私、魔術師です   作:みえふぁ

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私にだって予定があります

 先日、稀に見るほどの大きな悪魔が出たとかで、魔術師ギルドではちょっとした騒ぎになっています。

 人の住む地域からは程遠く、移動もほとんどしていないようなので、今すぐ危険が、というわけではありません。

 しかし、だからと言って放っておくこともできない。そのうち討伐隊が組まれるでしょう。

 

 この事件のせいで、来月に予定されていた、新技術による悪魔捕獲作戦は延期されてしまいました。楽しみだったんだけどねえ。

 当初、私はマスターに泣きついてでも、この作戦について行くつもりでした。絶対そんな大事な計画に入れてはもらえないだろうから、意地でも引っ付いて行ってやろう、という魂胆です。

 

 ですが意外にも、私が泣きつきに行くより先に、この作戦に同行するように、という指示書が渡されたのです。

 どうやら「悪魔の討伐経験が豊富な一級魔術師」として、私が引っ張り出されることとなったようでした。

 これは嬉しい誤算です。誰もやらないからなあ、と惰性でチマチマ悪魔を倒し続けた甲斐があったというもの。

 

 まあ、涙と鼻水で服が汚れることを嫌ったマスターが、先手を打って私を呼んだ可能性はありますが。むしろ本命じゃないでしょうか。

 このように、普段から好き放題やっていると、勝手に周りが動いてくれて、物事がスムーズにいくこともあります。どうぞご参考に。

 

 そんな風に心待ちにしていた予定が、まさかの延期。どっかに現れたデカい悪魔のおかげです。

 延期なんだから、またいつかやるんでしょ?と思われるかもしれませんが、これだけ大規模な作戦です。一度延期になってしまえば、次がいつになるかなんて分からないのです。

 

 さて、そんなデカい悪魔さんですが、なかなか厄介なところがあります。

 今のところ、この悪魔は出現場所から大きく動いていません。人里離れた山地の奥深くで、ウロチョロしているだけの様子。

 つまり、危険な魔物がうじゃうじゃいる、人なんてとても近寄れない土地の、深ーいところで待ち構えていらっしゃるわけです。

 これでは、半端な騎士や冒険者では、悪魔にたどり着くこともできず、何ならそのまま帰っても来れないでしょう。おかげで、迂闊に手が出せない状況にあります。

 

 かと言って出てくるのを待つとなると、あれほどの悪魔が大きく移動したときの被害を考えなければなりません。

 地震も雷も火事も全部備えた災害の化身のような存在ですからね(正確に言えば魔術の化身ですが)。ちょっと気晴らしに散歩にでも出られようものなら、地図から町の一つくらい、簡単に消えかねません。

 だから、危険と分かっていても、こちらから突っ込んで行くしかないわけです。

 

 そのうち招集される討伐隊では、ギルドからも何人か引っ張り出されるでしょう。

 どうせやることもなくなったし、その楽しみを奪った相手をぶちのめす仕事とあらば、やらない道理もない。

 せっかく魔術開発も終わったわけですから、鬱憤を晴らすのも兼ねて、少し出かけてきますかね。

 (エスメラ)

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