アル中とさしす組   作:大塚ガキ男

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こんばんは!依然ブーストありです!




番外編
夢のような日常。


 

 

 

 

「おいいずる! 起きろよ! もう10時だぞ!」

「ぐわああああ頭痛いぃぃぃ…………」

「コラ悟。そんな起こし方があるか」

「だって起きねぇし」

「……さてと」

「硝子、出の布団に入るな」

「えー」

 

 とある日の朝。ついでに言えば季節は冬。

()()()()()平日の昼間から大睡眠をかましていたオレは、五条による強引な声掛けによって意識の覚醒を余儀なくされていた。

 (ぬく)い布団をひっぺがされ、ベッドの上に立った五条に両手を掴まれて上体を引き起こされる。そのまま「起きろ」の声と共に腕を振られ、微睡(まどろ)みからの覚醒を強制される。例えオレが、昨晩大量の睡眠薬を服用していたとしても絶対に起きれるだろうなというほどの力。

 閑話休題()

「起きた? 起きたか?」とオレが起きていることを再三確認し、やっとのことで手を離してくれた五条。自由になった手で寝ぼけ眼を擦れば、オレの部屋には五条だけでなく同期全員が集まっていることに気が付いた。

 

「……おはよう、みんな」

「おはよう、出」

「おはー」

「おいいずる! 俺にも言え!」

「おはよう、五条」

「おう!」

「な〜んでそんな元気なの五条……」

 

 ベッドの上に立ち、なんだか嬉しそうな表情でオレを見下ろす五条。背が高過ぎて頭が天井に付きそうになっている。

 チクショウなんて野郎だ。身長分けやがれ。

 

「寒っ」

 

 室内でも白い息が出そうなくらいの寒さ。寝る時は暖房を点けない派の自分を叱ってやりたいくらいにオレの部屋の室温は低下している為、今まで外気から守ってくれていた布団を失って寒さに耐えられなくなったオレは、五条がひっぺがした掛け布団を回収して再び暖を取るしかない。ベッドの上を這い、無惨にも床に落ちた掛け布団に手を伸ばす。

 それを見かねた硝子ちゃんが暖房を入れてくれた。女神。

 

「女神……」

「ふっ」

 

 思うだけに飽き足らず口にも出しちゃう。そんな感じで両手を合わせて拝むと、硝子ちゃんは無表情ながらもどこか嬉しそうに鼻を鳴らした。

 

「は? じゃあ俺が暖房入れたら神って拝むの? ちょっと一回エアコン消すわ」

「消すな消すな」

 

 顔を近付けて意味の分からないことを問うてくる五条。あまりにも近いのでその分上体を逸らして避ける。消していいわけがない。

 そんな五条の言葉に、口が寂しかったのか──いつの間にか煙草(火は点いてないよ)を咥えていた硝子ちゃんが返した。

 

「馬鹿だねー五条。いずるは私の可愛さ込みで言ったんだよ」

「はぁ? 俺の方が可愛いだろうが! 見ろこの美肌! きゅるっきゅるの六眼!」

「はいはい。面白い面白い」

「笑かそうとしてねぇーよ!」

 

 がやがやと、オレの部屋で言い合いを始める二人。ベッドから(ようやく)降りた五条は硝子ちゃんに近付くと、そのイケメンフェイスを存分に歪ませて「かかってこいや」と無限の向こうから煽っている。

 その煽りにムカついたのか、硝子ちゃんは咥えていた煙草をオレの部屋のゴミ箱に捨て(勿体無い)、制服の内ポケットの中からプッチンプリンを取り出した。蓋には綺麗な字体で書かれた『五条悟』の文字。もしかしなくても、休憩スペースの共用冷蔵庫の中に一昨日くらいから入ってる五条のプリンだろう。

 そのプリンの蓋を容赦無く開け、容赦無く口に放り込んだ容赦の無い硝子ちゃん。凄いや一口で。

 硝子ちゃんがモグモグとその大きな一口相応分の咀嚼をしている間、五条は唖然としたまま何も喋れない。

 それから一言。

 

「……うーん、普通」

「あああああああああああ!?」

「ポケット入れてたから温くなってたわ」

「硝子テメェ!! 他人(ひと)(モン)食うならせめて美味しいって言え!! 絶対に許さねぇけど『おいしかったよありがとう』くらいはせめて言え────────ッ!!」

「普通」

「うわああああああああああああああ!!」

 

 頭を抱え、その場にうずくまる五条。その慟哭(どうこく)はきっと硝子ちゃんに食べられてしまったプッチンプリンにも届いていることだろう。

 

「凄いや硝子ちゃん。まさか最強に指一つ触れず勝っちゃうなんて」

「ぶい」

「ああああああああああああああああ!!」

 

 五条を成敗してスッキリしたのか、ご機嫌な笑顔でVサインを見せてくれる硝子ちゃん。可愛い。

 硝子ちゃんの可愛さ、そして五条の慟哭が同じタイミングで存在しているオレの部屋。そもそもなんで君達ここにいるのと思考が現実に戻ってきたところで、眉尻が下がって申し訳なさそうにしている夏油に話しかけられた。

 

「お休みのところ悪いね、出。悟がどうしてもと言って聞かなくてさ」

「いや全然良いんだけどさ。急にどうしたのよみんなして」

 

 お休みのところ。

 夏油の言葉から分かる通り、オレはお休んでいた。本来ならば授業を受けていなければならない時間帯に、オレはベッドの中でぬくぬくと夢の中にいた。

 

「……任務お疲れ様。その様子を見るに、昨日は大変だったみたいだね」

 

 夏油がオレを見て──オレの頬に貼られたデッカい絆創膏や左手でぐるぐる巻きにされた包帯を見て、そう呟いた。

 

「そーなのよ。神社に呪霊が出るって話だったのに、気付いたら滅茶苦茶な数の呪霊に囲まれちゃっててさ」

「ほう」

 

 夏油の相槌。

 オレは思い出したくもない任務の内容を振り返ることにした。

 

「なんでこんな呪霊多いんだろって思ってたら、それが実はその神社に在る御神木が呪われちゃってて、周囲の呪いを誘き寄せててみたいなオチで」

「御神木が」

「そうそう。御神木をギコギコ切って倒すわけにはいかないから、祈祷系の術師呼んで呪われた御神木を元に戻すとかそういう話になっちゃって。戦闘要員のオレは結局、朝方4時まで四方から迫り来る呪霊達から祈祷系の術師と御神木を護るタワーディフェンス状態よ」

「……大変だったね」

本当(ほんとー)に……」

 

 夏油の優しい眼差しと労いの言葉が──あと効いてきた暖房の温かさが沁みる。朝方まで大暴れしていた地獄を忘れかけたその時。

 

「いや、結局この状況はどういうこと?」

 

 と、同期三人が部屋にいる状況を再び疑問に思うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達おはよう、席に着け。……えー、最初に伝達事項が一点。出は遅刻ではなく欠席だ」

 

 いつも通りの朝。

 とある日の冬の朝。

 教室のドアを開け、教卓に着いた夜蛾が開口一番に発した言葉。その言葉に、生徒である五条、家入、夏油の三人が仲良く首を傾げた。

 何も言わない二人に代わって、五条が問い返す。

 着席した際にどうしても机の枠からはみ出てしまう長い脚。そのつま先は苛立たしげにパタパタと動いている。

 

「欠席ィ?」

 

 大切な同期の一人、浮舟出。

 朝の食堂はおろか、教室でもその姿を見なかったので、三人は「何分前に来るか賭けようぜ」と話し合っていたのだ。夏油だけは、一度部屋まで確認しに行った方が良いんじゃないかと提案していたが──それはともかく。

 賭けに勝った者は教科書を忘れたフリをして浮舟の真隣で授業を受けられるという特典が──それはともかく。

 寝付きの悪い彼のことだ。ただ寝坊していて、そろそろ教室に到着する頃だろうと思っていた三人は、夜蛾から告げられた言葉に眉を(ひそ)めざるを得なかった。

 夜蛾が溜め息を一つ。それから返した。

 

「そうだ。出が昨日から任務に出ていることは皆知っているとは思うが、任務が思いの外長引いたらしくてな。つい先程帰ってきたばかりなんだ」

「怪我は?」

 

 他者への反転術式を施せるという希少性から、学生ながら日々様々な怪我人を診ている家入。浮舟に反転術式は効かないとはいえ、まずはそこが気になるのか、普段よりもほんの少し低くなった声のトーンで問う。

 

「問題無い。多少の傷は目立つが、処置は済んでいる」

「分かりましたー」

 

 夜蛾の回答を聞いて、興味を無くした様子で背もたれに身体を預けた家入。

 あ、コイツ一安心してるわ。

 その態度を見た五条と夏油はすぐさま家入の本心に気付いたが、わざわざ言ってやるほど野暮ではなかった。

 

「……出は今日一日欠席、というわけですか」

「あぁそうだ。お前達、くれぐれも寝てる出の邪魔をしたりするんじゃないぞ」

「言われてんぞ硝子」

「ハァ? 私がいつ邪魔したんだよ。邪魔してんのはお前等クズ二人だろうが」

「悟はまだしも、私までその頭数に入れないでもらえるかな」

「……お前達()()に言ったんだ」

 

 夜蛾の、こうなることを予感していたようなニュアンスの溜め息によって朝礼は終わり、気を取り直して一限目の授業に入ることになった。

 欠席である浮舟のことは一旦忘れ(ることなんて出来るはずもなく)、浮舟不在のまま一限目の授業が始まった。

 空から無音で雪が降りていく窓の外の景色に時折目を奪われながらも、授業はつつがなく進んでいく。

 

「──良いか、被服の折り目を押さえる縫い方を教える。まずは一目落としだ」

 

 実践して見せるより先に、まずは文字での情報として板書を始めた夜蛾。厳格さが窺える字体の文字列。しかし空いたスペースに可愛げなマスコットキャラがワンポイントアドバイスを喋っているイラストが描き込まれ、授業を受けている三人はそのギャップに目を細め、微妙な顔をするのだった。

 

「……つーか、なんで一限から副教科なんだよ」

「悟が昨日の家庭科の授業をサボったからじゃないのか」

「俺だけじゃねーよ。硝子もだ」

「いずるがいないなら、授業は別に受けなくても良い。これ今年のトレンドね」

「迷惑なトレンドだね」

「おいお前等、キチンとノートに写してるか」

「はーい写してまーす! ──……だから、サボったのは俺だけじゃないってこと」

「責任の所在を問いたいんじゃない。そのせいで真面目に席に着いていた私と夜蛾先生が気まずい時間を過ごしたんだ。せめて二人には誠意を込めて謝ってほしいものだけれど」

「「ごめ〜ん」」

「……誠意が込められているとは欠片も思えないが、もう良い。兎に角、話を戻そう。出のことについてだ」

「「よっしゃ」」

「私達は言わずもがな、出のことが大好きだ。出が今日一日休むという報せを聞いてどうしようもなく落胆している現状がそれを証明していると言っても良いだろう」

「周りくど。そんなんじゃモテねーぞ夏油(クズ)

「はは、硝子辛辣ぅ」

「……はぁ、()()()()()()()()()()()()()()()()? つまり、私はこう言いたかったんだよ」

「耐え切れない」

「不本意ながら、同じく」

「だろう。だから、話し合おうじゃないか。授業の合間に見舞うでもいいし、昼休みのタイミングで昼食を持っていくでもいいし、兎に角三人で案を出し合って」

「雪合戦したくね?」

「「……は?」」

「ほら、いずるがこの前教えてくれたやつだよ。二対二に分かれるヤツ。もしかしてお前等もう忘れたのか?」

「いや、私達は元々知ってはいるが……どうしたんだ悟、いきなり」

「いや、窓の外見たらまた雪積もってんじゃんとか思って。メッチャ楽しい雪合戦したら、疲れてるいずるも元気出るだろ」

「……休ませてあげないか。出はほぼ徹夜の状態なんだよ」

「そうそう。アンタと違っていずるの身体は繊細なんだから、これで風邪でも引いたらどうすんの」

「は? そしたら看病してやろうぜ」

「「…………」」

「ベッドから動けなくて風呂入れないでいるいずるの身体、拭いてやろうぜ」

「「…………」」

「寝付けないいずるを、隣で寝かしつけてあげようぜ」

「「…………」」

 

 長いこと続いた会話文。五条の突飛な発言と、それを受けて黙り込む家入と夏油。

 畳み掛ける五条の魅力的な提案と、善悪の狭間で揺れ動く二人の理性。

 そして降雪。

 やがて、家入と夏油は「何を言っているんだコイツは」といった表情で、口を開いた。

 

「今回だけだ」

「今回だけね」

「よっしゃあ! それでこそ同期だぜ!」

「──ガッデム! お前達ッ、真面目に授業を受けんかッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

成る程(なーるほど)ね、雪合戦したかったんだ」

「そう! そうなんだよ! なのに傑も硝子もノリ悪くてさぁ!」

「嫌だとは言っていないだろう」

「そうそう。ただ、いずる疲れてるから起こすのは可哀想じゃないとは言ったけど」

「みんな、ありがとうね」

「礼は良いから、早く行こうぜ! うかうかしてたら雪溶けちまう!」

「溶けるか」

「どうせなら七海も灰原も誘うか! なんなら歌姫と冥さんも呼びつける?」

「テンション高いね〜」

「この前いずるに教えてもらったというのが、大層嬉しかったみたいだね」

「そんな喜んでもらえたなら良かったよ」

「……いずる、本当にいいの? 五条には私と夏油から言っておくから、疲れてるなら」

「良いの良いの。もう十分寝たし」

 

 よっこらしょ。

 ベッドに腰掛け、それから立ち上がる。窓の外を見れば、五条の言う通り雪が降り積もっている。これは存分に雪合戦が楽しめそうだ。

 枕元に置いておいた酒瓶を手に取り、中身を一口(あお)る。それから。

 

「……あれ、てかみんな授業は?」

「夜蛾センが急な任務入ったから自習」

「へー。……ちなみに自習の内容は?」

「作文。将来の夢書けってさ」

「なんだそれ、優しいじゃん」

 

 夜蛾先生に突発的な用事が入って授業が自習になることは、今までにも何度かあった。その時の自習内容といえば、数学のプリント十枚とか夜蛾先生が作った筋トレメニューをこなすとか、そういったものが多かったので、五条の口から出た自習内容に肩透かしを食らった気分になる。

 肩を優しく叩かれる。夏油が耳打ちをしてきた。

 

「……ここだけの話、私達は日頃の行いがよくないからね。己を見つめ直せ的な思いも含まれているんだと思うよ」

「あー、確かに。五条と夏油(お前等)って不良だもんな」

「出と硝子もね」

「なんだ、じゃあみんな(ワル)じゃん。仲良し〜」

「仲良し〜」

 

 友達、的なニュアンスで五条に人差し指を出す。五条もすぐさま人差し指を出し、オレと五条の指先が触れ合った。

 

「じゃあ、作文なんて雪合戦楽しんでからでも出来るわな。行こうぜ」

「その言葉を待ってたぜいずる!」

「じゃあ、グラウンド集合で良い? みんな上着とか手袋取りに部屋戻るっしょ?」

「そうだね。じゃあそうしようか」

「いずる、待ってるからグラウンドまで一緒に行こ」

「ズル! じゃあ俺も」

「なら私も仲間に入れてもらおうかな」

「ははは、じゃあ昇降口集合にしよう」

「よっしゃ!」

「オッケー」

「分かった」

「じゃあ、オレ着替えるからまた後で」

 

 同期に手を振り、それから今日着る服を選ぶ為に──

 

「……あのー、着替えるんだけど」

 

 ハンガーに通していた制服を手に取って何気なくドアの方に視線をやれば、そこには未だ室内にいる同期達。言外に出て行ってくれと遠回しに伝えると、同期達は揃って首を傾げた。

 

「「「?」」」

「着替えるんだけどォ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∩

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夢か」

 

 起床。

 つまりは眠りからの覚醒。

 懐かしい夢から醒めた〝僕〟は、寝起き故にぼやける視界で二度寝を防ぐべくまずはのそのそと上体を起こした。

 頭も冴えてはいないし、何より急激に視力が低下してしまったような視界。壁掛け時計を見ても時間すら分かりはしない。それでもこの身体の内から湧き出る不思議なポジティブ成分は、昨晩よく眠れた証拠だろうか。

 あくびをしながら背筋を伸ばす。そろそろ眠気もどこかへ行っただろうかというタイミングで、声をかけられた。

 

「おはよ、ちょっとお願いがあるんだけど」

 

 振り向くとそこには、茶髪のボブカットの美人──つまりは硝子ちゃんがいた。寝起きそのままの状態で会うのは少しばかり恥ずかしいけれど、まぁ〝僕〟と硝子ちゃんの仲だ。何を今更と言われればそれまでである。

 

「あぁ、硝子ちゃん。おはよう」

「は?」

 

 微笑みかけるも、返ってくるのは微妙な一文字。まじまじと〝僕〟の顔を見てくるので何事かと思ったが、どうやら会話が続かないほど、〝僕〟の寝癖はヤバいらしい。触ってみると、確かに後頭部が派手に跳ね返っている。

 恥ずかしい。

 

「どうしたの、部屋まで来て。もしかして甘えたくなっちゃった?」

「……は?」

 

 硝子ちゃんは、多忙だ。

 だから時折──というか毎日、癒しを求めて〝僕〟に抱き付いてくる。最初の頃こそ困惑し、周囲から見た際に勘繰られかねない危うげな体勢に()()()の声をかけたものだが、今となっては日常茶飯事。〝僕〟も硝子ちゃんも、ハグをただの日常だと受け入れている。

 

「なに今更恥ずかしがってるの。おいで、ほら。ハグしよう」

「…………うん」

 

 手を広げて受け入れの体勢を示すと、硝子ちゃんは少しばかり躊躇いの仕草を見せる。いいからおいでと笑えば、硝子ちゃんはゆっくりと〝僕〟に抱き付いてきた。背中に手を回し、薄い胸板に頬を当てている。

 〝僕〟はいつものように硝子ちゃんを抱き締めながら頭を撫で、労いの言葉をかけた。

 

「よ〜しよしよし。硝子ちゃんは偉いよ、頑張ってるよ〜」

「…………うん」

 

 日常。

 人と必要外に無闇矢鱈と触れ合うものじゃないという意見には、〝僕〟としても賛成だ。しかし同時に、このハグに〝僕〟も癒しを感じているのも事実だった。

 医学的にも、ハグには幸福感を覚える物質がどうたらこうたらと言っている記事をなにかで読んだことがある。今の〝僕〟の心境の通り、どうやらあの記事は正しかったらしい。

 ハグ最高。

 やがて、満足したらしい。〝僕〟から離れる硝子ちゃん。←語呂の良さ異常。

 硝子ちゃんは髪をいじったりそわそわしたりと、なんだか落ち着きの無い様子。今のハグでリラックス効果を得たとはとてもじゃないが思えない。

 

「じゃ、じゃあ私、そそそそそそろそろ行くから」

「もう良いの? いつもならもっと粘るのに」

「殺す気!?」

「なにが?」

「……はぁ、もう良い。用事は伏黒にでも頼むわ」

 

 噛み合っていないような気がする会話。感じた謎の通りに首を(かたむ)ければ、硝子ちゃんはなにやら呆れてしまった様子。この場に溜め息を残して、部屋から出て行ってしまった。

 

「…………まぁ良いか」

 

 喧嘩別れしたわけでもないし、また後で話せば大丈夫だろう。寝起きのどこかふわふわした思考でそう結論付けた〝僕〟は、大きなあくびを一つ。あれだけ楽しい夢を見ても、〝僕〟の身体はまだ睡眠を求めているらしい。

 同じタイミングで、ノック音。

 

『いずる、入っていいか』

 

 ドアの向こうから硝子ちゃんの声がする。忘れ物でもしたのだろうか。

 

「いいよ」

「すまない、朝早くから。起きてたんだな」

「なんで他人事?」

「……あれ」

「ん?」

 

 ドアを開けて入ってくる硝子ちゃん。今日もその長い髪が動きに合わせてサラサラと流れ、光を反射するキューティクルが眩いばかりのレーザー光線を〝僕〟の瞳に撃ち込んでくる。

 なんてくだらないことを考えていると、硝子ちゃんの声が低くなる。声が低くなるということは、いつもと違うことが起きているということ。何かあったかと硝子ちゃんの顔をしっかり見てみれば、自分の恐ろし過ぎる失態に気付いてしまう。氷水をぶっかけられたみたいに頭が冷え切り、あんなにも重たかった瞼に今や重量は感じない。

 やってしまった。

 本当にやってしまった。

 諦念、それから無抵抗の意。ダブルどころかトリプル、クアドラプルの意味を込めて両手を上げる。それから、アホな自分を恨みながら天を仰いだ。

 

 

 

 

 

 

「…………なんでいずるから他の女の臭いがするんだ」

 

 

 

 

 

 

 

()(())





浮舟出(高専時代):任務で酒飲みまくって暴れまくって、ヘトヘトの状態で帰宅。あの後雪合戦を楽しんだらしい。お酒を飲んで身体がポカポカしているので、同期達の雪で冷えた手で首元を触られまくっている。




五条悟(高専時代):雪積もってるなら雪合戦やるしかないだろのマインド。一定量雪玉を当てると解いていた無下限が発動するので、同期達からはブーイングの嵐らしい。




夏油傑(高専時代):寝坊してるかもしれない浮舟の身を案じ、それはそれとして合法的に浮舟の寝顔を拝もうとした男。呪霊達に雪玉を作らせ、己の腕力でひたすら雪玉を投げまくる無限砲台スタイルを得意とする。




家入硝子(高専時代):持っていた五条のプリンは、浮舟の朝ご飯代わりとして渡すつもりだった。雪合戦は得意ではない為、浮舟のサポートに回って時折イチャついている。冷たいのは嫌なので浮舟を盾にし、浮舟に付着した雪を手で払って「全くもう」と満更でもなさげに世話を焼く好プレー。




七海建人&灰原雄(高専時代):なんであの人達授業中に雪合戦やってるんだ……。




浮舟出:良い夢を見たものの、寝起きが悪く大失態を犯す。どう謝ろうか必死に頭を捻ってあるらしい。




家入硝子:浮舟から他の女の臭いがするので、とことん問い詰める為一旦自宅まで連れ帰ったらしい。




浮舟が家入硝子だと勘違いしていた女性:その日一日顔が赤かった。指摘してきた同期をその都度ぶん殴ったらしい。








キリが良いので番外編です!時系列とか考え出したらキリ無いので、そういう日常なんだなと思っていただければ幸いです!!
以前みたいに番外編をあと数話書いて、また新しい章に入ろうと考えています!よろしくお願いします!

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