side こころ
最近のオレはかなり充実している。水族館や動物園に行ったり、美味しいスイーツを食べたり、ヒロピンを楽しんだり。今でこそこんな生活を送れているが、最初の頃は酷かった。特に、魔法少女に成り立ての頃は。
今でも魔法少女に初めてなった時の事を思い出す。
あの日はリズと、オレ自身の運命に出会った日だった。
「やぁ!僕の名前はリズ。君、魔法少女にならないか?」
「オ…オレが⁉︎マジで?なる!なるよ‼︎」
信じられない。まさかオレがなれるだなんて。昔から、それこそ前世から好きだった魔法少女に。この世界での魔法少女は昔見たアニメとは違っていて、契約だの仕事だのというような危険はない。こうして街中で声をかけられた前例も多く。そこからみてもこいつの、リズの言う事は本当だろう。
「オッケー!ただその前に君の名前を聞いておこうか!」
「オレはこころ!桃井こころ!よろしくな!」
「よろしく、こころ。」
これも大丈夫そうな証だ。えぐい系にありがちな、魔法少女を道具として見ているタイプでも無さそうだ。実は…とか、騙して悪いが…みたいな事は無いようで、あくまでも世間のイメージ通りだったのはかなり安心だ。
「さてこころ、すぐに君の力を開花させる…といきたいけれど、僕は人目につくところでやるのは好きじゃなくてね。だって嫌だろう?ここで初めて変身して何か失敗でもしたら、一生ものの恥になるかもしれないよ?」
おや…?なんか怪しくなったぞ?まぁ言ってることも分かるから正直納得ではあるけど…怖い。明らかに何か裏がある。
「…めちゃくちゃ怪しんでるねぇ…?
確かに僕の言い分だけ聞いてると怪しいかもしれない。
けれど理解してほしい。これはどうしても必要な事なんだ。それにそこまで怪しい話じゃ無いだろう?
『魔法少女にしてやるから人目のつかないところに一緒にきてもらうよ』だよ?
…いやすごく怪しいなこれ⁉︎
ごめんごめん!全然そういうこと考えてなかった!
じゃあもう君の家で良いから!ね?それなら良いだろう?じゃあ行くよ!案内してもらえると助かるよ!」
前言撤回。多分こいつは安全だ。オレがチョロいわけじゃない。こいつは本気でそう思っている。本気で誘ってきて、本気でやらかしているのだ。なら大丈夫だろう。
「全く…すごい怪しいけど、分かったよ。じゃあ付いてきてくれ。」
「よろしく!」
家に帰る途中、リズと雑談をした。他愛のない話だったが、思っていた以上にこいつとは気が合いそうだ。
「さてこころ、君の力を開花させる…前に二つ。まず一つ目、この家には君一人かい?」
「両親が海外に出張に行ってるからな!オレ一人だ。」
「なるほど…孤児じゃなくて良かったよ。じゃあ二つ目。君は…チョロいだろう?」
「なんだと⁉︎」
チョロいわけ無いだろう。家にあげたのも、こいつを信用できると踏んだだけだし。
「いやチョロいよ。ちょっと失敗しただけでこんな簡単に気を許すなんて。チョロすぎるくらいだ。」
「失敗した事は認めるんだな?」
「…………とにかくだ。君はチョロい。だからこそ僕のような存在に狙われるのだから。君は…『転生者』だろう?」
「なっ…⁉︎」
なんだこいつは。もしかしたらめちゃくちゃ危険なやつかもしれない。今になって後悔した。背中を冷や汗がたらりと流れる。どうやってバレたのか。
「なんで…それを…‼︎」
「なぜかって?そりゃあ簡単さ。君との雑談。あれがただの雑談だったと思うのかい?あれには色々と仕掛けてあってね。転生者だからこそ分かる事が含まれていたのさ。君はチョロくないと言っていたが…本当にそうかな?」
やばい。こいつに弱みを握られるとは。今まで生きてきて誰にもバレたことのない、転生者である事。それを盾にされてしまえば…オレはいう事を聞かざるを得なくなる。どうしたらいい?考えれば考えるほどに焦っていって…ふと、違和感に気づく。
「さぁこころ!バラされたくなかったら大人しく僕のいう事を…‼︎」
「なぁリズ、お前…」
「なんだいこころ?僕に何を言っても無駄だよ?バラされたくなかったら…」
「お前もさ、転生者だろ?」
「はぁ⁉︎なんでそれを…じゃなくて!どこにそんな根拠があるんだい?僕が転生者だって根拠がさ!」
やっぱりこいつは抜けているようだ。何が『転生者だから分かる雑談』だ。それじゃあお前も転生者だって言っているようなもんじゃないか。そう言ってやれば、こいつは目を丸くしたのちに地面に手を付いて嘆き始めた。
「そんなバカな…僕の完璧な計画が…‼︎
めちゃくちゃ怪しそうなポジションで出てきたけど有能でしっかりしている妖精として魔法少女を支える僕の夢が…‼︎」
「確かに怪しかったけど全然しっかりしてないからどっちにせよオレ以外でもいつかバレてたぞ…?」
「そんなぁ…!夢だったのに…!
転生したと思ったら謎生物として生まれて、魔法少女に関われると知ってからはひたすら努力し続けてきたのに!こんなに呆気なく…‼︎」
なんか可哀想だな。大粒の涙を流してうずくまるこいつはどうも憎めない。なら…
「なぁリズ、もし良ければなんだが…」
「なんだい?バカやって夢が潰えた僕に何か?」
「オレと手を組まないか?」
「は?」
せっかく転生者同士なんだ。こいつは元々オレを半分騙すようなつもりでいたが、それでも根は真面目そうで気が合う。何より、こいつとでしかオレは魔法少女になれない気がする。
「悪い話じゃ無いだろ?お前は失態を隠して理想のムーブが出来る。オレは転生者だと周りにバラされずに魔法少女になれる。」
「良いのかい?僕は君を騙そうと…」
「じゃあオレからも一つ。オレは前世でも今世でも魔法少女が好きだ!前世では特に、ヒロインピンチが大好きだった!」
「…?一体なんの話だい?」
「けど、魔法少女が現実になって、認識が変わった。彼女達が傷つくのをみても、ちっとも楽しく無い。ただ苦しんでいる姿を見るのは、辛い。」
「それは…」
「リズだってそうだろ?さっきの雑談で分かったよ。最初はサポートしながらピンチでも眺めるつもりだった。けど、現実を知ってしまった。痛みに苦しむ彼女達をみても嫌になるだけだ。だから騙しきるんじゃなく怪しいムーブをするだけに留めて、しっかりサポートして支えるつもりだった。」
「………」
「オレはヒロインピンチを見たいけど、他の魔法少女が傷つくのを見たくない。だから…
『オレがヒロインピンチを受ける魔法少女になる。』
後で動画でも写真でも見返せばいいからな。オレの欲望のために傷つくのは、オレだけで十分だ。
それに、最近危険な怪人が増えてきているだろ?このままじゃそう遠くない未来、他の魔法少女達が傷つく事が増えるはずだ。そんな事はさせない!彼女達の代わりにオレが傷付けばいい。ちょうど目的はヒロインピンチなんだからな。」
「こころ…君は…」
「さぁどうする?リズ!オレと手を組むか!組まないか‼︎」
リズが返事をする前に、家の外で大きな音がした。何かが砕ける音。そちらを見れば、向こう側の塀が崩れている。そこには頭から血を流して倒れている魔法少女と、下手人である怪人が居た。オレは居ても立っても居られなくなって、無我夢中で駆け出した。
「うおおおおお!!!!!」
魔法少女にとどめを刺そうとする怪人に向けて、崩れた塀のかけらを投げつける。カツン、という軽い音がする。頭に当たったのにも関わらず、全く応えた素振りを見せない怪人はゆっくりと振り向くと、こちらをみてニヤリと笑った。
揺れる触覚。キチキチと音を立てる顎。スラリと長い脚は見かけによらず強力そうだ。全身が緑のこいつは、バッタの怪人だろう。
「逃げ…て…!早…く…!」
まだ意識があるのか、オレに向かって手を伸ばす魔法少女。けれどここで逃げたら男が、いや、未来の魔法少女が廃る。逃げるわけにはいかない。怪人の脚が迫る。このままでは直撃コースだろう。だが避けない。かっ飛んできた怪人はオレの首を蹴り飛ばそうとして…
「全くもう!分かったよこころ!君と組もうじゃないか!」
リズに止められる。流石だ。魔法少女をサポートすると言っていただけの事はある。あれだけ猛威を振るった怪人の蹴りは、まるで一時停止でもしたかのようにピタリと止められている。
「本当に信じられないな!力もないのに立ち向かって‼︎僕が来なかったら死んでたぞ⁉︎」
「いーや!リズは絶対来るって信じてたからな!
それに、生身でここまでするんだ。さっき言ってた事が本気だって事も分かってもらえただろ?」
「っ〜〜‼︎この‼︎」
「じゃあ改めて!よろしくな!リズ!」
「はぁ…!じゃあこっちも改めて、よろしく!こころ‼︎」
いよいよだ。オレが魔法少女になる時が来た。バッタの怪人に勝てるかも分からないが、それでも目の前の魔法少女をこれ以上傷つけさせるわけにはいかない!
「じゃあ行くよ!こころ‼︎『
「…っ‼︎うおおおおお⁉︎」
「これは…なるほどね!転生者だとこうなるのか!これじゃあ僕以外は開花出来ないレベルだ!さぁ行くよ‼︎君の新たな名前は…『魔法少女・プリズムハート』‼︎
固有魔法は…『
「今日からオレは…魔法少女・プリズムハートだ‼︎」
声高々に宣言する。新たに手にした力を。オレの新しい名前を。この先起こる悲劇を、ピンチを。オレが全部独り占めしてやる!意気込みは十分。さぁ戦うとするか‼︎
…ところでさ?
「なぁリズ、逆転ってなんだ?」
「なんだろうね?これ。僕も分からないな。」
固有魔法の逆転って…なんなんだ?
一応次回もちょっと続く予定です。
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