私、魔術師です   作:みえふぁ

40 / 46
私が育てました

 近頃は慣れない仕事ばかりでバタバタしていましたが、ようやく落ち着いてきました。

 ギルドで丁度よさげな依頼を探すのも、なんだか久しぶりのような気がします。実際のところ、そんなに時間は経っていないんですけど。

 

 一応、居候先のお兄ちゃんには、まだ魔術を教えています。

 と言っても、もう簡易魔術を使う分には十分なくらいです。つまり、最低限必要な知識は教え終えてしまったのですよねえ。

 今まで経験のなかったことですが、教えていて結構楽しかったものですから、もう終わっちゃうのかなと、少し惜しく思っていました。人生、何にハマるか分からないものです。

 

 しかし、有難いことに本人から、せっかくの機会だし教えられる範囲で教えてほしいと言われました。

 まともな師匠役をできているのか、実は前から不安だったのですが、どうやら悪くはなかったようで安心しました。

 ですが、教えられる範囲で教えていると、一級試験合格を目指すことになってしまいます。冒険者活動をする上では、五級を持っているだけでもだいぶ違いますから、現在はそこを目指して勉強中です。

 

 魔術師の方々は実感しにくいかもしれませんが、第五級魔術師というだけでも、冒険者からは「結構魔術が使えるヤツ」という目で見られるものです。 

 よほどの問題児でもなければ、五級魔術師は重宝されるのです。新人と一緒に依頼を受けるのを、冒険者は結構避けるものですが、階級持ちの魔術師ならば嫌な顔一つされないでしょう。

 「ちょっと魔術に興味があります」という冒険者の方は、ぜひ五級を取ることをおすすめしますよ。魔術師ギルドの書庫に通うだけでも、十分合格できるはずです。

 

 もちろん、どれだけ優れた魔術師だろうと、それを鼻にかけたような傲慢な人間では、組みたがる冒険者もいません。

 私だってこれでも一級魔術師ですが、冒険者ギルドでは、結構慎ましやかに過ごしているものです。能力が優れていようと、嫌なヤツは嫌なヤツですからね。

 

 そういうわけで、お兄ちゃんには将来、「魔術の使える冒険者」となってもらうべく、色々教えているのです。

 それと並行して、冒険者の仕事についてとか、ついでにあまり品のない風習なんかも教えています。何だかんだ言っても、あまりいい場所ではないですからね、現実は今のうちに教えておくべきでしょう。

 なんなら、今度適当に時間を作って、彼をギルドに連れて行くのもいいかもしれません。

 

 しかし、もし彼がこのまま順調に育てば、魔術が使えて、先の見通しができる、とっても堅実な冒険者が出来上がります。

 史上初ではないでしょうか、堅実な冒険者。少なくともセハードでは初めてになりそうです。そして、その師匠は私、エスメラなのです。私がどれだけ聡明な人間か、想像していただけるでしょうか。

 (エスメラ)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。