鉄血のクドリャフカ~100日後に死ぬ衛兵~   作:河灯 泉

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僕ぁアッシュアームズコラボでマルフーシャの声を聴くのが楽しみなんだ。


4話――1日目

 食事を終えるとドクターはデータ解析に勤しんでいる白衣組と話をしてくると告げて去っていった。用が済んだらこちらから呼び出すからそれまで好きにしていていいとも言っていた。

 初日から実戦に出るのかと思っていたがゲームじゃあるまいしそんなことはなかった。いや元から軍属でそれなりの階級だったから今更なだけで他の徴兵された人たちはハンドガンだけ渡されて門の外に放り出されているのかもしれないが。

 

 ドクターについていったところで専門的な話に興味も理解もないし、兵器として運用する為の会話を聞いて気分が良くなるとは到底思えない。

 手持ち無沙汰になってしまった。端的に言って暇だ。

 記憶喪失に知り合いなんていないし、依然親しかったであろう誰かに話しかけられても正直困る。ありのままを話すしかないんだけどそれで泣かれたら心が痛む程度の常識と良識を持っているので。いつまでも関わらずにってわけにはいかないだろうけどね。

 

 とりあえず食堂からは出ることにした。あのドクターと一緒にいたやつってことで変な視線向けられてたし。見た目が不審者じみてるだけじゃないだろあの雰囲気。なにやらかしたんだあの人。

 

 スチームパンク……とはちょっと違うが、異国の異文化観光としてはそう悪い眺めでもないので歩き回ってみる。電熱線という部分を除いても元一般人の感覚では珍しいものばかりだからね。あと数ヶ月で全部なくなるであろうことを考えればなおのこと今のうちに見ておくべきだろう。ファッキン機械兵ファッキン連合国。

 流石は首都の軍事施設というだけあってちょっと歩いたくらいじゃ敷地の一区画を横断することもできない。疲労感はないが満足感も特にないのは感性が死んでいるせいか碌でもない国と知っているせいか。

 義体に組み込まれた機械的な機能のひとつなのか、視線と意識を向ければ遠目からでもそれがなんの施設でどこの部署の管轄なのかがAR(拡張現実)のように表示される。常にパイロットヘルメットでも被っているかのようで、これが意外と便利かつノンストレスに働いてくれる。ソフトウェア担当の白衣組に相談すればもっと使いやすくなるかも。後で相談してみようかしら。

 

 気の向くままに歩いていると『臨時宿舎』とだけ表示された簡素なプレハブ小屋が団地のように連なり積み重なっている場所へ着いた。徴兵のペースに対して予定されていた宿舎の建築ペースが遅れているのだろう。工業力自体はあるのでガワはできているのだろうが造りが甘いし地震でも起きたら全部倒壊しそうな不安定さを感じ取れる。……あ、地震がほとんどない地域の可能性もあるか。機械兵がここまで攻めてくる想定は……するだけ無駄だろうし。

 

 どうでもいいことをつらつらと思い浮かべつつ、歩みは止めず。

 宿舎裏のゴミ捨て場を通りすがる。

 お昼時はみんな防衛のお仕事に出ているのか閑散としていて人っ子一人いない……

 

 ――生体反応。

 

「誰ですか?」

「ひぇっ!?」

 

 便利ではあるけどこれ対人殲滅用の機能なんだろうなぁ、とげんなりしながら声をかけたこっちが驚くほどの悲鳴が聞こえてきた。

 センサーが反応を示し、声が聞こえてきたゴミ箱(箱と言ってもコンテナサイズ)を眺めていると宿舎と箱の隙間から人の手が出てきた。それはホラーな感じではなくて、薄汚れてボロボロではあるが普通の人の――ただの少女の手に見えた。

 

「………………」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいこんなところにいてごめんなさい!」

「誰がどこにいようと自由だと思いますよ」

 

 軍規や法律に違反しなければ、だけど。

 今回の場合は迷惑というほどでは……いやゴミ処理業者とごみを捨てる人からしてみればびっくりするから迷惑かも。まだ近付いてすらいないのに若干ゴミ臭いし。後で嗅覚を任意調整できるように頼もうかな。

 

「私はクドリャフカです。貴女は?」

「わたしはビオンと申します! お先に名乗らせてしまってすみません!」

「別にどうでもいいです」

 

 内心飛び上がりそうなほど動揺しているが、義体は待てと言われたら何日だって不動でいられる機械の身体。表面上は一切の変化を悟らせない。

 初めての原作キャラだ! やったねマルフーシャちゃん仲間が増えるよ!!

 

 見ての通り聞いての通り、自尊心ゼロで卑屈さでは誰よりも優れているビオンという少女は『溶鉄のマルフーシャ』に登場する仲間キャラの一人だ。監査官から直々に能力が低いと言われるが、ゲームにおいては極端に弱いってこともない。そもそもぼっち(仲間無し)でもクリアできるから仲間の性能とか別にね。チャレンジモードではまぁうん……強キャラ強武器以外を選ぶと死ぬので。仕方ないね!

 好きな動物こと元となったモデルは猿。

 得意な武器はアサルトライフル。

 

「ビオンさんはどうしてこんなところにいたんですか」

「それはえっと……何日か一緒に戦っていた人から『お前はもういらない』って言われちゃいまして。元のお部屋は新しい人が来たのでもう使えないし、門の防衛で空いてる部署か誰かからバディを組んでもらわないとどこにも行けないので……ここが一番お邪魔にならないかと思って……」

 

 なるほど現実となったことでそういう展開もあるのか。納得すると同時にゲームではすぐ上級兵にチェンジしていた罪悪感がほんの少しだけ刺激される。

 これだけ宿舎の数があれば空き部屋なんていくらでもありそうなものだが、人権保障の底辺である9等級国民の彼女の申請がどれほど軽い扱いを受けているかを想像してやめた。ここはそういう国だ。つべこべ言わず有給申請受理しろやクソ上層部!

 

「それは大変でしたね。でもここにずっといるのは悪臭が染みつくからやめた方がいいですよ」

「すみませんすみません臭い女ですみませんもう臭いとか全然わからなくてどのくらい臭いのかさっぱりなんですすみません!」

「……ひとまず、その悪臭をどうにかしましょうか。そろそろ辛くなってきました」

「すみませんすみません!」

 

 ぺこぺこと頭を下げられるたびに流れてくる……何日も洗っていない雑巾に鉄や油なども染み込ませて発酵させたような、なんと言えばいいかわからないくらいにはきついっていうかゴミ箱の臭いを過剰に知覚してるせいもあるんじゃないか? 調整班! 義体調整班はよ修正して!!

 一刻も早くここを離れる必要が出てきた。

 と言ってもそもそも自分の宿舎すら覚えていないのでまずはドクターに電報を打つ。……なんでこんな超技術大国なのにところどころ20世紀並なのだ。義体に通信機能があるのはすごいのだが電話じゃないのがなんとも。

 

『ワレ ヘヤ ドコ』

 

 と簡潔に送信すればものの数秒で地区番号が返ってきた。忙しいはずなのに瞬時に最適なレスポンス出せるのすごいなあのドクター。実験体のプロフィール全部頭に入ってるのかな。

 

 ビオンを連れて歩いていると周囲からの視線が痛い。その原因はビオン自身に問題があるんじゃな……単純に臭いからですねそうですねそりゃあそうなるよね。悪気はないんや許したってくれや。

 

「あの、わたしはどこへ連れていかれるんでしょうか? お掃除でもご奉仕でも盾でもなんでもするので更生施設だけはっ!」

 

 ん? いまなんでもするって――

 

「お風呂って言いましたよね?」

「聞いてなくてすみません!」

 

 いやそもそも言ってなかったわ。ごめんね。

 

「ここが私の部屋です。遠慮をするよりも全力で綺麗になってきてください」

「わ、わかりました!」

 

 初めて訪れる自室とかいう矛盾。

 ノックもせずにドアを開けてからそういえば宿舎って2人用が基本だから同室の誰かがいるんじゃないかと思い至ったところで何かが視界一杯に広がり目の前が真っ暗になった。

 

「姉さん!!!」

 

 やっぱりそうなりますよねぇ!?

 




各キャラの主な設定やセリフは把握している……つもりですが二次ゆえ手前勝手に盛っていくのでご容赦を。

そろそろ作中1日目を終わらせないとね。
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