side こころ
どうしたら良いんだ。ニタニタと笑って見せるあの姿は、細部は違えどすみかそっくりだ。戦意が保てない。多少似た格好程度ならどうにかなった。けど、こうも似ているなんて無理だ。
戦闘中に変身が解ける、という初イベントがこれなのどうなんだ?とか、普段ならそう思えたのかもしれない。せめて普通戦おうとした上でやっぱり攻撃できない…とかの言わばお約束とも呼べるやつをやるべきなのだろう。なんかそれもそれで嫌だが。けど、いざ相対してみるとこれだ。なるほど。確かに戦える気がしない。髪の色が違うから偽物!偽物なら倒せる!…なんてとてもじゃないができない。
「アレ?変身解ケチャッテナイカ?」「ヤッパソックリノ姿ッテノガ効イタンジャナイノカ?」「効キスギデ流石ニ気マズイゾ」「戦エナクナルココロ…カワイイ…」
「「「オマエハ本当平常運転ダナァ…」」」
「デモコノママナノハ解釈違イ…早ク立チ上ッテ…!」
「自由人過ギル」「コイツト同期ダト思イタク無イ」「コイツダケ製造時ニ分量ミスッタンジャネーノ?」
「まさかここまでなんて…!なんとかしないと!」
俯いて頭を抱え込むオレに、リズがなんとか説得しようとしている。確かにお前の言う通りだ。姿が似ているだけでしかない。中身は全くの別物だ。でも、無理だ。このままじゃダメだと分かっていても、似ているだけの相手だと認識していても、傷つけなきゃいけないと思うと身体がいう事を聞かない。
「参ったなぁ…相手の見た目を変える技なんて無いし…!幸い向こうは待ってくれるみたいだけど…」
「待ツゼー」「トイウカ倒スカ時間稼ゲバ良イシナ」「寧ロ戦ワズニ居ラレルナラ楽ダゼ」「立ッテ…立チ上ガッテヨココロ…!」「何カコイツヒロイン面シテルケド…オマエノセイデコウナッテルノ分カッテンノカ…?」
「本当…助かるけど助からない絶妙な相手だね君達は‼︎」
「なぁリズ…オレ…どうしたら…」
分からない。どうやったら良いのか。向こうは本気なのかふざけているのか分からないけど、あの顔で、あの声で言われるのにムカつくと同時に、少し勇気づけられている自分もいる。どうなってるんだオレは。頭がおかしくなってるんだろうか?敵の言葉に、こんな状態にさせた張本人の言葉で元気が湧くとか。
思っていた以上にオレはすみかの事を大切に思っていたらしい。面影一つで戦えなくなって、それだけで勇気づけられるなんてどうかしてる。
「……っ!来た!これなら!」
「来たって何が…?」
リズが取り出したのはスマホだ。通話中になっている。聞こえてきた声は…まさか。だってまだ目を覚ましていない筈だ。あんなに起きるそぶりが無かったのに。
「すみか!起きたのか⁉︎無事だったか?」
「『えぇ、特に後遺症も無く。助けてくれてありがとう…ってそういうのは後ね!それより今は…』
「戦わなきゃいけないのは分かってるけど…すみかの面影のせいでどうしても…攻撃どころか…変身も…」
「『そんなに想ってもらえてるなんてうれし…じゃ無くて。そこまで重症とはね…そんなに嫌?確かに色々似てるけど、そこまでなるほどじゃ…』」
「…………」
「『…ねぇこころ、ちょっと想像してみて?もし私がそいつにボロボロに傷付けられてるとしたら…』」
「絶っっっっ対許さないぞ?」
「『…まだ話の途中よ?でもその感じなら大丈夫そうね。戦えなくなりそうなら、そうやってもしもを思い浮かべれば大丈夫。それにもし貴方達が負けたら本当にそうなる可能性だって…』」
「嫌だ!そんな事…絶対にさせない!」
「『えぇ、信じてる。頑張ってね、こころ!』」
「良イ話ダナー」「奮イ立ッタヨウデ何ヨリ」「エッコレ遠隔デ見ラレテタノカ」「ホンモノ…許サナイ!デモ奮イ立ッタシ少シ許ス!」
良かった。すみかは無事起きたらしい。この様子なら他の皆も時期に目覚めるだろう。もしこの戦いが終わっても、皆が目覚めなかったら。そんな事を考えていたせいもあって、正直心が折れつつあった。けれど、もう問題はない。戦力的に部が悪い相手ではあるけど、どうにかする。してみせる。
「良かった…で、戦えるのかい?」
「…勿論だ!なんたってオレだぜ?」
「だね!ってあれ?いつもとちょっと違う…?」
覚悟が決まった事で、自然と姿が変わっていく。オレの戦闘服、魔法少女としての姿。けれど、いつもとはどこか違う。通常フォームに似ているけれど、白いラインの意匠が全身に施されている。この感じは…もしかして。固有魔法、逆転。その力を引き出せたって事なんだろうか。
「その通りみたいだな!ちょっと違う程度だけど…新フォームみたいだ!」
「じゃあ…やろうか!僕はⅠを!」
「おう!残りは任せろ!」
「カナリ待ッタゾ」「時間稼ギモココマデカ…」「新フォーム…イイ…」「コイツ本当ニコッチノ味方?ダイブ怪シクナッテキテナイカ?」
「待たせたな!3体纏めて相手してやる!」
いける。新フォームの強さは未知数だが、この感じ。3体を押さえ込むどころか倒し切り、早いとこリズの助けに行ってやる。
両方の拳をぶつけ合わせ、気合を入れ直す。さぁ…ここからが最終決戦だ!
「ぁ…ぐ…げほ…!」
「弱ェ…嘘ダロ?」「コノ流レデ弱イ事アル?」「痛ブリ放題…楽シイ…!」
…前言撤回。やっぱダメかもしれねぇわ、これ。
おかしい。アイツらが言うみたいに、どう考えても圧倒する流れだったはず。この姿だって、普段よりも逆転の力が強いはずなのだ。状況だってそうだ。初めて戦闘中に変身が解けて実質?敗北的な流れから奮起して、大逆転をかます流れ。そのはずなのだ。だが、実際のところそうもいかなかった。
「じゃあ…いくぜ!」
「ワタクシノ斬撃ヲ喰ラエ!」「ヤッパ口調似合ワネェナオイ」「イッソオ嬢様言葉ニシタラ?」
「…っ!」
景気付けに一発ぶん殴ってやろうと接近するも、放たれた無数の斬撃を前に回避を余儀なくされた。それでも隙を掻い潜り、Ⅳの眼前にまで拳を持っていく事には成功した。しかし、見えない何かに阻まれたように、それ以上拳が進まなくなった。バリアだ。Ⅱが扱うこのバリアは、不可視で不定形。やっぱりズルいぞこれ。
「くっ…放せぇ…っ!」
「良クヤッタⅡ!」「ガッシリ捉エタ…ナンカ台詞ガチョットイヤラシクナイ?」「イヤオ前本当ブレネェナ⁉︎」
更にバリアが変形し、こちらに貼り付くようにじっとりと体を覆い、動きを封じていく。
「この…がはっ⁉︎うぇ…!」
動きにくくなったところで背中を爆破された。文字通り体を焼く痛みがじんわりと広がる中、衝撃波が体内の臓器を易々と貫通していった。命中した背中から広がっていく衝撃の波は、内臓を無理やり揺さぶる吐き気と痛みをこちらにぶつけてくる。
「…っぐ…うああああああ!!!!」
しかも、爆破は一発だけではなかった。一撃目が直撃してオレが怯んだ直後だ。数発どころではない、数十発の爆破がオレを全方位から襲った。タイミングを見計らってバリアが解除されたこともあり、怯んだ事で崩された体勢がさらに崩れ、躱す事も出来ずに直撃を受けてしまったという訳だ。
「ぁ…ぅあ…」
全身の連続爆破は先ほどの背中爆破の比ではなく、細胞一つ一つを掴まれて揺さぶられたかのような感覚だった。皮膚の表面全てを焼き切るかと思うほどの痛みもさることながら、強力な衝撃波によって全身がボロボロだ。骨も相当な数が折れたのだろう、文字通り立っている事も出来なくなり、地面に崩れ落ちそうになる。
そのまま地面に倒れ込まなかったのは、逆転の魔法少女としての矜持ではなかった。
「う゛っ…!あ゛ぁ゛‼︎い゛っ゛…でぇ゛!」
倒れ込もうとした方向に、容赦なく飛んでくる巨大な斬撃。その圧力によって無理やり体が起こされている。前に倒れそうになれば、斬撃が肩から腹にかけて直撃する。切り裂かれる痛みは何度も味わっているが、焼かれた上衝撃波で体がボロボロになっている状態で受けた事もあり、これまで受けた中で最も痛い斬撃になっている。
「…っぐ…ぅ…あ゛ぁ゛…!」
無数の小さな斬撃、大きな斬撃。交互に繰り出されるそれによって感じる痛みはまるで違うのに、そのどちらもがこれまで受けた斬撃の痛みを常に更新し続けている。傷を抉る形で切り裂かれ続ける感覚相手に、出来る事は意識を保つことだけ。
「…ぁ…う…」
斬撃が止み、その場に倒れ込んだオレを支えたのは、不透明のバリア。その発動者は、言わずもがなⅡだ。だが。
「…ぁ…すみ…か…?」
無意識に彼女の名を呼んでしまう。ここにいる筈は無いのに。聞こえもしないSOSは、彼女の元には届かない。それどころか、眼前の敵の地雷を踏み抜く事となる。
「ココロ…ワタシガ…Ⅱガココニ居るノニ本物ヲ呼ブナンテ…許セナイ!」
「う゛っ゛⁉︎ごぼ…っ⁉︎」
体を包み込むバリアによって四肢の動きを完全に封じられ、怒るⅡの拳が降り注ぐ。最初に直撃したのは腹。爆破とも違う、貫通とも違う、斬撃とも違う。鋭さ、鈍さ、吐き気、痛み。それら全てを内包した一撃は、易々とオレの腹筋の防御を貫いた。固有魔法の再現にリソースを割いているのか身体能力はさほど高くないようで、ありがたい事に威力自体はそこまでではなかった。まぁそれも、いつものオレだったらの話だが。
度重なる攻撃によって、身体中ボロボロ、ズタズタにされたオレは、もはや撫でられただけで痛む。そんな状態で殴られたのだ。耐える耐えないというレベルではなく、ただ痛みを受け入れることしか出来ないのだ。
「ぉ…あ゛ぅ゛!」
「苦シムココロ…スッゴク可愛イ…!」「酷イナコイツ…」「足止メ出来テルカライイガ…」
正しく、蹂躙。四肢を封じられ、文字通り動く事も出来ないまま、ただ殴られる痛みを享受するだけ。なんだこの体たらく。任せろなんて啖呵を切ったのに、このザマだ。色々度外視すれば、ヒロピンとしても結構良いシチュエーションではある。仲間の力を使われてボロボロにされた上、手も足も出ずに痛ぶられている訳だし。痛みもこれまで以上の素晴らしいものばかりで、120点満点をあげたいレベルではある。
…でもそこに至る流れとしてこれはどうなんだ。明らかに逆転勝利を収める流れのはずなのに。オレの『逆転』が遺憾無く発揮される状況のはず…あっ。まさか。
この新フォームは恐らく、『逆転』の力を最大限に活かす、もしくは逆転そのものといった状態なのだ。
…と言う事はだ。もしかして最初の部分は、つまり今に至る戦いは全部…ほぼ負けまで持っていかれるのが決まってたって事なのか!?!?!?嘘だろ!?!?!?
身動きが取れない状態で甚振られながら、実質足掻いていたのがそこまで意味がなかったかもしれない事実にかなり落ち込むオレなのだった。まぁ…本当に負ける直前までいけば逆転してくれるはずだ。多分な。
…本当だよな?単にオレが弱いだけとかそんな事、無いよな⁉︎
新フォーム、イメージはいわゆる令和ライダーの最終回限定の初期そっくりなフォーム
モチベup&番外編用?人気度アンケート どの魔法少女が好き⁉︎
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桃井こころ/プリズムハート
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青木すみか/ブライトダイヤ
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藤原なぎの/グリッドスペード
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緑谷よつは/シャイニークローバー
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白銀あかり/レイスターレット
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リズ/プリズムイクリール