私、魔術師です   作:みえふぁ

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素直に喜べない

 数日前、とうとう開発を終えた攻撃魔術の報告書を提出してきました。

 そのさらに前、魔物を相手に試し打ちをする機会があったのですが、手ごたえは十分。これならば、実戦でも通用するでしょう。

 

 意気揚々と家に帰り、報告書をまとめました。魔術開発の報告書はいつも他人に任せてきたので、ちゃんと書けるか不安でしたが、案外できるものですね。

 研究は趣味ではありませんが、仮にも魔術師をやっていると、書類関係の仕事は嫌でも触れるものです。体はちゃんと忘れていないみたいで、安心しました。

 

 それをそのまま、ギルドの窓口に提出。

 噂によると、国の研究室まで直接持って行くと、成果次第ではそのまま研究室で雇われることもあるそうですよ?眉唾物ですけど。実際の例も聞いたことありませんしねえ。

 まあ、報告書を書いて、ギルドに提出すれば、私のやることはだいたい終わりです。後は向こうの仕事になります。

 もし皆さんが、新しく魔術を開発することがあれば、どうぞ参考にしてください。

 

 それからしばらくすると、ギルドから書類を渡されます。「あなたの開発した魔術は、こういう扱いをされることになりました」と書かれているものです。具体的には、何級以上の資格がないと使用不可とか、そんなところ。

 ですが、私はこれでも一級魔術師。ごく一部の例外を除けば、どの程度の制限がかかろうと、自由に使うことができる。

 とは言え、まだ登録されていない魔術を使うことは好ましくありません。実際仕事でどう使おうかとか、そのために必要な道具とか、色々と想像を膨らませていました。

 

 そんな風に日々を過ごしていると、まさに今日、ギルドから呼び出しがあったのです。

 思い当たる問題行動はナシ、これは例の報告書の件に違いないと、胸を躍らせました。これでようやく、人目を憚らずにこの魔術を使えるというものです。

 しかし、窓口で書類を渡されてハイ終わり、かと思っていたら、ギルドマスターの執務室へ通されます。何だか雲行きが怪しくなってきました。

 

 要件を尋ねると、一体何がどうしたのか、私の開発した攻撃魔術は、禁術指定を食らったというのだから驚きです。

 禁術とは、簡単に言ってしまうと、使用にとても大きな制限のかかる術式のことです。魔術師以外の人からは勘違いされがちですが、全面的に使用が禁じられるわけではありません。

 しかし、いちいち国やギルドから許可を取った上で、監視もつけられて、使用者が一級魔術師で、それら全部を揃えて、ようやく許可が下りるレベルですからねえ。実質使用禁止みたいなものです。

 

 そして、その魔術の効果についても、ざっくりとしか公開されません。

 今回の例ですと、表からは「魔物を殺せる攻撃魔術」という程度しか分からないのです。そこから先を知るには、これまた国やギルドの許可が必要になります。

 もちろん、開発者の私自身も、大っぴらに話してはならないのです。呼び出しの理由は「そこんところ、ちゃんと分かってる?」と、釘を刺すためだったようでした。

 白状しますと、思いっきりこの枠のネタにするつもりだったので、呼び出しは正解だったでしょうね。今も書きたくてウズウズしているけれど、我慢です。

 

 これで「禁術一覧」の中に、私の名前が載ったことになります。喜んで良いものでしょうか……。

 私の目指すところはあくまで「救世主」なのであって、間違っても「禁術開発者」ではないのですがねえ。

 (エスメラ)

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