「100件目の事件解決おめでとう!」
「ありがとうございます! 死なずに生きてこられたのは、偏に警察学校でのしごきのおかげです!」
「ははは! さて、何か褒美がいるかね?」
「ロードバイクが壊れたので、修理代を経費でお願いします!」
「よしわかった!」
理解ある上司、中村慎吾。彼もまた、この町の被害者だ。
休憩中にちょっとした雑談で言われたことがある。
この町は死神か悪魔の巣窟だってつぶやいて。
大事な親友を殺されてしまったんだとか。その親友は分け隔てなく寛容なんだけど、それがたたって不良な外国人にリンチされてしまったんだ。
残っていたのは、頭蓋骨に赤ワインがたまっていたくらいとのこと。
残忍だ。
「河野。死ぬなよ」
「はい、わかってます」
僕は冷めきった缶コーヒーをあおった。
等価交換異能で、人脈の塊であるコナン君と知り合えたがそれ以上のリスクが常に身にまとっている。
精進しないとな。それにお母さんと米国で頑張っている弟の為に生き残らないといけない。
僕には死ねない理由がある。
「で、今日は交通整理ですか?」
「信号にやらせたかったんだが、どっかのタンクローリーが横転だとよ。
中身は過剰積載だ。日雇い労働者がリットルとバレルを間違えたとか」
「何やってんですかね」
「全くだ」
あー、嫌な予感がする。
特に西から東へ向かうこの道路。そう、その西のほうから、超重大なインシデントがやってきて。
一台だけ、妙な動きをするのがいるね、いるいる。
「職質してきていいですか?」
「かまわん、行ってこい」
「ありがとうございます」
昔は植え込みとかあったけど、拡幅工事や維持費の削減でコンクリブロックの中央分離帯とポールだけになってしまった新しい道。
ここをポールや分離帯を伝っていって、渋滞で麻痺ってるその車に近づく。
ぽっけにしまってある段ボール切断ナイフとPPバンド切断ナイフ。これを上から触って確認したのち、職質を開始する。
車窓を開けてくれて対応をしてくれるが、なんだか挙動不審だ。
車内にシンナーや麻薬系特有の不思議なにおいはしない。
だったら、トランクだ。
「失礼しまーす」
でっかい、モノ。
あ、タイマーが発生した。
ってそうじゃねえ! 爆弾だ!
「ひゃはは! こんな渋滞じゃ避難できねえだろ!」
「全員吹っ飛びやがれ!」
「残念だったな。警察官は、気合と根性で成し遂げるんだよ!」
僕はこの何が入ってるかわからない、ちゃぷちゃぷしている爆弾付きの段ボールを抱えて近くの橋へ駆け出した。
もちろん車の屋根を踏んずけてわたっていく。最臭兵器のたくましい民衆並みの行動だ。
走ること4分34秒。橋の真ん中まで来て、すぐに物品を川に投げ捨てた。
死ぬよりましだろということで、すぐに逃げる。
幸い付近に車の影はない。
耳にはヘリコプターの羽音を二つ確認したとき、膨張した熱風が―――。
「えー、全治1週間ですね」
「はい」
今、米花病院です。警察病院じゃないのは、寝ている間に発生した地下異臭事件のせいでたくさんの警官が入院しているからだ。
「皮膚は爛れてましたか?」
「爛れてませんよ。その代わり吹き飛ばされた瓦礫で、背中全体が切り傷だらけでしたので縫いました」
「抜糸します?」
「キチン材質なので、皮膚と一体化しますよ。
一応見舞いも受け付けるということにしています。よろしいですか?」
「はい、お願いします」
「では、あと四日間安静にしておいてください」
「ありがとうございました、風戸先生」
そうして個室から出ていく担当医。
まさかここに、瞳の中の暗殺者の犯人がいるなんてなぁ。
心療内科の先生だけど、外科もやっているようだ。
彼の腕や心理学的知見は素晴らしく、事件が多発してけが等を負って身近な人や
守るべき人が亡くなりPTSDを負ってしまった警官の心を癒しているらしい。
僕は今のところぎりぎりで助けられているんだけれど、
いつ亡くなってしまうか。
それがとても恐ろしい。
特に原作の主要キャラクターがバタフライエフェクトで亡くなった場合、僕は外に出られなくなるだろう。