな空気を発している。そして、そんな空気に包まれた自販機スペース。

 対して金髪のお姉さんはどこまでも余裕そうな表情だ。

 

「自分は沢山食べる子が好きです!!」

 

 そんなシリアスな空気をぶち壊したのは、我等が可愛い後輩灰原雄くん。軽率な返答に夏油が咎めるように名前を呼ぶも、当の灰原は金髪のお姉さんの大体の人となりを見抜いたようで「大丈夫ですよ。悪い人じゃないです」と返した。

 

「人を見る目には自信があります」

 

 そう言った灰原は笑っていた。夏の太陽なんかより余程眩しい笑顔だぜ、灰原。

 人を見る目には自信がある灰原は、この場では自分が不必要だということにもなんとなく気付いているらしく、ニコニコと愛想良く、失礼しまーすと頭を下げながらスマートに場を去っていった。金髪のお姉さんが手を振り、夏油がげんなりとした顔で見送る。

 さて、オレも部屋に戻りますか──

 

「まぁ、待ちなよ。()()?」

 

 そそくさと、灰原の後を追うように立ち上がって数歩進んだ背中に、金髪のお姉さんの言葉が刺さる。今一番呼ばれたくない呼び名で呼ばれて、思わず顔を顰めた。

 

「……アンタねぇ」

 

 振り返って抗議の視線を送るも、金髪のお姉さんはどこ吹く風。それどころか、

 

「昔みたいに名前で呼んでくれないともう一回、出君って呼んじゃおうかな〜」

「ぐ、ぐぐぐ……!」

 

 コイツマジで。

 年上に対してコイツとか言ったり思ったりしちゃあいけないのだが、そう思わずにはいられないくらい、目の前のお姉さんが憎たらしかった。あと、こちらを見る夏油の目が怖過ぎて、お姉さんから視線を外せない。

 

「……さん」

「うん? 何か聞こえたな」

「……きさん」

「ぜ〜んぜん足りないね」

由基(ゆき)さんっ」

「あ〜聞こえな〜い」

「──あぁ、もう! 由基ちゃん! これで良いですか!?」

 

 ヤケクソ。己の中にある恥じらいの感情を殺し、怒鳴るように名前を呼ぶ。金髪のお姉さん──由基ちゃんは腕を組んで満足気に頷いていた。

 

「……出、知り合いなのかい」

 

 夏油が自分が座る隣をポンポンと叩きながら、こっちに来いとでも言いたげな表情で問うてくる。なんでオレを睨むんだ。

 ここで逃げたら後がヤバいので、仕方無くベンチへと戻る。由基さん(年上の女性をちゃん付けなんてしんどいこと地の文くらいやめさせてくれ)の隣はマジでダルいので、夏油を間に挟むように座る。逃げられないように左手を繋がれた。

 言っていいですか? 

 由基さんにそう視線で問いかけると、構わないよと視線で返ってきた。くそぅ。分かってしまうのが腹立たしい。

 観念。

 洗いざらい話すことにした。

 

「この金髪のお姉さん──由基さんは」

「由基()()()

「……由基()()()は、オレが小さい頃に知り合いだった人だ。一時期公園に行けば会えた人で、いつの間にか会えなくなった人。それだけの関係だよ」

「それだけかな。私を慕っていたとか、初恋の女性でした、とかは言っておかなくて良いの?」

 

 ギュウウウウウウ。

 夏油の手が、金属で出来たオレの手を万力のような力で握り潰そうとしている音。

 

「痛い痛い痛い痛い! 由基ちゃんやめてください! 夏油(コイツ)本気にしますから!」

「え、本気じゃなかったの?」

 

 ギュウウウウウウ! 

 夏油の手が以下略。しかし握る力は更に増している。

 

「イヤ〜〜〜〜〜ッッ!!」

 

 由基さんの軽口に完全に乗せられた夏油をなんとか宥め、かかった時間はおよそ5分。暑いから、カッとなりやすいのだろうか。いや、思い返せばオレ関連だといつもこんな感じだったかも知れない。

 シャツの襟首をパタパタと動かして風を送りつつ(夏油お前食い入るように見るんじゃねぇ)、落ち着いて会話を再開。

 

「……落ち着いたか、夏油」

「……あぁ、少し」

 

 少し? 

 思ったよりもカッとなっていたらしい夏油に片眉が上がる。

 

「由基ちゃんも、あまりコイツをからかわないでください。真面目な奴なんですから」

「悪い。つい、ね」

 

 つい? 

 含みを持たせたような由基さんの言葉に、もう片眉が上がる。夏油も同じように謝罪をしてきた。

 

「……てっきり、この前言ってた君の彼女なのかと思って。すまない、出。冷静じゃなかった」

「オレ言ってないけどな。同期(お前等)が勝手に、高専に提出するオレのプロフィール(書類)を盗み見ただけだけどな」

「……」

 

 訂正を入れると、目を合わせてくれなくなった。こっち見ろ。

 

「それはそうと、出君。女の好み(タイプ)教えてよ」

「教えません」

 

 女の好み(タイプ)? どうせ私だろうけど。そう言いたげな由基さんの表情を突っぱねるように拒否。てか結局出君呼びかい。

 話を変えたつもりらしいが、その話題が新たな火種になる可能性をまるで考えていない。いや、由基さんなら考えた上でその話題を出してきてもおかしくはない。幼い頃も、由基さんに何度からかわれたことか。

 まぁ、兎に角拒否だ。

 予測出来る災難は回避するに限る。

 

「私も知りたいな」

「教えません」

 

 話に乗っかってきた夏油にも拒否。何ニコニコしてんだ。災難ってお前のことだからな、夏油。

 

「ヒント、ヒント頂戴!」

「えー」

「お願い! 金髪とか幼い頃に会ったことがあるとか、そういうのだけで良いから!」

 

 拒否したにも関わらず食い下がる由基さんに、どうしたものかと母音を伸ばす。というか、この人自信家だな。

 

「うーん……」

 

 困った。

 ここまで引っ張ってはみたものの、別に特定の人に好意を寄せているだとか、付き合いたいとかいう感情がないからだ。

 そりゃあ、可愛いなとか美人だなとか、そういうことは思うけれども。早死にが確定してるこの身体のことを考えると、全てが意味の無いことのように思えるというか。例え恋して、何もかもが上手くいって誰かとお付き合いする関係になれたとしても、悲しませてしまうだけなんじゃないかというか。

 どれもこれも、天与呪縛(アルコール)の所為。

 だから、困った。

 ここまで渋っておいて、女の好み(タイプ)は特にないですと言って許されるような空気ではない。誤魔化していると思われて、更なる追及を受けるのがオチだ。

 どうしよう。

 ……取り敢えず、知り合いの美人で良いか。

 

「お金が大好きで、(カラス)に自死を強制する糸目の美人。もしくは、面倒見が良くて優しい巫女服のお姉さん」

「「は?」」

 

 つまりはお前等じゃねぇよってことを暗に伝える。そんなに顔を近付けないでほしい。

 ちなみに、硝子ちゃんは除外。メッチャ美人だと思ってるけど、夏油経由でオレの発言が本人に伝わる可能性があるからだ。ごめんね硝子ちゃん。

 私じゃないの? という意味の『は?』と。

 あの人達が好み(タイプ)なのか? という意味の『は?』と。

 それぞれの疑問符をぶつけられ、思わず窓の外に視線が移る。良い天気だなぁ。

 

「まぁ、そういうことなんで。あとはお二人で──」

「ちょっと待って」

 

 どさくさに紛れて立ち去ろうとするオレに、由基さんが。なんですかと視線を向けると、そこには瞳がブレている由基さんが。何やら動揺しているようだ。

 

「……()()?」

「え?」

「あの公園で言ってくれたよね? 『僕、大きくなったら由基ちゃんと結婚する!』──って」

「……はぁ?」

「なのになんで……?」

 

 なんでそんなのが好み(タイプ)なの? 

 動揺し切った声色で、オレにそう言う由基さん。

 

「はぁ??」

 

 その発言に、顎が地面に付きそうになるくらい口が開く。開いてしまう。しかも塞がらないときた。

 目が合ったまま、数秒固まる。しかし頭の中はといえば、どういうことだ、目の前の人は何を言っているんだと、脳味噌が答えを求めて縦横無尽にフル回転している。

 コイツマジか? 

 恐らく、オレも由基さんも同じことを思ったことだろう。だからこそ、その後に口から出る言葉も一緒だったのだ。

 

「「いやいやいやいやいやいやいやいやいや」」

 

 一旦、息を吸う。

 

「え、由基さんあなた」

「由基()()()

 

 面倒くせぇ! 

 

「由基()()()あなた、どうしてオレが幼い頃に遊んだお姉さんを今の今まで変わらず好み(タイプ)だと思うんですか? 由基ちゃんに遊んでもらった記憶は、それは楽しい記憶だとは思ってますし、当時のショタ浮舟くんならもしかしたら『由基ちゃんが好み(タイプ)!』とか口走ってたかもしれませんけど。そもそもさっきの、結婚云々だってそういえばそんなこと言ってたかもなくらいの印象ですし、その約束を今でも憶えてるって、もしかして由基ちゃんガチだったんですか? 当時まだ小学校低学年の男児が年上の女性に向ける憧れが好意とごちゃ混ぜになるあの感情を、ガチの求愛だと思って受け入れて、しかもこの歳になるまでず〜〜〜〜〜〜っと憶えて温めてたってことですか?」

 

 言い切る。

 頭が痛くなるくらいの長文を、一息で言い切る。

 少し酷い言い方だったかもなと思ったりもするが、あとの祭り。言ってる時のオレは、マジでこの人ヤバいなと思って言っていたのだ。

 慌てて由基さんの表情を観察する。場合によってはフォローを入れ(オブラートに包んで言い直さ)なければならないからだ。

 しかし、由基さんはオレの発言を受けて怒るだとかそんなことは無く。(むし)ろ。

 (むし)ろ。

 泣きそうになっていた。

 涙目で、唇を尖らせて。

 よくそんな、いかにもな表情が出来るものだ。

 

「……結婚するって言ってくれたのにな」

 

 もしかしたら。幼い頃の、由基さんに憧れてた自分が口走ったかもしれない言葉。消え入るような声で、昔を懐かしむように呟く由基さんの姿に、ほんの少しだけ心が痛む。

 

「……由基ちゃんだけを愛するって言ってくれたのにな」

 

 言ってない。幼い頃の記憶なので確信は持てないが、幼い頃のオレはそんなこと立派なセリフは言わない。

 

「……身も心も捧げるって言ってくれたのにな」

 

 絶対に言ってない。言ってたとしても、小学校低学年の男児のそんなセリフを真に受けるのは犯罪者だけだ。

 由基さんは犯罪者ではないと信じたい。

 

「……もし高校生になった僕が嫌がっても、それは嫌がってるフリだから無理矢理にでも事を進めてくれって言ったのにな」

「言うかそんなことッ!」

「言ってなかったっけ?」

 

 悪びれる様子も無く、後頭部をかきながら舌を出す由基さん。この人、マジでヤバいんだな。

 そんな、ジト目で見つめるオレの視線に気付いたのか、しょんぼりとした表情で姿勢を体育座りに切り替え、顔を膝に(うず)めた。それから、こう言った。

 

「……ヤバくないもん」

「あ、拗ねた」

「しかも可愛い子ぶってるね」

「この人の場合、顔が良いから尚ムカつく」

「今私の顔が好みって言った?」

「言ってません! 早く前を向いて、真っ当な恋愛をしてください! ──うわ、ちょっと! 夏油を飛び越えてまで抱き付かないで! チューしようとしないで! ストップ! ストォォォォォップ!!」

 

 

 

 

 

 

 ∪

 

 

 

 

 

 

 息切れ。

 なんとかオレにチューしようとする由基さんと、それを拒否するオレと、オレと由基さんを引き剥がそうとする夏油。それぞれの思いを胸に自販機コーナーで大暴れし、決着。

 ほっぺにチューされてしまった。

 

「すまない……出……。君の純潔……護り切れなかった……」

「きしょい……言い方を……するな……」

「私の勝ちだね」

 

 ぜぇはぁと、ベンチにもたれかかりながら呼吸を整えるオレと夏油と引き換えに、由基さんは汗一つ──涙一粒溢していなかった。やはり、あの落ち込みようは嘘だったらしい。

 咳払い。それから、聞きたかったこと(本題)へと移る。由基さんは移りたくなさそうな顔をしているが、強引にでも移る。移るったら移るのだ。

 

「……それで、由基ちゃん。あなた一体こんなところになんの用だったんですか」

 

 高専(こんなところ)

 一般人には決して見つからない山の中。しかも天元様の結界の中にある筈なのに、何故由基さんの侵入を許しているのか。案外天元様の結界もザルだなぁとか失礼な感想を抱いていると、由基さんから返ってきた言葉は予想だにしないものだった。

 

「あぁ、夏油君と五条君に、挨拶をと思ってね。これからは同じ()()なわけだし。……可能ならば出君を連れ帰るって目的もあったけど」

「……」

 

 予想だにしないし、なんなら聞き捨てならないことを言われたような気もしたが、この際重視すべきは前半部分。後半は無視だ。もう一々ツッコむのも疲れてきた。

 同じ特級。

 特級? 

 特急じゃなくて? いや特急でも意味分からんわ。

 夏油と五条は、この前めでたく特級術師になった。二人と同じということは──

 

「──って、えぇ!? 由基ちゃん、あなた術師ッ、いや、し、しかも、特級術師だったんですか!?」

 

 酔っ払った頭が冴え、おまけに冷えていく感覚。さっきから大声を出し過ぎてガンガンする頭の中で、由基さんの顔と特級術師という途轍も無さがグルグルと駆け回る。

 

「そうだよ。気配とかで気付かなかった?」

「オレ酔っ払ってますし! いやそうじゃなくて、本当に特級!?」

「うん。特級だよ」

「由基ちゃんって、凄い人だったんですか!?」

「うん。メッチャ凄いしメッチャ強いよ」

 

 笑顔でVサインを向けてくる由基さん。

 呆然。ただのお気楽ショタコンお姉さんだと思ってた人が、日本で数人しかいない特級術師(バケモン)だったんですが。

 由基さんが有名人だと知らなかったオレを、夏油が目を細めながら「出……」と呆れるように言った。

 

「私は名前を聞いて、ピンと来てたよ」

「え、やっぱ有名なの?」

「あぁ。この出立ちで名前が由基さんとくれば、()()九十九由基しかありえない」

「おっ、いいね。どのどの?」

 

 夏油の発言に気を良くしたのか、にやけ顔で続きを促す由基さん。しかし、続く夏油の言葉は予想だにしないものだった。

 

「特級のくせに任務を全く受けず、海外をプラプラしてるろくでなしの」

「ブフッ」

 

 思わず噴き出してしまった。それを見て、ぐでーんとベンチからずり落ちる直前まで体勢を崩す由基さん。

 

「私、高専ってきらーい」

「あ、また拗ねた」

「愉快な人だね」

「──というか、女の好み(タイプ)聞いてなかった」

 

 思い出したかのように呟き、すぐさま切り替えて体勢を戻す由基さん。確かに、そんなことも言ってたな。

 

「それで、夏油君。君の女の好み(タイプ)は?」

「女じゃなくても良いですか?」

「勿論」

 

()()()()()()()()()()()()、だと……? 

 夏油の発言に恐れ慄く。発言次第では距離を取らせてもらおうと身構えた。

 

「ん」←そんなオレの肩を流れるような動作で抱き、由基さんに見せつける夏油。

 

「は?」←夏油の回答にブチ切れ、立ち上がる由基さん。

 

「……」←恐れていた事態になり、絶望して天を仰ぐオレ。

 

 誰か助けてくれ。ホモ(確定)のイケメンとショタコン(疑惑)の美女に狙われてる。

 

「それが、君の答えというわけだね」

「はい。私の好み(タイプ)は、浮舟出です」

「はっきり口に出すなやボケッ!」

 

 金属(メタル)パンチを繰り出すも、軽々避けられてしまう。くそ。コイツ、特級に上がったからって調子乗ってるんじゃねぇだろうな。

 

「……腹の底からムカつくけど、人を好きになるのは個人の自由──だけど」

「だけど?」

 

 煽るように、夏油が言葉尻を反芻する。コイツ、年上が怖くないのか。怖くないよな、お前は。いや、お前と五条は。

 

「それを私が認めるかは全くの別問題。だって私、出君と将来を誓い合った仲だから!」

 

 胸に手を当て、真っ赤な嘘を高らかにそう宣言する由基さん。

 ギリリ……と嘘に乗せられて怒りで歯を軋ませる夏油。

 もうコイツ等止まんねぇな。

 やれやれ。オレが言っても止まらないなら、もう後はどうすることもできない。こうなったら無理矢理にでもこの場を抜け出して、二人が落ち着くまで放っておくしかない。

 

「……」

 

 じわりじわりと、バレないように後退(あとずさ)る。もう既に2回くらい逃げ出そうとしているので、次逃げ出そうとしているのがバレたら、もっと事態が悪化してしまう。決してバレないように、悟られないように──

 

「何してんの?」

 

 肩に、手を置かれた。

 しかし、オレの肩に手を置いたのは夏油でも由基さんでもない。

 だってオレは、二人の手が届かない場所まで後退(あとずさ)ってきていたのだから。

 前方ではない。

 ならば、後方。

 そして、手を置いたのは誰なのか。

 聞き覚えのあり過ぎるその声。でも声のトーンはいつもよりもずっと低く。オレはゆっくり後ろを振り返りながら、その名前を呼んだ。

 

「……硝子ちゃん」

「やっほー、いずる。ちょっと聞きたいことあんだけど」

 

 少しだけ口角を上げて挨拶してくれる硝子ちゃん。オフの日(ゆえ)、硝子ちゃんも半袖半ズボンとラフな格好をしていた。着てるシャツには『ヤニ切れ』と書かれている。

 声のトーンはまだ低い。

 

「き、聞きたいこと? なんだろう、オレに答えられることならなんでも」

「──なんでも、答えてくれる?」

「うん。勿論」

 

 敵対する意思も、反抗する意思もないことを言外に伝える。何故だか、硝子ちゃんを下手に刺激しちゃいけない気がした。ちなみに、オレの脳内は逃げろの三文字を、電光掲示板の如く端からやってきてはまた端へと、ぐるぐると何回も流れていっている。

 

「じゃあ、聞いていい?」

「うん」

()()()()()()()()()()()()()

「き、聞こえてたんだ……」

「勿論」

 

 あれ、硝子ちゃんの目ってこんなに濁ってたっけ? 

 硝子ちゃんの背後って、いつもこんなぼやけてたっけ? 

 

「……」

「答えてよ。その女、いずるの何なの」

「わぁ、まるで昼ドラみたいなセリフだね」

 

 早速他人事な由基さんが茶々を入れる。一から十まで全部あなたの所為なのですが。あなたが変なこと言わなければ、オレも昼ドラみたいなセリフ言われなくて済んだんですからね。

 夏油は──あ、アイツ素知らぬ顔でジュース買ってやがる! なんて奴だ! 

 

「しょ、硝子ちゃん。少し落ち着こう。オレと硝子ちゃんの間には、何か誤解があるみたいだし」

「落ち着いてるよ。落ち着いた方がいいのはいずるじゃない?」

「え?」

「ほら、凄い汗だよ」

 

 硝子ちゃんは勝手知った顔でオレのズボンの左ポケットからハンカチを抜き取り、オレの額を拭った。どうやら、硝子ちゃんから発せられるプレッシャーに当てられ、緊張して汗をかいていたらしい。

 

「あ、ありがとう硝子ちゃん」

「別にいいよ」

 

 何でもないようにそう言って、ハンカチを自分のポケットにしまう硝子ちゃん。

 

「えっと、そのハンカチ……」

「話を逸らさないで」

「……すみません」

 

 キッと睨まれ、つい頭を下げる。これは俗に言う逆ギレなのではと思ったりもする。しかし、これはオレの酔っ払った頭が導き出した結論であり、信用には値しない。

 今は硝子ちゃんの言うことが全て正しい。

 ……硝子ちゃんが正しいと導き出したのも、オレの頭だけどな。

 

「あの女の人──由基さんは」

「由基()()()

「ちょっと黙ってて下さい! ほら、由基ちゃんの所為で硝子ちゃんの顔が凄いことに!」

 

 間。

 次の日曜日、硝子ちゃんに1日付き合うという条件を呑むことでなんとか落ち着いてもらい、会話を再開。このままじゃオレの心労がヤバい。語彙もヤバい。

 

「……由基ちゃんは、オレの昔の知り合いってだけだよ。硝子ちゃんが疑っているようなことは何一つ無い。今日だって、その()以来の再会なんだから」

「ふーん」

 

 なんとか分かってくれたのか、この場に現れた時から見えていた硝子ちゃんの周りを揺らめくオーラみたいなものが、段々と消えてゆく。良かった、いつもの硝子ちゃんに戻った。

 

「……なら良いけど」

 

 呟くようにそう言った硝子ちゃんは、どこか安心したような顔をしていた。可ぁ愛いんだ。

 これにて、一件落着。夏油と由基さんの煽り合いも無くなったし、突如として乱入してきた硝子ちゃんが抱いた勘違いも無くなった。

 部屋に戻ろう。こんな、胃が痛くなる空間じゃなくて、自分の部屋へ。冷房の効いた自分の部屋に戻ろうじゃないか。

 

「……何かな、その目は」

「いえ、別に」

 

 一息ついて安心していたところに、不穏な雰囲気。見れば、由基さんと硝子ちゃんが睨み合っていた。一瞬意識を逸らしただけでなんでこんなことになるんだ。思わず頭を抱えてしまう。

 

「何もないですけど、ただ」

「ただ?」

()()()()()()()()()()()()()……必死ですね」

 

 ブチッ。

 誰かがキレた音。

 誰かの血管がキレた音。

 

「ガキ」

 

 由基さんが。恐らく硝子ちゃんに向けて。

 

「ババア」

 

 硝子ちゃんが。恐らく由基さんに向けて。

 

「あ?」

「は?」

 

 二人の普段の表情を知っているからこそ(由基さんは今日再会したばかりだけど)、今の二人がどれだけキレてるのかがよく分かる。緊張でまたしても額に汗が滲むが、ハンカチが無いので拭うことはできない。

 

「お前みたいな生意気なガキが、出君の何だって言うんだ。知り合い? 友達? もしかして良い感じの関係? 何でも良いけど、お前の児戯に付き合ってあげてる出君が可哀想だよ。きっと、他に選択肢が無いから(あと2人が男だから)、仕方無く女の君で我慢してるんだろうね」

「さっさと帰れよババア。いずるが迷惑がってるのが分からないんですか? それとも、年取ると()()の感情の機微にも気付けなくなるんですか??」

 

 途中から、夏油に両耳を塞がれる。普段なら振り解いて罵倒の一つでも飛ばしてやるところだが、今はこの静寂が心地良い。女性同士の喧嘩ってなんでこんなに心がキュッてなるんでしょうね。五条と夏油の喧嘩見てても「おっ、やれやれ!」としか思わないのに。

 声は聞こえなくなったが、由基さんも硝子ちゃんも、今尚互いを罵り合っている。ヒートアップ。このままだと手が出そうな勢いだ。

 

「……夏油」

 

 両耳を塞がれたまま、名を呼ぶ。返事は聞こえないが、聞こえているはずだ。

 

「帰ろ」

 

 歩き出す。両耳は塞がれたままなので、夏油もすぐ後ろをついてきているのだろう。

 真夏。

 突然現れた、幼少期に遊んでもらったお姉さん。再会は嬉しいけれど、彼女がいることでいつもの5倍くらいトラブルが巻き起こるので、できればもう高専には来ないでほしいなと思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 朝。

 教室にて。

 椅子に座り、机の上のリュックサックに、必要なものを詰め込んでいたオレに、同期達がどこに行くのかと話しかけてきた。ので、答えた。

 

「こんな朝から、任務だって?」

「そう、さっき夜蛾先生伝てに言われてさ。これから行ってくる」

「随分と急な話じゃないか。まだ授業すら始まっていないのに」

「さあな。それだけ急ぎの任務ってことなんじゃねぇの?」

「本当なのかい、硝子」

「……うん。任務があるっていうのは本当。私も隣で聞いてたし」

 

 夏油からの問いかけに、オレの横で荷造りの様子を見ていた硝子ちゃんが答えた。

 わざわざ証人を立てるほど、オレって信用無いのだろうか。いや、考え過ぎか。

 ──任務。しかも朝から。

 任務に行く時ってのは、お昼からだったり午後からだったり、ってのが普通なのだが、たまにこうやって朝一で任務に向かわなければいけない時がある。普段とは違う時間帯に向かう任務というのは、得てして面倒な内容のもので。恐らくは、厄介な相手なのだろう。

 だからこその、同期三人の心配そうな視線。

 口の開いたリュックサックに、コンパスや食料、それから大量のお酒とエチケット袋を詰めていく。

 

「……出、本当に大丈夫なのか?」

 

 後ろから、夏油がオレの左肩に手を置いて問うてくる。オレは振り返らずに答える。

 

「大丈夫だって。いざとなったら格好良く散ってみせるさ」

 

 言って、左肩が軋む。ギリギリと、随分と力強く。

 

「嘘嘘! 嘘だって。……いのちだいじに、そうだろ?」

 

 慌てて振り返り、ちょっとしたジョークですよと笑顔を見せる。オレの極上スマイルを見た夏油は、瞬き。

 

「大丈夫大丈夫。二級呪霊が2、3体って話だし、多分呪霊が強いんじゃなくて、その土地自体が厄介なタイプだと思う」

 

 何故だかやたら心配してくれる同期3人を、必死に励ます。オレは大丈夫だから、そんな深刻な顔をしないでくれと、宥める。

 

「今からでも遅くない。私が変わりに──」

「よせ、夏油」

 

 甘い提案を持ち掛けてきた夏油に、手のひらを向ける。

 

「そう簡単に、オレが受けた任務を変わってくれるなよな。これはオレが行くべき任務だ」

 

 ちょっと格好良い台詞のような気がする。あ、でもしゃっくりしちゃった。あれ、ひゃっくりだっけ? あぁもう、どっちか分からんけど。

 

「しかし──」

「そうだ! いずるお前、ちょっと考えてみろって! なんで俺と傑より先にお前に任務の話がいってるのかとかさ!」

 

 夏油に向けたオレの手を取り、五条が必死に訴えかけてくる。

 

「分かってるよ、この任務が普通じゃないってことくらい。でもな、五条」

「……なんだよ」

「これは、オレの年中酔っ払って使い物にならない頭が導き出した結論だから信憑性は五分五分といったところなんだが──多分、上層部はオレにこの任務をやらせたいんだと思う」

「……上層部」

 

 硝子ちゃんが、オレの口から出た単語を噛み締めるように繰り返した。その手は拳を型作っている。

 

「なんでかは分からんけどな。でも、今なら歌姫先輩が言ってたことが分かる気がする」

「歌姫? なんで歌姫の名前が出てくんだよ」

「いや、なんかオレ、上層部に狙われているらしくてさ」

「「「はぁ!?」」」

 

 ウケるよな。

 そう言い終える前に、強制的に立ち上がらされて壁際まで押される。背後には壁、眼前には同期三人の顔。一瞬にして、そんな状況に追い込まれた。野郎二人は馬鹿みたいに背が高いので、上から見下ろされてオレがいる場所だけ日陰になってしまった。

 

「馬・鹿・か・よ・お・前・は〜〜〜! じゃあ尚更、なんで素直に任務向かおうとしてんだ!」

「出、君は本当に頭がおかしいみたいだね。いや前からそうか。まぁ出は、頭の螺子が外れているところも魅力の一つではあるが──今は全く以って別問題だ。兎に角、キチンと説明をしろ。でないと()()()()()()()()()()()()()

「いずるさぁ、ちょっと休みなって。ほら、ちょっとおでこ熱い気がするし。今なら特別に隣で寝かしつけてあげるからさ。だから──この任務は絶対行っちゃ駄目」

 

 上から、五条、夏油、硝子ちゃん。三者三様になじられて思わず両手を上げて降参のポーズ。兎に角、説明するから少し離れてくれとお願いすると、無視された。無視すんな。

 

「……この前、夜中に歌姫先輩来たろ」

「らしいな」

「らしいね」

「来てたね」

「その時、言われたんだよ。上層部がオレを狙ってるって」

 

 言った瞬間、衝撃。

 壁ドン、股ドン、腹パン。

 五条、夏油、硝子ちゃんの順番で。……硝子ちゃん、腹パンはやめてね。ゲロ出ちゃうから。

 

「……出、答えてくれ。君は死にたいのかい?」

 

 (くら)く、(おぞ)ましく、濁った瞳でオレを見つめる夏油。返答次第では、暴力での解決も辞さない──そんな迫力が、今の夏油にはあった。オレとしても暴力での解決は絶対にやめていただきたいので、夏油を怒らせないような言葉選びを(つと)める。

 

「……死にたいわけないだろ。オレはまだお前等と一緒に馬鹿やっていたいしな」

「出……──いや、誤魔化されないぞ。納得のいく説明を」

 

 ずい。

 顔を近付けて、鼻と鼻が触れ合うくらいの距離感で。夏油の瞳に呑まれになるのを堪えて、オレも負けじと顔を近付ける。額と額がぶつかった。押し負けたら、押し切られる。オレは気合いで、言葉を放った。オレ酒臭いからあんま顔近付けないでほしいんだけどなとか頭の片隅で考えながら、言葉は至極真面目に。

 

 

()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()

 

 浮舟の口から発せられた予想だにしない返答に、五条と夏油と家入の三人は思わず面食らい、浮舟を押さえる力を弛めてしまった。その機を逃さず、三人がかりの拘束をするりと抜け出してみせる浮舟。慌てて目で追うと、浮舟は乱れた制服を片手で直しながら、まぁ聞けよと宥めた。

 

「上層部は、なんでか知らんがオレを狙ってる。だから、これから行く任務も恐らくは上層部の意図が絡んでいると思う」

「そうだよ。だから私達は、こんなに引き留めて──」

「だから、チャンスなんだ」

 

 凛とした瞳。

 一文字に結ばれた唇。

 そのパーツの一つ一つが三人の視線を釘付けにする。顔のパーツを順番に見て、順番に見惚れて、やがて表情。浮舟の、自身に満ちた表情に気付いた。

 

「上層部の思惑通り任務に向かい、呪霊を軽々とぶっ倒す。つまり、上層部が思っているより浮舟出は強くて厄介だと思わせるんだ」

「しかし、それには──」

「ああ、オレが今から倒す呪霊よりも強いことが大前提。だから、()()()()

「教えてくれ出。一体、何がチャンスなんだ?」

 

 答えを乞う夏油。浮舟はキメ顔で。

 キメ顔で……。

 

「……あれ、……何だっけ」

「「「はぁ?」」」

「え、ちょっと待って、ド忘れした。うわ、これってお酒の所為かな。それともオレがドアホなのかな」

「どっちもじゃないのか」

「どっちもか〜! うわマジで忘れた! めっちゃ良い作戦だったのに!」

 

 ド忘れ。3人が何だコイツという目で浮舟を見る。

 やめて、そんな目で見ないで! 

 浮舟は心の中でそう叫んだ。

 

「……つまりっ」

「つまり?」

「つまり……オレは、全然大丈夫だってことだ! いつも通りお酒を飲んで呪霊をぶん殴って、ニコニコ笑顔で帰還して上層部がぐぬぬ……! って悔しがる! それで万事解決!」

「……それだと、またいつ狙われるか分からないじゃん」

「その時はその時! また呪霊をぶん殴りゃあ良い!」

 

 終わった。途中までは頭脳キャラ顔負けの理詰めで3人に最高な思惑(自己評価)を伝えられていた浮舟だったが、いつの間にやら脳筋キャラにジョブチェンジしてしまった。

 

「……だから上層部(アイツ等)、最近大人しかったのか」

 

 浮舟の話を真面目に聞くのを諦めた五条が、ふと。何か思い当たる節があるかのような口ぶりで、顎に手を当てながら、そんなことを言った。

 

「なんだ、何か心当たりでもあるのかい」

「あぁ。最近呼ばれても小言を言われないっていうか。上層部(アイツ等)がなんだかソワソワしてるっていうか」

「……成る程。つまりは、今日の為に結構な準備をしている可能性があるということか」

「えー、じゃあどうすんの? このままいずるを任務に行かせちゃ駄目なんじゃないの?」

 

 家入が二人に問いかける。浮舟は、3人の表情をキョロキョロと見回していた。

 

「……いずる。任務の場所は?」

「静岡だよ。よく分からん山の中だけど」

「正確な場所は?」

「なんだよ、そんなに心配なのか。じゃあ逐一連絡入れるよ」

「いずる、約束して。何かあったら、何か異変を感じたら、すぐその場から逃げて。私は今日はオフだし、コイツ等も任務なる早で終わらせていずるの応援向かわせるから」

「お、おう。命あっての物種だもんな。流石の上層部も、オレの応援という形なら、お前等が介入してきてもあまり文句言えないだろうし」

 

 3人からの問いに、澱みなく答えた浮舟は、席に戻ってから荷造り作業を再開。手を動かしながら、会話も再開。

 

「兎に角。心配してくれてありがとう。無茶はしないし無理もしない。危なくなったらその場から逃げて、お前等に連絡すれば良いんだろ?」

「ああ。本当は俺達もこのままついて行きたいくらいなんだけどな」

 

 五条が心底悲しい顔をしながら、浮舟を見つめる。浮舟はケラケラと笑った。

 

「三年生が誰も教室にいない絵面はウケるけどな。……上層部の考えが読めない以上、何も知らないフリをして普通(ふっつー)に任務こなすのが最善だろうな」

「下手に刺激して、事態が悪化したらヤバいもんな」

「そういうこと」

 

 荷造りも終わり、立ち上がる。同期3人の不安そうな顔を見た浮舟は、思わず噴き出した。

 

「な〜にそんな不安そうな顔してんだよ。大丈夫だって」

 

 背を伸ばし、デカいポメこと五条の白い髪を左手でわしゃわしゃと撫でる。そしたら頭が二つ寄ってきたので、順番に撫でていく。やがて満足したのか、表情は晴れないながらも見送る準備は出来たらしい。3人並んだ。

 

「俺があげたウイスキーボンボンは持ってるか?」

「ああ。といっても、この気温だから溶けてるかもしれないけど」

「……煙草、持ってる?」

「持ってるよ。片時も離さず」

「出」

「何だよ夏油」

「……私は君に何もあげてないんだが」

「別に良いって」

「そういうわけにはいかない。出遅れるだろ」

「……何に?」

 

 一人だけ浮舟に何も渡していない事実を気にしているのか、何かないかと自身の身体を触って探す夏油。

 

「じゃあ、私からはこれを」

「……何この小さい粒」

「GPS──あ、こら捨てるな!」

 

 夏油が床に落ちた小さなGPSを拾おうとしゃがむ。その隙に浮舟は、腕時計で時間を確認してから、リュックサックを持って駆け出した。

 

「そんなのオレに付けてみろ! 向こう(ずね)酒瓶でブン殴るからな!」

 

 夏油に向かって指を差し、そう警告する浮舟。廊下へと出て、大きな声で「いってきます!」と叫んでから死角へと消えていった。

 

「……行ってしまった」

「……行ったな」

「……行ったね」

 

 取り残された3人。名残惜しそうに廊下の方を見つめていたが、やがてトボトボと自分の席に着いた。

 

「……GPS、あれだけじゃないでしょ」

「流石硝子、よく分かってるね。靴の踵とベルトのバックル、それから制服の襟にも付けてある」

 

 得意気に語る夏油。浮舟が聞いたら卒倒した後、宣言通り酒瓶を取り出しかねない発言だが、この場で聞く五条と家入は、やるじゃんといった表情。

 

「悟は、今日の任務は何時(いつ)からだ?」

「午後から。だから、俺は別にこのままついていっちゃっても良かったんだけどな」

「……上層部め。奴等、一体何を企んでいるんだ」

「知らねーよ、あんなジジイ共の考えなんか。俺等は、全力でいずるを守ってその内上層部をボコす。それだけだろ?」

「……そうだね」

 

 前を見据え、そう話す五条と夏油。どこからか煙草を取り出した家入は、手慣れた動作で煙草に火を点け、一服。何個か輪っかの煙を吐き出してから、思い出したように言う。

 

「あれ、そういえばさ。いずるの任務先って山の中じゃん」

「そうだね」

「そうだな」

「……GPS、意味あんの?」

「「あ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 








浮舟出:不意に幼い頃の黒歴史を掘り起こされ発狂。変わらず美人なお姉さんに若干ドギマギしたものの、それを上回るダルさで一周回って落ち着きの感情を取り戻した。もしかしてオレってモテてるのでは?とハッとしたらしい。
任務は、二級の呪霊を二、三体倒せば終わるらしい。



五条悟:前々から感じていた上層部への小さな違和感が、確信に変わった。自分の任務が終わり次第爆速でいずるの救助に向かうつもりらしい。



夏油傑:出と九十九由基の意外な接点に驚きつつも、九十九由基に対する出の態度を見て勝ちを確信。出を部屋まで送ったあと、怖いもの見たさでもう一度自販機コーナーに戻ったらしい。



家入硝子:廊下を歩いてたら聞き捨てならないセリフを聞いてしまい、慌てて参戦。九十九由基を完全に敵と認定した。子供の頃の約束ずるい。子供の頃のいずるを知ってるのずるいと心の中で呪詛のように繰り返し呟いているらしい。しかしどさくさに紛れていずるとの一日デートを取り付けたので、ここぞとばかりに九十九由基を煽り散らかしている。あと、いずるの汗を吸ったいずるのハンカチをGETした。



九十九由基:とある公園で幼い浮舟出と出会い、その善性に心洗われた。この子を一生守ると己に誓ったらしい。風の噂で浮舟出の情報は定期的に耳に入ってきているので、いざ再会しても、腕の欠損には驚かなかった。二人で世界を回りたいと本気で思っている。家入硝子のことが嫌い。



七海建人&灰原雄:午後から任務が入っているらしい。





次回、久々の戦闘シーンを予定しております。
感想、いつもありがとうございます。
あと、そろそろアンケート変えようと思っているので、ご了承下さい。




追伸。
アンケート、硝子ちゃん大人気ですね。







誰好き?

  • 浮舟出
  • 五条悟
  • 家入硝子
  • 夏油傑
  • 七海建人
  • 灰原雄
  • 伊地知潔高
  • 庵歌姫
  • 冥冥
  • 夜蛾正道
  • 九十九由基
  • 乙骨憂太
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  • 伏黒甚爾
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