side こころ
さて、今の状況を整理しよう。現在オレは変身した状態で怪人に抱かれている。再三言うが変な意味ではない。文字通りの意味でだ。
場所は人気のない廃墟群の一つ。ボロ屋の中で怪人と二人っきりだ。怪人はコウモリ。いわゆる吸血鬼のパブリックイメージそのものだが、銀でできた十字架のネックレスを付けているせいで台無し。お前それは付けてちゃダメだろ!
元々街中で戦っていたものの、怪人の意思でこのボロ屋に来ている。理由は簡単、雰囲気作りだ。どうやらこのコウモリ怪人は吸血鬼に憧れているらしく、それっぽいファッションをしたり能力を鍛えたりしていたそうだ。それにしては雑すぎた。真昼間からニンニクマシマシのラーメン店の前に居てはいけないだろう。
流石ににわか過ぎないか?と問い詰めれば、すっかり意気消沈してしまい部屋の隅で体操座りをしている。
とまぁ、状況としてはこんな感じだ。オレとしては双方合意でシチュエーションの再現が出来るかもしれなしと踏んでいる。吸血鬼による吸血は、オレの憧れのシチュエーションの一つだ。まぁさっき一回分台無しにされたけど。
さて、向こうはオレがこんな性格だとは気づいて居ない。そのまま伝えても良いがちょっとつまらないので、一芝居打つことにした。
「…で?お前は吸血鬼志望のコスプレ怪人ってことでいいのか?」
「はい…にわかが変な事してすいませんでした…」
この状況からひっくり返すには…これだろうか?
「さっき吸血してたけどなぁ?あんなのじゃ魔法少女の籠絡なんて一生出来ないぞ?それでもコウモリ怪人か?」
「うぅ…弱小怪人ですみません…」
メスガキ作戦。わざと煽るような言葉で相手を焚き付ける方法だ。問題があるとすれば、今のこいつはメンタルがかなり弱っている事だ。このままでは単に責められているとしか思えないだろう。
ここでポイントだ!
「まぁ気持ち良くはあったけど…前にやられた怪人よりかは全然だったな!昼間に明るい所でやられたとは言え…あんなのじゃきっとここでやったって変わらないだろうな?お前のあんな程度の吸血なんて…体が敏感になる獣化してても耐えられるぜ?」
あえて罵倒しつつも、言葉にヒントを混ぜていく。直訳すれば、「今ここでやられたら効くかもな?」「獣化してる時に狙えば良いぞ!」といったところか。正直なところ直球過ぎる気もするが、メンタルが弱ってるこいつにはこれくらいヒントを出さないとダメだろう。
「…貴様…!言わせておけば…!」
「へぇ?こんなに煽られてイラっと来ちゃったか?
そうだよなぁ…お前は弱小コウモリ怪人だもんなぁ!」
「この…ガキがァ‼︎」
良い感じだ。吸血鬼エミュも戻りつつある。後はちゃんと吸血してくれるかだ。さらに煽りを加速させつつ、獣化してトドメを刺そうとする。
「じゃあな弱小怪人!これで終わりだ‼︎」
嘘だ。終わりなわけがない。溜めている間は無防備な上、こいつがメチャクチャに速いことはよく分かっている。この狭い部屋では、間隔を空けたところで大差ないレベルだ。
「貴様…我の速度を見くびったか‼︎そんな鈍い動き、捉えられぬ訳が無いだろう‼︎」
「ぐっ…⁉︎かはっ…‼︎」
ステッキを弾き飛ばされた上、首を掴まれて動けない。ヨシ!後は…
「貴様は言ったな?吸血など効かぬと。では…もう一度試すが良い‼︎我の全力を‼︎」
がぷり、と。オレの首筋に牙が突き刺さる。獣化していた事もあり、その感覚は先ほどまでとは比べ物にならない。
「……ぁ…!」
どんどんと吸われていくのが分かる。獣化の感覚強化は凄まじい。どくどくと首から流れていく血液の感覚まで手に取るように分かる。その知覚能力が吸血の快感に影響するとなれば…まぁ言わずとも分かるだろう。
「……っ!?!?!?!?」
最初に吸われた時のじわじわとした気持ちよさはどこへやら。首筋から体全体に突き抜けていく感覚は、まるで雷のよう。糸が切れたように崩れ落ちるオレを支えたこいつは、あろう事か懐の内に入れるように抱き抱えた。ただでさえやばい状態なのに、追い打ちをかけられてしまった。
しっかりと抱き抱えられた事でより深く牙が刺さる上、身体を抱き抱えられた事への安心感が身体を包み、抵抗力を下げていく。吸血されている間は頭がふわふわとして正常な判断が出来ないため、こんなやつが相手でも安心してしまう。自分よりも大きく強い身体に包まれて安心してしまうのは、獣化が引き起こす本能の強化も影響しているかもしれない。
このままだとまずいが、まぁシチュエーション的には完璧だ。薄暗い部屋で吸血鬼相手に抵抗も出来ずにされるがままの魔法少女。憧れが一つ叶ったことで、分かる事がある。多分これをずっと続けられてたら、間違いなく堕ちると言うことだ。
だが、安心して欲しい。実を言うと今回はテストだ。だからこそ、自分の欲望に正直な立ち回りをしたのだ。何のテストかと言えば…そう。獣化の強制解除だ。
逆転は最初から発動させてある。獣化の問題点の対策が取れるのかを試すのに丁度いい相手だと見て、今回のような出方をとったのだ。さて、そろそろだろうか?力がどんどん抜けていって…来た‼︎
「む…?」
獣化が解けた事を疑問に思った怪人だが、もう遅い。超至近距離から光弾を放ち、後方に吹き飛ばす。反作用を利用してこちらも転がり、先ほど弾かれたステッキを回収する。ようやくこちらを見た怪人は、困惑していた。
「何故だ⁉︎何故振り解けた!いや…それよりも…!」
「…ん?それよりも?」
「その翼!まさか…我は本当に…⁉︎」
何の事だ?翼?そんなもの持っている訳…あれ?なんか背中にある。何だこれ?普通に動かせるし感覚もある。なんか同じような経験をした事があるような。まさか…‼︎
「やったぞ‼︎とうとう我は吸血鬼になれたのだ‼︎血を吸った者を吸血鬼に変える力!これは間違い無いだろう‼︎理想のシチュエーションでここまで出来るとは…もはや悔いなし‼︎」
「獣化の種類…増えちゃったか…‼︎」
なんという事でしょう。おそらく怪人が出している物質が身体に流れ込み、最初の獣化の時と同じようになったのだろう。多分。なんか怪人は勘違いしているものの、まぁ本人が楽しそうなら良いか。シチュエーション的にもオレとしては美味しい物なので否定はしないし。こうなったらヤケだ。良い感じに締めるしか無い‼︎
「さて、この形態…名付けて『
能力は…飛行‼︎ただここ狭いから使えないけどな‼︎あと一応光弾が強化されたっぽいな?それ!」
「ぬおっ!?何だこの速さ…‼︎まるでレーザー‼︎」
「やっぱりな‼︎ちゃんと強くなってる‼︎デメリットが怖いけど…まぁそれは後で‼︎」
ちゃんと強化されてるのも確認できた。シチュエーションも堪能出来た。もうこの怪人に用はない。
「さぁて終わりだ‼︎プリズムハート・ビーストラッシュ‼︎」
「ぬぅ…うああああああああ!!!!!」
必殺技は犬の時と同じだ。獣化の力を解き放つイメージ。部屋でぶっ放した事で、ボロ屋を貫通して彼方まで光が届く。
「最期に…!良い…良いシチュエーションだった!」
「コウモリ怪人‼︎いや…さらばだ吸血鬼‼︎」
断末魔に対して礼儀を持って答えたオレは、そう言えば名前聞いてなかったな…と締まらない考えをしていた。
ちなみに。いかがわしいホテルの近くに怪人に連れ込まれた事で、すみかにあらぬ誤解を招いたオレはめっちゃくちゃに心配されることになるのだが、この時のオレはそんな事を知る由も無く。呑気に今回のシチュエーションについて思い返すのだった。
というわけで形態2つ目です。良い感じに使えると良いなって…
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
-
桃井こころ/プリズムハート
-
青木すみか/ブライトダイヤ
-
藤原なぎの/グリッドスペード
-
緑谷よつは/シャイニークローバー
-
白銀あかり/レイスターレット
-
リズ/プリズムイクリール