私、魔術師です   作:みえふぁ

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もっとご褒美、あっても良いのよ

 皆さん如何お過ごしでしょうか。忙しかった生活も、もうだいぶ落ち着いてきた頃ですかね。 

 

 私の方はと言うと、今日も今日とて魔物討伐です。ここ数日は冒険者ギルドの方にしか行っていません。

 悪魔討伐の仕事はまだ残っているのですが、最近は私が出ずとも、依頼がどんどん消化されていくのです。

 

 今回、ギルド所属魔術師のほとんどが、悪魔の対処へ駆り出されました。これまで散々書いてきましたね。

 そんな悪魔漬けの日々を送ったせいでしょうか。これまで悪魔討伐に消極的だった魔術師の一部が「まあ、この仕事も悪くない」と思い始めたようなのです。

 

 こうなると、魔術師ギルド荒事担当(ギルドマスターより任命、酒の席にて)の私は、あまりやることがない。

 それに、冒険者ギルドがそれなりに人手不足な現状ですからねえ。優先順位を考えると、どうしてもこっちへ行くことになります。

 

 悪魔の対処に出てくれそうな人間が増えたことは、間違いなく有難いことなのでしょうね。

 私はこの傾向を知って「もしかして、いつも貰えてた仕事が奪われる?」と危機感を抱いたりしていましたが。我ながら、非常に勝手な話です。

 私はしょっちゅう、仕事の選り好みをしていますが、悪魔討伐は「誰かが行かなきゃいけないし、でも誰もやりたがらないし……」と、自分に言い訳をして受けられます。結果として、最低限の生活費が稼げていたのです。

 しかし、悪魔討伐を請け負う魔術師が増えれば、私はこの言い訳を失ってしまうのです。稿料はありますが、文字の仕事もいつまで続けられるか分かりませんし、いい加減選り好みしてられないのかなあ。

 

 そんな面倒ごとを頭から追い出すには、やっぱり魔物退治が一番です。今日のお相手はトレントでした。

 トレントは、周囲の魔物の影響によって、枯れた植物が魔物と化したものを指します。

 大きめの樹である場合が多いですが、こじんまりとした枯草のトレントとかもいるそうですよ。子どもが気づかず踏み潰した例を、何かの本でよんだことがあります。

 とは言え、近づく生き物は何でも襲う危険性も持ちます。始末しない理由がない。

 

 さて、そんなトレント、放っておくと周囲の植物から栄養を吸い取り、枯らしてしまいます。

 そして、今回の討伐対象は、それはもう大きなトレントでした。既に大量の栄養を吸い取っていたのでしょう、周囲は枯草だらけ。

 私は大いに葛藤しました。もし燃やしたら絶対に気持ち良いな、でも、絶対にやっちゃダメだな、と。

 

 トレント自身は乾燥している、周りの枯草も相まって、それはもう綺麗に燃えてくれるはずだ。大丈夫だ、水魔術をぶちまけてやれば消火なんて一発さ。私の悪しき精神が、耳元で囁いてくるようでした。

 同時に、私の光輝くような清く正しく美しき心が、それを引き止めます。消火しきれなかったらどうすると。第一、トレントの樹皮は素材として需要があるのだから、燃やしちゃだめだろうと。

 同行していたトミダ君が、私の頭をひっぱたいて言います。何を考えているのかは、だいたい分かる、やめろ。罰金では済まされないかもしれないぞ、と。

 私が彼に返します。ならば、この後一杯、いや二杯、奢ってほしい。そうしたら、私はこの恐ろしい衝動を抑え込むことができる、と。

 

 彼は一杯しか奢ってくれませんでした。ケチくさい男ですねえ。そんなんだからモテないのよ。

 (エスメラ)

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