アル中とさしす組   作:大塚ガキ男

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こんばんは!こんばんは!こんばんは!
短いです!






アル中と同志。

 

 

 

 

「え? ……は?」

 

 なんで。

 なんで。

 なんで分かった(バレた)

 青髪女子の言葉に思わず、〝僕〟の身体が固まった。

 強張(こわば)り、硬直してしまった。

 例え青髪女子の言葉が、彼女の中で未だ答えが出ていない取り敢えずの()()を掛けた程度のソレだったとしても、今の〝僕〟のリアクションで正しい結論に辿り着いてしまうだろう。

 

「な、なんでッ……」

 

 頭の中で渦巻いていた一言が、ようやく口から溢れる。驚愕に目を見開いて青髪女子を見詰めるが、彼女は(むし)ろ〝僕〟の言葉に「なんで?」とでも言いたげな様子。

 

「一目で分かりましたよ」

「…………ッ」

 

 油断していた。

 浮舟出は10年も前に死んでいる。

 しかもその死には上層部が絡んでいて、加えて〝僕〟は上層部からクソほど嫌われているときたもんだ。

 だから、油断していた。

 そんな〝僕〟の死なんざどこの記録にも残らず、誰も語りはしないだろうと──高を括っていた。

()()()()()()という例外こそあるものの、それだって東京校に身を置く五条が東京校の生徒に向けてしかやっていない、極一部の身内に向けての話。そもそも東京校を拠点にしている術師の半分くらいがやんわりと〝僕〟の味方で、〝僕〟の生存が外部に漏れないよう頑張ってくれている状況だ。

 青髪女子は京都校の生徒。

 東京校との接点は無い。

 だからそもそも浮舟出の名前すら、存在すら知らないはず。

 今の〝僕〟を見て浮舟出と紐付けることなんて出来ないはず。

 なのに。

 だと言うのに。

 

「──貴方、浮舟出……ですよね。ソレ」

 

 ダメ押しの再確認。

 逃げ場はない。

 いや。

 逃げても意味は無い、と言った方が正しいのだろう。

 ここは大人しく全てを認め、青髪女子にどこから情報を得たのかを聞き出し──

 

「……………………ちょっと待って」

「はい」

 

 違和感。

 しかし感じてすぐにはその正体には気付けず、間を得る為に慌てて言葉を放り出す。

 青髪女子が〝僕〟の発言に対して律儀に返事をしてくれたのを好ましく思ってから、脳みそをフル回転。

 結果、違和感の正体に気づくことが出来たのだった。

 

「……()()?」

「はい」

「ソレって、なに?」

 

 青髪女子の語尾に付け足された二文字についての疑問。

 青髪女子も疑問の意味をすぐに理解したのか「ですから」と〝僕〟の察しの悪さを訝しみながらも先程よりもゆっくりと明確に発言してくれた。

 〝僕〟が理解しやすいようにと。

 次こそ言葉が伝わるようにと。

 

「貴方のソレ、浮舟出──のコスプレですよね?」

「は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ∪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーっと、つまり君は〝僕〟の格好を見てすぐに浮舟出の()()()()だと気付き、両校の顔合わせが終わるや否やウキウキで話しかけにきた──ってこと?」

「はい! まさかこんなところに同志がいるだなんてっ!」

「同志」

「ご、ごめんなさい。熱くなり過ぎました」

「いや別に良いんだけどさ」

「京都校には、浮舟出のファンっていないんですよ」

 

 だから、嬉しかったんです。

 青髪女子が楽しそうに喋りかけてくる。

 そっか、京都校には〝僕〟のファンっていないんだ。嬉しいような悲しいような。

 …………。

 いや、悲しいわけないか。

 そもそも普通に生きていたらファンなんていなくて当たり前のものなんだし、東京校に二人ファンがいるだけで(棘ピーと乙骨君)御の字というか──

 

「…………」

「……どうしたんですか?」

「……い、いや。そういえば同期に二人ほど行く先々で人気を集めまくるタイプのイケメンがいたなと思って」

 

 五条と夏油(アイツ等)一般校だったら絶対にファンクラブ出来てる(たぐい)の人間だよなとか思い出して凹む。いや、モテたいとかそういうわけじゃないんだ。〝僕〟のファン(棘ピーと乙骨君)の内片方がほぼほぼストーカーみてぇな激ヤバ厄介ファンだから、普通にワーキャー言われるのを羨ましいと思っただけで。

 

「……大丈夫ですか?」

「……うん、大丈夫」

「話戻しても良いですか?」

「……うん」

 

 話を戻すのに許可を求める辺り、この子真面目な良い子なんだろうなと察する。いらっしゃい青髪女子。浮舟出は、君をファンとして快く迎え入れよう。

 

「貴方も浮舟出のファンなんですよね? そんなにクオリティの高いコスプレをしているんですし」

「…………」

「もしもし?」

「…………そ、そうだよ」

「やっぱり!」

 

 肝が冷えたり落ち込んだりとしていてすっかり忘れていたが、一応〝僕〟正体がバレかけていたのだった。

 しかし青髪女子の勘の悪さを観るに、この場は逃げきれそう──混乱しながらもそう予想した〝僕〟の頭は、ロクすっぽ考えずに取り敢えずの肯定を会話の隙間に挟み込むのだった。

 

「いやー、やっぱり東京(本場)は凄いですね! オープンと言いますか、自由と言いますか!」

京都(そっち)は違うの?」

「それはもう! そうとも知らずに名前を出してしまった時のあの空気と言ったら……」

「そうなんだ」

「学長は勿論のこと、教師陣もその辺りピリついてるんですよ。頼みの綱である先輩も同期も後輩も、浮舟出のファンどころか存在すら知らなくて」

「そりゃそうか」

 

 成る程。

 だから、()()

 生憎(あいにく)と〝僕〟は浮舟出のことを推してはいないので、同志と言えるほど親身にはなれない。

 けれども、理解することくらいは出来る。話したいことを話せない空気を息苦しく感じてしまうのも、なんとなく理解が出来るのだ。

 

「歌姫先ぱ──歌姫先生って、そこのところどうなの?」

「どうって──浮舟出に関してですか?」

「うん」

 

 ふと、歌姫先輩も京都校(向こう)()()()()()()とかしてんのかなという疑問。

 問うた心境としては「してたら嬉しいな」と「してたらそれはそれで恥ずくて嫌だな」の丁度半々だ。

 衝動のままに問えば、青髪女子は顎に手を当てながら首を傾げた。言葉も纏まっていないままに、考えている途中のまま口を開き始めた。

 

「あー、……そういえば歌姫先生に浮舟出関連で怒られたことってないかも?」

「ホッ」

「なんで貴方がホッとしてるんですか?」

「い、いや別に」

 

 青髪女子からの指摘に、ボロが出てしまわないように(正確には既に出まくっているがあちら側にバレていないだけ)目を逸らす。青髪女子は特になんとも思っていないのか問いを返してきた。

 

「東京校だと浮舟出の認知度ってどのくらいなんですか?」

「え? うーん……」

 

 思考(2秒間)

 

「学生は皆知ってるかも。上層部に漏れたらまずいから大っぴらには話さないけど」

「羨ましいっ!」

「声デカ」

「あっ……、すみません」

「いや良いんだけどさ」

 

 デカい声を出した直後に自省して両手で口を押さえた青髪女子。笑って許せば、青髪女子は懐から()()()()()を取り出した。

 その表紙を見て、〝僕〟は思わず半歩退(しりぞ)いてしまった。

 

「うわっ」

「はい! そうです一年生編です!」

 

 手のひらサイズの本片手に、弾けるような笑顔を見せる青髪女子。もう〝僕〟のことを完全に同志と認識したからか、その本のタイトルすら(はぶ)き気味で喋っている。

 

「……あれ、その本なんか小さくない?」

 

 手のひらサイズの本。

 以前に冥冥さんから戴いた見本は、確かハードカバーだったような気がする。戴いた見本は数ページ読んでみたら恥ずかしさのあまり顔から火が出そうだったので慌てて閉じ──その恥ずかしさから本棚の漫画本と同じ場所に並べるわけにもいかず──今は自室のベッドの下、段ボール箱の中に仕舞われている状態。

 さておき。

 青髪女子が手にしている本は表紙に書いてあるタイトルの文字こそ同じだが、本の大きさが一回り二回りと小さくなっているように感じた。

 

「お気付きですか! 遂に出たんですよ、文庫版が!」

「つ、遂に出たんだ……文庫版……」

 

 遂にってなんだよ。

 青髪女子から発せられる謎の熱量と、脳裏で高笑いしている冥冥さん。

 置いていかれっぱなしの現実に肩を落としていると、青髪女子は嬉しそうに文庫本の最後のページに挟んでいた代物を眼前に見せ付けてきた。

 気圧されつつも視界のピントを合わせる。

 目を剥いた。

 

「……〝僕〟の写真だ」

「おっ、成り切ってますね。そうです、浮舟出の生写真です!」

 

 視界いっぱいに広がる一枚の写真。

 そこには森の中、カメラに向かって義手を伸ばし──まるで()()()の頭を撫でているような──制服姿で片腕の〝僕〟が写っていた。

 

「本を購入すると特典としてランダムで一枚封入される浮舟出の写真! しかもこれ、その中でも超低確率で封入されているという、幻の生写真なんです! 凄くないですか!?」

「ラッキーなんだ」

 

 曲がりなりにも自分の身に関することなのに、なんかもう完全に他人事になってしまった〝僕〟。そんなわけで返しも適当になってしまっているのだが、青髪女子(当の本人)は気付いていない様子。

 

「ラッキーなんですよ! 情報漏洩の観点から()()()()()()()()が禁じられているので、お金の力で全種類揃えるのが不可能なんですから! しかもこれはその中でも超低確率で封入されているという幻の()()()っ!」

 

 まずい、会話がループし始めた。

 

「三輪、そろそろ移動ダ」

「メカ丸!? ──ご、ごめん! もう少しで終わるから!」

 

 まずい、こっちを優先し始めた。

 京都校のメンバーであるロボ──メカ丸が青髪女子越しに無機質な瞳で睨み始めたので、興奮を諌めるように進言。

 

「行きなよ、青髪ちゃん。楽厳寺学長って怒ると怖そうだし。……というか怒ってなくても怖そうだし」

「で、でも! 折角同志に出会えたのに!」

「…………」

「青髪ちゃん! メカ丸が君の背後から滅茶苦茶睨んできてるから! 話はまた今度にしよう!」

「今度!?」

「おう!」

「約束ですよ! 破ったら……えぇっと……怖いですからね!」

 

 破った際の脅し文句が何一つ浮かばなかったのか、曖昧に釘を刺した青髪女子。その後ろで釘どころかナイフの類いで刺してきそうな視線を飛ばしてくるメカ丸。

 二人の関係性になんとなくの察しがついたところで、〝僕〟と青髪女子の妙な遣り取りは締めくくりを迎えたのだった。

 

 

 

 





働きに働いていたので更新遅れました!ごめんなさい!
あと今回キリ良いところがここだったので普段の半分くらい短いです!ごめんなさい!

↓の渋谷事変のエンディングアンケート、そろそろ締め切ってしまうかもなのでまだ選んでないニキネキ達は回答お願いしまっす!
いつも応援ありがとうございます!なるべく時間取れるように頑張ります!

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