<横須賀港沖でタンカーが爆沈し、米駆逐艦が損傷した件について政府は──>
<トレーディングカードゲーム、マジック・ザ・ギャザリングを用いた広域計画殺人は、
価格崩壊と流出が関与しているという見方も───>
今日もろくなニュースがないなぁ。杉方さん……杉方と一緒に、ココアとカロリーメイトをかじりながら休憩を挟んでいた。あれから一週間経過するというのに、まだまだ世間が騒がしいね。
「おーい、巡回代わってくれーい」
「「うーい」」
警察官なのにだらしがないって?
ONOFFきっちりする質なんだ。日がな一日きっちりしてたら、気の抜きどころがなくて
ストレス抱えて髪の毛散らかるぜ?
もちろん交番の裏から表になれば、ちゃんときっちりするさ。
それに交番勤務は、親身が一番合っている。
暴力と威圧は、組対の四課に任せとけばいいさ。
今日の巡回はママチャリのほうじゃなくて、ロードバイクの方。
もちろんヘルメットをして、安全運転に勤しむ。
しばらく商業区の方を走っていると、何やら姿格好が見窄らしいにもかかわらず
結構な速度で裏道へ消えていった。面倒なことしやがって。
これじゃあどっちの警官を呼べばいいかわからないじゃないか。
早速自転車を角へ寄せて停車。鍵を締めて、裏道へ入っていく。
ここらの裏道は、主幹とはちがう裏通りへの道って感じ。
しかしどうやらこの道だけは、商店街側を表とする裏側のようだ。
階段やら入り組んでいて、やつがどこへ行ったかわからない。
ただの遅刻魔ならともかく、ナニカから逃げるような表情をされちゃあ、
警官として黙ってられないからな。
案外人間って、後ろから脅威が襲ってきているときは想像以上の速度を出す事ができる。だから足早にどこか高い場所に逃げている可能性がある。
すぐに裏口階段から登っていって、どこに居るかを探る。
そもそもなんでこいつに執着しているかと思われるけど、
なんとなくだけどやべえ香りがするんだよ。
……
お、衣擦れの音。こっちだ。
「私、南交番の巡査です。そこで何をしていらっしゃいますか?」
物陰に隠れて、声を板に反射させるような感覚で喋る。
動きが止まった。太陽の光が天井に阻まれ、風が通り抜けるこの物置のような場所。
昼間だから明るいが、夕方だときつかったね。
おっと、動きが止まって金属製の音。
ネジが落ちていたので、対岸へ放物線を描かせる。
コンクリに合金の音が響く。それに気づいたのか、火薬を発破した音が聞こえるんだ。
つまり、発砲しやがった!
「米花町南商業区、合田商業ビル、9F吹き抜けにて発砲事件!
警官をよこしてほしい!」
<了解した。一課の刑事をよこした。即応を頼む>
「かしこまり!?」
居場所がバレないように、近くのものを放り投げたり中腰で移動しまくっていた。
しかし的確に射撃してきたぞ、こいつ!
ひいいい、かすったかすった!
拳銃相手の肉弾戦は、現実的じゃないって言われている。
だから物陰に隠れて時を待っているんだけど、そんなことしてたら距離を詰められて
射殺される。
ちょかまかと動き回って、奴の銃弾をなんとかして減らさないとなあ。
まずはベルトに差してある懐中電灯で、探照灯のように使ってみようか!
二発の銃弾を撃ち込んできた。
使用しているのは普通の拳銃か、それともワルサーとか色々あるね。
規格としていえば、10発前後と記憶しているので、そこらを目安に行動しよう。
リローディングの時間は……音を聞くに、3秒ほどかかっているね。
真っ暗ではないけれど、まだ実行犯の素顔を見れていない。
おっとパトカーの音が聞こえた。
しばらく時間稼ぎしてやろう。
と思ったけど、犯人が逃走を図りだした。
コナン君ならそこら辺の瓦礫をふっとばして、背中を殴ればいいんだろう。
だけどこちとら警察で社会人だから、そんなことをすれば傷害罪になってしまう。
融通が効かないのは、法律あるあるだからね。変なことをしないほうがいいのは、
当然だったりする。
いやー、死にそう。
逃げる奴を陰ながら追っていたんだけど、
肩に一発かすめてね。少なくとも服が破けているだけだから、なんともない。
だけど、確実に心臓を狙ってきているから、腕に自信ありのニキかもしれない。
逃走犯は階段を降りる僕に、下から射撃してくる。
ハッハッハ! タイミング見てるな? 狂わせてやんよ。
腕の振り方、目線、呼吸、歩幅と動作準備等、色々と知識を総動員して
偏差射撃を防ぐんだ。
よし、シールドを持った機動隊が犯人をタコ殴りにして捕縛したぞ!
「君が応援を呼んだのかな?」
「はい、米花町南交番の河野です」
「そうか。私は捜査一課の警部補、白鳥だ。
現場を引き継ぐから、病院に行ってきなさい」
「ありがとうございます。失礼いたします」
念の為病院に行って治療を受けようとしたんだけど、軽いやけどだったので湿布を含めた薬をもらって退散したぞ。領収書ももらったし、引き継ぎの報告書書かなきゃ。
ちなみに例の男は、階下にある保険屋のサーバーを狙ったらしい。
情報を抜くためにやっていたが、見つかって焦ったので発砲したってさ。
嘘八百すぎて笑えてくる。じゃあ、あの必死な様相はなんだったんだよ。
来た方向含めて様子を赤裸々に、調査に来た白鳥警部補に話してやったぞー。