side こころ
今日も今日とて特訓だ。昨日の寝室はどう見てもアレだったが、特に問題もなく眠れたし大丈夫って事で。
布団に潜り込んできたりする事も無かったし、朝起きたら変なものが置いてあったとかも一切無かった。
ついでに言っておくと、部屋としては相当良いものだった。アレを再現している分ベッドはしっかりとした上等なものだったし、照明においてもそうだ。文句の付けようが無いくらいには良い部屋だった。
衣服に関しては向こうがなんとか用意してくれたようで、サイズもしっかりとあっている。『まさかこんな形で怪人生成装置が役に立つとは…』とはあの博士の談だ。確かに普段怪人って素っ裸じゃ無い事を考えれば、手作業で作られてない限りそういう装置があってもおかしく無いだろう。
当然の事ながら、装置に関してはぶっ壊そうとしたが無駄だった。アレは無理だ。すみかの鎧と同じような力だろうか?見えない壁のようなもので遮られて、攻撃がまったく通らなかった。
あと、装置をぶっ壊そうとした事はしっかりとバレた。それを知った博士は一瞬だけど残念そうにしながらも、すぐに切り替えると飄々とした態度に戻った。オレじゃ壊せない事を煽りつつ、特訓を再開するように告げて来た。
…やっぱりめちゃくちゃ裏がある。けど、おそらく今はどうにも出来ない。一旦はオレが強くなるしか無いだろう。そう考えて、特訓を再開した。
side 博士
…やはり…ダメでしたなぁ…あの方の力の前には無力なのでしょうかなぁ?あれだけの攻撃を加えても、ほんの少しも傷がつく事もない。改めてあの方の持つ圧倒的な力を再確認する。
さて、クヨクヨとしていても仕方がないですな!特訓を再開したプリズムハートちゃんを見れば、よく休んだ事もありレベル8とやり合えていますな。最初に一撃を貰ったようですが以降は一撃も貰ってはいないようで。まぁそれは怪人も同じですがな。レベル8も相当上手く攻撃をいなしておりますからなぁ…
互いに有効打を与えられない状態が続いていますが…優勢なのはプリズムハートちゃんですな。いずれ隙を見つけて倒す事を考えれば、互角の相手には負けはないと見ても良いでしょうな。
おっと。もう決着が着くとは。レベル8を倒したプリズムハートちゃんを見れば息は上がっているものの、そこまで大きなダメージはない。これなら連戦は可能そうですな。レベル9を相手をしても問題無さそうなところを見るに、ここに来る前とは明らかに強くなっている様子。出力の問題ではなく、戦闘の勘が良くなっているのは間違いないでしょう。
「よし…次はレベル9だ‼︎」
「えぇ、次も相当強いですぞ?10程では無いですがな…」
レベル9との戦闘が始まった瞬間、突っ込んでいった怪人の拳が届こうというところで…プリズムハートちゃんは見事にカウンターを決めたのです。
「…なんと」
「へへ…!どんな…もんだぁ‼︎」
カウンターを貰った事でよろけた怪人に、あらかじめ用意されていた必殺技が直撃。流石にそれだけで倒れはしないが、相当なダメージが入った事は間違いないでしょうな。
クロカタゾウムシという強靭な守りを誇る怪人相手にすら、この立ち回り。非常に急所が少なく、小さいこの怪人相手にああも正確なカウンターを決められるとは思いませんでしたな。
後はもはや流れ作業のよう。レベル9を完全に見切った彼女に攻撃が掠る事もなく、あっという間に倒してしまうのでした。この感じであれば…いえ、やめておきましょう。
「さて、これで終わりですな。流石はプリズムハートちゃんですぞ‼︎まさかここまで強くなるとは…」
「…まだだ。最初に言ってたろ?レベル10があるって。」
「ですが…アレは…つい言葉の綾で言ってしまったものでしてな?レベル10とは言っていますが、あまりに次元の違う強さですので…」
レベル10、アレは文字通り桁が違うのです。強さで言ってしまえば、レベル100とかそういう類の相手ですな。この世界の戦力が分かっていなかった頃にあの方が生み出した、試作品ながらも最強の存在。アレに近づけようと生み出したレベル9ですら、足元にも及ばない強さ。
あんなものが暴れてしまえば、世界はどうにかなってしまう。唯一張り合えるとしたら、レイスターレットくらいのもの。それでも倒せるか分からないほどの相手。だからこそ、もしも何かがあってこれが解放されてしまった時のためにと彼女に獣化を与えていたのですが…
今のプリズムハートちゃんが相当に強くなっているのは分かっております。ですが、それでもアレを呼び起こすのは…そう言いかけて、地震かと思うほどの衝撃が基地に走る。
「この揺れは…まさか‼︎」
「ん?地震か?」
「バカな…アレが起動するなどあり得ない‼︎あってはならない事ですぞ‼︎」
「…それが例のレベル10って奴か?」
「こうなってはもう伝えるしかありませんな…‼︎
良いですかな⁉︎奴は先ほどまでの相手とは文字通り桁の違う相手‼︎まともにやり合うどころか戦う事すらも…!」
瞬間。鋼鉄でできた奥の扉が吹き飛ぶ。奴が…来てしまった。見なくとも分かりますな。相当にブチギレている様子。それはまぁ当然でしょうなぁ?本来なら常時起きていて暴れるのが仕事の自分が、こうして封じ込められていたのだから。
「オイ…下僕ゥ‼︎キサマ…オレサマヲ封ジコメルトハ良イ度胸ダナァ⁉︎コレハアノ御方ヘノ明確ナ反逆行為‼︎死ヲモッテ償ワセテヤロウ‼︎」
こうなってしまった以上は、もはや他に方法は無いですな。ここでプリズムハートちゃんが戦えば、本当に殺されてしまうかもしれない…‼︎今までの怪人とは、本当に訳が違う。奴はまったくと言って良いほどに殺しに忌避感がない。必要とあらば誰でも殺す、殺戮マシンのようなやつなのです‼︎
「良いですかな⁉︎奴には決して手を出さないでください‼︎拙者が時間を稼ぐのでここから逃げてください!今すぐ‼︎」
「何言ってるんだ⁉︎あいつは仲間じゃないのか⁉︎」
「言ったでしょう?こちらにも事情があると‼︎
とにかく拙者が惹きつけている間に…」
この時の拙者は甘かったのだ。二重に。こういえば、彼女は逃げてくれるのだと思っていた。命の危険があると知れば、流石に彼女でも引くだろうと。
「それは無理な相談だな‼︎むしろ博士が逃げてくれ‼︎
せっかく特訓に付き合ってくれたんだ!博士は絶対死なせない‼︎
安心しろよ!オレが絶対こいつを倒してやるからさ‼︎」
「何を…‼︎」
「分かってるんだろ?オレのファンなんだったら…
オレがこういう時だろうと諦めないってな‼︎」
心のどこかで分かっていたのかも知れない。彼女は、命の危機だと言ってもいう事を聞いてくれないかも知れないと。思わず気が抜けてしまい、ぷっと吹き出してしまう。
「そうでしたな!拙者ともあろうものが…
プリズムハートちゃんが引かないなどという事を忘れていたとは‼︎デュフフフフフフ!!!!!
良いでしょう!拙者もサポートしますぞ‼︎共に彼奴を倒そうではありませんか‼︎」
「おう‼︎よろしくな博士‼︎」
そう。一つ目の甘さは、プリズムハートちゃんが引かない事を忘れていた事。もう一つは…
「ソウカ…キサマガ魔法少女トヤラカ…」
「あぁ‼︎オレの名前は…」
「ジャア…死ネ。」
「博士!危ない‼︎」
この怪人の強さを、見誤っていた事だった。
瞬きをした次の瞬間、先ほどまで彼女がいた位置には何も無かった。遅れて、壁が砕ける轟音が聞こえてくる。そちらに目を向ければ、怪人の拳に胴を貫かれ、じわじわと変身が解けていく彼女の姿があった。
「随分ト弱ッチィナァ?一発カヨ…ツマンネーナァ…」
「…は?」
信じられない。まさか…一撃で?
あれだけ強くなっていた彼女相手に、たったの一撃。
それでも恐ろしい事ではあるが、重要なのはそこではない。
彼女の変身が、強制的に解除されようとしている。彼女に限って、諦めるという事はない。となると、変身が解除される場合は一つしかない。
以前、たった一度だけ見た事がある。あのお方に立ち向かっていた異世界の魔法少女が死んだ事で、変身が解けた姿を。
認めたくはない。が、目の前で起きている事実は覆しようのないもの。
「嫌ですぞ…?こんな形で…!こんな結末なんて…‼︎待ってください…そんな…‼︎」
ぐったりとした彼女の身体から、赤が抜けていく。彼女を覆っていたコスチュームには徐々にヒビが入り、桃色の光と共に…一気に砕け散った。
「ぁ…あ…!ああああああああああ!!!!!
嘘だ‼︎嘘だと言ってください‼︎こんな事…あって良い訳がない‼︎」
死んだ。間違いない。彼女は拙者を庇って死んだのだ。
目の前が真っ暗になりそうだ。終わった。もはや、この世界は終わりだ。拙者のせいだ。拙者が、彼女を終わらせた。あの尊い命を、拙者が奪ったようなものだ。拙者がこんな場所に連れてこなければ。特訓を手伝うなどと言い出さなければ。彼女の言う事を聞き、すぐに逃げていれば。
後から後から、後悔が湧き上がってくる。だが、もはや何の意味もない。もう終わった事だ。
「逃ゲルノハ諦メタノカ?
マァ、逃ゲテモ無駄ダガナァ?」
怪人に胸ぐらを掴まれる。あぁ、ここで拙者も終わりだ。もはや逃げる術はない。このまま殺されてしまえば楽だろう。
力を抜いて楽になろうとして…
ふと、彼女の言葉が頭に過る。『諦めない』。
そうだ。拙者はまだ、諦めてはならない。
無様に、何とか拘束を振り払おうともがく。もはや、意味はない。ここで殺されて終わりなのかも知れない。けれどここで拙者が諦めてしまえば、彼女があまりにも浮かばれない。拙者を庇って死んだ彼女への、冒涜になってしまう。それだけは許せない。何としても生き延びなければならない。
みっともなく手足を振り回していれば、鬱陶しいと感じたのか、拘束を解くと手足をへし折ってきた。痛いなんてものではない。信じられない痛みに喚くが、それでも良い。少しでも生き延びられた。
「ハッ!死ヌノガ遅レタダケデ意味ネージャネーカヨォ‼︎トンダ茶番ダッタナ‼︎死ネェ‼︎」
さらば、人生。ここまでロクな人生ではなかったが、失うとなれば惜しく感じる。プリズムハートちゃんには、本当に申し訳ない。拙者のせいで死なせた挙句、助けてもらう事も出来ず、こうしてあっさりと死んでしまう。
あぁ、本当に申し訳ない…
「…ぁ…!」
「アァ?」
あり得ない。この声が、聞こえる筈がない。
彼女は既に死んだ筈だ。だからこの声は幻聴のはず。
だが、なぜだか拙者には、これが幻聴には思えなかった。
「…ぁ…ああああああ!!!!!」
「…まさか…‼︎」
「ウルセェナァ…!一度ト言ワズ、何度デモブッ殺シテヤルヨォ‼︎」
拙者から目標を変え、グッと力を溜めている怪人。もし先ほどとは違い、溜める事で更に威力を増した正拳突きは…彼女を貫く事なく、逆に弾き返された。
「ナッ⁉︎バカナ‼︎何故効カナイ⁉︎サッキノキサマナラコレデ殺セタハズ‼︎ナゼダァ‼︎」
「…何でってそりゃあ…諦めないから?」
「バカナ事ヲ言ウナ‼︎ソレハ只ノ精神論ダ‼︎」
「そうか?まぁでも…実際そうだしなぁ…ってあれ?オレの服変わってないか?前よりもなんか赤いような…
いや、確かにさっき血で真っ赤にはなってたけどそうじゃなくて…」
改めて彼女を見れば、確かに色が違う。桃色が綺麗だった髪には、赤いメッシュが混じっている。コスチュームのハートは、ピンクと赤が螺旋状に混じりあっている。全体的にヒラヒラとした装飾が増え、背中にはマントのような物が付いている。複数に分かれたそれは、彼女をより凛々しく見せる。
纏っている雰囲気は変わってはいないが、今までと違って圧倒的な存在感がある。そして何より、信じられない程に安心するのだ。
それまでの彼女がふんわりと羽で包み込むようなイメージなら、こちらは焔だ。決して熱くは無いが、暖かくて荒々しい。外敵を焼く焔であり、人を暖める焔。
「よく分かってないけど…強くなったって事は確かだな‼︎じゃあ…いくぜ‼︎」
魔法少女・プリズムハート。
本当の意味での彼女の覚醒が、始まろうとしていた。
「特訓回は」ラストです。
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
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桃井こころ/プリズムハート
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