アル中とさしす組   作:大塚ガキ男

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あけましておめでとうございます。今年はブースト無し年です。




マジで試練じゃないですか

 

 

 

 

 ──記録。2018年6月、宮城県仙台市杉沢第三高校。

 

「百葉箱!? そんなところに特級呪物保管するとか馬鹿過ぎるでしょ」

『アハハ、でもおかげで回収も楽でしょ』

「……ないですよ」

『え?』

「百葉箱、空っぽです」

『マジで? ウケるね(笑)』

「……ぶん殴りますよ」

『それ回収するまで帰ってきちゃ駄目だから』

「…………」

『じゃあ頑張ってね! 僕は早く帰っていずるとイチャイチャしなきゃだから』

 

 

 

 

 

 

 

 

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「……なんだこのラグビー場。死体でも埋まってんのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

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虎杖悠仁(いたどりゆうじ)だな。

「呪術高専の伏黒だ。悪いがあまり時間がない。

「お前が持ってる呪物はとても危険なものだ。今すぐこっちに渡せ」

「じゅぶつ……?」

「これだ。持ってるだろ」

「んー? あーはいはい、拾ったわ。

「俺は良いけどさ、先輩らが気に入ってんだよね。

「理由くらい説明してくんないと」

 

 

 

 

 

 

 

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「呪いぃ?」

「特に学校や病院のような大勢の思い出に残る場所には呪いが吹き溜まりやすい。

「だから学校には大抵〝魔除け〟の呪物が置いてあった。オマエの拾ったものもソレだ」

「魔除け? ならいいじゃん。何が危険なの」

「魔除けと言えば聞こえはいいが、より邪悪な呪物を置くことで他の呪いを寄せ付けない──毒で毒を制す悪習だ。

「現に長い年月が経ち、封印が緩んで呪いが転じた。今や呪いを呼び寄せ肥えさせる餌。

「その中でもお前の高校に置かれていたのは特級に分類される危険度の高いものだ。

「人死にが出ないうちに渡せ」

「いやだから、俺は別にいいんだって。先輩に言えよ」

「──(から)……!? 中身は!?」

「だァから先輩が持ってるって!!」

「ソイツの家は!?」

「知らねぇよ。確か泉区の方…………」

「……なんだ?」

「そういや今日の夜学校で、アレのお(ふだ)剥がすって言ってたな。……え、もしかしてヤバい?」

「ヤバいなんてもんじゃない」

 

 

「ソイツ、死ぬぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「なあ、なんで呪いはあの指狙ってんだ?」

「喰ってより強い呪力を得るためだ」

「なんだあるじゃん、全員助かる方法」

「あ?」

「俺にジュリョクがあればいいんだろ」

「なっ、馬鹿!! やめろ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 夜。

 宮城県仙台市杉沢第三高校。

 その屋上。

 呪物回収の為にこの地を訪れていた呪術高専一年の伏黒は、たった今最悪の事態に出くわし歯噛みしていた。

 訳あって行動を共にしていた一般人の高校生──虎杖悠仁が回収対象である特級呪物を飲み込んでしまったからだ。

 それだけに飽き足らず、万が一の可能性を引き当てて特級呪物が虎杖悠仁の身体に受肉。

 伏黒のこめかみを、嫌な汗が流れる。今までの虎杖悠仁はそこにおらず、今伏黒の目に映るは特級呪物の受肉体、両面宿儺(りょうめんすくな)。先程までは無かった紋様が身体に浮かび上がり、伏黒のことなど気にせずゲラゲラと笑いながら屋上から街を見下ろして人を食う算段を立てる始末。その後ろ姿から感じる呪力(プレッシャー)は、思わず自身の死を予見せざるを得ないほどのもの。

 

「……浮舟さん。マジで試練じゃないですか」

 

 伏黒はこれから自分が為すべきことを頭の中で反芻(はんすう)してから忌々しげに、高専にて待つ先輩のぽわぽわとした笑顔を思い出すのだった。

 不意に、目の前の受肉体が纏う呪力(オーラ)が変わる。元の人格である虎杖悠仁の意識が浮かび上がり、両面宿儺に抵抗してみせたのだ。

 伏黒は驚愕の表情を隠せない。しかし悟られぬよう、すぐに口を閉じて気を張り戻す。

 独り言のように問答を始める虎杖悠仁と両面宿儺。その異様な光景に呑まれてしまわぬよう、強く歯を噛み締める。己の覚悟が揺らぐ前に、伏黒は呼吸を整える間も無く口を開いた。

 

「動くな」

 

 虎杖悠仁(両面宿儺)がこちらを見る。その眼力に呪いの圧力は感じない。

 今目の前にいるコイツは人間か? 呪霊か? 

 答えは分からず──そして尽きぬ疑問、しかし伏黒は構わず続けた。

 

「オマエはもう人間じゃない」

「は?」

「呪術規定に基づき、虎杖悠仁、オマエを──〝呪い〟として祓う(ころす)

 

 手印を結んで戦闘体勢に入った伏黒と、何が何だか分からぬまま、取り敢えず抵抗の意思は無いと両手を上げて見せる虎杖悠仁(両面宿儺)

 その最中(さなか)伏黒は、虎杖悠仁(両面宿儺)の身体に浮かんでいた紋様が消えていくのを視認する。

 これから()()するべきかを頭の中で考えている刹那、隣に突然何者かが現れた。

 

「──今どういう状況?」

「な、五条先生! どうしてここに」

「やっ」

 

 現れたのは、両眼をアイマスクで覆った高身長の不審者。片手には紙袋二つ。逆立った白髪(はくはつ)が、夜だというのにその存在感を煌々と主張している。

 不審者──五条はスマホを取り出し、呪霊との戦いで傷を負った伏黒の(ザマ)を笑いながら写真に収める。目の前に特級呪物の受肉体がいるというのに、気にせず話し続けた。

 

「来る気無かったんだけどさ、さすがに特級呪物が行方不明となると上が五月蝿(うるさ)くてね。観光がてら馳せ参じたってわけ」

 

 ヘラヘラと(ゆる)んだ口元を隠そうともせず、世間話に興じる五条。

 

「で、見つかった?」

「……」

 

 どう説明したものか。通常(セオリー)とは異なるこの現状の説明に困ってしまった伏黒は思わず口を閉じた。

 場に流れる沈黙。

 それに耐えきれなくなったのか、虎杖悠仁が気まずそうに手を上げた。

 

「あのー、ごめん。俺それ食べちゃった」

 

 再び流れる沈黙。

 背後に宇宙を背負う五条、その間僅か二秒。しかし教師として普段見せない表情を晒し、伏黒が驚きで目を剥いてしまうには十分(じゅうぶん)な時間であった。

 

「……マジ?」

「マジ」

 

 虎杖悠仁の言葉が(にわ)かには信じられないのか、眼前まで迫りアイマスク越しに視る五条。答えを得たのか、笑った。

 

「ははっ、本当だ。混じってるよ。身体に異常は?」

「特に……」

 

 虎杖悠仁は、五条に問われて自身の身体を見回しながら答える。身体の紋様はその跡さえも残っていなかった。

 

宿儺(すくな)と変われる?」

「宿儺?」

「君が喰った呪いだよ」

「あぁうん。多分できるけど」

「じゃあ10秒だ。10秒経ったら戻っておいで」

「でも……」

 

 虎杖悠仁も自身の身に宿る存在の恐ろしさには気付いているのか、突然現れた不審者(五条)を気遣う様子を見せる。柔軟運動を始めた五条はその言葉を受け、ニィッと笑った。

 

「大丈夫、僕最強だから」

 

 柔軟も済んだのか、五条は手に持っていた二つの紙袋を伏黒に投げ渡した。

 

「これは?」

喜久福(きくふく)

「この人お土産買ってから来やがった……!」

「一つは帰ってからいずると二人で食べるお土産。もう一つは僕が帰りの新幹線で食べるんだ」

 

 絶対に食べるなよ。そう言って聞かせるように伏黒を指を差した五条。

 その背後には身体に紋様が浮かんだ虎杖悠仁(両面宿儺)が迫っていた。

 

「後ろ!」

 

 獣のように、爪を立てて振るう虎杖悠仁(両面宿儺)。当たったならば絶命必至なその攻撃を五条は見ずに避け、それから何かに気付いた。虎杖悠仁(両面宿儺)の片手首を掴み、頬に裏拳を叩き込んでから叫んだ。

 

(めぐみ)、今すぐいずるを連れて逃げろ!」

 

 五条の攻撃を受けた虎杖悠仁(両面宿儺)が地面を転がる。その様とたった今五条の口から放たれた言葉、二つに意識が持っていかれている伏黒は現状が理解出来ずに問い返した。

 

「は? なんで浮舟さんが」

「気付かないのか! いずるが()()()ッ!」

 

 言われて、違和感。

 自分達が今居る校舎の屋上、その足元──つまりは校舎内から感じる威圧的な呪力反応。それが移動し、段々近付いてきている。

 伏黒は浮舟の呪力を知らない。

 浮舟と初めて会ったその日から、浮舟は戦うことを禁じられていたからだ。同期に、後輩や仲間に愛されて縛られている浮舟に当時の伏黒がどう思ったのかはこの際さて置くとして。

 伏黒は浮舟の呪力を知らない。

 だから反応が遅れた。足元から感じるこの威圧感が、あの心優しい浮舟さんのモノなのかという疑念と、いつもヘラヘラしている五条の真面目な叱咤。

 

「絶対にいずると宿儺を会わせるな! 早く行け!」

 

 ここにきてようやく伏黒の足が動く。未だ頭は混乱しているが、最強である五条の指示だ。この緊急時に逆らう理由は無い。伏黒は式神である玉犬を呼び出し、校舎内へと降りる為のドアに向かって共に走り出した。

 

「ケヒッ」

 

 攻撃から起き上がった虎杖悠仁(両面宿儺)が、五条に反撃せずに不気味に笑う。伏黒は横目で見るが、気にせず走る。

 

「ケヒヒッ」

 

 笑い続ける虎杖悠仁(両面宿儺)。気にしてはいられない。伏黒は無視して走り続ける。

 しかし、続いた虎杖悠仁(両面宿儺)の言葉は、伏黒だけでなく五条の心も動揺させた。

 

「……()()()()()()()

「今、何を──」

 

 五条が、言葉に詰まりながらも問う。それと同時に、校舎内へと繋がるドアが開いた。

 伏黒はまだそのドアを開けていない。ドアノブを掴んですらいない。

 ならば誰が開けた。誰がドアの向こうから取っ手(ノブ)を回した。

 

「おい五条! こんなところで何やってんだおま……え?」

「「…………」」

 

 現れた片足立ちの男。

 左手は深緑色の金属で型作られていて、その左手には呪力の籠った松葉杖が握られている。

 呪力の籠った松葉杖には、呪霊の肉片──残穢(ざんえ)がこびり付いている。

 どこか呆れを含ませたソレから、驚きへと変わった表情。

 五条と伏黒から送られてくるジト目の視線を受けたその男──浮舟出(うきふねいずる)は、現状が掴めずに頭上に大量の疑問符を浮かび上がらせていた。

 

「ケヒッ」

 

 笑う虎杖悠仁(両面宿儺)。その声がした方へと首を回した浮舟は、やがてその人物と目が合った。視線が──運命が、(まじ)わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しいな、(いずる)

「……嘘、なんでオレの幻聴が」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





遅れてごめーーーーーーーーーん!!
今更みっともねェんだけども!
繁忙期で忙しかったけど!!!!
また……!!!投稿するわ"けにはいかねェがなァーー!!!

というわけで、新年明けましておめでとうございます。今年もアル中とさしす組をよろしくお願いします。
三が日も終わり、私のお仕事もようやく忙しさメーターが通常時まで下がりましたので、どうにか投稿まで漕ぎ着けることが出来ました。
繁忙期も、皆様の感想やUA数の増加にとても心励まされました。
これからまたコツコツ書いていきますので、応援よろしくお願いします。

今回、文字数少ないですが苦渋の決断であります。キリが良い場面がここしかなかったので!

ではまた!

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