争いの余波はだんだん弱まり、少しずつ日常が帰ってきました。いや、これまでも、それほど日常離れした生活ではありませんでしたが。
とにかく、あんなに忙しかったギルドも、全体的に落ち着きを取り戻し始めました。
私は外へ仕事に出ている方が性に合っていますし、その連続だったここ最近の日々は、ずっと楽しいものでした。
しかし、こうして普段通りのギルドに帰ってくると、何だか安心感を覚えます。不思議なものですね。
とは言え、まだまだ完全に日常を取り戻したとは言い難い。物価高騰が、ここらでじわじわ来ています。
特に収穫がこの時期だった作物の値段が、高いのなんの。産業ギルドもある程度手は打ってくれたようですが、どうしても抑えきれない部分はあるようです。
餓死者が続出するような不作ではありませんが、確実に被害は出るでしょうねえ。
もし次回があるようなら、今度はより有効な対策を立てられることでしょうし、それに期待ですね。
そして、これはまだ確実な情報ではありませんが、戦争の余波は近いうちに、また来ると思われます。
もっとも、もう一度戦争が起こるという話ではありません。
ただ、戦争が起これば死者が続出し、死者が出れば、あの魔物が生まれます。皆さんご存じスケルトンです。
スケルトンは、未だ研究が進んでいない、謎の多い魔物です。
その成り立ちすら詳しく判明していません。一説によると、死の直前の人間が、無意識に発動することのある原始魔術の結果、らしいです。
昔は「死者の怨念」などと恐れられたそうですが、あながち間違っていないのかもしれませんね。
さて、物語の印象が先行しがちなスケルトンなのですが、その実態は、大して危険な魔物ではありません。
本当に、ただ動いているだけの骨です。どこかの英雄譚のように、人間目掛けて襲って来たりしませんからね。ただその場をウロウロしているだけです。
しかも非力。重い鎧を着たまま死んだ人のスケルトンが、鎧の重量で動けず倒れたままだった、なんて話もあるくらいです。片腕のないスケルトンとかザラですよ。欠損のないスケルトンの方が珍しい。
さらに、放っておけば力尽きる。手を下してやるまでもなく、勝手に活動を停止し、二度目の死を迎えるのです。
では、こんな弱々しいスケルトンの何が問題なのかと言うと、その雰囲気、オーラが問題なのです。
こればかりは実際に接触しないと理解できないのですが、スケルトンの周りって、何だか背筋の凍るような、おかしな空気が漂っている。
魔術的にこのオーラを解析しようという試みもありましたが、どれも半端な結果に終わっています。こんなのと昔の人が接触して「死者の怨念」と思ってしまうのも納得できるというもの。
これがただ恐ろしいだけなら、放っておけばよい。そのうちスケルトンは活動を止めますから。
しかしこのオーラ、どうやら他の魔物も恐れるらしいのです。大規模なスケルトンの集団が発生すれば、付近の生物がそこら中へ大移動を始めることになります。
また、逃げてきた魔物が流れてきて、そのおかげで交通や生態系が……という、いつものパターンです。
魔物よりよほど弱い人間が立ち向かえるのですよ?魔物も尻尾巻いて逃げずに、果敢にスケルトンに襲い掛かってほしいものです。
ほら、こっち来るな。しっしっ。
(エスメラ)