side こころ
ここ最近知り合うようになった子が、魔法少女にならないかと勧誘されたらしい。名前は『緑谷 よつは』。いつもオドオドとしていて、引っ込み思案。悲観的に物事を考えてしまって、優柔不断になってしまっているようだ。けれど、ここぞというときの爆発力がもの凄い。この前だってクラス対抗のドッジボールの時に一人だけ残っちゃった時に、皆んなの声援を受けて一人で逆転しきるというとんでもない事をしていたのだ。
最初からそうすれば良いのに…と思うが、本人は「皆んなが楽しんでいるのに迷惑を掛けたくない」とか、「失敗したら皆んなに嫌われちゃうし…」と言って普段は大人しく教室の隅にいる。そこまで怖がらなくたって皆んなは優しいのになぁ…?
とにかく、彼女は勧誘を蹴ろうにも困らせてしまうかもしれないと断りきれず、かといって魔法少女になるのかといえばそちらも他の魔法少女の邪魔になったり、やらかして嫌われたりしちゃうかも…と決めきれずにいるそうだ。
「なぁ、よつは?別に失敗したりしてもそんなに嫌われたりなんてしないぜ?それによつはだったら絶対すごい魔法少女になれるから、そんな風に怖がる事なんて無いぜ?」
「こころが言うなら、そう…かもしれないけど…
もしかしたら迷惑かけちゃかもしれないし…」
さっきからこれだ。ずっと迷惑をかけるかもしれないの一点張り。戦うことへの恐怖が無いとかそういう事ではなく、誰かに迷惑をかける事とそれによって嫌われる事に対してあまりにも怯えているのだ。
「そんなにビビらなくても良いのになぁ…
世の中にはいくらでも負けてる魔法少女だっているしさ?それでも特訓して勝ったり、仲間と協力して戦ってる奴だっているんだぞ?迷惑をかけちゃっても取り返せば良いだろ?」
「でも…その仲間にまで嫌われちゃったら…」
「だーもう!話が進まない!
よつははどうしたいんだ?なりたいのか?なりたくないのか?どっちかに決めないとずっとモヤモヤしたままになっちゃうぞ?なんとなくこっちとかでも良いから決めちゃってもいいんじゃないか?」
「なんとなく…うーん…
こころは…こころはどう思う?わたしになって欲しい?なって欲しくない?」
「まぁオレとしてはなって欲しいけど…最後に決めるのはそっちだからな!あんまりオレの意見に左右されないようにな!」
side よつは
学校も終わり、帰り道。未だにわたしは悩んでいる。確かに自分で決めなきゃいけないのは分かってる。けど、そう簡単に決められないのだ。自分が魔法少女になって戦う事で、誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない。
攻撃を失敗して誰かに当てちゃったり、怪人の攻撃を避けた先に人がいて、その人を傷つけてしまったり。仲間がやられそうになっているのに失敗をして、後で怒られて嫌われちゃったり。それが影響して友達も居なくなっていって、独りぼっちになってしまったり。
かと言って魔法少女になる事を断れば、わたしに声を掛けてくれた妖精の『シイ』さんに迷惑をかけてしまうかもしれない。ここまで待たせておいて、やっぱり結構ですだなんて。そんなひどい事をしてしまうのは嫌だ。
考えれば考えるほど、なんでも悪い方向に考えていってしまう。わたしの悪い癖だ。この癖のせいで、授業の時に言いたいことがあっても馬鹿にされちゃうかもって思ってしまい、言えない。会話に混ざりたくても、もし違う事を話していたらと思ってしまい、混ざれない。そうやっていつも後悔してしまうまでがセットだ。
いつもそうだ。わたしは後一歩のところを踏み出せないでいる。この前のドッジボール大会は運が良かった。わたししか残りが居なくて、やらなかったらどっちにせよ負けていた。ああいう時ならわたしは心置きなく全力を出せるけど、あの時みたいな状況はそうそうあり得ない。
どうしたら良いのだろうか?俯いたまま地面を眺めて歩いていると、少し遠くで声が聞こえる。怪人と戦っている魔法少女がやられているのだろう。だけどこの声には聞き覚えがある。ちょっと前に聞いたような…まさか。この声は…こころ⁉︎
急いで駆け出して行ってみれば。蜘蛛の姿をした怪人と、その糸に絡め取られて動けないでいるこころがいた。こころが拘束されているのは、誰しも見たことのある蜘蛛の巣。どうやら少し戦った後に捕まったらしい。どちらにも傷があり、息も上がっている。
「ぐっ…!こんな…糸程度で…‼︎」
「なかなか危なかったぞ?魔法少女よ!我が蜘蛛の糸は特製のもの!貴様でもそう易々とは切れんぞ!」
「確かにな!でもな!拘束しただけで勝ったつもりになるのは早いんじゃないか?まだオレはピンピンしてるぜ?」
「何を言うか。既に拘束された貴様に出来ることは無い。もはや大人しく喰われるだけの獲物がよくそこまで吠えられるものだな?まさに負け犬の遠吠えと言ったところか!」
「言ってくれるな…!拘束が解けたら覚悟しろよ‼︎」
流石のこころでも、あの頑丈そうな蜘蛛の巣をピッタリとくっつけられていれば動くことも出来ないらしい。このままではやられてしまうかもしれない。けど…今のわたしに出来ることは何もない。魔法少女になったとしても、きっと一緒にやられてしまうだけだろう。もしかしたら、今以上にこころが傷つけられてしまうかもしれない。
けれど動かなければ、後でこころが助かった後に嫌われてしまうかもしれない。一体どうしたら良いだろう?迷っているわたしは、前にこころに言われた事を思い出した。『何かを決める事に迷った時は、嫌な事から逃げる事を理由にしない方が良い』だったか。あの時は別のことで悩んでいたせいで印象に残っていなかったが、今思い返せばとても大切なことだ。
確かに、わたしが物事を決める時はいつもいつも嫌な事から逃げるための選択ばかりしていた。だからこそ、今みたいに考えてしまっている。でも、一度だけ。あのドッジボールの時だけは違った。あのときの事を、本当の理由を思い出した。
別にそこまで期待されていなかったかもしれないし、あの状況ではほとんどの人が勝負を捨てていた。けれど、そんな時でも応援してくれる人達がいた。そんな人達の期待に応えるために、わたしは全力を出せたのだ。
「迷惑をかけないから」では説明は付けられない。迷惑かけないからって、別に頑張る必要も無かったのだから。あの状況で逆点するのは普通は無理だ。だから、あそこで負けたとしても嫌われたりなんてことはなかったはずだ。けれど、わたしは全力を出して戦って、そして勝った。それは紛れもなく、逃げるためにした事ではなかった…‼︎
わたしだって出来る。わたしだってやれる。まだ嫌われるのが怖いから、すぐには変われないかもしれない。けど…‼︎
「わたしはここで!変わろうとしなきゃいけない!
嫌な事から逃げるためじゃなく…わたしは自分がやりたくてやるんだ!その事に…後悔はない‼︎」
「その声…よつはか…?」
「シイさん!決めた!わたしは…魔法少女になる!」
「分かったぞい。お主の望み、しかと聞き届けた。
このワシ、シイがお主の因子を『開花』させる!
これからよろしくのう!よつは!いや…
『爆発の魔法少女・シャイニークローバー』よ‼︎」
「また魔法少女か!我が糸で絡め取ってくれる‼︎
だがその前に…!まずは貴様からだ!プリズムハート‼︎」
「なっ…ぐああああああああ!!!!!」
「効くだろう!これは我が必殺の猛毒‼︎
我を倒さぬ限り消える事のない毒だ‼︎」
蜘蛛の怪人はわたしの方を一瞬向いたのち、こころに対してその太い針を突き刺した。刺されたこころは大きく仰け反り、ギシギシと音を立てて暴れ始める。
どうやら怪人のいう毒というのは本当のようだ。みるみるこころの顔が青ざめていく。じわじわと脂汗が顔に浮かんだ直後、痛みに苦しんで暴れていたはずの身体は次第に大人しくなっていき、力が抜けていって首がこてんと垂れた。
「これで終わりでは無いぞ‼︎この毒は準備段階!貴様が意識を失った後、卵を産み付け苗床とする為のものだ‼︎ここまで来れば終わったも同然…さらばプリズムハートよ‼︎」
「ねぇ…」
「おや?貴様は先ほど魔法少女になったばかりの新参者か!我は今気分が良い。上質の苗床が手に入ったからな…逃げるなら見逃してやろう!」
「よくも…よくもこんな事を‼︎絶対に…絶対に許さない‼︎」
初めての戦いだが、不思議と恐怖はない。あるのは、今にも爆発しそうなこの激情だけだ。わたしの友達をこんな目に遭わせたのだ。爆死する覚悟は出来ているのだろう。
力の使い方はなんとなく。イメージは葉っぱ。ハートマークにも見えるそれは、四葉のひとひら。ポフンと音を立てて出現したそれは、ふわふわと漂っている。
「なんだそれは?笑わせるな!そんなものでこの我をどうにか出来るとでも⁉︎」
「出来る!これでも…くらえ‼︎」
ふよふよと漂っていた葉は、わたしがイメージすると一瞬で加速し…怪人の顔にぴたりとくっつく。
「これがなんだというのだ?ん?」
「それは…爆弾‼︎」
「な…⁉︎」
瞬間。こいつの顔を包み込むほどの爆発が起こる。わたしはシャイニークローバー。固有魔法は『
「ごわぁ‼︎き…貴様‼︎」
「わたしの本気はこんなもんじゃない!
こころを傷つけた分…数倍にして返してやる‼︎」
さっきは一つであれだった。なら、数枚、数十枚と当てれば?もしかしたら魔力が足りないかもしれない。制御が上手くいかないかもしれない。けど、そんな事はもう良い。まずはやってみなきゃ、何も変わらない‼︎
「なんだ…⁉︎この数は…‼︎」
「一つ一つがさっきの爆弾と同じ‼︎覚悟して‼︎」
おっと。数十枚出すつもりがもっと出してしまった。一気にどっと疲れたが、関係ない。全部で百枚のこれを当てれば良いだけの話。
神経を研ぎ澄ませて、一気に葉を怪人の周囲に散らばらせる。イメージは桜吹雪。荒れ狂う吹雪のように、次々と怪人に葉を叩きつけ、爆破する。先ほどとは比べ物にならないほどの連続爆破。もうもうと立ち込める煙が晴れる頃には、既に致命傷を負ったであろう怪人がいた。まるでボロクズだ。まぁこころにあんな事をしたんだし、当然だ。
「…ぉ…お…!」
「さて、先にこころを助けないと。」
先ほどの連続爆破のおかげで爆発の操作は慣れた。小規模な爆破でこころを捕らえている蜘蛛の巣を破壊し、熱で糸を溶かす。糸を使う蜘蛛怪人からすれば、爆破によって熱が発生している限り糸は使えない。そのための連続爆破だったのだ。ただの恨みで爆破し続けたわけじゃない。ないったらない。
「こころ!大丈夫⁉︎」
「…ん…ぅ…?…ぁ…?」
まだ毒の効果が残っているのか、呂律も回っていないし目の焦点もあってない。
「そういえばこの怪人にとどめを刺さないと毒が消えないんだったね。」
既に瀕死になっている怪人は、放っておいてもいずれは死ぬだろう。だが…
「まだまだ恨みは残ってる…!特大の爆破で終わらせる‼︎」
さっきまでのはクローバーの『ひとひら』でしかない。
火力は比較的控えめだ。わたしの全力は…『四葉』。
必殺技とでも言えるもの。四葉の爆発は、おそらく想像出来ないほどの威力。昔のわたしなら、巻き込まれるのを恐れて使えなかった。けど、今なら出来る。小規模爆発を上手く操って、爆発でバリアを作る。これなら、過剰な威力でもこちらに影響はない。
「じゃあ、これでとどめ!
『シャイニークローバー・エクスプロージョン』‼︎」
特大の四葉が怪人に衝突すると、視界が真っ白に染まる。直後、天に届くかと思わせるほどの轟音が鳴り響き、怪人は跡形もなく消し飛んだ。
side こころ
毒のダメージは凄かった。体が痺れて動けなくなることもあり、卵を産み付けられるかと思っていたら、よつはが乱入してきた。どうやら覚悟を決めた彼女は魔法少女・シャイニークローバーとして開花したのだが。
なんだこの力…⁉︎というかあれだけ迷惑をかけないようにとか言ってたのに固有魔法が爆発⁉︎爆発力が凄いとは言ったけど文字通り爆発の魔法少女になるとは思わなかったぞ⁉︎
あまりにも強力だ。しかも本人の応用が凄い。一応攻撃にしか使えないはずの爆発を上手く使って壁にしたり、四葉のクローバーをイメージする事で威力を調整したりと芸が細かい。
強くなるとは言ってたけどここまでとは思ってなかった…‼︎なぎのと同じで強化変身かと思えばそうでもないし…‼︎まぁ良いか。強いに越した事はないし。
「ありがとな!よつは‼︎おかげで助かった!」
「こっちこそ…その…こころのおかげで吹っ切れられた…わけだし…!今すぐ全部を変える事は出来ないけど…少しずつ…変わっていくから…!これからも…よろしくね…?」
「おう!よろしくな!」
さっきまでの激情が消えたのか、元のよつはに戻ってしまった。けれど、確実に進歩している。これは心強い仲間が加わったな!と思いつつ。
なぎのに続き無差別遠距離馬鹿火力支援が増えた事に恐怖を感じているオレであったのだ。まる。
昨日が短かったので今日は長めです。
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
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桃井こころ/プリズムハート
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青木すみか/ブライトダイヤ
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藤原なぎの/グリッドスペード
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緑谷よつは/シャイニークローバー
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白銀あかり/レイスターレット
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リズ/プリズムイクリール