私、魔術師です   作:みえふぁ

13 / 46
燃やせ、燃やせ!

 友人が早速不老の魔術習得に挑み、二日で挫折していました。

 先達がそれを身に着けるために、何十年と時間をかけてきたような技術です。いくら昔より洗練されたと言っても、ちょっとやそっとで習得できるものではないようでした。

 まあ、魔術師みんなが不老になっちゃうと、それはそれで別の問題が出てきそうなので、これでいいのかもしれませんね。

 

 さて、先日はゴブリンの群れの討伐に行って来ました。さすがに今回は一人では辛いので、友人に同行してもらいました。

 冒険者なら必ず一度は目にするであろう魔物、ゴブリンです。一体一体は強くないものの、数が多く、何より繁殖力がすごい。弱いからと放っておくと、後々大きな脅威となり得ます。

 もっとも、大抵は途中で他の魔物との生存競争に負け、大規模な群れにはなれないのですが。

 

 突然ですが、私は火の魔術を好んで使います。何故かこのことは、魔術師、冒険者ギルドではそこそこ知られていますが。

 火は良い。術式規模や当て方にもコツが必要ですが、ちゃんと当たれば大抵の魔物は死にます。時間をかけることもありますが、最終的には死にます。なんたって火です、炎です。

 どんな能力を具えていようと、どれだけ強靭な顎をもっていようと、魔術で燃やせばだいたい終わりです。素晴らしい。

 さらに、術式の難易度も高くなく、素直。火を出して飛ばすだけのシンプルな工程です。そして何より綺麗。これはもう、使わない手はありません。

 

 しかし、こと冒険者稼業においては、火魔術はあまり好まれていません。

 魔術の火はよく燃えますが、燃やしすぎるのです。毛皮や肉をダメにしたり、周りの草木に燃え移ったり。「魔物討伐」そのものは手早く行えますが、倒した後が問題になりがち。

 特に洞窟などで燃やしすぎると、苦しくなってこっちが死んでしまいます。一回洞窟で魔物相手に火を放ち、同行者に本気で怒られたことがあります。暗い洞窟で見る火も綺麗なんですけどねえ、残念。

 

 ゴブリンは、その体からロクな素材が得られないので、燃やしてしまってかまわない魔物になります。

 ですが、今回のゴブリンは森に出現したものでした。

これでは、火なんてとても使えたものではありません。

 森で燃え広がったりすればとんでもないことになります。さすがに罰金では済まされないでしょう。

 

 私だって一応、火以外の、魔物を倒すことのできる魔術も使えます。好みではないのですが、場所が森でしたし、友人も一緒です。チマチマと潰しながら進みました。

 しかし、どこかぼーっとしていたときに、ついうっかり火を放ってしまったのです。それも、手癖で少し大きめのものを。

 

 何とか燃え広がる前に消火しきれたのですが、友人には滅茶苦茶に怒られ。その日は帰るまで荷物持ちをやらされました。

 「仮にも一級魔術師に荷物持ちやらせるなんて……」とこぼすと、「ついうっかりで火を撃つ一級より、新人の五級の方がよほど良い」と言われてしまいました。ぐうの音も出ません。

 結局その日は、ずっと荷物を持たされて終わりました。あーあ、ただっぴろい荒野にいくら燃やしてもいいゴブリンの群れとか、現れないかしら。

 (エスメラ)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。