side リズ
心の新たな姿。だが、デメリットが今までとは明らかに違う。ただ変身しているだけでダメージを負う状態というのは、明らかに異常だ。魔法少女の強化変身として確認出来ているのは、共に外部からの要因によるもの。
怪人もとい、動物の因子とも呼べるものが生み出す獣の力、その名も
通常以上の痛みを生む、彼女の強みである『
さらにこの形態には致命的な弱点が存在する。耳や尻尾を触られると、力が抜けてしまうのだ。特に尻尾を強く握られてしまうと、一気に形成を逆転されてしまうのだ。
逆転するどころかこちらがされてしまう所や、窮地だろうと諦めないこころの強みを潰しかねないリスキーな変身だが、使い勝手が良いため彼女は多用している。
実際、相手に捕まりさえしなければ一方的に倒すことの出来る形態ではある。
弱みは、日中に使用すると体力を大幅に消費してしまう所。基本的には日の出ていないタイミングで使用する形態だ。だが、怪人は大抵日中に出現するため中々この形態を活かせる時がない。
次に、
そのうちなぎのも完全な融合をするかもしれないが、今はあのままで戦っているのが良いだろう。完全な融合の場合、普段のあの強さよりも固有魔法が強力になる事を考えれば、最初から融合しているのは危険だろう。
戦闘が固有魔法頼りになってしまう危険があるからだ。実際、半融合のなぎのですら固有魔法に頼ってばかりだった事を考えれば、納得もいくだろう。
さらに、『逆転』という固有魔法が強化される事でどのような効果になるのかが想像がつかないため、下手に使わない方が良いだろう…と考えているのが現状だ。
さて、最後は今回の形態について。赤く燃える焔のような姿。背中の複数本のマントがまるでブースターのように揺らめく姿、博士が感じたという包まれるような感覚。僕自身にも伝わってきた事あれは、間違いなく焔だった。
身体を包み込むような温かさがありながらも、身を焦がすような熱さも内包していた。彼女の固有魔法から考えれば、正直あり得ない話だ。だが、外部からの接触が無かった以上はこころ自身の力である事に間違いは無い。
一度要素を整理してみよう。
まずは焔。燃え上がるような熱さを持ちながら、包み込むような温かさも兼ね備えている。彼女の気質を考えれば、確かに納得にはなる。
次に再生能力。僕の回復無しで傷を癒したあの力は、間違いなく彼女自身のもの。その上、博士の骨折を治しきるとまではいかないものの、ある程度治癒していた事から考えれば…再生の力は焔にあると見て良い。
次に、異常なまでのパワーアップ。これに近い現象は、何度か見たことがある。極限まで追い詰められた際に発動した時の逆転は、明らかに彼女の現時点での力を上回るものだった。それまでは負けないだけ、という逆転への認識が間違っているかもしれないと思わされる状況だった。
まだある。衣装についてだ。ハートマークの中に描かれた螺旋。これが円だった場合は話は簡単だ。円とは、輪廻や永遠を示すもの。繰り返されるものというよりも不変や不労不死に近いイメージかもしれないが、簡単に言えば不死身とかそういうものの象徴だったりする。
だが、完全な円ではなく螺旋だ。このため完全な不死ではなく、不死に近いレベルではあるものの、不死ではない何かといったところなのだろう。不死かと思うほどの再生力を持っているのに関わらず、博士を完全に治せなかったのはこのためだろう。
…まとめてみると尚更分からない。なぜ固有魔法が逆転の彼女がこんな能力なのか。うんうんと唸っていると、博士がポツリと呟く。
「あの姿は…まるで不死鳥のようでしたなぁ?」
「…今…なんて?」
「不死鳥と言ったのですぞ?
ネットでの与太話を思い出したのですぞ。プリズムハートちゃんはどんなピンチだろうと諦めず、何度も立ち上がって最後には勝つと。
その姿がまるで不死鳥のようだ…と。」
不死鳥。死なない事で有名な鳥。創作物における永遠の象徴。フェニックスとも呼ばれる鳥は、再生の象徴とされる事もある。
…これかもしれない。
これまで考えていた「逆転」の力は、おそらくまだ引き出され切っていなかった。そう仮定すれば、辻褄は合う。「逆転」における、耐え忍ぶという部分。それが引き出されたという事なのだろう。
不死鳥のような力になったのは…こころが世間一般に持たれている印象から来ているのだろうか?こころの内面だけで構成されているのであれば、多分攻撃を喰らえば喰らうほど強力な攻撃を出せるようになるとか、痛みだけはもっと増えるみたいな能力になっていたに違いない。
こう考えると、色々と辻褄が合う。背中のマントから吹き出す焔はブースターのように見えるが、見かけ上そう見えているだけだろう。正しくは、羽根。燃える不死鳥の羽根をイメージしたものなのだろうか?
衣装や髪に混じった紅は、世間がこころに対して持っているイメージカラーなのだろう。確かに、こころはピンクというより赤の方が似合っている。その上、大抵傷だらけだったりして血が滲んでいる事も多く、言われてみれば赤というのがイメージカラーになっていてもおかしく無いのだ。
ここからは、謎のダメージについて。彼女が急に心臓を抑えてうずくまったり、血を吐いていたのは何故だろう。強力な力に対しての反動だとしたら、変身してすぐにダメージが来なかったのはおかしい。
一定時間で来る反動と言われればそれまでだが、だとするなら少し違和感がある。解除した途端にさっぱり消えるのはおかしいのだ。身体に負荷がかかりすぎた結果なら、変身を解除した所でダメージは残るはずだ。
だが、今回はダメージが全く残っていなかった。となると…考えられるのは一つだ。
あのダメージの原因は、この形態の再生能力にあるという事だ。傷を一瞬で治すほどの過剰な再生力が、治す場所が無くなったことで行き場を失い、暴走した事で彼女の身体を内側から傷つけたのだろう。
怪人の攻撃から立ち直った際と、博士に対して再生力を一瞬分けていた間。ブースターのように再生の焔を利用していた間は、この自傷ダメージが起こらなかった。
最初の時はおそらく表面をさっと直したのちに身体全体にまで影響していた傷を治していたため、その間は戦えていたのだろう。
となると、彼女が自傷ダメージを受けなくするには、常に別のダメージを受けなければならない事になる。面倒ではあるものの、こころ的にはむしろ嬉しい話だろう。これなら多分問題ない。
後で検証は必要だろうが、多分これで合っているだろう。博士の夢を壊さないために、こころがドMである事を隠しながら、逆転という固有魔法についてもぼかして伝えると、とても悲痛そうな顔をしていた。
当然この事は内緒だと伝えれば、きっと決意をしたかのようにこちらを見て、両手をがっしりと握ってしきりに頷いてきた。これなら多分上手いこといったでしょ。
多少の不安を残しながらも、こころの特訓は新しい形態を獲得するという形で終わったのだった。
そういえば、この形態の事をなんて呼ぼうか?
そうだなぁ…『
次は…どうしよう…‼︎
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