side こころ
最近のオレはいくらなんでも情けなさすぎる。獣化してからは特に。明らかに相手が弱点を狙ってきているにしても、やられすぎている。その上、ここ最近はあの銀の魔法少女に助けられてばかりだ。
やはり獣化はダメなのだろう。リズもそう言ってきた。もし獣化を続けるのであれば魔力が一定量を下回ったら解除するか、一定量のダメージを受けた時点で強制的に獣化が解除されるようにしないといけないそうだ。
そうと決まれば…特訓だ!リズに調整をしてもらいつつ、ダメージに応じて強制的に解除出来るようにセーフティを作れば良い。もちろんある程度意思によってセーフティを無視出来るようにはするが、通常はこれで良いだろう。
何より…大ダメージを負って変身を戻されるというシチュエーションが美味しい。せっかく強化形態を得たんだし、これは必須だろう。それに通常の変身解除はあまり多様出来ないので、そういう観点でも美味しいものなのだ。
「よっしゃ!やるか‼︎」
「まぁ調整も簡単じゃ無いけど…頑張るとするよ!」
side リズ
まさか弱点をカバーするためのものをシチュエーションとして捉えるとは。ある意味で、流石こころだ。ただ、どうやら尻尾だけを責められ続けたのは相当応えたらしく、何かが尻尾に近づくだけでビクッとしてしまうほどトラウマになっているらしい。本人には内緒だが。
魔法としての調整も上手いことやりつつ、僕は銀の魔法少女・レイスターレットこと白銀あかりに依頼された本について思い返していた。
今思うと中々細かい注文だったと思う。あそこまでしっかり条件を決められて描いたのは初めてだったから良い経験になった。もしかしたらこの手の本なら全年齢層も引き込めるかもしれない。まぁ読んだ人の癖が歪むのが怖いから手を出せないが。
とりあえず、彼女が楽しんで読んでくれていると良いな…と思いつつ、勢いよく庭に駆け出していったこころを追いかけるのだった。
side あかり
「…おぉ…‼︎」
今のボクの机の上には、一冊の本が置かれている。
プリズムハートちゃんのパートナー妖精であるリズに直接依頼して描き上げて貰った本。文字通り、世界に一冊しかない本だ。
ボク好みのシチュエーションにするためにかなり条件を付けて描いてもらった事で、これ以上ないボクの為の本になっている。
条件の一部を挙げていくと、まず基本はボク視点。それも、魔法少女・レイスターレットとしてのボクだ。内面の描写はあるものの、側から見てもいつものボクのイメージを崩さないようになっている。一応ボク用に描いては貰ったけれども、もしもリズが公開したいと言い出した時にokを出せるように、という配慮だ。
それに、未だに情報が出回っていないボクの事を伝えるきっかけにもなるかもしれない。魔法省としては出来ればある程度は秘匿したいらしい。公開することでボクの弱点が浮き彫りになってしまうのを恐れているそうだ。まぁでもこの本を出したからって弱点らしい弱点が出てくるわけでも無いからokだろう。そもそもボクの性格上グッズとかをokしていないので、その分秘密の魔法少女みたいに切り札的な立ち位置になっているだけでしかない、謎の最強魔法少女というだけだ。
他にも、いつもの本とは違ってプリズムハートちゃんは絶対に折れないし諦めない、現実に則した性格になっている事。敵がどういう手段を使っても良いから、決して負ける事だけはない事。もちろんちゃんとボロボロになるまで戦う事。ステッキが壊れたり、服がボロボロになったりと言った描写はもちろん、辺りを巻き込むような攻撃を受けたりと、手を抜いてすっ飛ばすような事はしない事。
一度はボクが彼女を助けるけれど、長期戦になるにつれてどんどんとボクが消耗するようになり、とうとう膝をついてしまう事。固有魔法を使えなくなるほどに衰弱し、雑魚敵にすらやられそうになった所でプリズムハートちゃんに助けてもらう事。最後は二人で必殺技を…と、口にするにも正直恥ずかしいほどのものではあるが、ボクが負けそうになる所以外はいつも通りではあるのでまぁ…
これを聞いたリズは意外にも嬉しそうに、「これは腕が鳴るね!楽しみに待ってて!」と快く受けてくれた。元々敗北verばかり描いているので、たまには勝利verも気分転換になるとかだろうか?
さて、いよいよ読むとしよう。果たしてどんな内容になっているのか…!ごくり。思わず緊張してしまう。
さてと、心の準備は済ませた。いざ…開封‼︎
〜本の中〜
side 魔法少女・レイスターレット
倒す。倒す。倒す。無限かと勘違いするほどの数の敵を、倒す。ボクの固有魔法にかかれば、一撃で敵を葬ることなど容易い。プリズムハートが劣勢になっている事を知り、増援に駆け付けてからすでに数時間が経過していた。その間、ほとんど魔法を撃ちっぱなしだ。
最初は、数体の怪人に囲まれていた彼女を助けた上で魔法を撃つだけで終わりだと考えていた。しかし、どうやらそうもいかないようだ。どんどんと増え続ける怪人は、一対一でもプリズムハートと善戦出来るほどの力を持っている。
戦力を考えれば、彼女を放置するわけにはいかない。そう考えて彼女を庇いながらひたすら魔法を撃ち込み続けるが、減った分がすぐに元通りになってしまう。おそらく分身系の怪人を複数体用意し、分身だけを送り込み続けているためだろう。本体を引っ張り出せない限り、こちらはジリ貧だ。
久しぶりに息が切れてきた。ここまで魔法を撃ち続けたのは、いつぶりだろうか?特訓をしていたあの頃以来だろうか?世間では最強と言われてはいるが、それは才能と努力に裏打ちされたものだ。ただの才能だけでここまで強くなれるわけでは無い。
持久戦が苦手な訳では無い。むしろ得意な方だ。数時間撃ち続けても、息切れ程度にしかならない。だが…今回の怪人達は、今までとは訳が違った。あまりにも多い上、おそらくほぼ無限に増え続けている。これは相当な長丁場になりそうだ。ふぅ、と息を吐いて、ボクは気合を入れ直した。
「…はぁっ…はぁっ…‼︎」
あれからどれくらい経っただろう?日中に始まったはずの戦いは既に夜を超え、朝日が再び昇るまで続いていた。いくら持久戦が得意なボクとはいえ、流石に堪える。戦っている間、ずっと魔法を撃っていた訳ではない。途中で光弾に切り替えて消耗を減らしたり、それでも厳しくなれば格闘戦に持ち込んだりと、出来る限りの工夫をしていくが…終わらない。姿が同じの怪人を倒し続けるだけの作業は、精神的にも苦痛になっていた。
「……急がないと…‼︎」
既にプリズムハートの姿は見えない。途中で庇い切れなくなってしまい、姿を見失ってしまった。彼女なら折れる事は無いだろうが、それでもこの戦力相手に保っているとは思えない。長時間の戦闘による疲労と、早く見つけなければという焦りが、ボクから冷静さを奪っていく。
「……これしか無い…‼︎」
焦ったボクは、一気に決着を付けようと残り少ない魔力を解放し、全方位に向かって光の柱をばら撒く。次々と怪人の身体を貫いたそれは、あっという間に辺り一体の怪人を消し飛ばした。
だが。空いた隙間を埋めるように、僅かに残った怪人達は増え続ける。荒い息を整えているうちに、あれだけ削ったはずの怪人達は元通りの数に戻ってしまった。
「…ぅ…嘘…だ…!」
思わず膝を突いてしまう。…ダメだ。勝てない。これだけの数を倒しても一向に減らない、この怪人達には敵わない。これまでの疲労と精神的な苦痛は、限界の域まで達している。かろうじて変身解除は免れたものの、膝を折ってしまったボクは立ち上がれそうに無い。
今のボクは、昔の弱かった頃の自分と同じだ。魔法少女になる前の、自身を持てなかった自分。全力を尽くしても勝てない敵に、超えられない壁を前に折れかけている。
もう固有魔法はおろか、光弾一つ撃てない。ジリジリと近づいてくる怪人達。視界がじわじわと滲んでいく。なんとか堪えようとしても、折れかけた心が、身体が、いう事を聞かない。
怪人が1体、目の前に来た。ニタニタと笑うそいつは、ボクが抵抗出来ない事を理解しているのだろう。大きく拳を振り上げて、見せつけるように殴り掛かってくる。
「…っ‼︎」
怪人の拳が目の前に迫る。怖い。襲いくる痛みに備えて、ぎゅっと目を瞑る。せめて、せめてこの瞬間だけでも苦しくないように。
「……?」
来ない。来るはずの痛みが。不思議に思って目を開けると、そこには背中があった。かつてボクが弱かった頃と同じだ。あの時の光景と、今の光景が重なる。
「なん…で…?」
その背中は、ボロボロだった。服は土と埃、そして血で汚れていて、穴だらけでところどころほつれて破れている。穴から見える肌は、擦り傷と打撲の後が痛々しい。ヒビの入ったハート型の宝石は、既に元の輝きを失っている。
それでも。ボクにとっては、最高にカッコいい背中だ。世界で1番頼れる背中だ。どれだけ傷付こうが、苦しもうが。決して折れる事のないその背中は、きっとボク以外にも知っている人は多い。
落ちこぼれと揶揄されながらも、どんな逆境にも挫けず立ち向かい、そして勝つ。ボクが最強の魔法少女なら、彼女はそう。最高の魔法少女。
魔法少女・プリズムハート。
襲いくる怪人の拳をその手で受け止め、不敵に笑う彼女が、そこに居た。
「なんで…か。何についてなのかは分からないけど…
強いていうなら、『オレだから』だろ?」
「……‼︎」
「それに、いつもは助けて貰ってばっかだ!
偶にはオレから助ける事があったって…おかしくないだろ?」
そうじゃない。ボクが聞きたいのは、何でまだ動けるのかとか、どうやって耐え続けたのかとか、そんなに傷を負っているのにどうして…とか。けど、他ならぬボクが納得しかけているのだ。理由は簡単。彼女だから。彼女が、魔法少女・プリズムハートだから。これ以上の疑問は不要だろう。
「さて…どうやってこいつらを倒すかだが…」
「…どうすれば…‼︎」
そうなのだ。肝心の倒し方は分かっていない。いくら彼女が居てもどうしようもない。そのはずなのだ。けれど、なぜか自然と勇気が湧いてくる。理由はよく分からないけど、こうして横に居るだけで力が湧いてくる。
「大丈夫だ‼︎さっきの攻撃のおかげで大体分かったからな‼︎あいつらだって無敵じゃない‼︎ちゃんと消耗してる‼︎」
「……なら‼︎」
流石だ。あの状況でも分析を忘れていない。ボクがやけになりかけていた時でも、決して諦める事なく見続けていたのだろう。
そこからは早かった。ある程度本体に目星をつけていた彼女は、怪人の波をすり抜けてあっという間に本体達を引き摺り出すと、上空に向けてかち上げた。邪魔されないうちにとどめを刺すつもりなのだろう。
「今だ‼︎」
「……分かった…‼︎」
確実にとどめを刺すため、力を振り絞って跳躍し怪人達に肉薄する。それを分かっていたのか、プリズムハートも同じように跳んできた。
「プリズムハート…」
「レイスターレット…」
「「スプラッシュ!!!!!」」
放たれた光は混ざり、螺旋状に絡まったまま怪人達を消し飛ばした。それと同時に地面に居た奴らもモヤのように消えた。勝てたのだ。それが分かった途端、力が抜ける。いつもと違って魔法も使えず、頭から逆さに落下しそうになって…
「よっと!これもお返しだな!大丈夫だったか?」
「〜〜っ⁉︎」
彼女に抱き止められた。それもお姫様抱っこで。いつもボクがやっている事だが、いざやられると恥ずかしい。顔が熱くなって、耳が赤くなる。
「さてと、なんとか倒せて良かったな!じゃあな!」
「…ぁ…あの!」
「どうした?」
言わなければ。今までは秘密にしていたけれど、彼女には伝えたい。
「…ターレット。」
「?」
「…レイスターレット。それが…ボクの名前。」
「レイスターレットか!いい名前だな‼︎
じゃあオレも。オレはプリズムハート!
魔法少女・プリズムハートだ‼︎
改めて、これからもよろしくな‼︎」
「……うん…‼︎」
うやむやになっていたけど、ちゃんと伝えられてよかった。今までとは違って、もやもやとした気持ちを抱える事なく、ボクは帰路についたのだった。
〜現実〜
…おぉ…‼︎
なんというか…感無量だ。最高すぎる。これが見たかったというものがお出しされて、テンションが限界突破した。この後丸一日くらい興奮が冷めなくて、全く眠れなかったのは内緒だ。
それにしても…いい加減に現実のボクも伝えないと。レイスターレットという名前を、プリズムハートちゃんに直接。いつか言おうと思っているけど、中々言う機会が無いボクなのだった。
という訳で健全寄りかつもし側から見たら…?的なイメージで描いた本回でした。
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
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桃井こころ/プリズムハート
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青木すみか/ブライトダイヤ
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藤原なぎの/グリッドスペード
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緑谷よつは/シャイニークローバー
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白銀あかり/レイスターレット
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リズ/プリズムイクリール