私、魔術師です   作:みえふぁ

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少しは安定も

 あれだけ潤っていた財布も、そろそろ中身が尽きてしまいそうです。

 余裕があるからと、いつも以上に散財して、いつも以上に選り好んで仕事していましたからね。当然の結果です。

 

 しかし、お金に余裕があるときよりも、こうして、ちょっと焦りが出始めるくらいの方が、何だか生きている実感がある。不思議なものです。

 我儘ばかり言って、たまにはちゃんと仕事もして、大きなお金が入ればぱーっと使って、週末に頭を悩ませる。我ながら馬鹿らしいとは思うのですが、どうも私は、こういう生き方が性に合っています。

 まあ、働かずに済むとなれば、迷わずだらける怠惰な人間でもあるのですが。積極的に仕事をする気にはなれないのですよねえ。

 必要に迫られて働きたい、というところか。冒険者にはこういう人、多いんじゃないかしら。

 

 ただ、家賃だけは絶対に払わねばなりません。家にお邪魔している分際ですから、ここを損なってはいけない。これでも、家賃の支払いが遅れたことは一度もありません。

 ご夫妻ともにお優しく、支払いを催促するような方々ではありませんが、こればっかりは私の気持ちの問題なのです。

 

 最低限、家賃を払える程度の安定した収入がほしいな、とは、少し前から考えていました。そして、そのアテにしようと考えていたのが、新魔術の開発。

 魔術書に載った術式の製作者には、術式の中身や世間での扱われ方に応じて、年に幾らかのお金が渡されるのです。

 と言っても、一つ二つ作ったところで、大金持ちになることはできないのですが、まあ家賃を払うには十分なはず。

 

 余談ですが、不老になってしまえば、何かで死ぬまでずうっとお金が入ってくることになります。この、「製作者がなかなか死なない」問題に国の金庫番も困り果てているようでして。いっそ支払われる金額を減らそう、なんて話も上がっているそうです。

 でもそれをすると、魔術の新開発を誰もしなくなってしまいそうです。金額を減らすくらいなら、いい加減、年齢制限とか設けてほしいですね、百歳あたりで。

 

 ちなみに、魔術書に最も多く載っている名前は、ロベルテです。ですが、ギルドマスターはロベルテ本人とは認められていないままなので、その分のお金は支払われていません。

 ロベルテに入るはずの金額を計算した人がいましたが、とんでもない数字になっていました。すんごいですよあれ。さすがは魔術の父。

 もしこれだけの財力があれば、マスターの羽振りも良くなって、私もおこぼれにあずかれるかもしれません。ああ、年齢制限設けたら、もしマスターがロベルテ本人って認められても、お金が入ってきませんね。やっぱ年齢制限はナシにしましょう。

 

 さて、私と数名で開発を進めている乾燥魔術と、既に開発を終えた攻撃魔術が、私が候補と思っていたものでした。

 しかし先日、攻撃魔術の方は禁術指定を食らったので、もうダメです。禁術一覧に載ってもお金はもらえないんですよねえ。この仕組み、理不尽じゃないですか?頑張って開発したのになあ。

 

 こうなると、もう頼りになるのは乾燥魔術だけです。何としても完成させなければ。

 金のなる木とまでは言いませんが、家賃ぐらいは実らせてくれることを期待しましょう。

 (エスメラ)

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