〈Infinite Dendrogram〉管理者の思惑を越えて 作:星色 空
□
俺がこのゲーム、〈Infinite Dendrogram〉を始めるきっかけとなったのはメーカーからのこの発表。
「昨日は主要素の説明で終わってしまいましたので、本日はゲームシステムを説明させていただきます」
「既にプレイを始められた方はお気づきと思われますが、<Infinite Dendrogram>にはある特徴があります」
「それは真の意味で無限の可能性とオンリーワンを提供するというものです」
「数千を超えるジョブの組み合わせ、スキル構成、そしてそれらよりもなお明確なオンリーワン」
「<Infinite Dendrogram>では、プレイヤーの皆様それぞれに<エンブリオ>がプレゼントされます」
「<エンブリオ>は皆様の行動パターンや得られた経験値、バイオリズム、人格に応じ、無限のパターンに進化いたします」
「色違いでもパーツ違いでもなく、固有スキルも含めて真の意味で無限のパターンに」
「それこそが――<Infinite Dendrogram>です」
「そう、<Infinite Dendrogram>は新世界とあなただけの
この発表を聞いて、このゲームこそが俺の求めていたゲームなんだ、と思いすぐにハードが売られている店頭に走り買うことに成功した。
ちなみに、俺が買った5分後にはとんでもない量の客が押し寄せ、すぐに完売したらしい。急いで買いに行った甲斐があった。
そして、今から初ログインだ。一体どんな凄いゲームなんだろうか。まだ開いてすらないけど楽しみで仕方ない。
どうしたらこんなゲームが作れるのだろう。今の技術水準よりかなりレベルが高いと思う。
ヘルメットを頭に装着し、ベッドの上で仰向けに寝転がる。
そして俺はゲームのスイッチを入れた。
瞬間、視界が暗転する。
□
気が付くと、自室ではない場所に俺はいた。
「ん?まさか……まあいい」
何やらモンスターのような見た目をした男が何か話しているが、よく聞こえなかった。
「えーっと、ここでキャラメイクをするのか?」
ずいぶんと殺風景な空間だ。別に良いか。
「ああ、そうだな。私は管理AI4号、ジャバウォック。君を<Infinite Dendrogram>の世界に導く、いわば案内人と言ったところだ」
ふーん、管理AIね。
「そして、君に設定してほしいのは六つだ」
「一つ、描画選択。現実に近いものから選べる、これからサンプルを――」
「現実と同じでお願いします」
最初からそう決めていたので、その時間は無駄だから遮らせてもらった。時間がかかりすぎるのは嫌いだ。
「そうか。判断が早くて助かる。二つ目はプレイヤーネームだ。決まっているか?」
どうやら遮ったことに関して思うことはなかったらしい。とりあえず一安心だな。
さて、プレイたーネームもあらかじめ決めてきた。
「ラインハルト」
歴史マニアにとっては有名人物。俺もあの辺りの歴史は好きなので使わせてもらった。
「では次、三つ目はアバターのデザインだ。色々設定はできるがどうするかね?」
「リアル基準に変えることはできます?」
「もちろんだ」
すると、目の前に自分そのままのアバターが現れる。
そうだな……髪の色を少し変えるくらいで良いだろう。余計に変えすぎる必要もない。
「終わったかね?」
「ええ、次は何です?」
「次はアイテムの配布だ」
上から何か降ってきた。それは、カバンのようなものだった。
「それはアイテムボックス。1tまでなら自由に出し入れが可能なものだ。他者のアイテムを入れることはできず、入れられるのは君のものだけとなる」
ふむ、なかなか便利そうなものだ。
「ちなみにこれ、盗まれたりは?」
「する。アイテムボックスそのものを盗まれることはないが、ランダムドロップで中のアイテムを紛失したり、盗賊系統のジョブに盗まれたりな。また、耐久値が全損した際は中身が解放されるため、そうなった場合は買い換えると良いだろう」
ふむ、まあ今は気を付けてもどうしようもないことか。
「次に初心者装備だが……」
「スタンダードなもので」
「そういうと思っていた。であればこれだな。次に初期武器だがどうする?」
「とりあえず杖で」
「承知した」
武器に関しては、また選べば良いだろう。今はスピードだ。
「そして、これが初期資金となる」
また、上から降ってきた。今度は袋か。
「この世界では金銭はリルと呼ばれている。この中には5000リルが入っている。レートは1リル=10円と考えてくれれば良い」
なるほど、これが尽きる前にどうにかして金を稼げというわけか。
「最後に〈エンブリオ〉を移植する」
いつの間にか、俺の左手の甲には宝石のようなものが埋め込まれていた。
「おお、これがエンブリオか」
「これが最後だ。所属する国家を選んでくれ」
地図には7ヶ所の国が表示されている。ここから選べということか。
よし、決めた。
「アルター王国で」
「さて、これで君の設定は全て完了した。これは軽いアンケートのようなものだが、なぜアルター王国を選んだのかね?」
「一番はここで面白いことが起きるという直感ですが、まああえて言うなら歴史で好きなのが中世だからですかね」
「ふむ。なるほどな」
結局このアンケートの意図はよく分からないけど。
「この世界では、誰もが自由だ。何にも、誰にも縛られる必要などない。そのエンブリオと同じく、君にも無限の可能性があるのだ。君のような……は特にな」
最後の言葉は上手く聞き取れなかったが、これが俺が心惹かれた、求めていたものだ。
「<Infinite Dendrogram>へようこそ。“我ら”は君の来訪を歓迎する」
そう言われ、次の瞬間俺は大空に放り出されていた。
「え、待て。はあぁぁぁぁ!!?」
俺のデンドロは、パラシュートなしのスカイダイビングから始まるのだった。
□王都アルテア
「はぁ、どんな思考に至ったらこんなことしようってなるんだよ」
着地できるようになってたから良いものの、あれは心臓に悪い。誰だよ、あんなの考えたやつ。
「……ここが王都アルテアか。」
周りを見渡してみると、巨大な門があり、先ほどから馬車や人の行き来が盛んに行われている。
「とりあえず、中に入ってみるか」
そういえば、俺はまだ職業に就いてないな。どこで就けるんだろうか。
「ここか」
まあ最初は無難に【剣士】あたりだろう?まあ、初期武器とは全く噛み合っていないような気もするが、別に良いだろう。
そうして、俺は【剣士】の職業に就いた。
それにしても、このゲームはあまりにもリアル過ぎる。いかにもゲームだというシステムさえなければ、異世界だと言われても……異世界、か。
さて、武器も買ったし早速モンスター狩りにでも行きますか。
「あ」
そういえば、エンブリオのことを完全に忘れていた。
「なんだこれ?」
エンブリオの画面を見てみると、
【◼️◼️◼️◼️ ◼️◼️◼️◼️◼️◼️】
TYPE:???
ステータス補正
HP補正:?
MP補正:?
SP補正:?
STR補正:?
END補正:?
DEX補正:?
AGI補正:?
LUC補正:?
『保有スキル』
《???》
え、バグってんの?何これ、意味分からん。
□
「やはりか、これも
管理AI4号ジャバウォックは、自らがチュートリアルを担当し、今現在異常──ジャバウォックにとっては想像通り──なエンブリオを発現した彼について興味を抱いていた。
「ふむ、これが"期待する"ということか」
ジャバウォックにとっては初めての、自らを目にかける対象を得るのだった。
実は中身は何も考えてなかったりします。考えながら書き進めて行きます。
ちなみにこのエンブリオは"まだ"ジャバウォックの想定内ですね。
何も関係ないですが私が一番好きな歴史は20世紀です。それも相まって名前はこうなりました。