side こころ
この前成れるようになった犬耳尻尾形態について。オレには命名のセンスが無かったので、リズに付けてもらった。その名も、
なぜこう言う言い方になったかと聞けば、おそらくこの先も増えるかもとのことだ。あの博士の事だろう。もしかしたら他にも用意する可能性はある。それを見越して名前をつけるのは良いが、それで良いのだろうか…?
というかそもそも、なぜ敵に塩を贈るような真似をしたんだろう?弱点さえ突かれなければこちらはとんでもない強さになる。なのになぜこんな事を…?まぁ本人もまた来るだろうし、その時に聞けば良いだろう。
そういえば…あの銀色の魔法少女。いつもであるなら助けに来てくれていたが…来なかったな。あれだけ強いと何かあったとは考えにくいから、まぁ多分用事があったとかなんだろう。未だに名前を教えて貰えていないのは寂しいが…今度なんとか聞き出したいな。
side あかり
ボクは今、組織のアジトの一つに潜入している。プリズムハートちゃんにあんな事をしでかしたクソ博士の後をつけているのだ。あれは酷かった。あのふわふわな尻尾を乱暴に握ったかと思えば、状態を把握するためとはいえ、全身をあんなふうにまさぐるなんて。
とても許し難い。困惑とくすぐったさの狭間で揺れ動くプリズムハートちゃんの姿は眼福だったが、それはそれ。実際に手を出した事には変わりない。同じオタクとしても許せないのだ。推しに直に手を出すなど、愚の骨頂。ましてあんな風にするなんて…‼︎
情報を掴んだら即ぶっ飛ばそう。そんな事を考えていると、通路を歩いていた博士が後ろを振り向く。
「ふむ…ちゃんと撒いたつもりだったのでしたがなぁ…?流石に運動不足のこの身体ではだめでしたな。そこにいるのは分かっておりますぞ?」
まさか。今のボクは光を操る事で透明になっている。その上、足音がしないように光で浮いているというのに。バレるはずが無いのだ。だが、目の前の博士は間違いなく気づいている。どうやったのかは分からないが…
「よく気づいたね?伊達に組織の人間じゃないか!」
「うぉおおおおおっ!?こここれは…⁉︎いきなり声が‼︎拙者幽霊は苦手ですぞ‼︎悪霊退散悪霊退散‼︎南無阿弥陀仏‼︎」
「えぇ…?本当に気付いてたわけじゃないんだ…」
「貴殿は…確か彼の言っていた銀の魔法少女‼︎
もしかして…独り言を聞かれていたり?」
「聞いてたね。ぶつぶつと言ってた事も、さっきのも。もしかして…カッコつけてただけだったりする?」
「…忘れていただく事はできますかな?」
とんだ食わせ者だと思っていたのに、一気に気が抜ける。なんだ…単なるカッコ付けの厨二病か。これまで意味深に呟いていた事も全部。
「良いよ、ただし…」
「タダでとは言いませぬ‼︎例の薬について少し話す。これで如何ですかな?」
「じゃあ良いよ。話してもらおうか。」
「ではこちらの部屋で…さて。
まずはここがアジトだと知ってよく乗り込んで来れましたな?罠かもしれないのに。」
「まぁ、ボクは強いからね?10対1でも圧勝する自身はあるさ。」
あの程度の怪人や、ポチクラスが何体居ようと敵じゃない。そもそもアジトで暴れ回るような相手はそうそう居ないしね。
「ふむ…随分な自信ですな?毒や薬があったらとは考えないので?」
「無いだろう?そもそもそんな毒がボクに効くかどうか。」
「デュフフフフフ‼︎既に薬の効果が出ている事に気付いておられんようですな?先ほどから…無口でなくなっているというのに。」
「…なっ‼︎」
本当だ。今までは上手く喋れなかったのに、ここに来てから随分と饒舌になっている。どうやったのかは知らないが、正直助かる。というかこの薬欲しい。
「そう!自白剤に近い効果によってある程度考えている事をそのまま話せる代物‼︎問題は拙者にも効く事ですがな‼︎やってやりましたぞ‼︎銀の魔法少女推しの同僚‼︎
ミステリアスキャラでクールぶってるその仮面を引き剥がしてやりましたぞ‼︎圧倒的な実力を持ったまるで追加戦士のような立場の王子様キャラの仮面を剥ぎ取るという行為‼︎なんという神をも恐れぬ蛮行‼︎とてもシラフでは出来ない行為‼︎あぁ…拙者はなんと恐ろしい事を…‼︎」
「この薬…貰えないかな?」
「はっ?」
「いや…別にボクはミステリアスキャラで売ってないし…普段は上手く喋れてないだけだし…」
「…銀髪王子様系ミステリアス無口クール好きの同僚よ‼︎お悔やみを申し上げますぞ‼︎」
「ボクそんな風に見られてたの⁉︎確かにプリズムハートちゃんをお姫様抱っこしたり頭ポンポンしたりしちゃう事もあるけど…」
なるほど…確かに側からはそう見えるのか。魔法少女が誰かの推しになる事は普通にある。ボクが彼女たちに対してそうしているのだから、ボクもその対象になってもおかしくは無いのだろう。グッズはまだ出ていないが、推している人なんているのか…
「まぁ正直話しやすいからかなり助かってるよ。
じゃあ本題だ。怪人のエキスってなんだ?そもそも…怪人ってのはなんなんだい?」
「怪人については伏せますが…怪人のエキスについてなら。これは言わば、怪人を怪人たらしめるものですな。生き物の血や油などのものではなく、生き物そのものとも言えるものを魔法で抽出したもの。怪人を生み出す過程で必要となるもので、以降怪人の身体を流れる体液からも抽出できるものですな。」
なるほど。それなら納得もいく。製造過程に魔法が加わっていたとなれば、魔法少女に通じるのも納得だ。となると、怪人も魔法で作られているのだろうか?
「それを加工したものがあの薬か…。
では、なぜあれをプリズムハートちゃんに使った?弱点が増えたとはいえ、明らかにパワーアップするようなものをそのまま渡すとは思えないが?」
「それは…あまり大きな声で言いたくはないのですがな?簡単にいえば趣味ですな。」
「趣味?それってどういう…」
「拙者だけでない、組織の博士達の趣味ですな。
ケモ耳や尻尾が生えた魔法少女が見たいをコンセプトに作られた薬なのでござる。その上で弱体化を狙ったので、明確な弱点はありましたが…まさかあそこまで強くなるとは。」
「…嘘だろう?まぁ薬の影響で本音しか言えないだろうから納得はするけど…」
「まぁケモ耳にも派閥があるゆえ?犬耳猫耳だけでなく、兎などなど。尻尾の形や動物も含めて様々なものが開発中なのですな。」
あまりにもバカすぎる理由に驚く。計画性なさすぎじゃないか?と思う反面、強くなっても構わないというところには違和感を感じる。詳しく問い詰めようとして…身体がやけに熱い事に気がつく。
「…っ!?これは…‼︎」
「そろそろ効果を発揮してきましたかな?先ほどから喋っていたのはこのため。大人しくケモ耳を生やすのですぞ‼︎」
「ぐぅ…!うわぁああああああ……あ?」
「成功しましたな‼︎狼の耳に尻尾‼︎確かに同僚の言う通り…銀の髪にピッタリな上、プリズムハートちゃんよりも上位のような見た目になるのも追加戦士っぽくて凄く良い‼︎悔しいが彼のセンスには脱帽ですな…‼︎」
「いや生えただけ⁉︎これ以上ボクを強くしてどうするのさ‼︎というか追加戦士だっていうならパワーアップ早すぎじゃないか⁉︎今の時点で十分最強クラスなのに‼︎」
「なんと…!確かにそう考えてみればそう…‼︎拙者とした事が気持ちが逸り過ぎましたな…‼︎」
なんというか、この博士と喋っていると気が抜ける。さっきから2度も薬を受けているというのに、ここまで警戒心が薄れてしまうのはある意味才能だろう。それとも、単にボクと気が合うだけか。『プリズムハートちゃん』と呼ぶところからも分かる。推しに手を出すような相手でなければオタク談義が出来たかもしれない、惜しい相手だ。
「…さて、最後に質問だ。なぜパワーアップを容認するんだ?そちらの力なら、いくらでもパワーダウンだってさせられるはずだろう?」
「貴殿には言えない目的があるのでござるよ。
言える事があるとすれば…拙者達は皆魔法少女のファンだという事ですな‼︎」
「答えになってないけど…まぁ良い。
それにしても…プリズムハートちゃんに手を出した件だけは許せないな。どう後始末をつけようか…」
「…むっ!これは同僚が近くにいる合図…‼︎申し訳ない‼︎貴殿に頼みが‼︎後でいくらでも殴っていただいて構わないのです‼︎ですが…同僚の夢を壊すような真似は…‼︎今の状態の貴殿を見たら彼の脳は破壊されてしまう‼︎クールで無口な推しが自分の職場の同僚と普通に喋っているところなどを見てしまったら…‼︎どうか‼︎どうか‼︎」
後でぶっ飛ばして良いのなら、まぁ良いだろう。博士の言う事を聞く事にしよう。確かに推しがキャラ崩壊した上で同僚と喋っているなんて耐えられないだろうしね。
どうしても本音を言ってしまうというなら、本音が片言になっていれば良い。いつも以上にクールさを意識して、あたかも直前まで隠れていて秘密を盗んだかのように見せるため、博士と打ち合わせをする。やっぱりとても話が合う。敵じゃなかったら良い友人になれたかもしれない。
「じゃあボクはステッキで脅す感じで。怪人は…数体倒す感じで良い?」
「えぇ、蹴散らして構いませんぞ‼︎拙者の仕事が増えはしますが…これも同僚の夢のため‼︎」
そんなこんなで、博士の同僚を騙すための芝居が始まったのだった。
side 同僚
信じられない。アジトに侵入者が出たそうだ。あれだけの警備を掻い潜って侵入するとは…!相当の強さがあると見た。もしかしたら銀の魔法少女かと期待するが、すぐに頭を振り払う。そんな都合よくはいかないだろう。そう思っていたのだが…
「…とどめ。」
「マジか…本物…‼︎」
居た。本物だ。間違いない。怪人があたりに蹴散らされているのをみれば、その強さだけでもわかる。本当に本人なのだろう。彼女は一瞬こちらを見て…すぐに目線を逸らすと見天井に大きな穴を開けて脱出して行ってしまった。あれだけ頑丈なこの施設をあんなにあっさり…‼︎
それよりもだ。目を合わせて貰えた。なんという幸せ。鈴が鳴るような声を生で聴けた事も然り、なんという幸運。よくみれば端で倒れているデブの仲間がサムズアップをしていた。確かにサムズアップをしたくなる状態だ。侵入された事もほとんど気にする事なく。数時間の間、俺はそこで銀の魔法少女の姿を反芻していたのだった。
名前に関してはセンスがないので悪しからず。
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
-
桃井こころ/プリズムハート
-
青木すみか/ブライトダイヤ
-
藤原なぎの/グリッドスペード
-
緑谷よつは/シャイニークローバー
-
白銀あかり/レイスターレット
-
リズ/プリズムイクリール