私、魔術師です   作:みえふぁ

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目指せ、救世主

 この日報を読んでいる方ならご存じでしょうが、先日、隣国から正式な停戦の発表がありました。

 

 たぶん皆さん、とっくに終わっているはずの争いが正式に終わったらしい、ぐらいの認識だと思います。少なくともギルドに漂っていた空気は、随分前から「もう戦争は終わった」といったものでしたからねえ。

 まあ戦争が終ろうが終わるまいが、目の前の仕事が山積みなことには変わりありません。山がこれ以上大きくならないのが、せめてもの救いでしょうか。

 

 戦争が終われば、少なくとも戦場で大っぴらに使われた魔術は、広く知れ渡ることになります。ギルドの魔術師たちは、その情報が届く日を今か今かと待ち構えている様子。

 実は、私も少し楽しみにしています。もちろん、冒険者稼業に役立ちそうな術式も気になりますが、もっと根本的に未知の術式にも興味があります。

 

 どういうわけか、私は魔術研究にまるで興味がない、とでも思われているようです。研究報告書とか読んでると「お前、そういうの読むんだ」と驚かれるのです。一級なのに。

 仮にも第一級魔術師ですからね?あの試験に合格しているのだから、多少は研究も興味ありますよ?見る分には、ですが。

 

 一応、洗濯物を乾かす魔術の開発も、少しづつ着手し始めました。まだ色々と忙しいので、本格的な研究はもう少し先になりそうですが。

 正直、開発は結構簡単なんじゃないかと思っていました。対象は非生物、多少繊細な操作が必要でも、決して難航はしないだろうと。

 

 しかし、どうやらナメていたようです。衣類から余計な湿気だけ抜き取る術式、想像以上に難しい。 全く不可能で八方ふさがりというわけではないのですが、現実的な着地点が見えないのです。

 

 まず、下手をすると周囲の空気からも湿気を抜き取ってしまいそうです。一人が数回使う程度ならともかく、街のあちこちで使われれば、あっという間に空気が乾燥してしまいます。

 そして、完成しても術式が複雑すぎる。このままだと二級以上の魔術師しか使えないような魔術が出来上がります。簡易魔術に落とし込み、誰でも使える魔術にするまでの道のりは、あまりに遠いようです。

 

 そりゃあ、簡単に完成する魔術だったなら、とっくの昔に誰かが開発しているでしょうからね。もう少し心して挑むべきでした。

 「家事の救世主エスメラ」と呼ばれる日は、まだまだ遠そうです。何やら不名誉な印象や異名が付いているようなので、ここらで一発、清らかで綺麗なイメージを定着させたいものですが……。

 (エスメラ)

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