side すみか
「待っていてこころ‼︎今すぐ助けに行くから‼︎」
彼女の無事を祈りつつも、私は急ぐ。さっきの声が聞こえてから、声がほとんど聞こえなくなった。急がないと本当にこころが洗脳されてしまう。取り返しのつかないことになる前に対処しないと‼︎
私は知ってしまったのだ。敗北した魔法少女がどうなるのか。特に怪人のようなやつや、得体の知れない化け物とか。そんなやつらに捕まって、心を折られて希望を失っていく魔法少女を。
始まりはほんの少しの興味だった。リズが熱心に調べていた言葉を小耳に挟んでしまい、気になって詳しく調べたら。そこにはとんでもない光景が広がっていた。イラストやCG、ゲームにアニメ。果ては小説に至るまで、私達魔法少女の無惨な末路が描かれていたのだ。
そこには、私達によく似た魔法少女もいた。先日戦ったトゲハムシの怪人/トゲハーンに刺され、苦悶の表情を浮かべるこころ似の魔法少女。それだけではない。カミキリムシの怪人/カミキリンの拳を何度も何度も腹に受け、涙目になりながらも痛みを隠し、なんて事のないように不敵に笑うも、力が入らなくなっていき、徐々に抵抗を諦める姿。
私を庇ってトゲハーンから受けた大きな傷を庇いながら、大軍であるアリの怪人/ハタラキ・アリーズと勇敢に戦うも、羽交い締めにされて傷口を責められ、痛みに耐えきれずに大声で叫び、苦しむ姿。
こんなものがこの世にあったのか。それ以上に、こうなる可能性もあったのだと思い知らされた。では、先日のカギムシ怪人/カギムーは?探してみてみれば、ごく僅かだが存在していた。そこに映っていた魔法少女の目は虚になっており、明らかに正常ではない。うわごとのように『カギムーさま』と口にしては、媚びるかのように体を擦り付けている。そんな魔法少女の事を、カギムーは『雌豚』と呼び、家畜のように扱っているのだ。
どうやらこれは『洗脳シチュ』や『催眠シチュ』というらしく、直接の戦闘力は低いものの、魔法少女だろうがなんだろうが催眠をかけて言うことを聞かせてしまうという、恐ろしい怪人の能力だそうだ。
そう。昨日リズの言っていた、『洗脳』と言うキーワード。そして、あり得るはずのないこころの敗北。さらに敗北した相手が選んだのは、こころを倒す事ではなくその家に一緒に住むことだった。
ここまで判断材料が揃っていれば間違いようもない。カギムーは、おそらく洗脳能力を持っている。だからこころは負けてしまったんだ。
「早く…助けないと…‼︎」
side 地の文
とんでもない勘違いを抱えながら、すみかとライはこころの元へと急ぐ。勘違いの原因は主に3人。だがその中でも最もやらかし度が高いのは、実はリズだ。こいつがぽろっと『ヒロインピンチ』なんて言葉をすみかにこぼさなければそれで終わっていたのである。
確かに勘違いされるような事を言った2人も悪いが、それに関しては本当に偶然聞こえた部分がすみかのよこしま脳内フィルターを通った結果出力されたものであり、こっちは仕方がないと言える。
だがリズが『ヒロインピンチ』を彼女に教えてしまい、図らずも彼女の『魔法少女の敗北』に対する価値観を捻じ曲げてしまった事は言い逃れのできないもの。ライは既にリズ経由で捻じ曲げられてたので今回に限った事ではない。というかライがすみかに戦って欲しくなかったのもこのせいでは?
追求すれば次々と余罪が上がりそうなリズだが、一旦ここで話を戻そう。
現在すみかとライは家の中に入り、こころを探している。探されている本人は何をしているのかといえば、こころは変身していない状態でカギムーと取っ組みあっていた。冗談混じりにじゃれあったのち、カギムーにもたれかかる形で身体を沈み込ませている。絵面としては中々誤解されそうな絵面だ。
方や、変身すらできなくなった状態で荒い息を吐きながら、怪人に体を預けて恍惚の表情をしている少女。途中でくすぐられでもしたのか、目の端にはじんわりと涙が浮かんでいる。その上白い肌は赤く染まり、上気しているようだ。短期間とはいえ全力でじゃれあったけっか、汗をかいたらしい。額に大粒の汗が浮かんでいる姿は、見る人がみれば苦しそうに見えるかも知れない。
方や、同じようにじゃれあった怪人は息を荒げており、「フーッ!フーッ!」といった明らかに勘違いされるタイプの息をしている。少女に勝ったと思い込んでいるため、なんとか息を整えながらもニヤニヤしている姿は、かなりアウトである。三日月型に歪んだ口、がっしりと少女を包み込んで離さない身体。
上記に挙げた通りもう言い逃れできないレベルの状況ではあったが、もしかしたらワンチャンあるかもしれない。そんな一縷の希望をぶち壊しに行くような、着実に王手に向かう2手を放ったのは、こころであった。
「はぁ…はぁ…カギムーの身体最高…気持ちいい…クッションとして良すぎる…ずっとこうしていたい…」
「ずっとはオイラもつかれるぞ⁉︎ってかオイラはくっしょんじゃない!そういえばーさっきのばつげーむどうする?そっちがいいだしたんだろ?」
「うーん…じゃあ!今日1日カギムーの事は様付けで呼ぶ!ね?カギムー様?」
「うーん…わるくはないけど…そっちのほうがオイラよりたのしんでないか?」
「そうか?まぁ一応罰としてなんだし、今日はこれで行くよ。」
まずは勘違いされるであろう言葉。やれ「身体が最高」だの「気持ちいい」だの、「ずっとこうしていたい」などというすみかフィルターを通したら絶対そういう事になる言葉を連続使用した事。今頃すみかの耳にはしっかりそこだけ届いているのだろう。
次によりにもよっての様付け。すみかの見てしまった作品が様付け洗脳ものだった事もあり、この先の会話が非常に怖い。しかも若干こころが乗り気なため、すみかのが勘違いしている事を気付けなければ終わりである。
「大丈夫⁉︎こころ‼︎今助ける‼︎こころを放せ怪人!
私が相手になる‼︎」
「はなせっていわれてもなぁ…こころはじぶんからオイラにべったりくっついてるし…」
「嘘よ!魔法少女がわざわざ怪人にべったりくっつく必要なんてない‼︎」
「どうしたんだすみか?オレは大丈夫だぜ?それよりお前もどうだ?カギムー様の身体。きっと気にいるぜ?」
完全に終わった。トドメの一撃として申し分無い言葉に、すみかの脳内が現実と同人を重ねるのは自然のことであった。
「そんな…!そこまで洗脳が進んでいたなんて!」
「洗脳?オレは洗脳なんかされてないぞ?普通だろ?」
「もういいの。安心してこころ。私がこの怪人を絶対に倒してあげるから‼︎」
捩れに捩れた誤解がどうなったのか。ここでは割愛するが…顔を真っ赤にしたすみかとライは恥ずか死に、やらかした事をすみかに全力でブチギレられ、3人組は当分の間大人しくしていたという。
side こころ
それにしても、すみかがそういうものを知ってしまったのは正直まずいような気がする。現時点では恐らく危機としてしか認識していないかもしれないが、もしそういうのが好きになってしまったらと思うと、少し恐ろしい。まぁ絶対無いとは思うけども。
先ほど言い合っていた際に見せられたサイト。いわゆるグレーゾーンの一次創作にあたるもので良いのだろうか?オレやすみかに似た魔法少女がいかがわしい事になっているものだ。割とお世話になっております。
想像上の怪人を使って虐め抜いてくれていてありがたいが、すみかの事はあまり傷つけては欲しく無い。その要望が届いているのか、ダメージのあるタイプは基本的にはオレに似た魔法少女が多い。今度リズと語り合う時間を設けたいところだ。
そんなサイトについてだが、あれを見て疑問に思った事があった。なぜかカギムーの事が載っていたのだ。オリジナルの怪人という扱いではあったが、能力が催眠という形で。どこからか情報が漏れていたのだろうか?そう呟くと、大げさにリズがびくついた。なんか怪しくないか?
「リズ…何か知ってないか?」
「いやぁ?別に何も知らないよ?本当だよ?」
「リズが情報を漏らすわけはないよな?となると…
描いたな?この絵‼︎」
「かっ⁉︎なんでバレて!…あっ」
「なぁカギムー?こいつのこと壁にはっ付けといてくれ!今回すみかにバレたのも!すみかがあのサイトを見たのも!全部お前が原因だったってことじゃねーか‼︎」
「いやその…絵に関してはほんの出来心で…まさかそんなサイト見るなんて思わなかったし…」
「まぁ確かに…?じゃあ罰として!こっちの要望通りの絵を描いてもらう!これで良いな?」
「それで良いのかい?それくらいなら良いけど。」
色々あったが、とりあえずは一件落着といったところだ。とりあえず一息つこうと思ったところで、一報が入る。どうやら怪人が出たようだ。そういえばカギムー以降戦ってなかったな!そうと決まれば戦いだ‼︎
「リズ!撮影よろしく!カギムー!お前はお留守番な!」
今日はどんなピンチに遭えるのか、楽しみで仕方がない。さてさて、今日の怪人は…ふむふむ。これならあんなシチュやこんなシチュが…!待ちきれなくなって、オレは勢いよく玄関の扉を開け放った。
最後の方を書いていて、俺たちの戦いはこれからだエンドみたいに見えるなーとか思ってました。そんな事はないので安心してください。
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
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