side こころ
確かに強くなるのは納得出来た。感覚が研ぎ澄まされて身体能力も向上したあの状態なら、速攻で決着を付けに行く形で戦えるかもしれない。それは、相性の悪い相手に逆転を使わずに勝てる可能性があるということ。
ただ…当然ながら弱点が増えたのはまずい。特に犬耳と尻尾は本当に弱い。自分ならともかく、他人に触れられるのには慣れていない。すみかのマッサージでそれがはっきり分かった。犬耳はまだいい。いや良くないけど。尻尾の感触に比べれば数倍マシだ。尻尾の方は本当にやばいのだ。
思い切り握られた瞬間、身体に電撃が走った。体感だけでいえばあの時の電気ウナギの怪人よりもやばい。尻尾の辺りから脳のところまで、一直線に電撃が駆け抜けていった。たったそれだけで腰が抜けてしまってすみかから逃げられなくなった。
後はもう酷かった。一度尻尾を強く握られる感覚を知ってしまうと、軽く触れられたり握られたりするだけで終わりだ。
とまぁ強みと弱みがはっきりとしているので非常に分かりやすい。それにしてもいつ解除されるのだろうか?正直この状態で戦うのは相当サポートが無いと厳しいと思う。一応逆転は発動出来るから万が一は無いかもしれないが…
まぁすみかがサポートしてくれるらしいし、大丈夫だろう。そんな流れでやってきた初戦。珍しい事に、相手も犬怪人だ。前回のポチとは違い、人型。顔の形から察するにドーベルマンだろうか?犬っぽくなっているせいでかなり恐ろしく見える。思わず犬耳がシュンと垂れてしまい、尻尾もへにゃっとしてしまう。
「貴様が博士の言っていた魔法少女か!
早速戦わせてもらうが…あくまでこれは実験。
邪魔になるものが居ては迷惑だ。やれお前達‼︎邪魔者と遊んでやれ‼︎」
背後からすみかに不意打ちを仕掛けたのは、ドーベルマンの怪人よりも一回り小さい怪人だ。3人がかりとは卑怯だが、奇襲を読んでいたすみかには通じない。既に鎧を展開していたのか、一体を腕で受け止めて続く一体を後ろ蹴りで吹き飛ばした。吹き飛ばされた怪人は残る一体を巻き込んで地面を転がっていく。
優勢ではあるが、確かにこの状況ではこちらのサポートは出来そうにない。相手側もしっかり考えてきているようだ。
「こころ!」
「分かってる!そっちは任せた‼︎」
弱そうな3体をすみかに任せて、こちらはでかいドーベルマンに向き合う。体型はいわゆる細マッチョというやつで、かなり引き締まっているようだ。大きな口からは剥き出しの牙が見えていてかなり怖い。逃げたい。あれに食べられてしまったらと思うと、今すぐにでも服従してしまいたい。
おっと。犬っぽくなったせいで、こいつに対しての恐怖がやけに大きい気がする。どうやらある程度精神にも影響があるらしい。強大な相手に対しての反抗心が薄れやすいのだろう。特に犬関連は。しかし困ったな?逆転の発動のためには諦めない事が大切だが、強い分折れやすいというのは正直危ないかもしれない。
まぁそこも含めてサポートが必要なのだろう。そういえば…一応聞いてみるか。
「おい怪人!その博士とやらからこの犬の状態がいつ解けるのか聞いてないか?」
「いつ解けるか…だと?確か1日もすれば解けると聞いているが?そうでない場合は…分からないと聞いている‼︎なにぶん魔法少女で試した事がないせいで不明だそうだ!」
「既に1日以上は経ってるとなると…分からないか…!」
「もし博士本人がここに来れば判明するかもしれんがな!博士は運動不足で移動が遅い!実験について行くと言っておきながらまだ着かないのだ!まぁ待っていれば着くかもしれんが…どうする?」
「そうだな…先に戦う事にする!邪魔されたら困るからな‼︎」
さて、この姿での戦いは初めてだからどうするか…身体能力は上がってたし、まずは接近して一発当てるか。軽く踏み込むつもりで力を入れると…気がつけばあいつの目の前にいた。
「…は?」
「何ッ⁉︎」
「軽く踏み込んだつもりだったのに…なんて速度…‼︎」
想像以上に身体能力が上がっているらしい。ここまでの速度とは思っていなかった。試しに組み手した時は自然とブレーキが掛かっていたようだ。
「データと比較しても桁違いの速度だ…まさかここまでとは‼︎」
「…って危ねぇ‼︎油断も隙もないな!」
いつもなら避けられなかった不意打ちの噛みつきを、後方に大きく跳んで躱す。こちらも軽く下がるつもりだったのにこれだ。
「まさかそこまでパワーアップして居るとはな!参ったな…これでは博士が来るまで保たないかもしれん…!」
「かもな?まぁこっちとしてはどうせ博士をゆすってでも聞き出さなきゃいけない事もあるからな…速攻でやらせてもらうぞ‼︎」
さて、さっきのは軽い踏み込みだった。それをもし全力でやったのなら…どうなるだろうな?
「いくぜっ!」
「ゴォアアアアアアアッ⁉︎」
踏み込んだ瞬間、立っていたはずの位置に亀裂が入って…ほぼ同時のタイミングで、オレの拳が怪人に突き刺さる。踏み込みによって浮き上がった瓦礫が地面に落下するよりも早く、怪人が身体をくの字に曲げて上空に吹き飛ぶ。
追撃の手は緩めない。吹き飛んでくる場所に先回りして、今度は膝蹴りを繰り出す。真横にかっ飛ぶ怪人を追い越し、地面に向かってかかと落としで蹴り飛ばす。
まだ終わらない。地面に落ちてくる怪人に合わせて、魔力を大量に溜めたステッキを叩きつける。ぶつかった瞬間、スイングの勢いと魔力による光弾が怪人を襲う。
「…すげぇ…‼︎」
「ォオ…‼︎ここ…まで…とは…‼︎」
信じられない強さだ。身体能力限定の強化とはいえ、ここまできてたらもう逆転は要らないんじゃないか?そんな風に思ってしまうほどに、この形態は強かった。
「さて、予定よりもめちゃくちゃ早く終わりそうだが…何か言い残す事はあるか?」
「……」
なんだかいつもと真逆みたいだ。もしオレならならここから逆転が発動してひっくり返すんだろうが…今回は違う。相手に逆転なんてものはなく、こちらが圧倒的に優勢。だからだろうか?ここまで油断し切ってしまったのは。背後から近づいてくる男に、気づけなかったのは。
「もう何も言えないか…確かにやり過ぎたもんな。じゃあこれで止めだ‼︎プリズムハート…」
「よくぞ掴んだ‼︎さすが博士だ‼︎ハッハッハッハッハ‼︎」
「掴んだ?何を言って…っ⁉︎」
「デュフフフフフ‼︎尻尾を掴んだと言ったのですぞ?魔法少女・プリズムハートちゃん?」
「…あ…ぅ…!」
しまった。よりにもよって、弱点の尻尾を握られた。こいつは最初からこれを狙っていたのだろうか?わざと遅れてきて油断しているところを握る。オレの性格を完全に読まれている。
「博士、やはり想像以上に強化されていたな?もう少しで死ぬところだったんだが…弁明は?」
「…超高級の骨で良いですかな?」
「それなら仕方がない‼︎許す‼︎」
「全く…現金過ぎやしませんかな?」
博士、と呼ばれたこの男。しっかりとオレの尻尾を握って離さないこいつが、おそらく怪人や薬を作ったやつなのだろう。見た感じはかなり太っている。白衣を着ては居るが、中にピンク色のハートマークの書かれたTシャツを着ている。頭にはハチマキ、メガネ。口調と言い、なんというか…古のオタク像そのままなのだ。白衣以外。
「さて、プリズムハートちゃん?拙者の薬はいかがですかな?相当に強くはなるものの、明確な弱点が増える。プリズムハートちゃんにはぴったりでは無いですかな⁉︎」
「…ぅ…あ…!…ぴ…ぴったりじゃ…ない…っ!」
「おや?そんなに気持ちよさそうにしていては言い訳になりませんなぁ?」
「ぅ…うるさい…っ!」
わざとだ。オレが喋ろうとしたタイミングで、わざとグッと握ってくる。それで思わず声が漏れるのをこいつは楽しんでいるのだ。
「まぁそれはさておき、こちらとしても実験をしないといけませんのでな?身体能力のテストは終わっておりますしなぁ…えぇ。耐久実験といきましょう。」
「なっ…!」
「あぁ暴れない!暴れるようなら…こうですぞ‼︎」
「…っあ゛⁉︎あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!」
力強く尻尾を握られたようだ。痛い。身体全体を掴まれて、握りつぶされたかと錯覚するほどに。背骨から響いてきた痛みは先ほどまでの気持ちいい感覚を一瞬で塗りつぶし、たった一瞬で頭の中を痛みで一杯にした。
「あまりこうしたくは無いのですぞ?拙者は善意でまだ優しく触ってあげているという事をお忘れないように。でないと…また握りつぶしますぞ?」
「…ひゃ…ひゃい…‼︎ごめんなしゃい…‼︎
ゆるして…!なんでもいうこときくからぁ…‼︎」
何をを言ってるんだオレは⁉︎高々一回!力強く握られただけだろ⁉︎こんなに耐性が無いはずがない。オレの口がこれを言ったという事を理解しきれない。それだけオレの身体がこいつに屈服しているという事なのだろうか?
「ふむ…やはり犬のエキスには習性まで引き継がれるのですかな?こんな簡単にプリズムハートちゃんが折れかけるなどあり得ない…‼︎やはり改良の余地がありそうですな‼︎」
なるほど。やはり気のせいでは無かったか。犬の、強者に従うという特性がしっかり受け継がれたという事だ。やはりそれだと逆転は発動出来ない。
「いくらなんでもここまで簡単に折れかけるのは解釈違い‼︎絶対にあってはならない事‼︎プリズムハートちゃん推しとして認められませんな‼︎」
同意だ。激しく同意だ。オレがこんなに弱いはずが無い。というか折れたらこんなになるのか⁉︎カギムーの時も確かに近くはあったが…痛みで折られるとオレはこうなるのか…ちょっとアリかもしれない。
シチュエーション的には、「強化フォームで調子に乗ったメスガキわからせ」と言ったところか。そう言われると確かにオレには合ってないかも…?
「となると犬状態の解除ですが…未だに解けていないのはなぜでしょうな?ふむ…?ちょっと失礼するでござるよ?」
言うが早いか、身体中をまさぐられた。嫌にうねうねした手つきで。まるで人間の手じゃ無いかのようにぐにゃぐにゃした手は、まるで毒だ。じっくりじわじわとオレの身体を蝕んでいくような、甘い甘い猛毒。
「…っ!?…っあ!やぁ…!だめ…‼︎そ…それいじょうは…‼︎」
「ふむふむ、ここがこうで…となるとこちらも。であれば…やはりそうですな‼︎間違いない!」
「もう…だめ…!お…おれ…!…ぉ…おかしく…なる…‼︎」
気がついた頃には、こいつの腕の中にすっぽりと収められていて。全力で暴れているのにも関わらず、運動不足の人間を押し除ける力すら出せない程に弱っていた。
「はっ…はっ…!…ぅ…あ…‼︎」
「おや?拙者とした事が。夢中になって調べるあまりにここまでやってしまうとは…まぁプリズムハートちゃんはこういうのに弱いという説が立証出来たし良しとしますかな?」
「…っ…!…はな…せ…っ…!」
「おぉ‼︎それでこそ我らのプリズムハートちゃん‼︎ここまでされても折れないのは流石ですな‼︎それでこそ推しがいがあるというもの‼︎
さて、実験の結果をお伝えしましょう。まず端的にいえば…既にプリズムハートちゃんは元に戻れる状態にありますな。」
「…ほんと…か…?」
「えぇ‼︎嘘は言いませんぞ?」
「よかったぁ…!」
マジで良かった。このまま戻らなかったら逆転の魔法少女じゃなくて犬耳服従の魔法少女になるところだった。
「肝心の戻り方ですが…まぁ気合いですな。ぐっと力を入れれば可能ですな。その上、おそらく自由に切り替える事が出来るかと。」
「…っぐ!う…ぉおおおおお!!!!!」
分かる。犬耳と尻尾が引っ込む感覚が。あれだけ鋭かった感覚は元に戻ってしまったが、同時に逆転を発動させる。
「やはりそうですな!元の姿に戻りましたぞ‼︎これで逆転も使え…おっと。後は任せましたよ?拙者はここで逃げますゆえ‼︎」
「任された!博士が逃げ切るまでの時間は稼がせてもらう‼︎」
今回は酷かった。結果的に自在に切り替えられる形態を手に入れたとはいえ、散々な目にあった。この鬱憤は、目の前のドーベルマンの怪人に晴らさせてもらうとしよう。
いつのまにか怪人を倒したすみかが来るまで、とどめを刺さずにぶん殴り続けていたのは、正直仕方ないと思うオレなのだった。
強化形態(犬耳尻尾)ゲット!
なお逆転は使えない模様。
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