私、魔術師です   作:みえふぁ

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悪魔は苦手です

 先日、悪魔の討伐依頼を受け、ようやく帰って来られました。ああ、疲れた。

 帰りは私一人だけ転移して来たので、他の方々はまだ帰り道の途中でしょうかねえ。申し訳ないとは思いましたが、知った顔の仲間でもありません。初対面の別地域のギルドの方と、用もないのに何日も一緒に過ごすのは面倒ですし。

 

 正直、悪魔討伐はあまり好きではありません。知らない人と一緒になる場合が多いし、今回のように長旅になることだってあります。私以外の大半の魔術師も苦手でしょう。

 では、なぜそんな依頼を受けるのかと言うと、受けられる人間が限られており、かつ、誰かがやらねばならないことだからです。

 

 悪魔について分かっていることは、あまり多くありません。ただ、「魔術の使い過ぎによって発生するもの」であるということは、ほとんど確実と言われています。読者の皆さんも、だいたい似たような認識でしょう。

 魔術とは、あるべき現実を捻じ曲げる術であるとも言われます。そしてその強大な力が使われるほど、世界はもとの形から歪んでいく。そのしわ寄せのような存在が、悪魔です。

 

 私ぐらいの年代だと、直接悪魔を目にする機会はほとんどなくなっています。軽く外見の説明をすると、まあまあ人っぽい形をした、ぼんやりとした光、です。個体差はありますが、だいたい合っていると思います。神秘的であるとすら思わされます。

 やっつけると綺麗さっぱり消えてしまうので、身体の構造なども詳しく分かっていません。対話も不可能です。現在ギルドマスターが、消えてしまう悪魔の死体を回収する研究をしているそうなので、案外そのうち分かるかもしれませんね。

 そうそう、悪魔が消えていく様子、結構美しいのですよ?キラキラとした輝きが、すっと雪が溶けるように空気へと消えていくのです。あれは一見の価値はありますね。

 

 昔の悪魔は、さまざまな魔獣を混ぜ合わせたような、不気味な姿をしていたという記録が残っています。しかし、現在確認される悪魔のほとんどは、人に似た姿です。

 これは、人間の魔術発展とともに、人が魔術を使う機会が増え、悪魔の形成がそれに影響した、らしいですよ。そして、人間の魔術発展と比例するように、悪魔の出現回数は増えています。

 

 この結果起きてしまったのが、皆さん名前ぐらいはご存じでしょう、「ダーテルの悪夢」となります。

 街中に次々と現れた悪魔によって、都市ダーテルは壊滅。その後魔術師の階級制度と悪魔への対策が完成するまで、一切の魔術の使用が禁じられたそうです。

 遠く離れた街の話ではありますが、それでも現在の我々の耳に入る程には大事件だったのでしょうね。

 

 現在、悪魔の出現位置は、国の作った装置によってある程度固定されており、定期的に討伐隊が派遣されています。我々魔術師の尻ぬぐいをさせてしまっていることになります。討伐隊の騎士様には、感謝せねばなりません。

 しかし、出現位置は固定できても、その後の悪魔の移動までは制限できません。その漏れ出た悪魔の討伐が、我々ギルド所属の魔術師に回ってくる、というわけです。

 

 当然、悪魔の出現位置には、人に被害の出ないよう、険しい山の中などが選ばれます。目標は悪魔ですが、魔獣だって出てきます。悪魔の出現に耐えられるような強力なやつらです。

 そんな恐ろしい魔獣に囲まれながら、冒険者に守ってもらいつつ、険しい道を進まねばなりません。不人気なわけです。

 

 「冒険者に守られるなんて魔術師の誇りが許さない!」って人や、そもそも「そんな危険な土地へなんて行きたくない!」って人がいっぱいいるので、悪魔討伐は私のような、冒険者兼魔術師にばかり回ってくるのです。

 魔術師でなくとも討伐できるようなら、私も積極的に受けたい依頼じゃないんだけど。面倒くさがっているうちに被害が出てもいけませんしねえ。報酬も悪くないのですが、良くもない。

 

 こればっかりは技術の進歩を待つしかないでしょう。ギルドマスターの研究から、誰でも悪魔を祓える道具とか作られないかしら。

 (エスメラ)

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