アル中とさしす組   作:大塚ガキ男

24 / 75

こんばんは。なんのブーストもありませんでした!!




ワクワクの監禁生活編
ワクワクの監禁生活。


 

 

 

 

「おはよ、いずる」

「……おはよう、硝子ちゃん」

「? なんか元気ないじゃん」

「いや……あの。硝子ちゃん、髪切った?」

「え、すご。毛先揃えたの分かったの? やるじゃん」

「よういずるっ。なに寝ぼけてんだよ」

「また夜更かしかい? 全く、授業中に寝ると夜蛾先生が怖いよ」

「おはよう、五条に夏油。いや寝ぼけてはないんだけど、なんか違和感があって。……みんなさっきまで大人じゃなかった?」

「ハァ? 変ないずるだな。そんなことより早く飯行こうぜ」

「待て悟。寝癖がついてる」

「……クズ共行っちゃったけど」

「あぁ、うん。ごめんね、オレ達も行こうか」

「本当に大丈夫?」

「うん。多分」

「多分?」

「……なんだか、不思議な感じなんだ。みんなの大人になった姿を見たような。オレが知らない内に置いていかれてしまったような」

「置いていかないよ。ほら、ちゃんと待ってるじゃん」

「……そっか。へへ、ありがとう硝子ちゃん」

「うん。あとで一服付き合ってよ、それで良いから」

「おう。オレも一杯決め込むわ」

「ふふっ」

「ははっ」

「おーい、いずる! 硝子! 早くしろよ〜!」

「おう、今行く!」

「出、もう大丈夫なのかい?」

「大丈夫大丈夫。やっぱ寝ぼけてたみたいだ」

「昨夜は眠れなかったのか」

「いや、むしろ逆。長い夢を見てた。呪霊に神隠しされてたら同期(みんな)が大人になっちゃってて、オレだけ子供のまま。んで、オレがいなくて寂しがってた同期(みんな)に見つかって監禁されるって夢」

「はは、なんだいその夢」

「なんで俺達がいずるを監禁するんだよ、意味分かんねー」

「そうだよな、オレも訳わかんなくてさ。兎に角、目が醒めて良かったよ」

「あ、そういえばお前ら今日の放課後暇? 繰り出さね? 街に」

「謎の倒置法はさておき、私は問題無いよ」

「うん、私も」

「おう、オレも大丈夫だった筈」

「じゃあ決定な! マック行ってゲーセン行って、夜はお祭り行くぞ!」

「お祭り?」

「商店街で、ちょっとした催し物があるらしいよ。悟はそれを祭りだと楽しみにしているんだ」

「あぁ、成る程」

「あれ、いずる顔色悪くない?」

「え? そうかな」

「……確かに言われてみれば。どうしたんだ、飲み過ぎたのか?」

「いや、起き抜けに一杯だけ。いつもと変わらないけど」

「やはり寝不足が祟っているんじゃないのか。気分は?」

「別に──あれ、五条は?」

「本当だ。先に行ったのかな」

「──え、硝子ちゃん?」

「硝子まで。出を置いていくなんて珍しい」

「二人ともどうしたんだろ──って、夏油? おいなんだよみんなして。急にいなくなるなよ。待てって。オレを置いていくな。一人は──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──寂しいだろッ」

 

 伸ばした手が(くう)を切る。何が起こったのか分かっていない頭でどうにか思考し、現状を把握してから。

 

「……なんだ、夢かよ」

 

 そう呟いた。

 現在時刻不明、ベッドの上にて。

 カーテンの隙間から漏れる朝日を反射して光る義手(左腕)。肘から先の義手部分(前腕部)と肘より後の肌の部分(上腕部)。上腕部に感じる確かな重み、その原因となる人物に焦点を合わせる。

 こちらを向き、呼吸に合わせて規則的に動く身体。

 身じろぎ一つせず、寝る前から一ミリも変わらない寝相。

 触らずとも、見ただけで理解してしまうその綺麗な髪質。

 閉じられた両目の下の隈は、3日目の朝にして着々と薄まっていて。

 整い過ぎている顔のパーツ。つまりは絶世の美人。

 長々と語り、まじまじと見詰めてしまったがつまりはこういうこと。

 〝僕〟の二の腕を枕にして眠る、今日も美人な硝子ちゃん。……文字に起こすととんでもない状況だ。

 そんな、〝僕〟の隣で眠る硝子ちゃんを起こしてしまわないように、〝僕〟は小さな溜め息と共にほんの少し気を落とした。

 3日目。

 そう、3日目だ。

 〝僕〟が──浮舟出という人物が、10歳年上になってしまった同期達によって見知らぬ一軒家にて監禁生活を強いられ始めてから、3日も経ってしまっている。

 初日こそ困惑し、ここから出してくれと泣きながら懇願したものの、3日目となればそれなりに諦めもついてきて、それなりにこの生活にも順応してくるもので。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()にも慣れてきてしまっていた。まぁ硝子ちゃんの美人さには一向に慣れないんですけどね。

 

「……むにゃむにゃ、いずるぅ」

「……はぁ」

 

 毎晩同期に寄り添われて眠りにつく生活。

 つまりはこのベッドの上にいるのは〝僕〟と硝子ちゃんだけではなく。

 横幅、長さ共に二メートルを超える大きさの、特注で作らせた通常のキングサイズよりも更に大きいベッド。

 大の大人でも4人並んで眠れる大きさのこのベッドの上で、〝僕〟は毎夜その真ん中で眠る事を強制され、その両サイドを同期で固めるというナイトルーティン。

 じゃんけんで負けた一人は一番端というルールが設けられているこのベッドで、昨晩じゃんけんで負けた五条はベッドの端ではなく何故か〝僕〟の胸に抱き着く形でむにゃむにゃと眠っていて。〝僕〟の胸板で頬を潰しながら、口の端から涎を垂らしていた。

 

「……重た」

 

 昨晩、どのタイミングでこの場所に行き着いたのかは定かではないものの、成人男性にのしかかられて〝僕〟が苦しい思いをしているのは確かだ。寝ている硝子ちゃんに聞こえないくらいの声量を努めて五条に声をかけた。

 

「おい五条。起きろ」

「……うーん」

「五条、お前重たいんだよ」

「……じゅるり」

 

 駄目だ、全然起きやしない。両腕があれば五条を退かすことも出来たのだが、生憎〝僕〟にはこの義手(左腕)しかない。

 どうしたものかと溜め息を吐いたところで、左腕にあった重みが消えた。

 

「……おはよ」

 

 顔を向けるとそこには、寝ぼけ眼を擦りながら〝僕〟に微笑みかける硝子ちゃんがいた。身体を起こし、座って伸びをする硝子ちゃん。そのはっきりした身体のラインから目を逸らすと、小さな舌打ちのようなものが聞こえた気がした。

 

「見ろよ」

 

 呟きのようなものも聞こえた気がした。

 咳払い。

 

「おはよう硝子ちゃん。良い朝だね」

「うん。ほら、おいで」

 

 互いに微笑み合う朗らかな朝。両腕を広げてそう言った硝子ちゃんに〝僕〟は困ってしまった。

 朝っぱらから同期の──しかも異性の女の子とハグをするという、不健全極まりないイベントがここにやってきてから2日連続で発生してしまっているというのも勿論困っている理由ではあるのだが、一番の理由はこれだ。

 

「……チュッチュッチュッ」

 

 寝ぼけながら〝僕〟の胸やら肩やらにキスをしまくっている、〝僕〟の腹の上で寝ている五条。

 超困る。

 

「「…………」」

 

 〝僕〟と硝子ちゃんの瞳からハイライトが消える。しかし〝僕〟と硝子ちゃんでは消えた理由というのが別物らしく。

 硝子ちゃんは無言で、足の裏で五条を押すように蹴飛ばしてベッドの下──つまりは床に落とした。死角となった床から「ぐおおおおぉぉぉぉぉ……!」と悶絶するような唸り声が聞こえてきた。〝僕〟と触れ合いたいが為に〝無限〟を切っていたのが仇となったようだ。

 

「さぁ、いずる」

 

 見る者全てを魅了する表情と共に腕を広げ、笑いかけてくる硝子ちゃん。アイドル顔負けのそのキュートさに〝僕〟は完全にノックアウトされてしまい、渋々硝子ちゃんの腕のリーチ内へと入っていった。

 ガバッ。

 〝僕〟が硝子ちゃんの背中に手を回すよりも先に抱き着かれる。

 

「……ふふっ、早い」

 

 〝僕〟の身体と硝子ちゃんの身体が密着する。重なった胸と胸、〝僕〟の鼓動がかき鳴らす200BPM 16ビートが胸越しに硝子ちゃんへと伝わってしまい、クスクスと笑われた。しょうがねーでしょうが、こんな美人とこんな距離でいるんだから。

 

「しょ、硝子ちゃん。昨日も言ったけど同期間であまりこういうのは……」

 

 と、良い子ちゃんぶった台詞を言う〝僕〟。しかしこれは建前であって、〝僕〟はなんだかんだ喜んでいるというのは〝僕〟自身だけでなく硝子ちゃんにもバレてしまっていて。

 当たり前だ。

 硝子ちゃんとハグ出来るなんて幸運、わざわざ捨て置く馬鹿はいない。

 

「なに? ただの同期の──しかも異性の二人が朝からハグするのはよくないって、そう言いたいの」

「……まぁ、うん」

 

 〝僕〟の言葉を受けた硝子ちゃんの声色が重たくなったのを感じ取り、少しばかり萎縮。〝僕〟の声量も段々萎んでいく。

 クスリ。

 笑われた。目を見ると、硝子ちゃんと目が合った。あぁもう、なんてイケメンなんだ。

 

「じゃあ、同期以上の関係になる……?」

「そ、それって……」

 

 密接した身体が〝僕〟の方へと体重をかけてくる。〝僕〟は座ったままの姿勢を保てなくなり、後ろへゆっくりと倒れていってしまう。背中がベッドに付くと同時に、〝僕〟の腰に硝子ちゃんが跨っている体勢になってしまっていることに気が付いた。

 

「しょ、硝子ちゃん! 明言は出来ないけどこの体勢はマズい気がする! なんだか途轍もなくやらしい雰囲気になっちゃってる気がするよ!」

「ハァ? したんだよ、やらしい雰囲気に」

「カッコい────────!」

 

 〝僕〟の顔を挟むように、ベッドに両手を付いて見下ろしてくる硝子ちゃん。段々とその顔が近付いてきてようやく、硝子ちゃんの狩人のような目付きに気が付く。もうダメだ、喰われると目を瞑ったその時──

 

「……」

 

 硝子ちゃんの動きが止まった。

 

「…………いずる」

「は、はい!」

「…………少し待ってて」

「はい……?」

 

 言うや否や、その顔が遠ざかる。どうしたのかと〝僕〟も上体を起こして見守る。

 硝子ちゃんはベッドから降りて、乱れていた着衣を正してドアを開いた。

 

「歯を磨いてくる。寝起きでキスしまくるのは流石に嫌だ」

 

 バタン。

 ドアが閉じられ、硝子ちゃんの姿が見えなくなる。えらくキメ顔だったけど、キスしまくるとか言ってなかったかあの子。

 

「……た、助かった」

 

 へなへなと身体の力が抜ける。そんな〝僕〟に喝を入れるかのように、再びドアが開かれた。

 

「おはよう出! 良い朝だね!」

 

 慌てて背筋を正す。ドアの方へと視線を向ければ、そこにはニコニコ笑顔の夏油がフライパン片手に立っていた。ウインナーの焼ける良い匂いがここまで漂ってくる。

 

「……おはよう、夏油」

「? どうかしたのかい、寝起きでもう疲れているように見えるが」

 

 首を傾げる夏油。硝子ちゃんとやらしい雰囲気になってましたとは口が裂けても言えないので適当に笑って誤魔化す。誤魔化しているも、床から──つまりはこちらからだとベッドで死角になっている場所から手が伸びた。

 長い長い手が伸びた。

 

「はーい。いずると硝子、朝っぱらからおっぱじめようとしてましたぁー」

「……なに?」

「ちょ、五条おまっ、起きてたなら止めろよ! 危うく、危うくどうにかなっちゃうところだったろ!」

「なんだよいずる。俺と傑が迫っても平然としてんのに、硝子相手だと我慢できないのかよ」

「も、勿論硝子ちゃんは大切な同期だ! 欲に任せて手を出してしまうなんてことは有り得ない! でも、〝僕〟だって男だぞ! あんな美人に迫られたら流石にヤバい!」

 

 手を狐の形にして、言葉と共にパクパクさせながら死角越しに煽る五条。その煽りに乗せられて唾が飛ぶ勢いで言い返すと、五条の手が中指を立てた。しかしその中指は〝僕〟に向かってはおらず。何故か顔から噴き出た汗と共に、恐る恐るその向きへと視線を流すと。

 

「へぇ〜?」

 

 壁に背を預けた硝子ちゃんが歯ブラシを咥えたまま、良いこと聞きましたと言いたげな表情でこちらを見ながら悪どく笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらいずる。あーん」

「あーんすな。自分で食べれる」

 

 数日前から始まった〝僕〟の監禁生活。

 拘束と目隠しをされたまま車に乗せられ、辿り着いた謎の一軒家。目隠しを外されたのは家の中に入ってからなので、正確には一軒家かどうかは分からないのだが。この家を建てた五条の話を信じるならば──そして窓の外に見える閑静な住宅街を見るに、今居る場所は一軒家なのだろうということ。

 数日前から始まってしまった〝僕〟の監禁生活。

 五条は、〝僕〟が()()()死ぬ前からこの家を建てることを決めていたらしく。あれこれと内装やら家具の配置やらを全て一人で考え、腕利きの職人達にその通りに作らせた珠玉の一戸建ては、一目で分かる金のかかり具合と広さ。

 五条曰く()()()()()()()()()()()()()()()(は?)と呼ばれているこの一軒家は二人で住むには広過ぎて。そして、硝子ちゃんと夏油が〝僕〟と五条の二人で住むことを許可する筈もなく。

 数日前から泣く泣く始まってしまった〝僕〟の監禁生活は、実質的に同期達とのシェアハウスと化していた。

 普通のシェアハウスと違うのは、〝僕〟は決して家の外へは出られないということ。家の中の移動は自由だが、外へと通ずる窓やドアには、外側から()()()()()()()()が貼られているということ。

 

()()()()()()()()

 

 その効果は、呪力を持たない者の開閉の拒絶。

 これは任務先なんかで使われる一般人向けの呪符だ。ほら、マンションの一室に呪霊が出ちゃった時とか、万が一他の住人が入ってこないように貼ったりするんだよね。

 安価で手軽で、〝僕〟ら術師にはなんの効果も無い、まさにちょっとした呪符。

 しかし今の〝僕〟には呪力が無い。

 この家で生活することになってからというもの、〝僕〟には完全断酒生活が言い渡された。〝僕〟の終わりに終わっている肝機能と、それに伴い減りに減っている健康寿命。それらを改善する為──簡単に言えば、もうお酒なんて飲まずに長生きしてね。というわけだ。

 同期達の優しさには涙が出る。

 号泣だ。

 

 閑話休題(お酒飲みたい)

 

 同期達と再開した夜こそまだ体内にアルコールが残っていた〝僕〟だが、この家で過ごしていく内に自然とアルコールは抜けていき、今の〝僕〟はただアルコール依存症に苦しむ一般人と成った。成り上がったのか成り下がったのかはさて置き、〝僕〟の身体からアルコール分と呪力が無くなったのは確かだ。

 

()()()()()()()()

 

 なので、今の〝僕〟にはどうやっても外には出られないということ。

 朝出勤する五条と硝子ちゃんを見送り、日中は怠惰極まる生活を強いられ、窓越しの日光を浴び、夜帰ってきた五条と硝子ちゃんを迎える。

 それだけの生活。

 溜め息。

 その開いた口に、白米が詰め込まれた。

 

「はい隙あり」

 

 振り返ると、五条の笑顔。後ろから抱え込まれるような体勢に辟易しながら、〝僕〟はようやく五条からのあーんを受け入れた。

 

「美味しいだろう、出」

 

 一度やられてしまえば諦めがつくもので。〝僕〟は五条が扱う箸が寄越してくる朝食の品々をせっせと()み、咀嚼することに専念した。その様子をニコニコしながら見ていた夏油が声をかけてきたので、飲み込んでから返す。

 

「うん、美味しい」

「そうかそうか」

 

 思わず後光が差すほどの夏油のアルカイックスマイル。いつかコイツの額に大仏様のような白毫(びゃくごう)を付けてやろう。きっと似合う。

 

「……いずる、私のところで食べれば良いのに」

 

 そう物憂げに呟いたのは硝子ちゃん。つまりは朝食の席、同期勢揃いというわけだ。四人仲良く座布団に座り〝僕〟を膝に座らせながらあーんしてあげたいという同期達の下心によってローテーブルでの食事となっているこの場で仲良く食事を摂っている。〝僕〟と五条の遣り取りを見て呟いた硝子ちゃんの、その際に見せてくれた色っぽい流し目に思わず胸が高鳴る。

 おかしいな。硝子ちゃんが大人になってからというもの、ドギマギしっぱなしだ。

 

「させるかよっ。俺が食べさせた方が、いずるは一番嬉しそうに食べる」

「「「は?」」」

 

 五条の妄言に、〝僕〟を含む同期三人の声が重なる。何を意味分からないことを言っているのだコイツは。

 思わず五条のバックハグから逃れ、空いた四つ目の座布団に逃げ込む。

 

「悟、何を意味の分からないことを」

 

 そうだ夏油、言ってやれ。

 〝僕〟は夏油の言葉に同調するように、うんうんと頷いた。

 

「私が食べさせた方が喜ぶに決まっているだろう」

 

 うんうん──うん? 

 

「おいクズ共。いずるの気持ちを考えろ」

 

 急旋回してしまった夏油の発言に首肯を取りやめて首を傾げているところに、硝子ちゃんの言葉が。そうだお前ら、〝僕〟の気持ちを考えろ。一人で食べたいに決まってるだろうが。

 

「全く、お前達は何も変わってないな。そんなだからいずるに拒絶されているんだぞ。もしかして気付いてないのか? だとしたら本当に可哀想だ。その馬鹿さは流石に私の反転術式でも治せないだろう。せいぜい他人様(ひとさま)に迷惑をかけないように慎ましく生きて、人里離れた場所で一人ぼっちで暮らして死ねよ、……全く。──いずるは私が責任持って食べさせる。クズ共はさっさと朝食を食べ終えてどっか行け。ほら、いずる」

 

 ほら、いずる。じゃねぇけど。結局同じじゃねぇか。なんで上記のセリフでそんな凛々しい顔出来るの硝子ちゃん。

 

「……なんかさ、みんな〝僕〟のこと好きだよな」

「「「ハァ? 当たり前だろ」」」

「いや前から薄々分かってたけどさ。ここで生活し始めて、みんなって〝僕〟のこと()()好きなんだなって思ったんだよ。ありがとね」

 

 笑いながら言うと、何故だかジト目で見られる。穴が空くほど見られる。それから、同期三人は肩を寄せて内緒話を始めやがった。内緒にすな。

 

「なんだよ、〝僕〟おかしなこと言ったか?」

「……もしかしていずるって思ったよりも鈍感(バカ)? そんなんだから俺らみたいなのに捕まるんだろーが」

「……合ってるけど、普通自分で言うか?」

「……これだけアプローチしてるのに、私達の好きをまだLikeの方の好きだと思ってるみたいじゃないか」

「……マジで、いっぺん理解(わか)らせるかコイツ」

 

 ゴニョゴニョと作戦会議でもしているかのように、こちらには聞こえない声量で話し合う三人。でもバカという単語だけ聞こえたので、後で五条には金属(メタル)チョップを落とそうと思う。ああ、でも愛判定されるか。厄介な奴だ。

 

「──いずる」

「おう」

 

 三人に負けじと頭の中で考え事をしてみると、五条から声がかかる。どうやら内緒の話し合いは終わったらしい。

 五条が、そして夏油と硝子ちゃんが、〝僕〟を見る。

 〝僕〟の緊張が伝わったのか、五条はにへらと笑った。まるで、何も怖くありませんよとでも言いたげなヘッタクソな笑顔をこちらに見せながら、こう言った。

 

「……いずるって縛られるの好き?」

「はぁ!?」

 

 座布団ごと距離を取る。

 

「大丈夫大丈夫、別に変な意味じゃないから!」

「変な意味じゃなく縛るってどういうことだよ! 説明をしろ!」

「…………えーっと」

「な、なんだよ急に言い淀みやがって。そんなに言いづらいことなのか?」

「……まぁ、それはうん」

「……流石にね」

 

 目をバタフライで泳がせる同期三人。その怪しさには物申したいものの、〝僕〟としては先程の質問の真意が気になって仕方がない。

 気にするな、〝僕〟らは同期だろう。言いたいことがあるのなら腹を割って話そうじゃないかと、言ってみる。〝僕〟の言葉に何かしらの感銘を受けたのか、五条は嬉しそうに、それじゃあと口を開いた。

 

「いずるって、処女と童貞どっち捨てたい?」

「ざけんなッ!!」

 

 ただの、なんでもない朝食の一幕。朝っぱらから元気に騒ぐ〝僕〟達同期四人。

 高専教師の五条悟。

 高専医師の家入硝子。

 生存発覚を避ける為に外に出ない夏油傑。

 上記三人の策略により外に出られない〝僕〟。

 ドッタンバッタンと朝食そっちのけで追いかけっこを始める〝僕〟達四人。

 窓の外。

 そんな様子を、電線の上から一匹のカラスが見ていた。

 

 

 

 

 

 






浮舟出:早くも監禁生活に慣れ始めているアホ。一人になれるのは風呂場とトイレのみ。この生活を始めるに辺り、その二つだけはなんとか死守した。同期達からは総ブーイングだったらしい。
五条と家入の外出中は、夏油と二人で映画を観て過ごしている。五条、映画いっぱい買ってくれてありがとう。


五条悟:夢のマイホームにて、幸せな生活を満喫している。いずると二人きりじゃないのは想定外だけど、なんだかんだ同期好きだから毎日楽しんでる。いずるの両隣を奪い合う夜のじゃんけん大会では、就寝前とは思えないほど声を出すらしい。
いずると暮らすようになってから、仕事時の機嫌が良くなった。


家入硝子:大きな家にていずると幸せな生活を送っている。なんかここに来てからクズ共とやけに顔を合わせるなと思いよく考えてみたら、そういえばコイツ等もおまけで同居していたのだと気付いた。
いずるが一向に堕ちてくれないので、もう襲っちまうかと開き直りかけている。
いずると暮らすようになってから隈が薄くなり、肌艶も良くなった。


夏油傑:悟が用意した豪邸にて出と幸せな生活を送っている。日中は二人きりになれるし、朝と夜くらいは譲ってやるかの精神。外に出られないので、料理に凝り始めた。同期達が美味い美味いと食べてくれるのが最高のモチベ。
出とインディ・ジョーンズを観たが、その際原題がインディアナ・ジョーンズだと知りひっくり返った。三作目が好きらしい。



一応補足しておきますが、今のところ彼らの間に身体の関係はございませんよ。
日常回を書くのは久し振りな気がして、戸惑いながら書きました。次回も恐らく戸惑いながら書いていくのでしょう。人生日々戸惑いというわけですね。違うか。
ではまた。

誰好き?

  • 浮舟出
  • 五条悟
  • 家入硝子
  • 夏油傑
  • 七海建人
  • 灰原雄
  • 伊地知潔高
  • 庵歌姫
  • 冥冥
  • 夜蛾正道
  • 九十九由基
  • 乙骨憂太
  • 折本里香
  • 禪院真希
  • パンダ
  • 狗巻棘
  • 枷場美々子
  • 枷場菜々子
  • 伏黒甚爾
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。