一般警察官の日常   作:名無しの権左衛門

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公金横領・工事費横流しの告発、公共インフラ爆破事件の顛末

 

「ぐは!?」

「どわっ!」

「へぶっ」

 

 バリケードを設置したと思ったら、何らかの爆発により窓が消えてた。

いやいやいやおかしいでしょ!?

あと少しで警察が入ってくるっていうのに、そんなバカスカ撃ったら射撃地点がバレるし

火点もわかるんだぞ?

 さっさと帰ってくれ!

こっちは怪我をしているんだ。ただでさえ痛くてたまらないのに、我慢しろってのがきついんだよ。

 

「部屋から出てください。もうここは危険ですっ」

「いや、しかし河野さんっ、血が!」

「僕のことは構わず、早く遮蔽物の後ろへ逃げてください!」

「すみません、まさかこんなに必死だとは……」

「大江戸、生きろ! たしか、第三者提供は、提供元が生きて立証しないと無効になると聞いた。だから、生きろ!」

「もちろんだとも。今更くたばるもんかっ!」

 

 よし、二人の士気は高い。

僕は脚を撃たれて、腕をかすめて腹を貫通されてとだいぶ意識が朦朧としてきてる。

だけど転生特典の一環なのかな? 意外と耐えられるもんなんだね。

 ああ……寒い……。

そう思っていると、なんか崩れた。

崩れる前にキラリ☆、と死兆星が瞬いた気がする。

 

 一瞬の浮遊感と、背中への大ダメージ。

ついでに顔面にかけられる粉塵。

ダメージを抑えるために、寝転がっていたのが功を奏したのかな?

 

 このあと無線にかかってきた警部に返答して、そのまま気絶。

瓦礫に埋もれていたが、ベッドや机といった部屋の小物が重なって

コンクリの下敷きになる事は防ぐことができた。

 

 

 

 

 

「全治1ヶ月ですね」

「はい」

 

 ここは米花総合病院。崩落した緑台警察病院から救助された僕は、意識を取り戻してからそう言われたんだ。

担当医はなぜか風戸先生。貴方中央にいませんでした? あ、異動っすか。

 ところで腕の調子が悪そうなんですけど、ちゃんと療養しましょうよ。

というと苦笑いで、患者が僕を待ってるから無理と笑われた。

 

 内心クッソ苛ついているんだろうなあ。

とにかく、風戸先生に助けられている人は、おもったより大勢いるので変な気は

起こさないでほしいな。今回もそれで助かったんだし。

 

 さて、病室で体を起こして、テレビカードに課金し事件がどうなったのかを確認する。

意識を失ってから3日経過している今、面会拒絶で放置されてきた。

結構重症だったらしい。幸いにして弾丸が貫通していたため、そこまで損傷してなかったのがよかった。

流石に警察になって1年ちょっとで殉職とか勘弁してほしい。

 まだ結婚してないし、弟がプロになるのを見てないし、お母さんに孫の顔を見せてやりたい。だから、ここでくたばるのはゴメンだったんだ。

よかった~生きてて。

 

 なお、鎮痛剤が切れたときの激痛は、推し量れないものとする。

 

 

 

 ここ1週間は、激痛で失神しまくってたぜ。鎮痛剤が必要かどうか聞いてきたが、断固拒否した。

死ぬほどじゃないし、本当に痛いときの感覚を覚えていればあの時よりマシで動ける。

風戸先生にそう理由を伝えると、ちょっと悲しそうな顔をしてた。

あーうん、警察官の殉職率やばいから……。

 僕の事ばかり話していたけれど、面会が開始されたからそっちについても話すよ。

まずはいつもの中村巡査部長と美堂巡査長。

お二人に呆れられるとともに、無事だということでしばらく雑談した。

 

「大江戸さんはどうなるんでしょうか?」

「ある程度減刑されるが、それでも執行猶予にならず実刑判決だろうな」

「そうですか」

「流石にな」

 

 死傷者は出なかった。しかし、その他が大規模過ぎて、情状酌量も考えられたが市民団体から抗議や署名で実刑を希望されたんだ。市民の溜飲を下げるため、渋々と言った感じ。まあ、仕方がないさ。僕も一般市民で巻き込まれて、それを執行猶予になったら抗議するよ。

 これで強行採決したら、裁判長の死体が次の日に見つかるかもしれない。

そういう意味でも、実刑になったんだろう。

 

 次に公正取引委員会が、犯則調査で多数の企業の証拠資料を差し押さえるのに成功。

そのまま経済犯罪と刑事犯罪として調査・捜査が行われ、白日の下にさらされる。

コレにより多くの企業や財閥に対して、インフラ関係を含めた全てに業務停止命令がくだされた。

部署の切り離しに成功した企業もあれば、そのまま潰れた企業もある。

 絶対的な信頼と高品質を売りにしていた日本企業は、インフラの虚偽申告により国際的な信用がガクッと落ちてベトナムの高速建築やインドネシアの橋梁建築の落札競争に敗れたらしい。

 

 次に容態が安定して、面会可能人数が増えてからを話そうかな。

まずは佐伯さんと黒羽くん。

いつもの大怪我ということで笑い飛ばされたし、黒羽くんからはお見舞いの鉄分入の菓子をくれた。

更に、退院したら大江戸に会いに行く事を言われる。

 理由として佐伯さんは、大江戸さんにそう伝言されたんだってさ。

たしかに伝言が一番早いし、僕も佐伯さんや黒羽くんがいれば友達の友達として会うことができる。

それに担当警官ではないので、非番の日であればちゃんと面会自体できるはずだ。

 

 また、実刑判決を食らった犯人が、他者に手紙を出すのは可能だが内容が検閲される。

そうなると本当に伝えたいことがわからないし、なんなら会いたいという言葉も感謝の言葉に置き換わるんじゃないかな。だから大江戸さんの判断は懸命なんだ。

 

「じゃ、あと2週間後か」

「ちゃんと来てくれよ、巡査」

「わかってるわかってる」

 

 

 退院する前に面会希望の書類を提出。一週間で受諾されたから、佐伯さんと黒羽くんと一緒に大江戸さんに会いに行ったよ。

呼ばれた理由は、今回のやらかしの謝罪と建築物を破壊してまで注目を集めたかったことについてだ。

 

 

<容疑者の動機は、以前送った告発文書を隠蔽されたことで、注目を集めるために行った

とのことです。これについて、公正取引委員会は事実無根であると証言しています。

しかし、警察は容疑者が送った日付と照らし合わせ捜査した結果、

シュレッダー準備の紙山に積まれていたことが判明しました。

これについて、隠蔽工作や情報漏洩が濃厚であるとし、再発防止策を考案すると発表しました>

 

 

 杉方さんが自宅で育てたクッソ甘い桃を齧りながら、交番にあるTVでことの顛末を聞いた。結局なあなあで終わりそうだなあと。

大江戸さんが全く報われないで終わってしまう。非常に無念だけど、隠蔽体質はいつまでも変わらない。お役所仕事というのは、こういうもんだ。

 はーい、やってまーす(チッ、うるせーな)ってやつだからね。

これについて僕らがやることはなにもない。

 

 あ、そうだ。昼から前の職場にいた白川さんと一緒に、訪問巡回という名の食べ歩き

をしようぜって誘われているんだった。

本来なら管轄が被る行為はだめなんだけど、米花町は特別なんだ。

 巡回範囲の殆どが他の交番と重なっているのに、殉職や離職も相まって人手が足りない

ということもあって、わりと出先で他交番の巡査とばったり会うことがある。

それを活用して、南交番と米花町交番の範囲が被っているところだけでも一緒に行こうとなったんだ。

 

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