side こころ
獣化を使えるようになってから、一人で敵を倒し切る事がなくなりつつある。そこで、今日は久しぶりに獣化を使わずに戦おうと思う。
戦う相手は、水牛の怪人。立派な角に、筋骨隆々とした体。特殊な力を持っているタイプでは無い、完全なパワー型。人型の筋肉ゴリラとでも呼びたくなるその肉体は、ボディビルダーの比では無い。腕は人間の手になっているが、足の部分は蹄のままだ。
「がっはっはっは!では勝負といこうか!魔法少女!
」
「そうだな!じゃあまずは…こいつだ!」
正々堂々戦ってくれる相手とは、ツイている。手始めに、牽制として光弾を放つ。そんなものは効かないとばかりに振り払う怪人。大木のような太さの腕を一振りしただけで、数発の光弾を掻き消してしまった。
「この程度…効かぬわぁ‼︎」
パワータイプとあって、流石の力だ。技量など一切ない純粋な腕力だけで掻き消すとは。だが、怯むわけにもいかない。光弾を放ちながら接近し、直にステッキを叩き込む。
「こいつは…どうだ!」
「軽い軽い!今度はこちらから行くぞ!」
相当の魔力を溜めたはずの一撃だったが、難なく片腕で受け止められる。見れば、もう片方の腕が引き絞られている。咄嗟にステッキを盾にガードするも、衝撃を殺し切れるはずもなく吹き飛ばされる。
「ぐぅ…っ⁉︎」
凄まじい速度で何回かバウンドしたのち、ごろごろと地面を転がる。直撃を貰った訳ではないのに、この威力。接近戦を仕掛けるのは危険だが、光弾が効かない以上必殺技ですら掻き消される可能性もある。隙を作って直撃させられればダメージになるかもしれないが、そう簡単に隙を作れるかどうか…
考えていても仕方がない。もうもうと立ち込める土煙に中から飛び出し、奇襲を仕掛ける。先ほどの直線的な動きとは違い、フェイクを混ぜて動く。
「こんなのは…どうだ!」
「ぬぉっ!?」
跳躍して上からステッキを振り下ろすと同時に、光弾を発射して反作用で軌道をずらす。斜めに振り下ろす形になったステッキは、ガラ空きになった怪人の胴体にしっかりと一撃を入れていた。
だが、驚かせはしたもののそこまでのダメージにはなっていないのだろう。特に痛がる様子もなく、怪人は豪快に笑う。
「がっはっはっは!これは一本取られたな!」
「よく言うな!全然効いてないクセに!」
「だが…ワシに一撃を加えたのだぞ?十分凄いことではないか!誇って良いぞ!」
随分と上から目線だ。だが、実際こいつの言っていることは正しい。それこそ獣化でも使わない限り、今のままでは決定打など与えられないだろう。
獣化を使うべきか。使わないべきか。ほんの一瞬悩んだ隙を、こいつは見逃さなかった。そこまで早くは無いものの、オレを掴もうと腕を伸ばしてくる。咄嗟に躱すも、バランスが崩れてしまう。片足になって転びそうになっているところに、追撃とばかりに蹴りが飛んでくる。
鋼鉄の壁をぶち抜くかと思わせるほどの蹴りが鳩尾に突き刺さる。光弾を掻き消すほどの筋肉とダイヤを思わせる硬度の蹄が生み出す破壊力は凄まじく、ガードした時の比ではない速度で後方に吹き飛ばされる。
数件の空き家を貫き、コンクリートで出来た大橋に叩きつけられたところでようやく勢いが止まった。大橋の壁に入った蜘蛛の巣上のヒビがより深くなり、ガラガラと音を立てて崩れた。同時に、張り付いていた状態から解放されぼとり、と地面に落ちる。
口一杯に広がった鉄の味。その不快感に耐えられず吐き出せば、少なくない量の血が地面に飛び散る。
「が…っは…‼︎ごぼっ…!」
信じられない痛みだ。獣化していないのにこれほどとは。その上、おそらく一撃で内臓をやられた。
「げほっ…げほっ…‼︎」
たった一撃でこれか。次に直撃を受けたらどうなるか…!
「がっはっはっは!いやーすまんすまん!
ついつい本気で蹴り飛ばしてしまったわ!」
「…ぐ…けほっ!や…やるじゃないか…‼︎」
「貴様もだ!ワシの一撃を直に喰らって耐えるとはな!」
さて、ここからどうするか。フラフラとしながらも、何とか壁を支えに立ち上がる。流石に接近戦を挑むのはまずいだろう。となると遠距離。光弾を撃ちまくったところで、果たしてダメージになるだろうか?かき消せない量を撃てば当てられるかもしれないが…ものは試しだ。
「この数!全部捌き切れるか⁉︎」
バックジャンプで距離を取り、大量の光弾をばら撒く。最初は簡単にかき消していた怪人だったが、徐々に防げききれなくなっていく。
「ぬぅ!ぬぉっ!?この…‼︎」
いけるかもしれない。一気に光弾を撃ち出した上で、上から必殺技を被せる。
「このまま押し切る!プリズムハート・スプラッシュ‼︎」
「ぬぅお…!ぬあああああ!!!!!」
光弾を防ぐので手一杯になっている怪人に、オレの必殺技が直撃する。決まった。だが、これで終わりとも限らない。警戒を怠らずにいると、もうもうと上がる爆炎の中から影が現れる。
「がっはっはっは!本当に一本取られたな!
では…こちらも本気を出すとしようか!」
「やっぱり耐え切ったか…良いぜ!来い‼︎」
怪人がスタートダッシュの体勢を取る。まさか。気がついた時には、すでに接近を許していた。今までのこいつとは思えないほどの加速。迫ってくる鋭く太い角。だが、この速度ならまだギリギリ躱せる。急いで動こうとして…
「ぐ…っ⁉︎がっは…‼︎」
蹴られた時の痛みがぶり返した。あまりの痛みに耐えられなくなって、膝をついて口から血を吐き出す。当然、そんな隙を見逃す相手ではない。鳩尾を押さえたことでガラ空きになった胸部を、怪人の角がぶち抜いていった。
「…ぁ…ごぼっ…‼︎」
「がっはっはっは!決まってしまったな‼︎」
怪人の角で串刺しにされたまま、持ち上げられて勢いよく地面に叩きつけられる。抵抗など出来るはずもなく、頭から地面にぶつかる。
やられた。頭を叩きつけられた事で視界がぐわんぐわんとゆれ、思考が乱される。上手く立つことも出来ないままに、もう一度突進を喰らう。幸いまた穴が空くことは無かったが、硬い頭に打ち付けられた身体の骨は無事では済まない。ボキボキという音と共に、肋骨が砕け、身体中の骨にヒビが入っていく。吹き飛ばされた先には、先ほどぶつかった大橋。先の一撃で崩れかけていた大橋は耐えられるはずもなく倒壊した。
意識はまだ途切れてはいない。当然諦めてはいないからだ。だが、中々厳しい。内臓破裂に全身の骨にヒビと、かなりの重傷だ。その上、胸をぶち抜かれている。片肺に穴が空いているのだろうか?先ほどから上手く呼吸が出来ない。
「…ぜぇ…ぜぇ…ごぼっ…‼︎」
だが、まだやれる。勝ち方は見えた。後はどうやって攻撃するかだ。すでに足は折れて使い物にならない。ギリギリ片膝で立てはするが、それだけだ。
「死んだか?まぁまだ死んじゃいないだろうがな‼︎」
「…当然…だ…ろ…‼︎」
こうやってボロボロになりながらも、勝ってきたのがオレなのだ。ならば、勝つ以外に無いだろう。
「これで終わりだなぁ‼︎さらば魔法少女ぉ‼︎」
トドメとばかりに突進してくる怪人が見える。先ほどよりも更に加速している。だが、むしろそれが良い。今度はまだ、躱そうとすらしない。ギリギリまで引きつけてからで良い。何なら、間に合わない位置くらいで十分だ。
全神経を集中させて、目の前の敵を見据える。まだ。まだだ。はやる気持ちを抑えて、耐える。まだ早い。後少しだけ。あとほんの少し…今‼︎ ステッキを正面に構え、在らん限りの魔力を溜めて全力で振りかぶる。
「ここ…だぁ‼︎」
足で移動しようなんて考えない。空中で動きを変えた時のように、ほんの少し位置を横にずらす。ステッキを思いっきり振りかぶった体制のまま、スライドするかのように移動。ギリギリで突進を躱し、全力のステッキをこいつの顔面にぶち込む。
直進する力が強ければ強いほど、真横からの力に対して弱くなる。本当は上手く突進をいなすのに使いたかったが、トドメまで隠せていたのだから結果オーライかもしれない。
「ごばぁ!?」
「これで…終わりだ‼︎プリズムハート・スプラッシュ‼︎」
真横からの衝撃でダメージを受けて固まっていた怪人には避ける術もなく、桃色の光に飲み込まれた。
「…ふぅ!何とか…勝てたか‼︎」
相当な強敵だった。もし獣化を使っていれば、痛みに耐えられかったかもしれない程。だがまぁ、勝てたから良しだろう。
それにしても…最近のオレは随分と油断が過ぎるらしい。おそらく敵が最期に繰り出したのだろう悪あがきに気付くことが出来なかった。ブーメランのように飛んできたそれは、吸い込まれるようにオレの背中に命中する。
「…ごはっ…⁉︎…なに…が…?」
見れば、オレの腹から角が生えていた。背中から突き破ってきたのだろうか?かなりまずい。すでに逆転は切れている。意識が朦朧としてきて、立つことも出来なくなってその場に崩れ落ちる。
リズがいるから死にはしないものの、非常に良くない傾向だ。オレの戦闘の勘が鈍っているのだ。これはどうにかしなければならない。薄れゆく意識の中、これからどうしたものか…と考えるオレなのだった。
これからどうしましょうかね…?
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