アル中とさしす組   作:大塚ガキ男

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こんにちは。ブーストあり寄りのなしです。




IFルート。下

 

 

 

 

「……で、そこからどうして()()()()()に繋がったわけ?」

「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん」

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿」

「はは。今の状況を疑問に思ってるなら、もっと反省すべきだよ」

 

 所謂(いわゆる)両手に華。その真ん中を陣取る浮舟には右腕が無いが、それは今重要なことではない。

 高そうな椅子に座らされ、二人の女子高生に左右から強く固く抱き締められている男──10年前に死んだ筈の浮舟は、夏油の記憶に残る当時のままの姿で、何が何だかと眉をハの字に下げながら夏油に問いかけていた。

 

「嗚呼……! 本物のお兄ちゃんだ! 本物のお兄ちゃんがいる!」

「夢じゃないよね、これ」

「いたたたたたたたた」

 

 夢にも思わなかった、故人である浮舟との再会。大いに喜び、10年分の想いをぶつけている美々子と菜々子。これが紛れも無い現実であることへの証明の為に頬を抓られている浮舟は、痛い痛いと抗議の叫びを上げつつも決して抵抗せず、されるがままの状態であった。

 浮舟の右側に陣取る菜々子は泣きながら浮舟の名を繰り返し呼び、焦げ跡が残る浮舟のワイシャツに顔を擦り付けている。

 浮舟の左側に陣取る美々子は、何故置いて行ったのかと溜まりに溜まった恨み言を呟きながら、浮舟の義手(左腕)に強く抱き付いている。

 そして夏油。可愛い娘二人と、愛する人。その三人が揃った姿に満面の笑みを浮かべながら、浮舟の何故こんな状況にという言葉(問いかけ)をバッサリ切り捨てた。

 某宗教団体の施設内。

 その最深部兼夏油の私室にて。

()と彼等は、10年振りの再会を果たしていた。

 

「それで? 折角ならワケを聞こうじゃないか。勝手に死んでおきながら、10年経ってからノコノコと生き返った理由(ワケ)とやらをね」

「あ、ヤバ。夏油もしかしてめっちゃキレてる?」

「当たり前だろうッ! この馬鹿!」

「ちょ、正面から抱き付いてくんな! 倒れる倒れるッ」

 

 閑話休題。

 時間が進めば昂った感情も少しずつ落ち着いてきたのか、菜々子は泣き止み、美々子は黙り、夏油の顔には安らぎが戻っていた。皆一様に浮舟の側を離れようとしないという違和感を除けば、いつも通りである。椅子に座る浮舟、椅子の肘掛け部分に座る美々子と菜々子、椅子ごと浮舟を抱き締めるように後ろから腕を回して体重をかけている夏油。

 いつも通りである。

 

「──神隠し?」

「まぁ厳密には違うんだけど、大体そんな感じ。そもそも〝僕〟は死んでなくて、ただ産土神(神様)の中に居ただけってこと」

「……信じられない」

「〝僕〟もだよ。10日くらい()()()()で過ごして、やっと産土神(神様)から説明してもらったかと思えば昼寝している間に現世に戻ってきてて、目が覚めたら夏油に美々子ちゃんと菜々子ちゃんがいるんだもん」

「浮舟お兄ちゃん」

 

 夏油に理由を説明している途中、菜々子が両手で浮舟の頬を挟んで無理矢理こちらを向かせる。その際映った菜々子の涙。再び流れた涙で訴えかけてくる表情に胸が痛み、決して目を逸ら(はな)さぬよう問いかけた。

 

「どうしたの」

「……寂しかった」

「……ごめんね、菜々子ちゃん」

 

 10年間。

 当時5歳かそこらだった幼子二人を腐り切った大人達のいる山奥の集落から助け出し、その後何も言わずに二人の前から去った浮舟。皆を助ける為にした筈の行いがその逆、皆を苦しめていたのだと今更ながら思い知り、どうしようもなく心が痛む。

 謝って許されるようなことではない。しかし、だからと言って今の浮舟に謝らないという選択肢は存在しなかった。

 

「……浮舟お兄ちゃん」

 

 謝罪の言葉が済んだところで再び頬を両手で挟まれ、今度は左側を向かされる浮舟。頬を潰されたままの浮舟はまた問いかけた。

 

「どうしたの」

「……寂しかったんだけど」

「……ごめんね、美々子ちゃん」

 

 ボロボロと泣いていた菜々子とは対照的に、内に宿る怒りの感情を静かに(たぎ)らせていた美々子。目が合った人間の網膜を焦がしてしまいそうな程の熱い眼差しで見つめられた浮舟は、美々子の口から続いて放たれた言葉に深く頭を下げた。

 数秒、しっかり下げる。下げ続ける。

 それから、頭を上げた。

 菜々子と目が合う。

 首の角度を変える。

 美々子と目が合う。

 たちまちの内に瞳が潤む。

 

「二人とも、本当にごめんね……!」

 

 言いながら涙を溢した浮舟。それを見た二人はもう耐えきれなかった。もう一度抱き付く。押し潰してしまいそうな程の力で抱き締める。

 

「う、うえええん! お兄ちゃ〜〜ん! 寂しかったよおおおお!」

「……寂しかった。本当に寂しかった」

 

 浮舟の首元、僧帽(そうぼう)の辺りに顔を埋めてわんわん泣く二人。浮舟も泣きながらその頭を撫で、しかし片腕しかないので限界まで腕を伸ばし、二人共平等に撫でた。

 夏油は空気を読み、少し前から三人から離れている。部屋の後方で嬉しそうに頷いていた。

 浮舟は泣きながら、笑顔で美々子と菜々子の成長を喜んだ。

 美々子と菜々子は、浮舟が目の前に存在し、触れられるという現実を喜んだ。

 夏油は、望む物が全て手に入っている目の前の景色を喜んだ。

 それから。

 ひとしきり。

 涙がこれ以上流れなくなるほど泣き続け、ようやく深呼吸をするという選択肢が取れるようになった頃。浮舟は笑って二人に話しかけた。

 菜々子と美々子が答える。

 

「大きくなったね、二人共」

「勿論っ。あれから10年経ってるんだから」

「……高校生になったよ」

「10年、か……。本当にごめんね、〝僕〟が連れ出したのに、キチンと側にいてあげられなくて」

 

 浮舟の表情が(かげ)りを見せ、それに気付いた二人がすかさず励ます。

 

「もう良いの。こうして戻ってきてくれたんだし」

「……そう、だから謝らないで」

「──……そっか。うん、そういうことなら」

 

 二人からの思い遣りに満ちた言葉に、浮舟が重たく頷く。それから話を切り替えた。

 

「もう同じ高校生だし、美々子ちゃんも菜々子ちゃんも抱っことかお出かけとかいう年齢じゃないかも知れないけど──それでも〝僕〟は、これからは二人のお兄ちゃんとしてちゃんと頑張るから」

 

 任務(バイト)とかメッチャ入れる(する)から。

 10年(10日)経っても二人の兄であるという自覚はあるのか、決意を新たにそう宣言する浮舟。しかし、その言葉に対する二人の反応が芳しくないことに気付き、浮舟は首を傾げた。

 

「あれ。もしかして、〝僕〟ってお兄ちゃん卒業?」

「ち、違うのお兄ちゃん! ちょっと()()()()()()がややこしくて! …………まあ確かに、お兄ちゃんよりも彼氏? とかの方が嬉しいけど」

「……そう。だから別にお兄ちゃんの言葉が嬉しくないとか、そんな理由じゃないの。…………まあそれはそれとして、私達の初恋を奪っていった(ツケ)はその身体と残りの人生で(はら)って欲しいけど」

「? なら良い、のか……?」

 

 文末に小さな声でボソボソと付け足された一言に気付いていない浮舟は、嫌われてないなら良いかとニコリと笑った。まさか可愛い妹二人から、兄としてではなく一人の異性()として──ガチガチの恋愛対象として見られているとは思う筈もなかった。

 浮舟を見詰める視線に、かつての同期達のような湿度が込められているとは夢にも思わなかった。

 そして、仲睦まじいというよりかは()んず(ほぐ)れつという言葉の方が適しているくらいの、双子と浮舟のイチャつき。それを()の当たりしている夏油が、誰も見たことがないくらいの達成感に満ちた満面の笑みで眺めているなんてことは、知る(よし)もないのだった。

 閑話休題。

 つい先程菜々子が漏らした()()()()()()という言葉。浮舟はその言葉の意味を深く追及せずに会話を終えてしまったが、その()()とやらは浮舟相手にいつまでも隠し通せるものではない。何かを決心した夏油は手を叩いて視線を集め、家族だけに向ける柔らかい笑顔でこう言った。

 

「出、私から説明させてくれ」

 

 と。

 その言葉を受けた浮舟が有り体なリアクションを取るよりも先に、浮舟に濃密なアプローチを(おこな)っていた美々子と菜々子が夏油の目を見てから、互いに視線を合わせて立ち上がる。浮舟との関係性を夏油から常日頃聞いていた二人なりの、気を利かせての行動だ。

 浮舟に簡単な別れの言葉を告げた二人は部屋の扉の前で一度頭を下げ、以降振り返ることなく部屋から出て行った。

 

「……あれ、どうしたの急に」

「気にしなくていいよ。()()()()()()二人きりの方が良いからね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 部屋から立ち去った美々子と菜々子は、幹部(家族)達が集まる大広間にて暇を潰していた。

 あれから経過した時間、僅か5分ほど。

 美々子と菜々子以外の家族達は、浮舟出復活の報を知らされていないままそれぞれの団欒の時を過ごすしている。そんな大広間にて、(ワケ)を知る二人の間には妙な緊張感のようなものが流れていた。

 落ち着かない。

 スマホを操作する指だけが動き、しかし頭は別のことを考えてしまっている。

 そんな状態。

 

「夏油メ、全ク。集合サセテオイテ自分ハ遅刻スルトハナ」

「言葉を慎みなさいミゲル。……夏油様は多忙を極めておられます。夏油様より時間に余裕のある私達がそれに合わせる。当然のことでしょう」

「オイオイ、ソウ怒ルナヨ」

 

 会話の少ない場にて痺れを切らした、室内にも関わらずサングラスをかけている黒人の男──ミゲルがぼやく。それにつっかかったのが、バインダーに挟まれた書類に何かを書き込んでいた菅田真奈美(すだまなみ)

 肩をすくめて笑うミゲルと、目を細めて睨む菅田。

 危うく一触即発。乳首にニップルシールを貼っている男──ラルゥも、顔に火傷痕がある男── 祢木利久(ねぎとしひさ)も、何事かと二人に視線を向ける。どうしたものかと美々子と菜々子が顔を合わせたところで、大広間の扉が開かれた。

 

「家族達、良い(しら)せだよ!」

 

 幹部(家族)達の視線が扉の方へと向けられる。そこには両手で扉を開いた夏油が、ニコニコと柔らかな笑みを携えながら大広間に入ってくるところであった。幹部(家族)達の視線のピントが夏油に合わさり、そして夏油の後ろをついてきた男に視線が移動し──釘付けになった。

 

「み、皆さんこんにちは。……えーっと、なんで〝僕〟こんなに見られてんの?」

 

 まさか死んでいる間に、同期の口から自身の呪術師人生が笑いあり涙ありの一大巨編の人生譚としてこの場の全員に伝わっているとは思いもしない浮舟が、照れ笑いながら挨拶を済ませる。

 浮舟と違い、呆然と固まる幹部(家族)達の理由を知っていた夏油は善意から浮舟に声をかけた。

 

「耳を塞いだ方がいいよ」

「え、夏油今なんて」

「「「「ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」

「え!? 本当に何!? なんでこの人達叫んでんの!?」

「出、君がいてくれてみんな嬉しいんだよ」

「知らない人に存在を喜ばれている現状ってなに!?」

 

 閑話(美々子と菜々子の二人は)休題(浮舟の手前大声を上げなかった)

 浮舟を見た四人がひとしきり騒いだあと、ようやく落ち着きを取り戻したこの場にて。浮舟の生存をサプライズという形で知らされた四人が何故か浮舟の前に列を作り、順番に握手をしながら涙混じりに言葉を交わすというイベントが行われていた。美々子と菜々子は初めて見る他の家族(メンバー)のテンションの上がり具合に引き、夏油はひたすらにニコニコと笑っていた。

 

「嗚呼、浮舟様……! 実際この目で見るとなんという美しさ……!」

「どうも……」

「あ〜ん! ヤダもう出ちゃんじゃない! なんでこんなところいるのよ〜!」

「色々ありまして……」

「……ほ、本物ですよね」

「本物です……」

「…………ウ、嘘ダロ」

「本当です……」

 

 初対面の大人達に手を握られ号泣しながら話しかけられるという、ある種恐怖を覚えかねないイベントにも関わらず、浮舟は一人一人に誠意を持って対応。それでも若干腰が引けていたが、浮舟生存に身体の内外共に狂喜乱舞してる面々にそれを気付かれる筈もなかった。

 

「──さて、そろそろいいかな」

「げ、夏油様。何か説明を」

 

 菅田が自身の目尻に残った涙を指で掬い取りながら、朱色が残る頬を隠すように問う。夏油は笑って応え、並び立つ浮舟の背中に優しく片手を当てた。

 

「あぁ、そうだった。こちら出。浮舟出君。非術師の手で殺されてたけど、つい先程生き返りました」

「イ、生キ返ルダト? 何ヲ言ッテルンダ夏油」

「言葉の通りだよミゲル。彼は生き返ったんだ。()()()()()()()()()()()()()()でね」

「「「「「「ッ!」」」」」」

 

 夏油の言葉に、浮舟生存に狂喜乱舞していた四人だけでなく、美々子と菜々子も息を呑んだ。

 夏油と浮舟。二人を見るこの場の全員の視線が、屈託なく笑う夏油から、イマイチ状況が掴めずにいる浮舟へとゆっくり移動する。穴が空くほど見詰められている浮舟は、深緑色の義手で困ったように後頭部をかいた。

 四人は、浮舟の背から後光が差しているように錯覚した。

 

「出は、私達の計画に協力してくれるそうだ。共に非術師達(猿共)を殺し、術師だけの世界を創る為に。皆を勝利へと導いてくれるそうだよ」

 

 ニコニコ笑う夏油の耳を疑う発言に、美々子と菜々子はワケも分からず混乱していた。

 あのお兄ちゃんが、いくら非術師とはいえ人を殺すことに何も感じていないのか? 

 あのお兄ちゃんが、私達のやってきたことに疑念も嫌悪感も覚えないのか? 

 夏油の発言に眉を(ひそ)め、こんな勝手なことを言ってお兄ちゃんは大丈夫かと慌てて表情を窺う二人。しかし当の浮舟は注目されているという状況に戸惑いながらも、夏油の発言にうんうんと頷いていた。

 夏油の言葉を受けた四人の反応は様々である。

 

「な、なんと……!」

 

 菅田が口元を押さえて歓喜し。

 

「ビックリねぇ」

 

 ラルゥが目を瞬かせ。

 

「あの浮舟様が……」

 

 祢木が目を見開き。

 

「泣カセテクレルゼ……!」

 

 ミゲルが涙を流す。

 そんな、四者四様のリアクション。未だ夏油の意図を汲み取れない美々子と菜々子を置き去りに、話はトントン拍子で進んでいく。

 

「さあ、出からもなにか」

 

 夏油に促された浮舟は戸惑いながらも頷いた。

 菅田と、ラルゥと、祢木と、ミゲルと、美々子と、菜々子と──幹部(家族)達と一人一人にしっかりと目を合わせ、それから微笑んだ。子供のようなあどけなさと母のような包容力が同居している不思議な微笑みは、幹部(家族)達のハートを射抜くには十分過ぎて。

 浮舟は咳払いを一つ。それから、口を開いた。

 

「みなさん、今までよく頑張りました。非術師を皆殺しにして、術師だけの世界を創るという大いなる野望。それを為す動機の一つに〝僕〟の死が関わってると聞いて、恥ずかしくもとても嬉しかったです」

 

 本当にありがとうございます。

 浮舟は一度頭を下げ、続けた。

 

「〝僕〟は今日蘇りました。これもみなさんの、〝僕〟と夏油に対する〝愛〟のおかげだと思っています。これからは〝僕〟も一緒です。()()()()()で、非術師の人達を一人残らず殺してやりましょう」

 

 ──それは、浮舟のことをよく知る者なら誰しもが虚言だと否定するような言葉だった。

 ──それは、浮舟のことをよく知る者なら誰しもが偽物だと主張するような言葉だった。

 しかし、今こうして短いスピーチを終えた浮舟は紛れもなく本物である。

 夏油がこのスピーチに拍手を送っていることが──浮舟の()()()を拝聴した四人が涙を流して平伏していることが──美々子と菜々子が浮舟に攻撃を仕掛けないことが。この場の皆が取るリアクションの全てが、ある種の証明でもあった。

 これから頑張ろうね。

 浮舟の優しい言葉に顔を上げ、駆け寄る四人。おいで、と浮舟が金属製の左腕と肘までしかない右腕を広げて微笑めば、四人は堪らず抱き付いた。

 奇。

 大の大人が声を上げて泣き、存在する筈のない男が言う筈のない言葉を(のたま)うこの場はどこか奇妙で、それでいて狂気的であった。

 浮舟に抱き付き、感謝の言葉を繰り返す四人。

 夏油が笑い、頷きながら拍手を送り続ける。

 その様子に畏れ、目を合わせるしかない美々子と菜々子。

 そんな、大広間にて。

 ただ二人、正気のままだった美々子と菜々子が何かに気付きそうになる。どういうことだと顔を合わせた際に、誰にも気付かれないように小声で遣り取りをしてしまいそうになる。

 

「──どうしたの? 美々子ちゃん、菜々子ちゃん」

 

 しかし、浮舟が気付いた。何故二人は駆け寄ってこないのかと心の底から不思議に思い、首を傾げながら問いかけてきたのだ。

 浮舟の瞳が美々子を見る。目が合った美々子は、その瞳の美しさに膝から崩れ落ちそうになった。なにを疑っていたのかと、愚かな自分を責めてふらふらとお兄ちゃん(浮舟)の元へと歩き始めた。

 浮舟の瞳が菜々子を見る。目が合った菜々子は、その瞳の美しさの奥に()()()を視た。しかしそんなことなどすぐに忘れ、美々子同様お兄ちゃん(浮舟)の元へと歩を進めた。

 

「おいで、二人共」

「「──っ、うん!」」

 

 浮舟が笑って声をかければ、その脚を動かす速度が早まった。場の空気を察して浮舟から離れた四人の間を通り抜け、飛び付くように浮舟の胴へと腕を回す。浮舟はよろけながらも、美々子と菜々子の二人をしっかりと抱き締めた。

 

「素晴らしい、これでこそ家族のあるべき姿だ」

「なに離れたところで笑ってんだよ夏油、お前も来いよ。お前も来て、家族勢揃い──そうだろ?」

「はは、これはこれは。嬉しいことを言ってくれるね」

「……夏油様、早く」

「早く〜!」

「はいはい、今行くよ」

 

 浮舟に抱きつく美々子と菜々子。三人を包むように夏油が腕を回し、それから離れていた四人も加わる。

 夏油傑。

 枷場美々子。

 枷場菜々子。

 ミゲル。

 ラルゥ。

 祢木利久。

 菅田真奈美。

 そして、浮舟出。

 今日この日。国家を、世界を転覆させようと企む夏油一派──そのメンバーが揃った。

 家族全員が、ここに集まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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 季節は移ろい、冬。

 呪術高専東京校にて。

 一年生全員で登校している最中、乙骨が異変を感知した。

 

「どーした、憂太」

 

 突然立ち止まった乙骨にパンダが声を掛ける。乙骨は白い息を吐きながら答えた。

 

「えーっと。なんかちょっと嫌な感じが……」

「気のせいだ」

「気のせいだな」

「おかか」

 

 総スルー。

 乙骨は再び歩き出した三人の背中を慌てて追いかけた。

 

「えぇ、ちょっとみんな……」

「だって憂太の呪力感知超ザルじゃん」

「まぁ里香みたいなのが常に横にいりゃ鈍くもなるわな」

「ツナ」

 

 特級過呪怨霊、祈本里香。

 乙骨の身に取り憑いて片時も離れない──6年前に結婚を約束したとある少女の呪霊。

 今となってはある程度の制御が(と言っても完全に制御出来るわけではないが)出来るようになったが、それでも呪霊は呪霊。しかも特級となれば、何もしていなくても被呪者(乙骨)への影響は少なくなかった。まるで他の呪霊()を見るなとでも言いたいのか、乙骨が呪力を感知しようとしても祈本里香の呪力が邪魔をする。

 

「……」

 

 まぁ、気のせいならそれに越したことはないか。

 乙骨は心の中でそう結論付けたところで。

 

「珍しいな」

「憂太の勘が当たった」

 

 真希とパンダが上空に目を向けていることに気付いた。

 鳥の羽音。まるで耳元で飛んでいるかと思うほどの音の大きさ。乙骨は先程までと違い、ひしひしと背中に感じるレベルの()()()()に慌てて振り返った。

 

「関係者……じゃねぇよな」

「見ない呪いだしな」

「すじこ」

「わー、でっかい鳥」

 

 高専の広い敷地内、石畳で造られた一本道に一人の男とペリカンのような呪霊が並んで降り立つ。男の背丈三人分程の全長のとても大きなペリカンのような呪霊に警戒心を(あらわ)にする同期の隣で、乙骨は呑気に口を開けて驚いていた。

 

「変わらないね、呪術高専(ここ)は」

 

 僧が着るような袈裟姿の、特徴的な前髪の男。ペリカンと共にこの地に降り立ったその男が辺りを見渡してそう呟いた。左手の薬指には銀色に輝く指環。既婚者なのかと、乙骨は少しばかり驚いた。

 ペリカンが口を開く。すると口の中から二人の女が出てきた。

 

「うぇ〜! 夏油様ァ、本当にここ東京ォ??」

 

 一人目。田舎くさァ、と木々生い茂る高専の景色にうんざりしたような表情と大きな声でそう言う、派手めの女子高生──菜々子。

 

「……菜々子、失礼」

 

 二人目。不躾な物言いをする女子高生を注意する、大人しそうな女子高生──美々子。

 

「えー、美々子だってそう思うでしょ?」

「思うけど、言わないのが日本人としての美徳。お兄ちゃんだってそうする筈」

「お兄ちゃん引き合いに出すとかズルっ」

「ズルくない」

「ズル」

「ズルくない」

「こら、美々子に菜々子。喧嘩している場合ではないだろう?」

「「……ごめんなさい」」

 

 登場早々、敵意剥き出しの一年生達を置き去りに口喧嘩を始めてしまった美々子と菜々子。耐えかねた様子の男──夏油が溜め息と共に諌めると、美々子と菜々子は唇を尖らせながら、棒読みでの謝罪の言葉を口にした。

 

「なんなんだよコイツ等……」

 

 侵入者達の異様な雰囲気にたじろぐ真希。その呟きが耳に入ったのか、美々子と菜々子の視線が一年生(こちら)の方へと向いた。

 

「アイツら……何……?」

「あーパンダだー! かわいー!!」

 

 ようやくこちらを視認した侵入者達。パンダを見つけてテンションが上がっている美々子と菜々子。張り詰めた空気が限界まで張られてはいないことを、乙骨はなんとなく察していた。

 しかし、気付く。

 何故、高専関係者では無さそうな(というか無さそうな登場の仕方をした)者達が、高専内に侵入出来てしまっているのかを。

 侵入者を寄せつけない為、天元様の結界が張られている筈の高専敷地内。乙骨達の前に現れた三人と呪霊一体はどう見ても高専関係者には見えず、乙骨以外の一年生三人は警戒心を露わにし、呪具を構えて対応。

 

「オマエらこそ何者だ。侵入者は憂太さんが許さんぞ」

「こんぶっ!!」

「えっ!?」

 

 見ず知らずの不審者達。同期達はどうするつもりなのかと内心ハラハラしながら事の成り行きを見守っていた最中、突然矢面に立たされた乙骨。こんな時にも悪ノリするのかと、乙骨はパンダと棘の謎テンションに驚愕した。

 

「憂太さんに殴られる前にさっさと帰んな!!」

「えぇ!?」

 

 訂正。同期達の謎テンションに、驚愕した。

 

「──はじめまして乙骨くん、私は夏油傑」

「えっ、あっ、はじめまして」

 

 緊張感と、同期達のコントのようなテンポ感に緩みかけた場の空気を、袈裟姿の男──夏油が目にも止まらぬ速さで駆け抜ける。気付いた頃には乙骨に自己紹介を済ませ、両手で握手を交わしていた。

 速い。

 同期三人心の声が重なる。彼等の中で、侵入者に対する警戒心が上限いっぱいにまで引き上げられた。

 夏油は気にせず会話を続ける。乙骨自身も、突然接近してきた男の素早さとその柔和な笑みに混乱し、抵抗するという選択を取れずにいた。

 

「君はとても素晴らしい力を持っているね。

「私はね、大いなる力は大いなる目的の為に使うべきだと考える。

「今の世界に疑問は無いかい? 

「弱者を守る為に強者が犠牲になる世界さ。

「君も高専生なら一度は聞いた事があるだろう──浮舟出の名を」

「ッ」

 

 流れるように、まるで台本が用意されているかのように。すらすらとつらつらと、自らの意見を語ってみせる夏油。その言葉は乙骨達一年生の耳に否応無く入り込み、しかしもう片方の耳から抜けることなく脳内に染み渡らせる。

 夏油の演説。その最後に出た名前に、乙骨の肩が跳ねた。夏油はその動作に目を細め、続けた。

 

「だからね、君にも手伝ってほしいわけ」

「……な、何をですか」

「非術師を皆殺しにして、術師だけの世界を作るんだ」

 

 つまりは夏油の目的。それに、乙骨は勧誘されたのだ。

 その目的の大仰さと、しかしその言葉をただの冗談と思わせない迫力が夏油にはあり。目の前にいる乙骨は勿論、少し離れた場所にいた同期三人の額にも、一筋の冷や汗が垂れ落ちた。

 

 しかし。

 ここで一つ、小さな疑問。

 本性は明らかに危険そうな目の前の男だが、どういうわけか今は虫も殺せなそうな雰囲気を纏わせたまま乙骨の言葉を待っている。

 乙骨は数瞬迷った後、この際だと聞いてみることにした。

 

「……どうして、いずるさんの名前が出てくるんですか」

「え? あぁ、だから言っただろう? ()()()()()()()()()()()()()()()()()って。出はそれの体現者じゃないか」

 

 一片の曇りもない瞳でそう答えた夏油。

 更なる疑問。

 己の知る()()()()()()の内容との矛盾。

 普段の乙骨であれば尻込んで会話を終わらせていただろう。しかし、高専に入学してから半年以上、乙骨の耳をくすぐらせた()の人生譚が──()の輝かしいエピソードの数々が──()の人としての凄さが──乙骨の尻を叩いた。そんなふざけた目的の為に()の名前を使わせてはいけないと、乙骨に反論の意思を芽生えさせた。

 

「……いずるさんは術師(後輩)を庇って、呪霊に食べられたんです。術師と非術師の話なんて何の関係もないじゃないですか!」

 

 言ってしまった。

 得体の知れない男に敵対の意思を見せてしまったことへの少しばかりの後悔と、()の名誉を守れた自分自身への賞賛。恐る恐る夏油の表情を窺うと、夏油は顎に手を当てて何かを考えていた。

 

「……成る程、乙骨くんはそう教えられたんだね」

「?」

 

 意味深な言葉。その意味を聞き返そうとしたところで、第三者の介入。聞き覚えのあるその声に、乙骨は内心ほっと胸を撫で下ろした。

 

「僕の生徒にイカレた思想を吹きこまないでもらおうか」

 

 現れたのは、自他共に認める最強の術師──五条悟。更に後ろには学長の夜蛾と、今まで高専内で何度か見た覚えのある術師達。乙骨は名前こそ存じ上げないが、このような未曾有の有事に駆り出されているのだから、その誰もが実力者であることは間違いない。

 五条と夜蛾、そして高専内に居た術師達の総動員。

 つまり目の前にいるこの袈裟の男は、もしかして想像以上にヤバい人物なのではないか。乙骨は夏油の目線が五条に向いた隙に少し距離を取った。

 

「悟! 久しいね」

「まずその子達から離れろ、傑」

 

 距離を取った乙骨のことは気に留めず五条に笑いかける夏油と、毅然とした態度で言い放つ五条。

 見るからに険悪ではあるが、下の名前で呼び合っている二人を見て、乙骨はその違和感に首を傾げた。

 

「今年の一年は粒揃いと聞いたが、成る程。君の受け持ちか」

「一体何の用だ。しかも御丁寧に()()()まで連れて」

「ふん、()()と言ってくれ」

 

 教師と教祖。交わった視線には静かな青い火花が散り、周囲の人間達に不安を与えてざわつかせる。誰もが行く末を見守るしかないこの場で、たった一人駆け寄る者がいた。息を切らせて、乱入してきたものがいた。声をかけられた夏油がその名を呼ぶ。

 

「やあ硝子」

「やあ、じゃないだろお前……。何やってるんだ」

 

 呪力を察知してから、この場まで走ってきたのだろう。戸惑いながらも夏油と言葉を交わす硝子と呼ばれた白衣姿の女性──家入硝子は、息も絶え絶えに夏油へと抗議と非難の目を向けた。しかし夏油は悪戯っぽく笑うばかり。

 

「……もしかして今からやろうとしてること気付いてる?」

「私だけじゃない。五条(コイツ)もとっくに気付いてる──というか、そもそも夏油(お前)はただ昔を懐かしんでその場を訪れたりするようなタイプじゃないだろう。必ず裏がある」

 

 呪詛師が呪霊に乗ってきてるんだから尚更だ。

 家入は己の言葉にそう付け加え、夏油の様子を窺った。

 

「ククク、どうせなら盛大に宣戦布告を──と思っていたのだけれど、こうして同期の二人と話していると楽しくて仕方がないね」

「抜かせ夏油(クズ)

「今すぐ投降しろ、傑」

「手厳しいな」

 

 10年前までは、机を並べて授業を受けた仲。

 10年前までは、放課後に街へ繰り出して蒼い春を謳歌した仲。

 しかし今ではこうして正面から向き合い、睨み合う仲に。対立する立場は決して相容れないモノになってしまった。

 夏油の〝宣戦布告〟という言葉を聞き、そんなことはやめろと語気を強めて警告する五条と家入。二人がすぐさま武力に転じないのは、そこにかつての同期としての情けが──私情が含まれているからかもしれない。

 特級術師と、世にも珍しい他者反転の使い手。

 その二人から強い眼力で睨まれている特級呪詛師(夏油)は、抵抗するでもなく投降するでもなく、ただ笑った。クスクスと、なにがおかしいのか無邪気に笑い続けた。

 

「あぁ、可笑しい」

「なにが──」

「悟、硝子」

「……なんだよ」

「……なんだ」

「私達は、かつて同じ教室で机を並べた同期だ。少しの時間だけど、同期二人とこうして話が出来たことはとても喜ばしく思うよ」

「ッ──黙って聞いてれば、なんなんだよ傑! 突然現れたかと思えばベラベラ喋って! さっさと投降してくれって! お前自分の立場分かってんのかよ!」

「落ち着きなよ、悟。君の生徒が怖がっているじゃないか」

「ッ、クソ……」

 

 五条が後方を振り返ってから舌打ちをする。先程までふざけていた様子の一年生達も、高専の立地に不満の声を上げていた美々子と菜々子も、後ろで控える呪術師達も。

 皆等しく口を閉じていた。

 

「しかし、だ」

 

 夏油が切り替える。

 

「本来ならば喜ぶべき同期三人の再会。けれど、少し思い返してみてほしい。私達の代はこれで全員ではなかった筈だ」

「……夏油お前、言葉に気を付けろよ。()()()はもう──」

「私達の代は元々四人だった筈だ」

「傑ッ……!」

 

 五条と家入からすれば、それは言ってはならない言葉。

 10年前に任務中に死亡した浮舟出。()の死が引き金となって壊れた同期仲、残された同期三人の関係性。

 生涯決して癒えることのない傷。10年経った今も未だ鮮血が滴り落ちるその傷口をほじくり返そうというのだから、五条は我慢がならなかった。

 頭に血が上り切り、夏油が身に纏う袈裟──その胸倉を掴もうと右手を伸ばし。

 

「おっと、危ないな」

 

 軽くかわされた。

 

「悟、君は昔からそうだね。沸点を超えたらすぐに自分の力で()()()()しようとする。教職に就いた今ならもしや、と思っていたけれど、どうやら君のその性格は昔とそこまで変わってはいないようだ」

「…………ッ」

「夏油、お前が五条を怒らせたいのは分かったよ。お前等二人共ムカつくからこの際好きに罵り合えばいいさ。でもな、こっちだって何人か急患を待たせているんだ。早いところお前の動機とやらを話してくれないか」

「流石は硝子。冷静だね」

「……はぁ」

 

 夏油の笑顔を見て、細い指で額を押さえた家入。言い返せずに押し黙る五条。見守るしかない外野。

 夏油はそれ等の面々の表情を見渡してから「さて」と一言。その声は聞いた者が思わず身震いしてしまうほど冷たい言葉だった。かつての同期達と話していた先程までの柔らかな声色とは似ても似つかない、この場に集まった術師達に対して真っ向から宣戦布告をする者に相応しい声だった。

 

「察しの良い方ならもう気付いていると思いますが、今回私は宣戦布告に来ました」

 

 両手を広げ、声を張る。ようやく来たこの時に上層部殺しの夏油傑は感極まり、その目尻に涙を滲ませてさえいた。

 

「──お集まりの皆々様、耳の穴かっぽじってよく聞いて頂こう!!」

 

 それは、言うならば夏油からの宣戦布告。

 12月24日、日没と同時に行われるという()()()()

 新宿と京都にそれぞれ千の呪いを放ち、描くは地獄絵図。

 

「──この世から非術師(猿共)を一匹残らず殺して淘汰し、術師だけの楽園を創ります」

 

 聞く者が聞けば、単なる夢物語。しかし夏油には言ってのけるほどの実力があった。そして、夏油には夏油の目的に付き従う仲間(家族)がいた。

 

「要するに、その為には邪魔者(高専の皆さん)には死んでもらおうというわけです」

 

 笑顔で締めくくる。その際閉じた瞳を薄く開けば、わなわなと肩を震わせる五条の姿。

 

「……ざけんな」

 

 ポツリ、五条が独り言のように呟く。

 

「……()()()が死んで、硝子がヒスって、傑が上層部の(ジジイ)達殺して。悲しくて寂しくてどうにかなりそうだったけど、俺は俺なりにどうにかしようと思って頑張ってきたんだよ」

 

 なのに。

 五条の身体が怒りで震える。家入が落ち着かせようと五条の肩に手を置くが、〝無限〟に阻まれた。

 

「それなのに、10年振りの再会なのにッ──傑! テメェは一体何を言ってんだよ! 百鬼夜行!? 非術師を全員殺す!? 上層部殺し(あの日)から10年経ってるっていうのに、まだそんなこと言ってんのか!?」

「……はぁ。まあそんな反応をするとは予想してたけどね。流石にキレ過ぎじゃない? 悟。君教職だよね?」

「黙れッ! (お前)が何も言わずに現れただけでこっちはいっぱいいっぱいなんだよ! 頼むからこれ以上俺を混乱させんな!」

 

 一触即発。

 しかし、互いにどこか気が触れているという点においては、もう既に()は起こってしまっているとも言える。

 五条が怒り、家入が苦しみ、夏油が笑う。何がおかしいのか笑い続ける。

 

「ッ──この、笑うな!」

 

 やがて、耐えかねた五条が夏油に指先を向ける。そこに集まる呪力が何を意味しているかはもはや明白であった。

 

「いずるは俺に託した! だから俺だけは()()()()しなくちゃいけねぇんだよ!」

 

 五条の指先に呪力が集まる。

 最早止めることは不可能と理解したのか、家入が五条の後ろに下がる。下を向いたその目線が、今から五条がしようとしていることを暗に肯定していた。

 夏油が美々子と菜々子に目配せをする。応じた二人は、どこかへ向かって歩き始めた。

 

「傑、お前のやってることは何一つ理解も共感も出来ねぇ! だから俺は同期として、親友として、なんとしてでもお前を止める! それでもやるって言うならッ!」

 

 五条の指先に赫い呪力が集まる。もういつでも撃てる──そんな状態。

 にも関わらず。

 眼前で膨大な正の呪力を練られているにも関わらず。

 夏油の表情は少しも変わらず、怒り狂う五条を前に世間話をするように話しかけた。

 

「悟、硝子。今日高専に来たのは、ただ宣戦布告をしようってだけじゃないんだ」

「……というと?」

 

 夏油の意味深な言葉に、家入が眉を顰めて返す。その言葉を待っていましたと言わんばかりに、夏油は微笑みながら言い放った。

 

「実は、君達二人にサプライズがあるんだ」

「へぇ、同期の呪詛師様がアポも無く空から現れる以上のサプライズがあるなんて驚きだな」

 

 皮肉を込めた返答は、家入なりの時間稼ぎ。それが五条と夏油のどちらにとっての時間稼ぎであったのかは当の家入以外には知りようもなく。

 兎にも角にも、サプライズ。

 二人の反応をひとしきり堪能した夏油は「出ておいで」と後方に声を上げた。

 瞬間、侵入者以外の全員が感じた異変。異変の発生源は、最早誰も意識を向けてなかった一匹の呪霊からだった。

 夏油に、美々子と菜々子。三人をこの場に運んできた、大きなペリカンのような形をした呪霊。脅威としてはそこまでではない──この場における優先順位は一番低かった、言ってしまえばなんでもない呪霊の中からの、冷や汗が滲み出るほどの呪力反応。まずいと誰もが思ったが、それよりも早く()が来た。

 そのサプライズに、指先に呪力を溜め、夏油が一つでもおかしな行動を取れば術式を撃ち込むつもりだった五条も。

 この状況からどうやって二人を止めるべきか頭の中で必死に考えていた家入も。

 各々得物を構えて臨戦態勢に入っていた高専サイドの術師達も。

 その呪霊の内部から突然発せられた暴力的な呪力()に身体を押された。

 ある者は数歩後ろに退き。

 ある者は尻餅をつき。

 ある者は前傾姿勢で衝撃を堪えて。

 ペリカン型の呪霊の中から全方位に放たれた呪力圧。呪力を全くのゼロの状態から一瞬でここまで持ってこれる人物に、五条は一人だけ心当たりがあった。

 しかしその人物は10年も前に死んでいて。ならば一体誰がこんな芸当を、と五条が六眼で視て──

 

「…………………………は?」

 

 五条の思考が、停止した。

 指先に溜めていた呪力は、五条の口から漏れた言葉と共に宙に霧散して掻き消えた。

 ペリカン型の呪霊の口が大きく開く。中から一人の男が現れる。

 

「…………嘘」

 

 その男の姿を見て、家入が口元を手で覆いながら目を見開く。声も身体も震えていた。

 男はなんでもないように平然と歩きながら近付いてくる。首に下げられたネックレス──銀色に輝く指環が歩行に合わせて左右に揺れている。

 夏油が手を振って迎え、隣に立たせた。男は五条と家入を見て、驚いたように目を見開いてからくしゃりと笑った。

 

「……あれ、二人共久しぶりじゃん。イメチェンした?」

 

 男──10年前に死んだ筈の男、浮舟出は照れくさそうにそう言ってのけた。

 その言葉を受けた五条と家入だけでなく、周囲で見守っていた高専サイドの人間達の間にも動揺が走る。ざわめき立ち、場の空気が異質に変化し混乱し始めた。

 そんな空気の中、いち早く理性を取り戻した家入が恐る恐る浮舟に向かって尋ねる。

 

「…………い、いずる。なのか?」

 

 尋ねるというよりかは、確認といった方が適切なソレ。もう自分の中では答えが出ているものの、目の前の本人から答えを得たかった──つまりはそんな感じの。

 浮舟は笑って答える。

 

「うん、そうだよ。オレは浮舟出。五条と硝子ちゃん……で間違ってないよね?」

「あ、ああ。そうだ。私だ。こっちは五条」

 

 肯定からの、問い返し。目の前にいる男は間違いなく本物だという確証を得て思考がブレる家入だったが、なんとか浮舟からの質問に答える。先程まで呪力を溜めていた五条は未だ意識がどこかで彷徨っているような状態で浮舟を見詰めていた。

 

「いずる、なんで生きて……」

「? あぁ、まぁ色々あったんだよね。それよりも、二人とも大人になったね! やっぱ10年も経てば色々変わっちゃうんだな〜」

「待て、待っていずる! こっちには色々聞きたいことが──ああ、もうどれから聞けばッ」

「落ち着いて硝子ちゃん。なんでも答えるよ」

「……なんで生きてるんだ?」

()()()()()()()()()

「……なんでここにいるんだ?」

()()()()()()()()()()()()()()()

 

 問いかければ、すぐさま返ってくる回答。その一つ一つが家入の脳にズキズキと衝撃を与え、まともな判断力を奪おうとする。家入は浅くなりがちな呼吸を深く行い、それから意を決して最後の質問を投げかけた。

 

「…………なんで、夏油と一緒にいるんだ?」

 

 信じたくない。

 やめてくれ。

 家入の悲痛な願いがふんだんに込められたその質問。しかし浮舟はそれほど気にせずに、事実をただただ優しい声色で告げた。

 

「夏油の仲間(家族)だから」

 

 当然のように言い、夏油と視線を合わせて照れ笑う浮舟。次に口を開いたのは五条だった。

 

「……いずる、なんだよな」

「うん、そうだよ」

「そっか。──傑」

「なんだい、悟」

「いずるに、何をした」

「? どういう意味かな」

(とぼ)けんな! 俺は視えてんだよ!」

「ああ、そっか。全く、六眼というのはつくづく厄介なモノだね。そう容易く看破されちゃあつまらないじゃないか」

「夏油、オレに何かしたのか?」

「何もしてないよ。ほら、美々子と菜々子の所に行ってクレープ店の営業時間を調べておいで。私はまだ話があるから」

 

 浮舟は首を傾げたが、すぐに納得したようだ。同期達に背を向け、小さめの歩幅で走り出した。

 

「ま、待って……!」

 

 家入がその背中に声を掛ける。今ここで止めなければ、次会った時もこうして()()()お話出来るとは思わなかったからだ。

 浮舟の足が止まる。

 

「どうしたの、硝子ちゃん」

「…………」

 

 こちらを振り返った浮舟の表情(かお)は過去の思い出と寸分違わず、家入は束の間、言葉を発することが出来ない状態に追い込まれた。胸が痛む程の懐かしさを覚え、なにか言わなければと頭の中で必死に言葉を探すが、口からは小さく息が漏れるだけだった。

 

「何もないの?」

「…………い、いずる」

「なに?」

「…………いかないで」

 

 やがて家入の口から発せられたのは、縋るような言葉。もしくは願い。

 10年振りに再会した想い人が国家転覆を企む一派の一員だなんてとても信じられず。

 馬鹿なことしてないで早く高専(私のもと)へ帰ってきてくれ。そんな思いが込められた涙混じりの言葉。

 懇願。言葉を受けた浮舟は、家入の瞳に浮かぶ涙を見て少し驚いたような表情を見せた。

 

「…………」

 

 しかしその表情もすぐに消え去り、浮舟はただ微笑んだ。

 

「それは()()、かな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「さて。10年振りの再会で積もる話はあるけれど、君には一刻も早く現状を知ってもらいたいんだ。そこに座ったまま、ちょっと聞いてもらえるかな」

 

 柔和で、相手に対する思い遣りに満ちた表情。

 美々子と菜々子が去ったこの部屋にて、夏油は扉が閉じ切ったのを確認してからそんな風に切り出した。

 

「う、うん。それは勿論。〝僕〟だって気になるところだし」

 

 それから数秒、夏油が言い淀む。しかしこれ以上の沈黙はあらぬ不安を与えてしまうと察したのか、意を決して喋り始めた。

 浮舟出が死んだ()()()から、己が行なってきたことを。

 浮舟出が死んだ()()()から、己が犯してきた罪を。

 (さら)け出した。

 洗いざらい、全てを吐き出した。

 優しい彼の手前。君の為、なんて烏滸(おこ)がましいことは言えなかった。しかし、私の行いの芯には君がいたのだと、夏油は伝えなければならなかった。

 復讐と、理想の世界の創造。

 10年を捧げた夏油の行い。その全てを浮舟に言って聞かせる。その間僅か1分と少し。

 全てを聞き終えた浮舟は、ただ一言。

 

「……そ、それ、マジで言ってんのか?」

「ッ」

 

 頭の回る夏油も、まさか血に塗れたこの旅路を肯定してもらえるだろうとは思っていない。

 しかし、夏油は浮舟の優しさを信じていた。

 肯定されるまではいかなくても、己の行いをどこか酌量して、怒りと悔しさに涙を流しながらも寄り添ってくれるのではないかと思っていた。

 それが。

 それがまさか、こんな表情をされてしまうだなんて。

 

「……人を、殺した? 〝僕〟の死をきっかけに、上層部の奴等を皆殺しにして、非術師(一般人)の人達を数え切れないほど殺した?」

「出、聞いてくれ。私は──」

「ちょ、ちょっと黙ってくれ」

「……」

(ワケ)が分かんねぇよ。10年振りに再会した同期が、なんでこんな」

 

 ヤバい奴に。

 

「ッ──」

 

 畏れを含み、夏油の知る浮舟の普段よりも細められているその瞳。

 こちらから距離を取ろうと、椅子から離れようとしているその姿勢。

 固い声。

 態度。

 浮舟のリアクションの全てが、夏油に対して協力的ではないことを如実に表していた。

 

「出……」

「うるせぇ! お前、なんでこんなことしちゃったんだよ……! 術師として非術師を護るって宣言はなんだったんだよ!」

「私は、君を殺した奴等が許せなくて」

「……美々子ちゃんと菜々子ちゃんは、このこと知ってんのか」

「あ、あぁ。勿論。二人だけじゃない。君の死を悼み、私の掲げた理想を共有する仲間が──家族達がいる。出、君の家族でもあるんだよ。彼等は……」

 

 …………。

 必死の弁明。どうにかして浮舟の宥めなければと、その一心で滑らかに回る夏油の舌は、その発言の途中で止められた。息を呑み、口を閉じたのだ。

 

「…………出」

 

 浮舟は、泣いていた。誰かに対しての謝罪の言葉を繰り返しながら、義手で目元を押さえて苦しんでいた。

 浮舟出は善人である。

 善いことを善とし、悪いことを悪とする。思い遣りと正義感に溢れた、まごうことなき善人である。

 だからこそ浮舟は、夏油の行いを許容することは出来なかった。夏油の口から流れた言葉のその隅々にまで嫌悪し、夏油の行いによって死んでいった全ての人に対して悔やみ、涙を流していたのだ。

 夏油が浮舟の肩に手を伸ばす。しかしその手は浮舟の冷たい左腕によって払い除けられた。

 

「触るな」

「ッ……!」

「〝僕〟が死んだから、夏油はおかしくなったんだろ。それに関しては謝る。夏油が()()()()()してしまったのは、つまるところ〝僕〟が原因ということでもあるんだからな」

「そ、そんな。出、少し冷静に──」

「これが冷静でいられるかよ! 夏油お前、本当になんでこんなことを……!」

 

 浮舟のこちらを見る視線に、思わず払い除けられた手を見る。一度俯いてしまえば、何故だかもう一度浮舟と目を合わせるのはとても困難なものとなってしまっていた。

 

「五条と硝子ちゃんに会わせてくれ」

「……それは、出来ない」

「なんで!」

「……言っただろう。私は高専から離反している。おいそれと悟と硝子(二人)の前に姿を現すわけにはいかないんだ」

「…………」

 

 夏油の言葉に、浮舟が口を閉じる。それから何を思ったか、次にこう言った。

 

「ここから出ていく」

「……は?」

「聞こえなかったのかよ。〝僕〟はここから出ていく。悪いけど、お前と一緒にはいられない。夏油のことをこれ以上嫌いになりたくない」

「じょ、冗談はよしてくれ」

「冗談なもんか。五条と硝子ちゃんのところに行く。あっちまで行ってこのことを話して、夏油にはきちんと罪を償ってもらう」

「そんな、待ってくれ出」

「触んな!」

 

 強い語気と共に、伸ばした手がもう一度払われる。夏油は目を見開いた。

 

「優しくなくてごめん。どう考えてみても、〝僕〟はお前を赦せそうにない」

 

 浮舟が夏油にそう言い残し、椅子から立ち上がる。早歩きでこの場から立ち去ろうとし、その義手を夏油に掴まれた。

 

「ッ、なんだよ」

「行かないでくれ出! 私は君が居なければ──」

 

 縋る。

 ぎこちない、媚びへつらうような笑みを浮かべ、頼むからとここから去ろうとする浮舟に追い縋る。

 

「離せよ! 人を殺してんだぞ!? お前が殺した人達には、一人一人家族がいたんだぞ!? それはお前、なにヘラヘラ笑って……!」

 

 振り解こうともがく浮舟。しかし浮舟の身体にアルコールが入っていない今、単純な一人の人間としての膂力は夏油の方が上で、浮舟の手首を握る手は決して離されることはなかった。

 

「出、落ち着いて話を──」

「話聞いたら〝僕〟が納得して協力するとでも思ってんのか!」

「そういう意味じゃない! 私の想いを、君にだけは知っていてほしいんだ!」

「〝僕〟が、いつ上層部を殺してほしいだなんて言ったんだ! 〝僕〟がいつ、非術師が憎いだなんて言ったんだよ!」

「それは……」

産土神(神様)に囚われてたと思ったら急に現世に戻ってきてて、でもこっちでは10年経ってて同期が絶賛大量殺人中だって!? (ワケ)分かんないんだよ! 怖いよお前!」

 

 否定。

 否定。

 否定。

 10年を捧げた己の行いを、真っ向から否定される。

()は味方でいてくれると思っていた。

()の為に大義を成す自分を、()は戸惑いながらも結局は理解してくれると思っていたのだ。

 今思えば、善人である()が夏油の行いを否定することは分かり切っていた。しかし、過去の自分は──人を殺す際に名分を求めた自分は、無意識のうちに頭の中の()の人格を歪めてしまったのだ。

 目の前で涙を流す浮舟()。その涙は一体誰の為のものか。

 

「出、私は──」

「やめろ! なにも聞きたくないッ!」

 

 最早、この状態からの和解は不可能。並びに合意も、これから行動を共にすることも不可能となる。

 浮舟はこの場を去り、かつて()()()()()()()()()()()()()()()()()()の元に行ってしまう。

 

「…………」

 

 そうだ。

 そうじゃないか。

 私は、出の為に。

 

「…………」

 

 夏油の心が(ひず)む。

 

「離してくれ!」

 

 私が、私だけが、出の為に行動をしたんじゃないか。なのになんで、出は私ではない誰かの元に行ってしまうんだ。

 

「…………」

 

 夏油の正義が、(ゆが)む。

 

「……夏油?」

 

 そこからの行動は早かった。手札(ストック)の中から最適な呪霊をこの場に喚び出し、浮舟の眼前に立たせる。

 

「……夏油、痛い」

 

 浮舟にとっての誤算は、夏油の心の闇の深さを見誤っていたこと。

 浮舟にとっての不幸は、アルコールが抜けている今この瞬間での呪霊の認知は不可能だということ。

 

「出、私は君のことを愛してる」

「なんだよいきなり。はっきり言って、〝僕〟は今の夏油のことは嫌い寄りだぜ」

 

 喚び出した呪霊に、術式の使用を命ずる。呪霊はその通りに動き、浮舟の眼前を桃色の光で照らす。呪霊を視認出来ない浮舟がソレに気付くことはない。

 

「──だから私は、君にも私のことを愛していてほしいんだ」

 

 瞬間、浮舟の瞳を光が焼く。浮舟は自分の身になにが起こったのかも分からず、されるがまま、呪霊の術式を浴び続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「…………」

「目が覚めたかい?」

「……夏油か」

「全く、心配したよ。説明している途中で急に眠ってしまうだなんて。まだ本調子じゃないのかい?」

「眠ってた? マジかよ、悪い」

「気にしてないよ。なんて言ったって、君は10年振りに目覚めたばかりなんだからね」

「えーっと、どこまで聞いたかな。──あぁ、そうだ。非術師の人達を皆殺しにする。だっけ?」

「そうだね」

「……ったく、しょうがねぇな。手伝ってやるよ、その計画」

「良いのかい?」

「あぁ。元はと言えば〝僕〟が勝手に死んじゃったのが悪いんだしな。ごめんな、夏油。色々背負わせちゃって」

「…………」

「あと、ありがとう。〝僕〟の為を想っての行動だったんだろ?」

「…………」

「よし、そうと決まれば〝僕〟はなにをすれば良い? 人を殺すってのは出来ればやりたくないけど、出来る限りのことはするぜ。これからよろしくな、夏油」

「…………うん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





このIFルートは、私が個人的に夏油が苦悩している姿が好きだから書いたという経緯があります。そして、夏油なら想い人を洗脳するくらいしちゃうよなという信頼あってのラストです。
少しタイミングが違えば全然別のルートに入っちゃうよということを示しておきたかったというのもあります。なので当然、夏油が狙撃手を殺したあとに現れた産土神を殺していれば、怪我が完治している状態の浮舟が
渦の中から現れるという平和なルートも存在します。

このお話は、どうしても頃合いを見て書いておきたかった話なので、今回書き終えることが出来て個人的には大満足です。好評ならまた別のIFルートも出していけたらなと思っています。不評なら今回限りです。

余談ですが、百鬼夜行で勝利したのは夏油一派です。高専サイドの人間が浮舟を殺せなかったからです。
夏油一派が勝った後の日本の惨状を具体的に想像しているわけではないのですが、一応そう明記させていただきます。

次回からはまた本編に戻ります。呪胎戴天編です。よろしくお願いします。
ではまた。

誰好き?

  • 浮舟出
  • 五条悟
  • 家入硝子
  • 夏油傑
  • 七海建人
  • 灰原雄
  • 伊地知潔高
  • 庵歌姫
  • 冥冥
  • 夜蛾正道
  • 九十九由基
  • 乙骨憂太
  • 折本里香
  • 禪院真希
  • パンダ
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  • 枷場美々子
  • 枷場菜々子
  • 伏黒甚爾
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