完成した魔術の書類を、昨日ようやく全て提出し終えました。
ギルドから指示された仕事だけあって。個人的に魔術を開発するよりも、必要な書類が随分と多かったです。五割増しくらいでしたよ。
その上、後日代表者の私が、魔術の詳細な説明をしに行かなければなりません。やることが多くて困ってしまいます。
さて、この頃はようやく周りに目を向ける余裕も出てきました。どうやら、トミダ君が私に負けじと(?)魔術研究を進めているようです。
内容は。相も変わらず攻撃魔術。それだけならともかく、氷魔術を攻撃に応用できないかと、試行錯誤を繰り返しているようです。彼は一体、何を考えているのでしょうか。
氷魔術自体は、とても有用な術式です。簡易魔術も多く開発されています。
しかしそれは、主に食料の保存などが目的であって、間違っても攻撃に転用するものではありません。
私なんかは暑くなってくると、よく口の中に魔術で氷を生成します。これがとても涼しくて、風を吹かせるより楽な術式でもある。
そんな術式を、あろうことか攻撃に用いるとは、いやはや思いつきませんでした。トミダ君らしい発想ではあります。柔軟というか、突飛というか。
まあ、彼も今のところ上手くいっていないようですが。
氷を生成して飛ばす、石でやった方が効果的です。なんなら難易度だって氷の方が上です。
魔物の足を凍らせて動きを封じる、狙っている暇がありません。動き回る魔物を相手にそんなことができるなら、風刃で傷でもつけてくれた方が効果的でしょう。
何をするにしても「他の魔術でよくない?」という結論に至ってしまうようでした。
一応、足元を凍らせて滑りやすくし、機動力を奪うという案は出ていましたし、これは実際効果があると思います。
しかし、それは果たして「攻撃魔術」なのかと言われると、首を傾げるところ。トミダ君も納得いっていないようなので、彼の研究はまだまだ続くでしょう。
何故そこまで氷に拘る必要があるのか、と尋ねたところ「氷で攻撃できたらかっこいいだろう」と返ってきました。
せっかく戦うのなら、かっこよく戦いたい。冒険者に限らず、騎士の方々だって考えていることだと思います。確かに、石礫を飛ばすのが幾ら効果的でも、見栄えはよくありません。
私も理解できないではないですが、トミダ君ほど情熱を傾けられるかと言うと、うーん……。魔物との殺し合いの中で、そこに気を配ろうとは、やっぱり思えませんよねえ。
けれど、少なくとも冒険者の大半の感性は、トミダ君寄りのようでして。彼はそこら辺から妙に支持を得ています。
あんなヘンテコなことしているのに、不思議なものです。
(エスメラ)