sideこころ
ここに来る前。テレビ越しに街の残骸を見た時にしていた嫌な予感が的中してしまった。この姿、そしてあの攻撃の跡。それが指し示しているのは、こいつらはすみか達と同じかそれ以上の力を扱えるという事だろう。かなりやばいな。いくらリズが一緒だと言っても正直不安なんてレベルじゃない。
柄にもなく戦闘の事でビビっていると、何か悍ましいような大きな気配を遠くに感じた。それと同時に、街中にソイツの声が響く。
『どうだ魔法少女…?これが我が力…貴様らの能力を模倣し、強化するなど造作もない事だ…!』
なんだこれ。声が聞こえた瞬間、思わず膝を抱えて縮こまってしまいそうになった。怖い。恐ろしい。まるで夜中に暗闇を覗いた時のような、底知れない恐怖だ。怖さの度合いで言ったらキレたすみかもやばいけど、そんなレベルじゃない。身体がガタガタと震え、足が竦む。声を聞いただけでこれかよ。これが…オレ達が倒さなければならない相手。全ての元凶、ラァス・ビォスか。
「へ…へっ!だだだからどうしたってんだよ!
すみか達だって同じ力を使えるんだ!それに魔法少女の偽物なんて弱いって相場は決まってる!」
なんとか声を絞り出す。最初は変な感じになったけど、喋りはじめた事で少しはマシになった。よし。体の震えも少し収まってきた。やっぱり痩せ我慢でも虚勢を張るのは大事だな。
『ほう…?では良い事を教えてやろう…!
この怪人共はただの模倣ではない…この国に住む全ての者達のイメージを利用して作り出した【魔法少女の怪人】なのだ…!態々人間を捕え続けなければイメージを絞り出せぬ愚図共とは訳が違う…!更に…現在の人間共のイメージも常時利用し、強化し続けている…!
これで貴様らに勝ち目が無い事が理解できただろう…?』
なんとか気合いを入れ直し、奮い立たせた心がまた折れそうになる。なんだそれ。博士達に怪人は人のイメージによって能力を得る。そしてその強さにも多大な影響を及ぼす。更にこうして作られた怪人の能力として特異なのは、人間の願望も混ざる事。酷い言い方をするなら、魔法少女がこんな風な目にあって欲しい…と言ったアレな願望も反映する場合があるのだ。
もし仮に魔法少女の偽物が現れた場合、アニメや漫画だとどんな活躍を見たいだろうか?オリジナルを圧倒する展開?それとも、魔法少女の能力を使って他の仲間を苦しめる展開だろうか?
…そう。つまりアイツらはこの願望を反映させられるほどの力を持っている可能性がある、という事だ。勿論そんな風に思わない人もいるかもしれないけど、ラァスが悪意を持って願望を誘導していれば意味がない。それこそ悪意の数を善意が圧倒でもしない限りは、逆転の目は見えてこないだろう。
「ちょっとズルいだろそれは…!」
『ではな…もう二度と話すことは無いだろうが…せいぜい絶望すると良い…!』
次第に声が聞こえなくなった。どうやらもう話す事は無いようだ。それにしても…非常にまずい。いやマジでズルくないか?しかもリアルタイムで反映されるって事は、戦況の悪化に伴って相手が強化される可能性もあるって事だ。例えばオレがアイツらの攻撃でダメージを受けたとするだろ?それで不安になる人が現れて、あの怪人達にビビったとしたら…その恐怖はそのままアイツらの力に変わると言う事だ。なんだこの悪循環。つまりこっちが勝つには負けそうに見える戦いを防がなきゃいけない…のだが。
「どうするか…『逆転』狙いの通常フォームじゃ絶対前半ボコボコにされるぞ…?」
「僕が居るとはいえ…レイスターレットの能力を使える銀の怪人、あいつはかなり強そうだよ?
周囲に攻撃の余波が行かないように戦うとしたら多分1対1で遠く離れて戦わないと難しいだろうね…」
「となるとオレは3人を止めとかないといけない…まぁそれしかないか!」
リズの見立てで言えば、銀の怪人単体なら余波含めて完封できるそうだ。確かにアイツが暴れまくったら街中…下手したら避難所ごと消し飛ばされるかもしれない。そう考えると残り3人の青、紫、緑の怪人はオレが対応しなければならないだろう。正直厳しいだろうけど…銀の奴が暴れるよりかはマシだろう。使える能力と被害を考えても、斬撃も爆破もせいぜいが戦場全体を巻き込むレベル。あらぬ方向に攻撃がすっ飛んだだけで壊滅的な被害が出る光波よりマシだろう。ってかあれもだいぶ壊れ能力だよな…?敵に回ったらやばいとは思っていたが、まさか本当に敵が使ってくるとは。
「まぁ…やるだけやってみるか!」
「そうだね!行くよこころ!」
「「「「…!」」」」
こちらが構えれば、空に浮かぶの怪人達もこちらに意識を向けて来た。いざ開戦…なのだが。ちょっと気になっていることがあったので聞いてみる。
「………そう言えばちょっと良いか?」
「「「「…ッ⁉︎」」」」
戦いの火蓋が切って落とされた…タイミングで無理やり消化して止めたせいで、リズも怪人達もズッコケかけた。リズはともかく、もしかしてこいつらノリ良いのか?
「…えぇ⁉︎
今完全に戦う流れだったよね…?」
「あはは…いやぁ…確かにそうなんだけどな?」
責めるような5つの気配に耐えきれず頭を掻く。突き刺さる視線が痛い。
「その…いっつも怪人って口上あったのになかったじゃん?ほら、名前とかそういうやつ…」
「確かにあったけどさぁ⁉︎
まったく…やっぱりこころらしいね、そういう所は…!
まぁおかげで少し気が楽にはなったけどさ?」
「へへ…!だろ?これがアイスブレイク?ってやつ…」
「是ガプリズムハートカ」「確カニ馬鹿ソウダ」「一応名ダケデモ明カスカ?」「明カシテシマオウ…コレ以上ペースヲ乱サレル訳ニハイカヌ」
さすがオレだ。向こうをこっちのペースに巻き込む事で、気が滅入りそうな状態から雰囲気を持ち直した…っておい待て。今オレのこと馬鹿って言ってなかったか⁉︎
「おい今馬鹿って言ったか⁉︎馬鹿で悪かったなこの…!」
「もう…!こころ、暴れて突っ込まない!よーしよし落ち着いて?ほーらどうどう…」
「クゥン…ってオレは犬じゃねぇ!リズまで何乗っかってるんだ!」
「ヤハリ馬鹿ダコイツ…」「ペースヲ掴マレタノハ誤算ダガ…許容範囲カ」「アレデハタダノ犬ジャナイカ?」「犬ノココロ…カワイイ…」
「「「オイ自我出テルゾ」」」
「…ハッ!」
なんだコイツ。まるですみかみたいな…いや待てよ。もしかして元の魔法少女の人格の影響を受けているのか?確かに強力な力だが、その分元が強く出過ぎている…とかなのだろうか。
「自我出タラマタキレラレルゾ」「マダ死ニタクナイシナァ…」「仕事ダト思ッテ割リ切ルシカ無イゾ」「ダッテ…子犬ミタイデカワイイシ…マァヤル事ハ変ワラナイケド…」
「「「「魔法少女ヲ此処デ倒スカ足止メスル!」」」」
「街破壊シテ疲レタンダガ?」「仕方ナイダロヤラナキャ死ヌシ」「ジャアサッサトヤルカ…」「アノ白イノハボクノ獲物ダネ…」
想定していた性格と違いすぎてなんだか拍子抜けだったが、星型のアイツはギラギラとした眼光をリズに向けている。好都合だ。うまくいけばこちらの作戦をそのまま通せるかもしれない。
「ソリャアンナノⅠ以外相手出来ナイダロ」「ワタクシタチⅡ〜Ⅳハプリズムハート相手カ?」「Ⅳ…一人称引キ摺ラレルトハ言エ似合ッテネェナァ…」「ココロヲイジメ放題…?最高…!」
ちょっと怪しい言葉が聞こえたが無視だ無視。それより…わざわざ中断したもう一つの理由をまだ解決出来ていない。そう、名乗り。まだ名前を聞いていないのだ。順番にバラバラで来たなら分かりやすいが、4体同時に来られると流石に分からない。知っておいて損は無い…と言うか知らないとリズとも連携し辛いし、さっさと言って欲しい。話し込んでしまって言う気配も無さそうだったし、仕方なくもう一度催促する。
「あの…話してるとこ悪いが…名乗って貰ってもいいか?
どうせ戦うんだし、ただ待つのはあんまり好きじゃ無いからな!」
どうだろうか。これで通じるなら良いが…果たして。
「確カニナ…ジャアスルカ?アッ私ハⅢダ」「ワタクシハⅣダ」「ボクハⅠ…怪人最強サ…」「私ハ…ココロガ勝ッタラ教エテアゲルワ」
「「「自分ダケ『Ⅱ』ッテ名ヲ隠シテンジャネーヨ‼︎」」」
「グヘェ⁉︎何モソコマデシナクテモ…」
ダイヤの意匠がある奴…もといⅡが他3体にぶん殴られた。…なんだろうか。コイツらは今までのシリーズの奴らと違って、和解出来そうな気がしないでも無い。これまで居た怪人達にもそういう奴らは居たし。それに先程の言っていた事が事実なら、従わなければ死ぬ状況で無理やりやらされているようだ。これなら…ラァスさえ倒せばどうにか出来るかもしれない。あくまで可能性の話ではあるが。
「サァテ全力デヤリマスカ…」「本気モードダ!」「化ケノ皮ヲ剥ガス時ガ来タ!」「実質変身ジャナイ…?」
「なんだ…?エネルギーが集まってる?」
「この感じ…まさか⁉︎模倣したのか影響されたのか…どっちにしても驚くべき変化だね…!」
名乗りも終わり、戦いを始めようとした怪人達の様子がおかしい。何か殻を破るような…孵化するような…そんな感じ。一体何が起こるんだ⁉︎いわゆるあるあるの場合、此処からさらにヤバい化け物になるのだが。
他よりも若干早めに変化し出したⅡが、文字通り殻を破り捨てるように元の身体から出てきた。にしても脱ぎ方が雑だ。最後の方引きちぎってたぞ…って………え?
「…ん?あれ?なんで此処に?」
「違うよこころ、あそこに居るのは怪人だ!」
「いやいや…だってどう見ても…なぁ?」
一瞬目を疑った。いや…今もこの目を疑っている。だって。ここにいるはずはないのだ。今も家のベッドで療養中のはずだ。それは間違いない。だとしたら…コイツらは怪人という事だ。でもあり得ない。そっくり過ぎる。髪色は限りなく続きそうな深淵を思わせる、漆黒。全然光を反射していないせいで、その部分だけ黒塗りになっているかのようだ。その他、所々カラーリングや意匠が少し違うが、紛れもなくいつも見慣れた姿。
「なんで…すみかが居るんだ?」
青木すみか。魔法少女・ブライトダイヤ。オレの幼馴染。守るべき相手であり、助け合う相手でもある。幼い頃から出張ばかりの両親は殆ど家に居らず、オレからすればもはや家族と言って良いほど。そんなあいつが、怪人から出てきた。いや違う。リズの言う通り、『アレ』が怪人なんだ。髪色も衣装も中身も、確かに違う。けど、あまりにもそっくり過ぎる。
「あ…あぁ…あああああ…!」
痛くもないのに、目がチカチカする。頭がクラクラして今にも倒れそうだ。いや、もう倒れ込んでるか。ガクッと膝を付いた事が功を奏したのか、座り込むだけで済んだ。目の前の現象に、脳が理解を拒もうとしている。だって、あいつが怪人って事は。オレはアイツと戦わなくちゃいけなくて。傷つけなきゃいけなくて。
「うぁ…ぅ……い…やだ…!」
………そんなの無理だ。今からこいつと…偽物だと分かっていたとしても、すみかと戦うなんて事は。出来る訳がない。出来っこない。やりたくない。戦いたくない。ダメだ。どうにかしなきゃいけないと分かっていても、戦えそうにない。姿が似ているだけの偽物だとしても。すみかを傷つけるなんて事。
「こころ⁉︎こころ‼︎しっかりしてこころ‼︎
…っまずい‼︎変身が…解けて…‼︎」
オレには、出来るわけ…ねぇよ…!
思ったより開戦までが長引いてしまいました…
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
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桃井こころ/プリズムハート
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青木すみか/ブライトダイヤ
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藤原なぎの/グリッドスペード
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緑谷よつは/シャイニークローバー
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白銀あかり/レイスターレット
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リズ/プリズムイクリール